Gotcha!
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グズマに売られる
「よぉ。来たかブラザー。野郎2人連れ歩くたぁスカしてんじゃねぇか」
「来たよおブラザー。人聞きが悪いことを言っていないで接客してー」
アローラ地方の不良軍団スカル団が根城にしていたポータウン。その町の郊外に存在するその店には看板もなければ入口もなかった。
そこにあるのは一台の厳ついフードトラック。光沢あるダークブラウンの車体をキャンバスに、スプレーによるエアロゾールアートが施されている。
“That's life!”
人生そんなもんだ!と叫ぶ白い文字とそれを打ち消す赤い×印が特徴的だ。おまけのエネコのステッカーはかわいい。刺々しい外観とは裏腹にチョコレートの甘味と珈琲の苦味をブレンドした落ち着く香りが辺りに広がる。
グリーンがそれらを物珍しげに見ている横で、レッドはミミの背中と彼女越しの店主に目を向けていた。
「これ開業祝い。おめでとう」
「こいつはどぉも」
陽光を弾くホワイトカラーの頭髪に金縁丸縁サングラス。アウトローなファッションの上には、似合わないパンケーキ色のエプロン。ミミが贈ったキングカップのちいさなはなたばは彼が飲んでいた軟水のペットボトルに飾られた。
2人に紹介するね、そう言いながら振り向く彼女に合わせて店主も目線を上げる。
「彼がグズマ。見ての通り、店長をしている不良だよ。十年来の仲ってやつになるかな、一応」
「Alola. グリーンサンにレッドサン」
「アローラ」
「……」
「アンタ等クソ有名だからなぁ。暇な島民から嫌でも話は聞かされてんぜぇ」
「口が悪くてごめんね。根はいい奴だから」
どぉだか、とグズマが自嘲気味に鼻で嗤って反論する。元スカル団ボスだったことはここでする話ではないだろう。
取り敢えずカネ落としてけ、と指を指す先のブラックボードにはネオンカラーの文字が並べられていた。
「私が出すから選んで選んでー」
「じゃ、いただきます……っと。俺はショートアイスノンシロップカフェモカ……あゴーゴーミルクあるのか。ミルクはチェンジしてくれ」
「ウチはチョコの種類も選べる」
「んー……ビタースイートで」
呪文のような注文に、一二のぽかんと頭の使い方を綺麗に忘れたミミは、我に返って再びメニューに目を通す。
いっぱい飲むねえ。
あれで1杯分さ。
等グリーンと一言二言、レベル差がある会話を晒しつつ。
「レッドくんは……?」
「……一番上のやつ」
「エネココアだな。トールのアイスでいいか」
わざわざ前者と比較してみなくても拘らないこの男の場合は選んでいるとは言い難い。サイズその他を適当に決める店主にもはいと頷いて最早選ばされているしどう見ても。
嫌いな物もなければ大食い早食いもできる人間なのでお残し等の心配はないのだが。
「んっと、私はこれ。の普通サイズのあたたかいの」
「エネココアのルビーな。……スモアもあんぞ、テメエ好きだろ」
「あっ!食べる食べる!マシュマロわあい!」
スモアは焼いたマシュマロとチョコレートを2枚のグラハムクラッカーで挟んで作る菓子のこと。アローラ地方も含まれるイッシュ語圏では、キャンプで良く作るそう。
大量購入するから負けてください!
定価払えば無料で食わせてやんよ。
な茶番と受取を終えて店主グズマはキッチンの方へ移動する。
出来上がり待ちの3人はカウンター脇のベンチに並んで座った。縦半分に切断したドラム缶を倒しただけの廃材ベンチは実にらしい。トラックの奥からはロックなミュージックが微かに聴こえてくる。
「……ミミちゃんマシュマロが好きなの?」
「うん。ふわふわしていて美味しい最強。
そうだっ!
2人の好きな料理って何?金曜日、用意できたら用意しておくねっ」
「肉……「それ材料名。料理名答えろや」……プライムリブとハンバーグ」
プライムリブとは簡単に例えるなら厚切ローストビーフだ。ハンバーグの方の説明は不要だろう。
プライム?と知らない料理をスマホで検索、出てきたレシピとミミが睨めっこを始める。
レッドは心を籠めて祈った。
料理の腕は要ではなくて肝心なのは食べられるかつまり作ってもらえるか。作って!食べさせて!祈る理由はそう、好きな料理ではあるのだが今は違う、好きな人の手料理だからに決まり切っている。
「俺は何でもいい。……つか、俺らも菓子とか持って来るぜ」
「おおう、ありがとう、よろしく」
「レッドにはケチャップも用意してやってくれ。こいつ何にでもビビるくらい掛けるから」
普通だよ、と本人が否定してくる。しかして常識力が怪しい人間が口にする普通には説得力なしとグリーンは思う。
「私も好きだよ。オムレツには沢山掛ける」
「オムレツとかハンバーグはわかるし、サラダならまだ理解できるけどな……こいつ刺身にもぶっ掛けやがるから……」
「はええ……それは凄いね……」
ミミに引いた様子はない。素直に感心していた。
「白御飯にも掛けたりするの?」
「それはしない……」
「へええ……それは違うんだ……」
彼個人に対する知的欲求、要は只の恋がそうさせているのかも知れないが、ミミはレッドの偏見まで丁寧に受け入れてくれる。
グリーンが彼女の人となりを知ってからというもの、親友にはもうこの女性しか居ないと思っている。過言ではない筈だ。
「おいローロー」
「あ、出来た?ありがとう」
奢りのドリンクとスモアを配給してミミの手元にはルビーチョコレートを使ったピンク色のエネココアと1ダースのスモアが残る。
いただきますの挨拶をきちんとした後、不良店長オススメのエネココアルビーを一口二口。ココアパウダーを使わずチョコレートから作られた香り、酸味、苦味、コク、とルビーチョコレート特有のフルーティーな味わい。アローラ地方でカロス風のエネココアを飲めるのはこの店一件のみ。
「バリスタさん呼んでくださいっ」
「五月蝿。何だよ」
「グズマあ!美味しいねっ?」
「……ケッ……訊いてんじゃねぇよ」
またまた茶番を挟みながらブレークタイム。
因みにローローはアローラ語で馬鹿を意味する言葉なのだとか。でも、グズマが見せる表情にはそんな様子は全くなかった。そこには親愛の情があるようだ。
「よぉ。来たかブラザー。野郎2人連れ歩くたぁスカしてんじゃねぇか」
「来たよおブラザー。人聞きが悪いことを言っていないで接客してー」
アローラ地方の不良軍団スカル団が根城にしていたポータウン。その町の郊外に存在するその店には看板もなければ入口もなかった。
そこにあるのは一台の厳ついフードトラック。光沢あるダークブラウンの車体をキャンバスに、スプレーによるエアロゾールアートが施されている。
“That's life!”
人生そんなもんだ!と叫ぶ白い文字とそれを打ち消す赤い×印が特徴的だ。おまけのエネコのステッカーはかわいい。刺々しい外観とは裏腹にチョコレートの甘味と珈琲の苦味をブレンドした落ち着く香りが辺りに広がる。
グリーンがそれらを物珍しげに見ている横で、レッドはミミの背中と彼女越しの店主に目を向けていた。
「これ開業祝い。おめでとう」
「こいつはどぉも」
陽光を弾くホワイトカラーの頭髪に金縁丸縁サングラス。アウトローなファッションの上には、似合わないパンケーキ色のエプロン。ミミが贈ったキングカップのちいさなはなたばは彼が飲んでいた軟水のペットボトルに飾られた。
2人に紹介するね、そう言いながら振り向く彼女に合わせて店主も目線を上げる。
「彼がグズマ。見ての通り、店長をしている不良だよ。十年来の仲ってやつになるかな、一応」
「Alola. グリーンサンにレッドサン」
「アローラ」
「……」
「アンタ等クソ有名だからなぁ。暇な島民から嫌でも話は聞かされてんぜぇ」
「口が悪くてごめんね。根はいい奴だから」
どぉだか、とグズマが自嘲気味に鼻で嗤って反論する。元スカル団ボスだったことはここでする話ではないだろう。
取り敢えずカネ落としてけ、と指を指す先のブラックボードにはネオンカラーの文字が並べられていた。
「私が出すから選んで選んでー」
「じゃ、いただきます……っと。俺はショートアイスノンシロップカフェモカ……あゴーゴーミルクあるのか。ミルクはチェンジしてくれ」
「ウチはチョコの種類も選べる」
「んー……ビタースイートで」
呪文のような注文に、一二のぽかんと頭の使い方を綺麗に忘れたミミは、我に返って再びメニューに目を通す。
いっぱい飲むねえ。
あれで1杯分さ。
等グリーンと一言二言、レベル差がある会話を晒しつつ。
「レッドくんは……?」
「……一番上のやつ」
「エネココアだな。トールのアイスでいいか」
わざわざ前者と比較してみなくても拘らないこの男の場合は選んでいるとは言い難い。サイズその他を適当に決める店主にもはいと頷いて最早選ばされているしどう見ても。
嫌いな物もなければ大食い早食いもできる人間なのでお残し等の心配はないのだが。
「んっと、私はこれ。の普通サイズのあたたかいの」
「エネココアのルビーな。……スモアもあんぞ、テメエ好きだろ」
「あっ!食べる食べる!マシュマロわあい!」
スモアは焼いたマシュマロとチョコレートを2枚のグラハムクラッカーで挟んで作る菓子のこと。アローラ地方も含まれるイッシュ語圏では、キャンプで良く作るそう。
大量購入するから負けてください!
定価払えば無料で食わせてやんよ。
な茶番と受取を終えて店主グズマはキッチンの方へ移動する。
出来上がり待ちの3人はカウンター脇のベンチに並んで座った。縦半分に切断したドラム缶を倒しただけの廃材ベンチは実にらしい。トラックの奥からはロックなミュージックが微かに聴こえてくる。
「……ミミちゃんマシュマロが好きなの?」
「うん。ふわふわしていて美味しい最強。
そうだっ!
2人の好きな料理って何?金曜日、用意できたら用意しておくねっ」
「肉……「それ材料名。料理名答えろや」……プライムリブとハンバーグ」
プライムリブとは簡単に例えるなら厚切ローストビーフだ。ハンバーグの方の説明は不要だろう。
プライム?と知らない料理をスマホで検索、出てきたレシピとミミが睨めっこを始める。
レッドは心を籠めて祈った。
料理の腕は要ではなくて肝心なのは食べられるかつまり作ってもらえるか。作って!食べさせて!祈る理由はそう、好きな料理ではあるのだが今は違う、好きな人の手料理だからに決まり切っている。
「俺は何でもいい。……つか、俺らも菓子とか持って来るぜ」
「おおう、ありがとう、よろしく」
「レッドにはケチャップも用意してやってくれ。こいつ何にでもビビるくらい掛けるから」
普通だよ、と本人が否定してくる。しかして常識力が怪しい人間が口にする普通には説得力なしとグリーンは思う。
「私も好きだよ。オムレツには沢山掛ける」
「オムレツとかハンバーグはわかるし、サラダならまだ理解できるけどな……こいつ刺身にもぶっ掛けやがるから……」
「はええ……それは凄いね……」
ミミに引いた様子はない。素直に感心していた。
「白御飯にも掛けたりするの?」
「それはしない……」
「へええ……それは違うんだ……」
彼個人に対する知的欲求、要は只の恋がそうさせているのかも知れないが、ミミはレッドの偏見まで丁寧に受け入れてくれる。
グリーンが彼女の人となりを知ってからというもの、親友にはもうこの女性しか居ないと思っている。過言ではない筈だ。
「おいローロー」
「あ、出来た?ありがとう」
奢りのドリンクとスモアを配給してミミの手元にはルビーチョコレートを使ったピンク色のエネココアと1ダースのスモアが残る。
いただきますの挨拶をきちんとした後、不良店長オススメのエネココアルビーを一口二口。ココアパウダーを使わずチョコレートから作られた香り、酸味、苦味、コク、とルビーチョコレート特有のフルーティーな味わい。アローラ地方でカロス風のエネココアを飲めるのはこの店一件のみ。
「バリスタさん呼んでくださいっ」
「五月蝿。何だよ」
「グズマあ!美味しいねっ?」
「……ケッ……訊いてんじゃねぇよ」
またまた茶番を挟みながらブレークタイム。
因みにローローはアローラ語で馬鹿を意味する言葉なのだとか。でも、グズマが見せる表情にはそんな様子は全くなかった。そこには親愛の情があるようだ。
おしまい