Gotcha!
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子供に好かれろ
「ここは異国っつー感じがしねーな」
「瓦葺屋根に漆喰壁が多いもんね」
「………………」
昼時が過ぎておやつどき。古くからの友達が店を開いたので冷やかしに行ってやるのだと言う彼女から、共に来るかと訊かれて二つ返事をしたのはレッド。難有り癖有りなそっちの旧友に付き添って暇人グリーンはウラウラじまに上陸していた。
現在地は島の玄関口、マリエシティの門の前だ。オリエンタルな雰囲気が漂う街にはジョウト建築の建物が並ぶ。
「まずはお花屋さんに寄らせてね。スマホの地図だとここだから……」
「……あっちだね」
レッドとミミが肩を並べて旅程を組んでいる。離れた位置でマリエの街並をスマホに収めていたグリーンは、麗かな雰囲気の二人もパシャリ失敬しておいた。
こういった写真は姉ナナミ宛に即日発信されており、実は、お隣さんであるレッド母にまで漏れなく届いていたりする。
いつうちに連れて来るのかしら。
まだ付き合っていないそうですよ。
等と茶会で茶請けにされていることは言うまでもない。
「グリーンくん、こっちこっち」
置いて行くよお、そう言いながらも手招きするミミの方へグリーンは足を向けた。横で口を噤んだ男の顔には、置いて行ったっていい、とか書いてあったが無視するに限る。
「いい写真は撮れた?」
「後でミミちゃんにも送るわ」
「ありがと――あっ!」
「?」「ん?どした?」
急に走り出した彼女を目で追えば、その先の橋の上では正に今、男の子が転けたところだった。
男の子が愚図るより早く、大丈夫?痛くない?と声を掛ける。すると涙は吃驚して引っ込んだようだ。ミミはダークボールからムウマージ師匠を喚びつつその子の側に膝を突く。
周りにそれらしき大人は居ないが、保護者然としたアローラぺルシアンがそこに居た。首に巻いたこだわりスカーフに保安官バッジ、シェリフスターが輝いている。
ぺルシアンは座り込む男の子の膝をクンクンと嗅ぐ。
「ん。その膝、血は出ていないけど擦り剥いているから消毒して置こうね」
「……う、うん」
鞄から救急キットそこから消毒液、手際良く準備を進めるミミの姿を男の子はぽかんと見ている。
遅れて現場に向かう連れの男2人、グリーンはレッドのボディバッグを握ってそれ以上の接近をやめるように促した。子供は6歳程だろうか、知らない大男に無表情かつ無言で見下ろされるのは怖いに違いないのだから。
「シショー“Heal Bell”お願いします。
……シショーが愚図らないでくださいよ。無詠唱も高位の魔術師っぽくてかっこいいですって、ほらほら」
結局の上下関係を見せる師弟。満更でもない様子のムウマージが“いやしのすず”を男の子に使う。傷が癒える訳ではないが痛みを鎮めるくらいの効果はあるらしくて、その間に消毒は完了した。
膝小僧には絆創膏が貼られている。
「あ、ありがとう」
「どういたしまして」
どうだと偉そうに怪我人と弟子とを見下していたムウマージは、感謝の言葉を聞き届けてから颯爽とボールへ戻って行った。
彼が立ち上がるのを待ってミミも立ち上がり、じゃあ、と立ち去ろうとしたところ。しかしぺルシアンがするするりと脛擦り。おっとっととなって去ることはできなかった。
手をパーにして服で拭っていたその子は何を思い出したのか、あ!と声を上げる。橋の欄干をグーと握って身を乗り出して、視線を落とした先には海へ繋がる川。
「もしかして……何か落とした……?」
「お金……貯めたお金が……」
「話を訊いてもいいかな?」
「……ねえちゃんにお花をプレゼントしようって思って、それでお手伝いして貯めたお金……。
あ、ねえちゃんはおれのねえちゃんのことだよ。本当のねえちゃんじゃないんだけど、みんなのねえちゃんなんだ」
男の子の名前も男の子の姉の名前もわからずじまいだったが、ともかくそういうことだそうだ。
ミミも川を覗き込む。川面は太陽の光をキラキラと乱反射している。遠眼鏡ではその光の中から硬貨の光を探すのには骨が折れそうだ。
どうしよう、と目を潤ませる子の肩を彼女はポンポンと叩いて励ます。
「ミミお姉ちゃんに任せて!」
来い来いと手招く合図でグリーンは、大型犬レッドによしを出して2人に近付いた。
声が聞こえる距離に居たため事態は把握している。人と関わるのが好きでない親友には、子供に好かれる男はポイント高いぜ、と爆弾発言せぬよう発破を掛けておく。
「ここは異国っつー感じがしねーな」
「瓦葺屋根に漆喰壁が多いもんね」
「………………」
昼時が過ぎておやつどき。古くからの友達が店を開いたので冷やかしに行ってやるのだと言う彼女から、共に来るかと訊かれて二つ返事をしたのはレッド。難有り癖有りなそっちの旧友に付き添って暇人グリーンはウラウラじまに上陸していた。
現在地は島の玄関口、マリエシティの門の前だ。オリエンタルな雰囲気が漂う街にはジョウト建築の建物が並ぶ。
「まずはお花屋さんに寄らせてね。スマホの地図だとここだから……」
「……あっちだね」
レッドとミミが肩を並べて旅程を組んでいる。離れた位置でマリエの街並をスマホに収めていたグリーンは、麗かな雰囲気の二人もパシャリ失敬しておいた。
こういった写真は姉ナナミ宛に即日発信されており、実は、お隣さんであるレッド母にまで漏れなく届いていたりする。
いつうちに連れて来るのかしら。
まだ付き合っていないそうですよ。
等と茶会で茶請けにされていることは言うまでもない。
「グリーンくん、こっちこっち」
置いて行くよお、そう言いながらも手招きするミミの方へグリーンは足を向けた。横で口を噤んだ男の顔には、置いて行ったっていい、とか書いてあったが無視するに限る。
「いい写真は撮れた?」
「後でミミちゃんにも送るわ」
「ありがと――あっ!」
「?」「ん?どした?」
急に走り出した彼女を目で追えば、その先の橋の上では正に今、男の子が転けたところだった。
男の子が愚図るより早く、大丈夫?痛くない?と声を掛ける。すると涙は吃驚して引っ込んだようだ。ミミはダークボールからムウマージ師匠を喚びつつその子の側に膝を突く。
周りにそれらしき大人は居ないが、保護者然としたアローラぺルシアンがそこに居た。首に巻いたこだわりスカーフに保安官バッジ、シェリフスターが輝いている。
ぺルシアンは座り込む男の子の膝をクンクンと嗅ぐ。
「ん。その膝、血は出ていないけど擦り剥いているから消毒して置こうね」
「……う、うん」
鞄から救急キットそこから消毒液、手際良く準備を進めるミミの姿を男の子はぽかんと見ている。
遅れて現場に向かう連れの男2人、グリーンはレッドのボディバッグを握ってそれ以上の接近をやめるように促した。子供は6歳程だろうか、知らない大男に無表情かつ無言で見下ろされるのは怖いに違いないのだから。
「シショー“Heal Bell”お願いします。
……シショーが愚図らないでくださいよ。無詠唱も高位の魔術師っぽくてかっこいいですって、ほらほら」
結局の上下関係を見せる師弟。満更でもない様子のムウマージが“いやしのすず”を男の子に使う。傷が癒える訳ではないが痛みを鎮めるくらいの効果はあるらしくて、その間に消毒は完了した。
膝小僧には絆創膏が貼られている。
「あ、ありがとう」
「どういたしまして」
どうだと偉そうに怪我人と弟子とを見下していたムウマージは、感謝の言葉を聞き届けてから颯爽とボールへ戻って行った。
彼が立ち上がるのを待ってミミも立ち上がり、じゃあ、と立ち去ろうとしたところ。しかしぺルシアンがするするりと脛擦り。おっとっととなって去ることはできなかった。
手をパーにして服で拭っていたその子は何を思い出したのか、あ!と声を上げる。橋の欄干をグーと握って身を乗り出して、視線を落とした先には海へ繋がる川。
「もしかして……何か落とした……?」
「お金……貯めたお金が……」
「話を訊いてもいいかな?」
「……ねえちゃんにお花をプレゼントしようって思って、それでお手伝いして貯めたお金……。
あ、ねえちゃんはおれのねえちゃんのことだよ。本当のねえちゃんじゃないんだけど、みんなのねえちゃんなんだ」
男の子の名前も男の子の姉の名前もわからずじまいだったが、ともかくそういうことだそうだ。
ミミも川を覗き込む。川面は太陽の光をキラキラと乱反射している。遠眼鏡ではその光の中から硬貨の光を探すのには骨が折れそうだ。
どうしよう、と目を潤ませる子の肩を彼女はポンポンと叩いて励ます。
「ミミお姉ちゃんに任せて!」
来い来いと手招く合図でグリーンは、大型犬レッドによしを出して2人に近付いた。
声が聞こえる距離に居たため事態は把握している。人と関わるのが好きでない親友には、子供に好かれる男はポイント高いぜ、と爆弾発言せぬよう発破を掛けておく。
おしまい