Gotcha!
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Nに追われる
「やぁ20,000と64時間06分09秒振りだね」
「………………」
「んん……そ……そうなんですかあ……と、とりあえずお久しぶりです」
藪から棒に現れた黒い帽子の青年はミミ曰くNなる人物。若緑色の長髪のその美男子は両手をスラッと広げ早足で距離を詰めて来た。
握手なり抱擁なり手が出そうな気配を醸しつつそうならなかったのは、ミミが壁を作っていることを知っているからだ。
初めにゾロアークが化けていたわるぎつねポケモン、ゾロアが彼の横をせかせか慌てて急いで付いて来た。
「ボクのトモダチがまたちょっかいを出したようだもう恒例だね」
ゾロアークを返さなければならないため引くに引けない彼女の正面に陣取り、懐かしいな、変わらないな、と隙も与えず話し始めるN。
光を射返さない暗い双眸は彼女の真横、赤い帽子の青年が見えていないと見える。
「怪我はしていないかい良かった」
「……ポケモン達をモンスターボールに入れないのはいいけれども、迷惑を掛けるのは良くないですよお?」
ゾロアークは同じくNのポケモンであるゾロアに叱られて反省したようだった。ピラミッドの上に居るのは進化前の方らしい。
灰を被ったような紅のたてがみを鷲掴んでいたレッド、彼が五本の爪を引っ込めてやったなら、逃がされたポケモンは後ろ髪を引かれる思いで主君の下へ帰って行った。
「ゴメンねぴぃカレにも悪気は無いんだ赦して欲しい――」
「「?」」
「――ボクらの全身から溢れるぴぃへのラブ見せ付けたいんだよ」
Nが早口に話し掛けているのは正面のミミだと思われるが、何か違う何かがおかしい。彼女の名前が別の名前に置き換えられている。
「ぴぃ……?」
「……ベイビィポケモンのピィ……?」
言われた側が困惑しているのは2人の間で交わされるニックネームの類でもないからだ。
そも、Nと親しくない。
そもそも、Nと親しくしたくない。
ミミはレッドの顔を見る。レッドもそれに合わせてあげた。
「流れ的には私の事を指しているっぽいね」
「……ミミちゃんはピィよりミュウとかミュウツーっぽいと思う……」
割とどうでもいい返答をしている彼だが、自分と彼女とポケモンの関係にしか興味のない男なので、他人と彼女の関係について詮索できないのは仕方がないことだろう。
そしてNはNで赤の他人に耳を貸すつもりがなく男の存在をナチュラルにスルーし自己の話を開始する。
「巷ではこう呼び合うらしいじゃあないか――」
一見して綺麗な笑顔。怪しく歪んだ薄い唇からは、かなり一方的な説明がされる。
「――コイビトの事を」
爆弾が投下された。
「………………」
「………………」
暫しの時間停止。
「はああっ!?」
ミミの憤慨。止められた時間は次の瞬間には爆発するかの如く炎と風を持って動き出す。
「いいえ!あなたと私はコイビトはおろかトモダチでもありませんのでそう呼ばないでもらいたいですッ!
レッドくんっ!
あいつ只の病気だから、誤解しないでね!」
「ボクの事はNぴでいいからね」
「だから呼ばないってばあ!人の話を聞かないなあ!もおっ!」
人差指をビッシと突き出したミミの怒れる目を見レッドは何も言わずに頷いた。元より無関係な男の妄言は解するに値しなかったのだ。
心に乱れはない。
目下ミミの恋人を目指す彼は冷静に物事を処理しようとする。
いつもの癖で帽子のつばを持つ手の反対はベルトの方モンスターボールへ伸びている。
彼の相棒は冷静かつ冷淡な判断で既にこの場から逃げ出していた。厄介は御免こうむりたいと。
「ひええ!待って待って今のレッドくんじゃレッドくんの方が警察さんに逮捕されちゃうよお!」
私の為に争わないでなんて、ドラマのヒロインが使う酔った台詞をこうも必死に使えることなんてそうそうないのではないだろうか。
ミミの腕力では右と左を合計してもレッドの腕1本にも敵わない。
「……大丈夫……うまくやる……」
「やらないの!ステイ!ステイ!」
「――ッ!」
形振り構っていられず鬼気迫るその背中を抱き締めたら、あれで何とかなってそれで柔能く剛を制すことができた。
目の前でどたばたしていても彼女がその人物の後ろに居てもNは男の事等お構いなし。彼は只単に好きな人と語らいたいだけ。視線はレッドの姿を透過してミミへ送られる。
彼女の災難はまだまだこれからだ。
「やぁ20,000と64時間06分09秒振りだね」
「………………」
「んん……そ……そうなんですかあ……と、とりあえずお久しぶりです」
藪から棒に現れた黒い帽子の青年はミミ曰くNなる人物。若緑色の長髪のその美男子は両手をスラッと広げ早足で距離を詰めて来た。
握手なり抱擁なり手が出そうな気配を醸しつつそうならなかったのは、ミミが壁を作っていることを知っているからだ。
初めにゾロアークが化けていたわるぎつねポケモン、ゾロアが彼の横をせかせか慌てて急いで付いて来た。
「ボクのトモダチがまたちょっかいを出したようだもう恒例だね」
ゾロアークを返さなければならないため引くに引けない彼女の正面に陣取り、懐かしいな、変わらないな、と隙も与えず話し始めるN。
光を射返さない暗い双眸は彼女の真横、赤い帽子の青年が見えていないと見える。
「怪我はしていないかい良かった」
「……ポケモン達をモンスターボールに入れないのはいいけれども、迷惑を掛けるのは良くないですよお?」
ゾロアークは同じくNのポケモンであるゾロアに叱られて反省したようだった。ピラミッドの上に居るのは進化前の方らしい。
灰を被ったような紅のたてがみを鷲掴んでいたレッド、彼が五本の爪を引っ込めてやったなら、逃がされたポケモンは後ろ髪を引かれる思いで主君の下へ帰って行った。
「ゴメンねぴぃカレにも悪気は無いんだ赦して欲しい――」
「「?」」
「――ボクらの全身から溢れるぴぃへのラブ見せ付けたいんだよ」
Nが早口に話し掛けているのは正面のミミだと思われるが、何か違う何かがおかしい。彼女の名前が別の名前に置き換えられている。
「ぴぃ……?」
「……ベイビィポケモンのピィ……?」
言われた側が困惑しているのは2人の間で交わされるニックネームの類でもないからだ。
そも、Nと親しくない。
そもそも、Nと親しくしたくない。
ミミはレッドの顔を見る。レッドもそれに合わせてあげた。
「流れ的には私の事を指しているっぽいね」
「……ミミちゃんはピィよりミュウとかミュウツーっぽいと思う……」
割とどうでもいい返答をしている彼だが、自分と彼女とポケモンの関係にしか興味のない男なので、他人と彼女の関係について詮索できないのは仕方がないことだろう。
そしてNはNで赤の他人に耳を貸すつもりがなく男の存在をナチュラルにスルーし自己の話を開始する。
「巷ではこう呼び合うらしいじゃあないか――」
一見して綺麗な笑顔。怪しく歪んだ薄い唇からは、かなり一方的な説明がされる。
「――コイビトの事を」
爆弾が投下された。
「………………」
「………………」
暫しの時間停止。
「はああっ!?」
ミミの憤慨。止められた時間は次の瞬間には爆発するかの如く炎と風を持って動き出す。
「いいえ!あなたと私はコイビトはおろかトモダチでもありませんのでそう呼ばないでもらいたいですッ!
レッドくんっ!
あいつ只の病気だから、誤解しないでね!」
「ボクの事はNぴでいいからね」
「だから呼ばないってばあ!人の話を聞かないなあ!もおっ!」
人差指をビッシと突き出したミミの怒れる目を見レッドは何も言わずに頷いた。元より無関係な男の妄言は解するに値しなかったのだ。
心に乱れはない。
目下ミミの恋人を目指す彼は冷静に物事を処理しようとする。
いつもの癖で帽子のつばを持つ手の反対はベルトの方モンスターボールへ伸びている。
彼の相棒は冷静かつ冷淡な判断で既にこの場から逃げ出していた。厄介は御免こうむりたいと。
「ひええ!待って待って今のレッドくんじゃレッドくんの方が警察さんに逮捕されちゃうよお!」
私の為に争わないでなんて、ドラマのヒロインが使う酔った台詞をこうも必死に使えることなんてそうそうないのではないだろうか。
ミミの腕力では右と左を合計してもレッドの腕1本にも敵わない。
「……大丈夫……うまくやる……」
「やらないの!ステイ!ステイ!」
「――ッ!」
形振り構っていられず鬼気迫るその背中を抱き締めたら、あれで何とかなってそれで柔能く剛を制すことができた。
目の前でどたばたしていても彼女がその人物の後ろに居てもNは男の事等お構いなし。彼は只単に好きな人と語らいたいだけ。視線はレッドの姿を透過してミミへ送られる。
彼女の災難はまだまだこれからだ。
おしまい