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レッドに探される②
「彼女の名前は何ですか?」
「……ミミちゃんです……」
2人と1匹がいる憩いのスペースはもはや取調室の様相を呈していた。
机に肘を突く警察官役グリーンは、片方の手に顎を乗せもう片方に持つスマホへ回答を記録する。俯き気味の被疑者役レッドは両の手を膝の上に置いている。
照明係ピカチュウは“フラッシュ”で場の雰囲気作り。その雰囲気で敬語。
「ではミミさんと写真を撮るまでの経緯を教えてください」
「シロガネやまで会って……それで……。
一緒に……。
えっと……。
……。
かくかくしかじか」
「おいこら初端から面倒臭がんな」
お“いかり”モードの照明にビリリッと電気が走った。
しかし反対に想定内だったグリーンの溜息は軽く、注意もそこそこに役に戻り話を前に進める。
「では次の質問に答えてください」
「はい……」
「出身地は聞きましたか?」
「覚えてないです……」
「会ったのはシロガネやまで間違いありませんね?」
「はい……」
「どこから来たか聞きましたか?」
「覚えてないです……」
「別れたのもシロガネやまで間違いありませんね?」
「はい……」
「どこへ行くか聞きましたか?」
「覚えてないです……」
「……」
「……」
「………………」
「………………?」
昔の出来事とはいえど、その昔から他人はおろか自分自身にさえ関心がない人間だったとはいえど、少しも覚えていないとは何事かとグリーンが問えば。
弁明を試みるレッドの話を要約するに、彼女の方からいろいろと話してくれたようなのだが、レッドの頭の中は、かわいい、って4文字の単語1つだけでいっぱいいっぱいだったらしい。
「もう好きだったんかいっ!」
バンッ!とツッコミを入れられた机の音には誰も怯みはしなかった。
当時を思い起こしてレッドは口元を弛めている。口数こそ乏しいものの表情は豊かだ。
「ごはんを食べるところとか……」
「ハイハイ……」
「眠るところとか……」
「ハイハイ……」
グリーンが改めて見直した写真の中の少女は彼の範囲ではなくて、印象は良くも悪くも普通の子。隣に映る少年と同じ歳月を経て彼女も大人になっているだろうが、女は化けると聞くからその容姿は想像し難い。
ただ、半袖等ではなくてモコモコの登山用防寒着で着膨れしている姿には安心感を覚えた。いや少年の格好の方がおかしいことは知っている。
「すまん聞き流した。
ん?どゆこと?食べる?眠る?一緒に?彼女遭難者か何か?」
「1週間くらいかな。僕の修行相手をしてくれた」
「女子と雪山の2つの単語から野宿は連想できねーよ!」
目の前の超人と雪山と野宿は論外として。レッドのボーイミーツガールは数分数時間の話で1日もしない話だとグリーンは思い込んでいた。だってこのレッドだし。
「何だよ1週間も二人きりかよつか1週間も戦闘馬鹿に付き合えるとか何者なんだよ……っ」
戦闘馬鹿のライバルはやるせなさが滲む手をグーにして静かに机に押し付けた。
ポケモン達も居たよ、とずれた発言は無理矢理無視。相手が相手であるが故に無意味なツッコミやら気分を落ち着けるため、グリーンは煙草を取り出し咥える。余談だがこの煙草は人にもポケモンにも優しい最新型煙草だ。
「ふー……」
主人より記憶力はあるであろうピカチュウを見て、ポケモンと喋れたらいいのにな、と心の中で思う。
その視線に反応したピカチュウが首を傾げたのでグリーンは首を振って考えを振り切った。
「ま、シロガネやまならじーさんの管轄だし、登山届を調べれば出身地は特定できるだろうぜ」
「グリーン天才」
「そう言いたいなら棒読やめろやー」
棒読に棒読を返して、じゃ早速、とグリーンが電話をかけ始め、一人のレッドは成り行きを大人しく見守るしかない。
ピカチュウが隣へ戻りその青年の肩を叩く。自然ときつく握られていた拳はほどかれた。
レッドと違って普段から良く実家に帰っているグリーンとオーキド博士の会話はすぐに本題に入っている。赤飯はまだいいから、等と誰かさんにはわからない話題もしているようだが。
「――サンキュ。おー。また」
通話の終了を確認し、それはそれは忠犬の如くすわれまて状態だった彼は背筋をピンと伸ばす。傍らの電気ネズミも耳をピッと立てる。
「レッド、出身地はわかった」
とても良い知らせだ。
しかし、それを知らせてくれた友は眉根を寄せて何か思案しているようだった。
レッドの眉尻が下がる。そしてピカチュウの耳も萎れる。
「グレンタウンだ」
「……グレン……タウン……」
彼女に繋がる手掛かりを復唱。
「そこって火山が噴火したんじゃ」
「流石に知ってたか……」
情報に疎い放浪者は旅の途中でその現状を目にしていた。
幸いにも死傷者は出ていないと報道されていたが、グレンタウンは町としての機能を失い、住民は皆グレンじまを出ているのだ。
捜索がふりだしに戻った。レッドとピカチュウは、ベトり、ベタり、と揃って机に倒れ込んだ。
「些細なことでもいいから覚えてることはねーの?」
「……バトルのことなら……。
ミミちゃんの手持ちはミュウツー1匹で確かニーニってニックネームだったと思う。覚えている技が多いけど指示を出す時の癖があってそれもかわいいんだけど攻めか守りかの予測は簡単だから――」
ポケモンバトル大好き男はつらつらと話し始める。
そこは詳細に覚えているんだな、と少々呆れながらグリーンは2本目の煙草を用意し――
「――あと僕が知らない技もいくつか使ってきて多分特殊技だと思うんだけど初手に“ガンバリーヨ”とか――」
「それホウエンの方言じゃん!」
開いた口から煙草が落ちた。
「彼女の名前は何ですか?」
「……ミミちゃんです……」
2人と1匹がいる憩いのスペースはもはや取調室の様相を呈していた。
机に肘を突く警察官役グリーンは、片方の手に顎を乗せもう片方に持つスマホへ回答を記録する。俯き気味の被疑者役レッドは両の手を膝の上に置いている。
照明係ピカチュウは“フラッシュ”で場の雰囲気作り。その雰囲気で敬語。
「ではミミさんと写真を撮るまでの経緯を教えてください」
「シロガネやまで会って……それで……。
一緒に……。
えっと……。
……。
かくかくしかじか」
「おいこら初端から面倒臭がんな」
お“いかり”モードの照明にビリリッと電気が走った。
しかし反対に想定内だったグリーンの溜息は軽く、注意もそこそこに役に戻り話を前に進める。
「では次の質問に答えてください」
「はい……」
「出身地は聞きましたか?」
「覚えてないです……」
「会ったのはシロガネやまで間違いありませんね?」
「はい……」
「どこから来たか聞きましたか?」
「覚えてないです……」
「別れたのもシロガネやまで間違いありませんね?」
「はい……」
「どこへ行くか聞きましたか?」
「覚えてないです……」
「……」
「……」
「………………」
「………………?」
昔の出来事とはいえど、その昔から他人はおろか自分自身にさえ関心がない人間だったとはいえど、少しも覚えていないとは何事かとグリーンが問えば。
弁明を試みるレッドの話を要約するに、彼女の方からいろいろと話してくれたようなのだが、レッドの頭の中は、かわいい、って4文字の単語1つだけでいっぱいいっぱいだったらしい。
「もう好きだったんかいっ!」
バンッ!とツッコミを入れられた机の音には誰も怯みはしなかった。
当時を思い起こしてレッドは口元を弛めている。口数こそ乏しいものの表情は豊かだ。
「ごはんを食べるところとか……」
「ハイハイ……」
「眠るところとか……」
「ハイハイ……」
グリーンが改めて見直した写真の中の少女は彼の範囲ではなくて、印象は良くも悪くも普通の子。隣に映る少年と同じ歳月を経て彼女も大人になっているだろうが、女は化けると聞くからその容姿は想像し難い。
ただ、半袖等ではなくてモコモコの登山用防寒着で着膨れしている姿には安心感を覚えた。いや少年の格好の方がおかしいことは知っている。
「すまん聞き流した。
ん?どゆこと?食べる?眠る?一緒に?彼女遭難者か何か?」
「1週間くらいかな。僕の修行相手をしてくれた」
「女子と雪山の2つの単語から野宿は連想できねーよ!」
目の前の超人と雪山と野宿は論外として。レッドのボーイミーツガールは数分数時間の話で1日もしない話だとグリーンは思い込んでいた。だってこのレッドだし。
「何だよ1週間も二人きりかよつか1週間も戦闘馬鹿に付き合えるとか何者なんだよ……っ」
戦闘馬鹿のライバルはやるせなさが滲む手をグーにして静かに机に押し付けた。
ポケモン達も居たよ、とずれた発言は無理矢理無視。相手が相手であるが故に無意味なツッコミやら気分を落ち着けるため、グリーンは煙草を取り出し咥える。余談だがこの煙草は人にもポケモンにも優しい最新型煙草だ。
「ふー……」
主人より記憶力はあるであろうピカチュウを見て、ポケモンと喋れたらいいのにな、と心の中で思う。
その視線に反応したピカチュウが首を傾げたのでグリーンは首を振って考えを振り切った。
「ま、シロガネやまならじーさんの管轄だし、登山届を調べれば出身地は特定できるだろうぜ」
「グリーン天才」
「そう言いたいなら棒読やめろやー」
棒読に棒読を返して、じゃ早速、とグリーンが電話をかけ始め、一人のレッドは成り行きを大人しく見守るしかない。
ピカチュウが隣へ戻りその青年の肩を叩く。自然ときつく握られていた拳はほどかれた。
レッドと違って普段から良く実家に帰っているグリーンとオーキド博士の会話はすぐに本題に入っている。赤飯はまだいいから、等と誰かさんにはわからない話題もしているようだが。
「――サンキュ。おー。また」
通話の終了を確認し、それはそれは忠犬の如くすわれまて状態だった彼は背筋をピンと伸ばす。傍らの電気ネズミも耳をピッと立てる。
「レッド、出身地はわかった」
とても良い知らせだ。
しかし、それを知らせてくれた友は眉根を寄せて何か思案しているようだった。
レッドの眉尻が下がる。そしてピカチュウの耳も萎れる。
「グレンタウンだ」
「……グレン……タウン……」
彼女に繋がる手掛かりを復唱。
「そこって火山が噴火したんじゃ」
「流石に知ってたか……」
情報に疎い放浪者は旅の途中でその現状を目にしていた。
幸いにも死傷者は出ていないと報道されていたが、グレンタウンは町としての機能を失い、住民は皆グレンじまを出ているのだ。
捜索がふりだしに戻った。レッドとピカチュウは、ベトり、ベタり、と揃って机に倒れ込んだ。
「些細なことでもいいから覚えてることはねーの?」
「……バトルのことなら……。
ミミちゃんの手持ちはミュウツー1匹で確かニーニってニックネームだったと思う。覚えている技が多いけど指示を出す時の癖があってそれもかわいいんだけど攻めか守りかの予測は簡単だから――」
ポケモンバトル大好き男はつらつらと話し始める。
そこは詳細に覚えているんだな、と少々呆れながらグリーンは2本目の煙草を用意し――
「――あと僕が知らない技もいくつか使ってきて多分特殊技だと思うんだけど初手に“ガンバリーヨ”とか――」
「それホウエンの方言じゃん!」
開いた口から煙草が落ちた。
おしまい