Gotcha!
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Zに追われる
「ミミちゃん!おかえり……!」
「レッドくんっ!ただいまっ!」
路地裏を抜けた先の目映い光の中に彼女は居た。太陽に負けず朗らかに笑うミミに駆け寄れば、鈴の音に良く気付いたね、と褒められる。
本物の彼女が居る。扱い方に自信がない癖に触れたくて仕方がない手をポケットの中に突っ込んだ。
「再会のぎゅうは、なし?」
「……そ、それはっ……っ………………っ」
あの時にされたこと、立場が逆なのだから考えはしていたことだ。
思わずババッと左右を見回すレッドしかしそこのクリアリングができたところで正面に顔を戻してしまうと恥ずかしがり屋に逆戻り。彼は手を出せないし彼の手は出ない。
先輩からのアドバイスは頭にあるが実行するのは難しかった。
塩試合を延々続けてれば飽きられるぞ。
たらりと流れる一筋の汗もそのままに、またしても小悪魔天使な彼女に懐の中身を盗まれていくのみ。
「じゃあアローラ定番の、レイと、ちゅうでいいよ。
レイは首に掛けるアクセサリーね。はなつみポケモンのキュワワーの方がレッドくんには伝わるかな」
ミミが人差指で自分の胸元に半円を描く。
一つ目も完遂せぬ内に、より難易度の高いミッションを与えられた男がどう答えるか。ようやっとレッドに追い付いたピカチュウはピョッコと肩まで登ってその木偶の坊の出方を警戒する。二人の会話なら自慢の耳で聴いていた。
「それはされてな――」
はいアウト。臨時試験監督が受験者の口を自慢の尻尾でバツッと塞ぐ。
この話はされたされていないの問題ではなくてするしないの問題なのだバカモン。わかるか?わからないか。わかれ。
「それもそうだねえ。
ピカチュウ、協力してくれる?」
ピ?と鳴いた後、ピ!と鳴き直す。共謀者は近年稀に見ぬやる気を見せつつ即座に実行。主人の肩を足蹴に主人の頭へ跳躍を決めた。
「ッ……!」
標準体重6.0kgより0.6kg軽いだけの重りで前のめり。ついでに帽子が前へずれてその所為で目の前が真っ暗になる。相棒へ抗議の声を上げようとしたレッドは、次の出来事に身体を固くした。
傾いだ首の両側から手が回されて腕が掛けられる。その腕が誰の腕か等は一目不可能だが瞭然だ。
そして、右頬に、弾力ある柔らかい感触。グミのような潤いを伴うそれは、唇だ。キス、されたのだ。
「………………」
目を見開いても真っ暗だった視界は帽子と一緒に滑り落ちたピカチュウによって開かれた。
想い人が目と鼻の先に居る。左頬も差し出して?だなんて無邪気に誘うその赤い唇はリンゴの味がしそうで。でもフリーズした脳内回路では何も処理できず声に誘導されて左側にもキスを貰う。
今この時の自分が幸福であるという感覚だけは確実に存在している。
「………………」
次はレッドくんの番だからね、そう言って離れる彼女の手首を反射的に掴まえてしまって彼は我に返った。焦る焦る。だがもう離せない。
バトンタッチして役割を終えたピカチュウは甲斐性なしの帽子を拾って自分の頭に被せた。見ていないからほらほらと言いたいらしい。
「次って……いつ……?今、なの?」
「レッドくんの好きな時で」
ミュウツーは預けて来たのだろうか不在の様子。グリーンの邪魔もないだろう。
きゅうっと力が入りそうになった手を慌てて離して再び前へ伸ばす、と、その時、レッドとピカチュウが通って来た路地裏を、一陣の黒き風が吹き抜ける!
「――!」
「――わわっ!?」
ミミを狙って地を這うように飛来する風の塊、レッドは咄嗟にミミを掻き抱き、寸でのところでそれを回避させる。阿吽の呼吸でレッドの相棒も守りの体勢に入った。帽子のつばを小さな指先で持ち上げ相手を見据えている。
「ごめん。君しか見えてなかった」
「ふえ……こ、こちらこそ……っ」
ぎゅうっと強まる力は僕が守るからと暗に告げる。
脇を擦り抜けた黒い風はゾロアの姿をしていたが肌で感じる空気伝いの質量に一人と一匹は違和感を感じていた。
「げえ……あいつは……」
後ろを見て相手を目視確認したミミは何も見えなかったことにしたくてレッドに縋り付く。
“どろぼう”をし損ねたそのポケモンがレッドの所有物を見詰めながら口をあぐあぐと開閉させた。口にしたのは愛情表現と再会の喜び。
戦意の欠片も見えない相手の行動に歴戦のトレーナーとポケモンは毒気を抜かれて、行き場を失った視線を彼女へ預ける。
「……。ミミちゃん、知り合い?」
「N……のゾロアーク……」
ばけぎつねポケモンのゾロアークは特性イリュージョンを解除、正体を現した。
ミミはこれから起こり得ることを予見しかけて見ないふりをした。
「ミミちゃん!おかえり……!」
「レッドくんっ!ただいまっ!」
路地裏を抜けた先の目映い光の中に彼女は居た。太陽に負けず朗らかに笑うミミに駆け寄れば、鈴の音に良く気付いたね、と褒められる。
本物の彼女が居る。扱い方に自信がない癖に触れたくて仕方がない手をポケットの中に突っ込んだ。
「再会のぎゅうは、なし?」
「……そ、それはっ……っ………………っ」
あの時にされたこと、立場が逆なのだから考えはしていたことだ。
思わずババッと左右を見回すレッドしかしそこのクリアリングができたところで正面に顔を戻してしまうと恥ずかしがり屋に逆戻り。彼は手を出せないし彼の手は出ない。
先輩からのアドバイスは頭にあるが実行するのは難しかった。
塩試合を延々続けてれば飽きられるぞ。
たらりと流れる一筋の汗もそのままに、またしても小悪魔天使な彼女に懐の中身を盗まれていくのみ。
「じゃあアローラ定番の、レイと、ちゅうでいいよ。
レイは首に掛けるアクセサリーね。はなつみポケモンのキュワワーの方がレッドくんには伝わるかな」
ミミが人差指で自分の胸元に半円を描く。
一つ目も完遂せぬ内に、より難易度の高いミッションを与えられた男がどう答えるか。ようやっとレッドに追い付いたピカチュウはピョッコと肩まで登ってその木偶の坊の出方を警戒する。二人の会話なら自慢の耳で聴いていた。
「それはされてな――」
はいアウト。臨時試験監督が受験者の口を自慢の尻尾でバツッと塞ぐ。
この話はされたされていないの問題ではなくてするしないの問題なのだバカモン。わかるか?わからないか。わかれ。
「それもそうだねえ。
ピカチュウ、協力してくれる?」
ピ?と鳴いた後、ピ!と鳴き直す。共謀者は近年稀に見ぬやる気を見せつつ即座に実行。主人の肩を足蹴に主人の頭へ跳躍を決めた。
「ッ……!」
標準体重6.0kgより0.6kg軽いだけの重りで前のめり。ついでに帽子が前へずれてその所為で目の前が真っ暗になる。相棒へ抗議の声を上げようとしたレッドは、次の出来事に身体を固くした。
傾いだ首の両側から手が回されて腕が掛けられる。その腕が誰の腕か等は一目不可能だが瞭然だ。
そして、右頬に、弾力ある柔らかい感触。グミのような潤いを伴うそれは、唇だ。キス、されたのだ。
「………………」
目を見開いても真っ暗だった視界は帽子と一緒に滑り落ちたピカチュウによって開かれた。
想い人が目と鼻の先に居る。左頬も差し出して?だなんて無邪気に誘うその赤い唇はリンゴの味がしそうで。でもフリーズした脳内回路では何も処理できず声に誘導されて左側にもキスを貰う。
今この時の自分が幸福であるという感覚だけは確実に存在している。
「………………」
次はレッドくんの番だからね、そう言って離れる彼女の手首を反射的に掴まえてしまって彼は我に返った。焦る焦る。だがもう離せない。
バトンタッチして役割を終えたピカチュウは甲斐性なしの帽子を拾って自分の頭に被せた。見ていないからほらほらと言いたいらしい。
「次って……いつ……?今、なの?」
「レッドくんの好きな時で」
ミュウツーは預けて来たのだろうか不在の様子。グリーンの邪魔もないだろう。
きゅうっと力が入りそうになった手を慌てて離して再び前へ伸ばす、と、その時、レッドとピカチュウが通って来た路地裏を、一陣の黒き風が吹き抜ける!
「――!」
「――わわっ!?」
ミミを狙って地を這うように飛来する風の塊、レッドは咄嗟にミミを掻き抱き、寸でのところでそれを回避させる。阿吽の呼吸でレッドの相棒も守りの体勢に入った。帽子のつばを小さな指先で持ち上げ相手を見据えている。
「ごめん。君しか見えてなかった」
「ふえ……こ、こちらこそ……っ」
ぎゅうっと強まる力は僕が守るからと暗に告げる。
脇を擦り抜けた黒い風はゾロアの姿をしていたが肌で感じる空気伝いの質量に一人と一匹は違和感を感じていた。
「げえ……あいつは……」
後ろを見て相手を目視確認したミミは何も見えなかったことにしたくてレッドに縋り付く。
“どろぼう”をし損ねたそのポケモンがレッドの所有物を見詰めながら口をあぐあぐと開閉させた。口にしたのは愛情表現と再会の喜び。
戦意の欠片も見えない相手の行動に歴戦のトレーナーとポケモンは毒気を抜かれて、行き場を失った視線を彼女へ預ける。
「……。ミミちゃん、知り合い?」
「N……のゾロアーク……」
ばけぎつねポケモンのゾロアークは特性イリュージョンを解除、正体を現した。
ミミはこれから起こり得ることを予見しかけて見ないふりをした。
おしまい