Gotcha!
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ダンジョンを脱け出そう!
「ここは……。私達、戻って来た?」
「うん……戻って来た……」
隠し部屋から飛ばされてきた2人と1匹。立ち尽くしているそこは元の世界の廃スーパーマーケット、その売場の裏側バックヤードだった。
ついさっきまで亜空間に居たって訳だが、幸いな事に浦島太郎状態には陥っていなかった――という事を知るのはダンジョンを出てから。まだ先の話だ。
ミミが確認した時計は己のスマホの一機能。ステータスバー上の電波状態表示は圏外になっている。時刻信号を受信できていないならその4つの数字は当てにできないのだ。
ディスプレイをオフにすると、朧気に見えていた赤い帽子も黄色い耳もまた黒い幕に覆われた。レッド視点でも同様に彼女の色が霞む。
「ミミちゃん」
「うおっとっと……」
透かさず離すまいと動いた彼の左手は、彼女の二の腕を捕まえその体を強引に引き寄せた。離さないまま、追って別の臆病な手が出る。
自分の手でミミを確かめるようにポフッと頭に触れて、後は無自覚にポフポフッと、自分の手でミミを愛おしむように御髪を撫でてそして撫で下ろして、安堵ののちレッドは自覚する。何してるの僕。
勝手に触って大丈夫なの?
ビタッとストップしたのはその手と思考。愛でていた彼女のだらしない顔は男には見えていなかった。夜目が利く鼠には見えていたりして。
「大丈夫だよ、私はレッドくんから離れないよ」
「………………」
嫌われていないなら、良し。では先へ進もうと、レッドはぎこちない手付きでミミの首根へ手を添える。
「目、閉じて」
「エッ?エッ!?何す――」
ドキンと跳ね上を向こうとしているところを優しく力で押さえ込んだ。ついでに覆い被さる形で抱き込んでおく。服の裾をキュと掴まれる。
目付きの悪いピカチュウは主の肩へ駆け上がると、彼の代わりに帽子のつばをはたくようにして下ろした。
「――あ、ああ、あれね……」
「?………………うん、あれ」
ピカチュウ、“フラッシュ”。レッドの号令ででんきタイプの相棒が、眩い光で辺りを明るく照らす。
見えるようになった足元のピカピカコンクリートへ視線を落としつつ、穴を掘れたら入りたいな、等と密かに思うミミ。
この人ったら、うぶな恋の相手へは下心あるかないかそれだけでこうも実行力が変わるのだから、もう。
いいよ。そう合図が出ても三拍程、一人恥ずかしい彼女は分厚い胸板へ額を押し付けていた。次の四拍目でこつんとふんわり頭突をしてから顔を上げる。頬はまだ赤いけど。
「んっんん……。えと、じゃあ、他のミミッキュでも探してみる?」
「お腹空いてきたし……そろそろ……、どう?そ、その……」
「そうだね、ヤミカラスが鳴く前に帰りましょう。でっ、美味しい物を一緒に探そうかっ!」
「うん……!」
さあ、この廃墟から出よう!
「んあれ?ここのドア、閉められていたっけ……?」
「開いてた……」
早速、イレギュラー発生。正しくは通っていないが通って来た筈のドアなのに、男が押せども引けどもびくともしなかった。開いていたことの方が幻だったのだと言わんばかりの佇まい。
「クレッフィから貰った鍵は……っと……合わないねえ……。出口の鍵って説明されたんだけど」
「……別のドア?」
「別のかあ……。従業員用の出入口がある筈だよ、逆側かな」
ドアと反対側、窓がない狭い通路はその脇を台車に固められて更に狭くなっている。
探索者2名はピカチュウ1匹を頼りに出口探しを開始する。とは言うが道なりに真っ直ぐ進むだけだ。
カゴ台車に積まれた、日の目を見ること叶わぬ何かが眠った段ボールの数々。雑に並んだ六輪台車の棚にはポケモン用品やトラベル用品や店頭に並び損ねた日用品。物言わぬその物達の隙間に埋もれた扉を見ても、道なりに真っ直ぐ。
「横道ってついつい釣られてしまうよね、宝探し気分でさ」
「わかる。あの……ナントカ団アジトとか、楽しかった……」
「おうふ……ロケット団だろうか……」
「あー……多分、そう」
ここは只のスーパーマーケット。山程の物品に囲まれながら、ここには何もなさそうだと雑談をしつつピカチュウに相槌を打たれつつ、呑気に歩く男女二人は突き当たりへやって来た。
電気鼠灯が先ず見付けたのはそこに居座る先客、行き場を失った大量の荷物だった。その先を照らし出せば奥に漸くシャッターが見えた。
遠くを見据えたまま漫然とミミへ訊ねるレッド。
「……。全部、吹き飛ばす?」
「こらこら、それは最終手段だからね?」
クラッシャーは釘を刺される。この廃墟はこう見えて厳格に管理されている施設なので建造物等損壊はNGなのだ。
「ほらほら、その横、通用口までのスペースはあるっぽいから」
「………………」
我が心のマスターには忠実で利口なバーサーカーは、彼女に付き従って通路の端を行く。
そうして辿り着いた出口のドアノブを取り敢えず回してみたなら、鍵を使わなくても開く手応えがあった。が。しかし。押してみて動いたのは僅か数センチ。ジャララジャララと外から、鎖が擦れる嫌な音がする。
「………………」
「………………」
「……。壊す?」
「ままま待てえ!まだ手はあるからあ……っ!」
“アイアンテール”と鉄拳の準備運動をし出すピカチュウとレッドへミミが両手を突き出してそれを止めて。
脱出ゲームのはじまりはじまり!
「ここは……。私達、戻って来た?」
「うん……戻って来た……」
隠し部屋から飛ばされてきた2人と1匹。立ち尽くしているそこは元の世界の廃スーパーマーケット、その売場の裏側バックヤードだった。
ついさっきまで亜空間に居たって訳だが、幸いな事に浦島太郎状態には陥っていなかった――という事を知るのはダンジョンを出てから。まだ先の話だ。
ミミが確認した時計は己のスマホの一機能。ステータスバー上の電波状態表示は圏外になっている。時刻信号を受信できていないならその4つの数字は当てにできないのだ。
ディスプレイをオフにすると、朧気に見えていた赤い帽子も黄色い耳もまた黒い幕に覆われた。レッド視点でも同様に彼女の色が霞む。
「ミミちゃん」
「うおっとっと……」
透かさず離すまいと動いた彼の左手は、彼女の二の腕を捕まえその体を強引に引き寄せた。離さないまま、追って別の臆病な手が出る。
自分の手でミミを確かめるようにポフッと頭に触れて、後は無自覚にポフポフッと、自分の手でミミを愛おしむように御髪を撫でてそして撫で下ろして、安堵ののちレッドは自覚する。何してるの僕。
勝手に触って大丈夫なの?
ビタッとストップしたのはその手と思考。愛でていた彼女のだらしない顔は男には見えていなかった。夜目が利く鼠には見えていたりして。
「大丈夫だよ、私はレッドくんから離れないよ」
「………………」
嫌われていないなら、良し。では先へ進もうと、レッドはぎこちない手付きでミミの首根へ手を添える。
「目、閉じて」
「エッ?エッ!?何す――」
ドキンと跳ね上を向こうとしているところを優しく力で押さえ込んだ。ついでに覆い被さる形で抱き込んでおく。服の裾をキュと掴まれる。
目付きの悪いピカチュウは主の肩へ駆け上がると、彼の代わりに帽子のつばをはたくようにして下ろした。
「――あ、ああ、あれね……」
「?………………うん、あれ」
ピカチュウ、“フラッシュ”。レッドの号令ででんきタイプの相棒が、眩い光で辺りを明るく照らす。
見えるようになった足元のピカピカコンクリートへ視線を落としつつ、穴を掘れたら入りたいな、等と密かに思うミミ。
この人ったら、うぶな恋の相手へは下心あるかないかそれだけでこうも実行力が変わるのだから、もう。
いいよ。そう合図が出ても三拍程、一人恥ずかしい彼女は分厚い胸板へ額を押し付けていた。次の四拍目でこつんとふんわり頭突をしてから顔を上げる。頬はまだ赤いけど。
「んっんん……。えと、じゃあ、他のミミッキュでも探してみる?」
「お腹空いてきたし……そろそろ……、どう?そ、その……」
「そうだね、ヤミカラスが鳴く前に帰りましょう。でっ、美味しい物を一緒に探そうかっ!」
「うん……!」
さあ、この廃墟から出よう!
「んあれ?ここのドア、閉められていたっけ……?」
「開いてた……」
早速、イレギュラー発生。正しくは通っていないが通って来た筈のドアなのに、男が押せども引けどもびくともしなかった。開いていたことの方が幻だったのだと言わんばかりの佇まい。
「クレッフィから貰った鍵は……っと……合わないねえ……。出口の鍵って説明されたんだけど」
「……別のドア?」
「別のかあ……。従業員用の出入口がある筈だよ、逆側かな」
ドアと反対側、窓がない狭い通路はその脇を台車に固められて更に狭くなっている。
探索者2名はピカチュウ1匹を頼りに出口探しを開始する。とは言うが道なりに真っ直ぐ進むだけだ。
カゴ台車に積まれた、日の目を見ること叶わぬ何かが眠った段ボールの数々。雑に並んだ六輪台車の棚にはポケモン用品やトラベル用品や店頭に並び損ねた日用品。物言わぬその物達の隙間に埋もれた扉を見ても、道なりに真っ直ぐ。
「横道ってついつい釣られてしまうよね、宝探し気分でさ」
「わかる。あの……ナントカ団アジトとか、楽しかった……」
「おうふ……ロケット団だろうか……」
「あー……多分、そう」
ここは只のスーパーマーケット。山程の物品に囲まれながら、ここには何もなさそうだと雑談をしつつピカチュウに相槌を打たれつつ、呑気に歩く男女二人は突き当たりへやって来た。
電気鼠灯が先ず見付けたのはそこに居座る先客、行き場を失った大量の荷物だった。その先を照らし出せば奥に漸くシャッターが見えた。
遠くを見据えたまま漫然とミミへ訊ねるレッド。
「……。全部、吹き飛ばす?」
「こらこら、それは最終手段だからね?」
クラッシャーは釘を刺される。この廃墟はこう見えて厳格に管理されている施設なので建造物等損壊はNGなのだ。
「ほらほら、その横、通用口までのスペースはあるっぽいから」
「………………」
我が心のマスターには忠実で利口なバーサーカーは、彼女に付き従って通路の端を行く。
そうして辿り着いた出口のドアノブを取り敢えず回してみたなら、鍵を使わなくても開く手応えがあった。が。しかし。押してみて動いたのは僅か数センチ。ジャララジャララと外から、鎖が擦れる嫌な音がする。
「………………」
「………………」
「……。壊す?」
「ままま待てえ!まだ手はあるからあ……っ!」
“アイアンテール”と鉄拳の準備運動をし出すピカチュウとレッドへミミが両手を突き出してそれを止めて。
脱出ゲームのはじまりはじまり!
おしまい