Gotcha!
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グズマに買われる
「それって……。依頼、したら……僕もミミちゃんと一緒に……?」
「まあ……断る理由はないからなあ。それはそうなるだろうね」
レッドが何の話をしているのか、順を追って説明するとこうだ。
片やアローラ、片やカントー、接点が見当たらない両者、先ずグリーンが知り合った切っ掛けを問う。時点ではまだ彼にとって取るに足らない話題。エネココアを最後の一滴まで飲み干そうとカップを傾ける。
初めに、指名依頼したのだと答えるグズマの声を聞き流す。
次いで、あの頃は炊き立てほやほやの新米だったなあ、等と染々語ったポケモンレンジャーである彼女の、過去の姿を思い起こして懐かしむ。舌の上をぬるりと流れるエネココアを甘いと思う。
終いに、カロス地方を共に旅したのだとグズマとミミに聞かされる。
何……だって……?
武者修行だとか、ローラースケートが楽しかったとか。俺は留学でとか聞こえてきた分はどうでも良くて。
ビタッとレッドは停止した。傾けたままのカップは既に空になっていたので惨事には至らず、そうして冒頭の発言に至ったのだった。
「……お金さえ払えば……冒険したり、釣りもできる?……」
「おまえなー……」
覆水盆に返らずという諺がある。彼の浅慮な発言はもう取り消せない。そういうのは金で買うものじゃねーよ阿呆、友人は呆れた声で非難だけしておいた。
彼の想いに勘付いた彼女の元旅仲間に目で尋ねられて、グリーンはご覧の通りだと肩を竦める。
「払わなくても……ううんとねえ……」
今この男の子の胸の内を占めるのは希望。純愛したい女の子には少々酷なその確認には、しかし純粋さと愛しかなくて女の子も真面目に返答を選ぶ。身銭を切ってでも誘いたいのだろうと前向きに受け取ろう。
「報酬は物でも受け付けているよ。
レッドくんからならお金より……愛が欲しいなっ」
「わ、わか、った………………?」
取り敢えず了解した後、あいとは?と首を捻るレッド。顎に手を当てると黙念と底無沼に沈んでいった。
その隣に座って居られないミミは逃げるように席を立って、お水頂戴っ!と店長に注文アンド催促。水が出て来るまで、パタパタと手団扇で赤くなった顔を冷ましていた。
酔狂な奴が居たもんだな。
どういう意味だよお。
酒場でマスターに絡む泥酔中の常連客のような図になっている。
「ねぇグリーン、『あい』ってどこで買える?」
「物でもねーよ。愛は愛。愛してるの愛だぜ?
言葉なり、態度なり、おまえが用意して渡せれば、ミミちゃんが一緒に冒険も釣りもしてくれるっつー訳だ」
「そういう意味か。……そ、そういう意味か……っ」
グリーンは時々思うのだ。この男を好きな彼女の方が酔狂な奴なのではないかと。
いつもの癖で帽子を触りつつレッドは立ち上がり後を追い掛ける。その相手は丁度、空気が読めるマスターに追い出されたところ。
「ミミちゃん」
「ふあいっ!?い今!?ここでするのかな!?」
強張る手でその緊張する肩を掴めばミミの大きな瞳がレッドの真剣な瞳を捉える。下げた帽子のつばは目を隠すためだったのにそれは身長差が無駄にした。
例に漏れず言葉を用意できていない彼の、むずむずと動く口が開くのを同席者は固唾を飲んで見守る。
「……僕だけがいい……」
「わわわっ――」
真正面から受けざるを得ないミミは自分自身の想いであっぷあっぷ。溺れてしまいそうな程に溢れて流石に目が泳ぐ。焦点が定まらない。
「わわ私が好きなのはっ――」
「僕以外の、貰ってないよね……?」
彼が言いたいのは、グズマや他の男に同じ条件を出していないか呑んでいないか、ということだった。腹の底にある独占欲が先んじた結果だ。
言い切った瞬間にタイムアップ。目を合わせていられなくなって斜め下へ視線を逃がすレッド。彼女の事は逃がせないし聞き逃せないので手は意地でも離さないけど。
「……うちの馬鹿が……ごめん……」
「………………わあん」
頭を抱えたグリーンが彼女の様子を窺ったなら、ぱかんと開いていた口がぱたんと閉じられるのが見えた。心中を察する。
俺も全く同じ気持ちだぜっ!
そっちかーーいっ!
「ハッ……一人で盛り上がるとか恥「グズマは黙ってー」
こんな感じでも一応は場の雰囲気を壊すまいと考えるグズマは大笑いを堪えている。始めこそ吹き出したがギリギリ明後日へ向けたのでセーフにされたし。
「………………ま、まさか」
「それはない!」
表情を暗くした男が結論を急ぐのでミミは慌てて否定した。
この状況はおかしかった。今現在のこの状況は告白を強要されているに等しかった。おかしい。それはその人に言ってもらえる手筈なのだが。
後先考えられない相手が悪い。天然の勝利者め。
追い詰められたミミは白状する。
「特別なのは。
レ、レッドくんだけだよおっ……!」
やつあたり!ぱすっと、レッドの胸に泣き言と共に拳を食らわせる。
「!……そうだよね」
何がそうなのか。相思相愛が大前提のまるで彼氏のような受け答えは何なのだ。
ふっとおもてを上げる彼と入れ違いに彼女は真っ赤な顔を伏せる。
「うん……ありがとう……じゃあ……」
どう愛されたい?なんてダイレクトアタックしてくるそいつにその子は、考えておくです、と、声を返すので精一杯だった。
レッドから釈放された途端ミミはカウンター否放熱板に突っ伏す。頬を押し付けて放熱。暫く再起不能。
悪気がない友の代わりにグリーンが心より謝罪した。
「おいおい後は家で楽しめよなぁ」
つめたいみず2杯目を発熱中の彼女に渡しながら、店主がレッドに声を掛ける。
「?……借りてる所は別々だから……」
「あぁん?……あぁ、成程ねぇ……」
グズマがポンポンッとミミの頭を叩いて慰めているが、未来の彼氏的には別に構わないことらしく闘争心は特に燃やされはしなかった。敵にならないと見做されたらしい。
「旨い話がある。レッドサンよぉ、一つ頼まれちゃくんねぇか」
「………………。
グズマのは要らない……」
「………………。
そんな覚悟は用意してねぇよ……」
報酬の話題は一旦忘れろ。
で、取引については省略――
「――ってぇことで妹分をよろしく」
にやにや笑うクライアントはレッドにそう言って仕事を投げ付けた。話を立ち聞きしていたミミがやおら頭をもたげて、異議あり、と挙手をする。
「私の方が歳上だし、グズマが私の弟分になるんじゃない……?」
「はぁ?歳は関係ねぇだろぉ。どぉ考えたってテメエが下だろぉが」
「どう考えたのさ」
そこからああだこうだヒートアップしたポケモントレーナーの行き着く先はここ。
「バトルしよう!そして負けた方が弟か妹ね!」
「いいぜぇ!ブッ壊してやらぁ!」
「そうか……!バトルで僕が勝てばミミちゃんを彼女に「おまえはその短絡的な思考を捨てろって!!」
自分の方が大人だと主張する子供達の喧嘩は姉の辛勝で終幕した。
「それって……。依頼、したら……僕もミミちゃんと一緒に……?」
「まあ……断る理由はないからなあ。それはそうなるだろうね」
レッドが何の話をしているのか、順を追って説明するとこうだ。
片やアローラ、片やカントー、接点が見当たらない両者、先ずグリーンが知り合った切っ掛けを問う。時点ではまだ彼にとって取るに足らない話題。エネココアを最後の一滴まで飲み干そうとカップを傾ける。
初めに、指名依頼したのだと答えるグズマの声を聞き流す。
次いで、あの頃は炊き立てほやほやの新米だったなあ、等と染々語ったポケモンレンジャーである彼女の、過去の姿を思い起こして懐かしむ。舌の上をぬるりと流れるエネココアを甘いと思う。
終いに、カロス地方を共に旅したのだとグズマとミミに聞かされる。
何……だって……?
武者修行だとか、ローラースケートが楽しかったとか。俺は留学でとか聞こえてきた分はどうでも良くて。
ビタッとレッドは停止した。傾けたままのカップは既に空になっていたので惨事には至らず、そうして冒頭の発言に至ったのだった。
「……お金さえ払えば……冒険したり、釣りもできる?……」
「おまえなー……」
覆水盆に返らずという諺がある。彼の浅慮な発言はもう取り消せない。そういうのは金で買うものじゃねーよ阿呆、友人は呆れた声で非難だけしておいた。
彼の想いに勘付いた彼女の元旅仲間に目で尋ねられて、グリーンはご覧の通りだと肩を竦める。
「払わなくても……ううんとねえ……」
今この男の子の胸の内を占めるのは希望。純愛したい女の子には少々酷なその確認には、しかし純粋さと愛しかなくて女の子も真面目に返答を選ぶ。身銭を切ってでも誘いたいのだろうと前向きに受け取ろう。
「報酬は物でも受け付けているよ。
レッドくんからならお金より……愛が欲しいなっ」
「わ、わか、った………………?」
取り敢えず了解した後、あいとは?と首を捻るレッド。顎に手を当てると黙念と底無沼に沈んでいった。
その隣に座って居られないミミは逃げるように席を立って、お水頂戴っ!と店長に注文アンド催促。水が出て来るまで、パタパタと手団扇で赤くなった顔を冷ましていた。
酔狂な奴が居たもんだな。
どういう意味だよお。
酒場でマスターに絡む泥酔中の常連客のような図になっている。
「ねぇグリーン、『あい』ってどこで買える?」
「物でもねーよ。愛は愛。愛してるの愛だぜ?
言葉なり、態度なり、おまえが用意して渡せれば、ミミちゃんが一緒に冒険も釣りもしてくれるっつー訳だ」
「そういう意味か。……そ、そういう意味か……っ」
グリーンは時々思うのだ。この男を好きな彼女の方が酔狂な奴なのではないかと。
いつもの癖で帽子を触りつつレッドは立ち上がり後を追い掛ける。その相手は丁度、空気が読めるマスターに追い出されたところ。
「ミミちゃん」
「ふあいっ!?い今!?ここでするのかな!?」
強張る手でその緊張する肩を掴めばミミの大きな瞳がレッドの真剣な瞳を捉える。下げた帽子のつばは目を隠すためだったのにそれは身長差が無駄にした。
例に漏れず言葉を用意できていない彼の、むずむずと動く口が開くのを同席者は固唾を飲んで見守る。
「……僕だけがいい……」
「わわわっ――」
真正面から受けざるを得ないミミは自分自身の想いであっぷあっぷ。溺れてしまいそうな程に溢れて流石に目が泳ぐ。焦点が定まらない。
「わわ私が好きなのはっ――」
「僕以外の、貰ってないよね……?」
彼が言いたいのは、グズマや他の男に同じ条件を出していないか呑んでいないか、ということだった。腹の底にある独占欲が先んじた結果だ。
言い切った瞬間にタイムアップ。目を合わせていられなくなって斜め下へ視線を逃がすレッド。彼女の事は逃がせないし聞き逃せないので手は意地でも離さないけど。
「……うちの馬鹿が……ごめん……」
「………………わあん」
頭を抱えたグリーンが彼女の様子を窺ったなら、ぱかんと開いていた口がぱたんと閉じられるのが見えた。心中を察する。
俺も全く同じ気持ちだぜっ!
そっちかーーいっ!
「ハッ……一人で盛り上がるとか恥「グズマは黙ってー」
こんな感じでも一応は場の雰囲気を壊すまいと考えるグズマは大笑いを堪えている。始めこそ吹き出したがギリギリ明後日へ向けたのでセーフにされたし。
「………………ま、まさか」
「それはない!」
表情を暗くした男が結論を急ぐのでミミは慌てて否定した。
この状況はおかしかった。今現在のこの状況は告白を強要されているに等しかった。おかしい。それはその人に言ってもらえる手筈なのだが。
後先考えられない相手が悪い。天然の勝利者め。
追い詰められたミミは白状する。
「特別なのは。
レ、レッドくんだけだよおっ……!」
やつあたり!ぱすっと、レッドの胸に泣き言と共に拳を食らわせる。
「!……そうだよね」
何がそうなのか。相思相愛が大前提のまるで彼氏のような受け答えは何なのだ。
ふっとおもてを上げる彼と入れ違いに彼女は真っ赤な顔を伏せる。
「うん……ありがとう……じゃあ……」
どう愛されたい?なんてダイレクトアタックしてくるそいつにその子は、考えておくです、と、声を返すので精一杯だった。
レッドから釈放された途端ミミはカウンター否放熱板に突っ伏す。頬を押し付けて放熱。暫く再起不能。
悪気がない友の代わりにグリーンが心より謝罪した。
「おいおい後は家で楽しめよなぁ」
つめたいみず2杯目を発熱中の彼女に渡しながら、店主がレッドに声を掛ける。
「?……借りてる所は別々だから……」
「あぁん?……あぁ、成程ねぇ……」
グズマがポンポンッとミミの頭を叩いて慰めているが、未来の彼氏的には別に構わないことらしく闘争心は特に燃やされはしなかった。敵にならないと見做されたらしい。
「旨い話がある。レッドサンよぉ、一つ頼まれちゃくんねぇか」
「………………。
グズマのは要らない……」
「………………。
そんな覚悟は用意してねぇよ……」
報酬の話題は一旦忘れろ。
で、取引については省略――
「――ってぇことで妹分をよろしく」
にやにや笑うクライアントはレッドにそう言って仕事を投げ付けた。話を立ち聞きしていたミミがやおら頭をもたげて、異議あり、と挙手をする。
「私の方が歳上だし、グズマが私の弟分になるんじゃない……?」
「はぁ?歳は関係ねぇだろぉ。どぉ考えたってテメエが下だろぉが」
「どう考えたのさ」
そこからああだこうだヒートアップしたポケモントレーナーの行き着く先はここ。
「バトルしよう!そして負けた方が弟か妹ね!」
「いいぜぇ!ブッ壊してやらぁ!」
「そうか……!バトルで僕が勝てばミミちゃんを彼女に「おまえはその短絡的な思考を捨てろって!!」
自分の方が大人だと主張する子供達の喧嘩は姉の辛勝で終幕した。
おしまい