Gotcha!
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ダンジョンを脱け出そう!②
「――!!」
レッドに電流走る。否、ピカチュウのわざではなくて、てきィ〰〰ん!と閃いたというか思い出したのだ。電波を受信していたことを。今朝の電話で友が話題にしていた、とある部屋に閉じ込められた際の脱出方法を。
「ねぇ、あ、あの……ミミちゃんと僕が、その……っ」
「うん?」
彼は暴れる心ノ臓を抑え込もうと胸元を握り締めながら話す。その所為か、声はそこから絞り出されるようにして発された。
あちらはあちらで別途まともな方法を模索中、彼女はダークボールを手にしたところだった。振り向かれて目が合った瞬間にまた、彼のシャツにしわが増える。
聞いているよ。聞かせてー。
嫋やかに笑むミミが男の拳へ手を重ねれば、男の服に刻まれていた堀はスーッとなくなった。
「キスしたら、ここ開く……?」
「………………」
――カツーン――。硬直した彼女の手からボールが転がり落ちて、丁重に扱えい!とプンプン怒って飛び出す膨れ面のムウマージ。しかし素早く空気を読み、膨らませた頬をプスーと静かに萎ませた。
静止する二人。少女の口は、え??の形を作っているが二者の間の空気は震えず動かず、少女の目は少年の清い眼差しから逃れられずに居る。
「んな、……ど、どういう原理で?」
「………………さぁ?」
漸く反応があった。傾き90度の勢いで首を倒すミミに対して、ナナメウエ作戦立案者レッドは心持ち程度に首を傾げた。
念の為説明しておこう。○○しないと出られない部屋とは、界隈で共有されているシチュエーションの一種である。飽くまで創作物に登場するステキファンタジーなフィールドでありポケットモンスターなる不思議な生き物が存在しているこの不思議な世界でも未だ確認されていない。
「試す……?」
「ふやああっ!?ファ、ファーストキスはロマンチックな場所でお願いしますうううっ!!」
「………………」
至って真面目な提案にブンブンッと首を左右に振るミミ。キス自体にはOKが出ていることに気付かない鈍感野郎は、少々残念そうに否決を受け入れた。
それでも前向きに、浪漫、浪漫、と頭の中で検討しつつレッドは自分の足下へ来たボールを拾い上げて彼女へ渡す。その無表情が哀しんでいる風に見えるなら貴女は優しい。野郎の頭の中は好きな女の子の唇を狙う下心で忙しかった。
場所を変えるにしても先ずは脱出が最優先だ。
「どうするの?」
「あ、う、うん……。鍵を開けるよ。クレッフィさんは嘘を吐いていない感じだったから、貰った鍵は外の鎖を外す鍵だと思うんだ」
そう話しながらミミがドアノブに手を掛けて、隙間程も開き切れないドアを揺すって鎖を鳴らす。
内側は開いているのに外側から枷を嵌められている様は彼の欲望の有り様と似ていた。ギリギリと耳に響く音は警鐘にも思える。
「壁を抜けられるシショーに外から開けてもらうよ」
「鍵は……?」
「抜かりなく!ダクトからなら鍵を運ぶ隙間はある筈!」
「成程……」
捕捉、ポケモンの もちもの は流石に壁を擦り抜けない。
「……そういうことです、シショー、出番ですっ!」
弟子がヒョイと宙に投げた鍵を師匠が受け取る。斯くして脱出ゲームは難なく攻略された、かに見えた。
自称恋のキューピッドの独断専行のマジックルーム!
持たせた道具の効果がなくなる空間を作り出した!
「あれな予感しかしないんですけど何をしているんですか……?」
「………………」
ムウマージはケラケラ笑っている。師匠の目的はそこの片想い両想いなカップルを閉じ込めること。つまりそういうことだ。
キスしないと出られないのじゃー!
強引マイウェイには同じポジションのピカチュウも苦笑い。
「シショーーォオッ!?」
「………………」
マジックルームを構成する膜をミミがバチバチと叩けば、ムウマージがその六面体をズズズと縮小させた。早く早くと急かしてくる。
吝かではない男は浪漫をどうしようかと眉間にしわを寄せながら考えているが、場所を選んでほしい乙女はこの障害を“わるあがき”してでも突破したい。我儘だって言われても、己の理想と真実を貫く為ここで黒白を付ける訳にはいかなかった。
キスは、凄く、したい、しかし!と葛藤。
「こうなったら……奥の手を使うしかないっ……。
レッドくん!」
「ん、ああ……壊せるかな……頑張る」
「その手じゃないよ!?」
ストップ!彼が作った拳は彼女の掌に包まれてそのまま祈るように握り込まれる。
まあね、カロス地方ではレスリングポケモンの威力80タイプ不一致わざでいけた例があるらしいので、ワンチャンスいけそうな気もするけど。
「目は閉じてねっ」
「っ!!」
苦渋の決断だったのだろう。ミミの円らな瞳には感情が滲んでいる。加えて上目遣いのコンボでレッドはドキドキがキョダイマックスだ。
「……わ、わかった………………」
渇き始めた口で何とか返事をして、潤んだ美しいその虹彩を惜しみつつも堅く目を閉じた。
「良しっ、それでテレポート酔いは多少なりとも抑えられるから」
「………………」
「じゃあ“テレポート”だっ!」
あぁ“テレポート”かぁ……。ぐるぐる全てが回る感覚。浮遊感。次いでに少し、口元の寂しさ。
トリックルームにするべきじゃったかのう。そんな反省の後、愉快犯は壁をするりと抜けて皆を追う。
「――!!」
レッドに電流走る。否、ピカチュウのわざではなくて、てきィ〰〰ん!と閃いたというか思い出したのだ。電波を受信していたことを。今朝の電話で友が話題にしていた、とある部屋に閉じ込められた際の脱出方法を。
「ねぇ、あ、あの……ミミちゃんと僕が、その……っ」
「うん?」
彼は暴れる心ノ臓を抑え込もうと胸元を握り締めながら話す。その所為か、声はそこから絞り出されるようにして発された。
あちらはあちらで別途まともな方法を模索中、彼女はダークボールを手にしたところだった。振り向かれて目が合った瞬間にまた、彼のシャツにしわが増える。
聞いているよ。聞かせてー。
嫋やかに笑むミミが男の拳へ手を重ねれば、男の服に刻まれていた堀はスーッとなくなった。
「キスしたら、ここ開く……?」
「………………」
――カツーン――。硬直した彼女の手からボールが転がり落ちて、丁重に扱えい!とプンプン怒って飛び出す膨れ面のムウマージ。しかし素早く空気を読み、膨らませた頬をプスーと静かに萎ませた。
静止する二人。少女の口は、え??の形を作っているが二者の間の空気は震えず動かず、少女の目は少年の清い眼差しから逃れられずに居る。
「んな、……ど、どういう原理で?」
「………………さぁ?」
漸く反応があった。傾き90度の勢いで首を倒すミミに対して、ナナメウエ作戦立案者レッドは心持ち程度に首を傾げた。
念の為説明しておこう。○○しないと出られない部屋とは、界隈で共有されているシチュエーションの一種である。飽くまで創作物に登場するステキファンタジーなフィールドでありポケットモンスターなる不思議な生き物が存在しているこの不思議な世界でも未だ確認されていない。
「試す……?」
「ふやああっ!?ファ、ファーストキスはロマンチックな場所でお願いしますうううっ!!」
「………………」
至って真面目な提案にブンブンッと首を左右に振るミミ。キス自体にはOKが出ていることに気付かない鈍感野郎は、少々残念そうに否決を受け入れた。
それでも前向きに、浪漫、浪漫、と頭の中で検討しつつレッドは自分の足下へ来たボールを拾い上げて彼女へ渡す。その無表情が哀しんでいる風に見えるなら貴女は優しい。野郎の頭の中は好きな女の子の唇を狙う下心で忙しかった。
場所を変えるにしても先ずは脱出が最優先だ。
「どうするの?」
「あ、う、うん……。鍵を開けるよ。クレッフィさんは嘘を吐いていない感じだったから、貰った鍵は外の鎖を外す鍵だと思うんだ」
そう話しながらミミがドアノブに手を掛けて、隙間程も開き切れないドアを揺すって鎖を鳴らす。
内側は開いているのに外側から枷を嵌められている様は彼の欲望の有り様と似ていた。ギリギリと耳に響く音は警鐘にも思える。
「壁を抜けられるシショーに外から開けてもらうよ」
「鍵は……?」
「抜かりなく!ダクトからなら鍵を運ぶ隙間はある筈!」
「成程……」
捕捉、ポケモンの もちもの は流石に壁を擦り抜けない。
「……そういうことです、シショー、出番ですっ!」
弟子がヒョイと宙に投げた鍵を師匠が受け取る。斯くして脱出ゲームは難なく攻略された、かに見えた。
自称恋のキューピッドの独断専行のマジックルーム!
持たせた道具の効果がなくなる空間を作り出した!
「あれな予感しかしないんですけど何をしているんですか……?」
「………………」
ムウマージはケラケラ笑っている。師匠の目的はそこの片想い両想いなカップルを閉じ込めること。つまりそういうことだ。
キスしないと出られないのじゃー!
強引マイウェイには同じポジションのピカチュウも苦笑い。
「シショーーォオッ!?」
「………………」
マジックルームを構成する膜をミミがバチバチと叩けば、ムウマージがその六面体をズズズと縮小させた。早く早くと急かしてくる。
吝かではない男は浪漫をどうしようかと眉間にしわを寄せながら考えているが、場所を選んでほしい乙女はこの障害を“わるあがき”してでも突破したい。我儘だって言われても、己の理想と真実を貫く為ここで黒白を付ける訳にはいかなかった。
キスは、凄く、したい、しかし!と葛藤。
「こうなったら……奥の手を使うしかないっ……。
レッドくん!」
「ん、ああ……壊せるかな……頑張る」
「その手じゃないよ!?」
ストップ!彼が作った拳は彼女の掌に包まれてそのまま祈るように握り込まれる。
まあね、カロス地方ではレスリングポケモンの威力80タイプ不一致わざでいけた例があるらしいので、ワンチャンスいけそうな気もするけど。
「目は閉じてねっ」
「っ!!」
苦渋の決断だったのだろう。ミミの円らな瞳には感情が滲んでいる。加えて上目遣いのコンボでレッドはドキドキがキョダイマックスだ。
「……わ、わかった………………」
渇き始めた口で何とか返事をして、潤んだ美しいその虹彩を惜しみつつも堅く目を閉じた。
「良しっ、それでテレポート酔いは多少なりとも抑えられるから」
「………………」
「じゃあ“テレポート”だっ!」
あぁ“テレポート”かぁ……。ぐるぐる全てが回る感覚。浮遊感。次いでに少し、口元の寂しさ。
トリックルームにするべきじゃったかのう。そんな反省の後、愉快犯は壁をするりと抜けて皆を追う。
おしまい