Gotcha!
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レッドとゆめしま
「ん……ピカチュウ………………?」
夢の入口に居たレッドは体に感じた重みに意識を浮上させられた。体の上にあるのはホテルの羽毛布団とは別の温かさ。
彼は重い瞼を抉じ開けて、のろのろと布団の中の腕を持ち上げる。幸い金縛りにはなっていないらしい。
「………………」
寝惚眼で見るとどうだ、自分の腹の上に頭を乗せているのがあの子だと確認できる。ついでに、眠りかけの感覚をよくよく働かせると自分の腰にその子の腕が回されていることも知覚できる。
「………………」
無言。自分が驚いているのかさえも今の彼には把握できなかった。
そおっと布団を戻してそのふちを腕で封印するレッド。瞼を閉じる。更に瞼を手で押さえる。尊顔が見えずとも見間違える筈がない。
「………………」
これが夢だと結論付けるまでに差程時間は要さなかった。
この人物が人間である以上侵入経路に成り得るのは扉か窓。この寝室に限らず隣の寝室この客室のそれらが開けられたその時点で気付ける自信が彼にはあったからだ。野宿の賜物と呼ぶべきか野生化している感覚器は姿を隠しているゴーストタイプのポケモンすら察知する。
「……ミミちゃん……?」
もう一度、布団の端を持ち上げる。エアコンからの冷風がするりと中へ入って行く。
少し掠れた声で名前を呼べば彼女は目を擦ってレッドの方を向いた。
お邪魔しています。とむにゃむにゃ挨拶。夢を叶えに来ました。と来訪の理由と思しき文字列を続ける。
「………………」
男は寝る直前の記憶を思い出した。どう告白したものかとあれこれ策を練っている内に会いたくなって、夢でもいいから出て来てください、と幼稚に願ったことを。
これは明晰夢?
自覚している夢はコントロールすることができる。誰しも一度は経験があるだろう。
「……んー……特別だからね……?」
ミミはそう前置きをしてから体を起こして四つん這い。軋む音のないベッドの上をよじよじ這い上がる。微かに赤くした頬は薄暗闇に紛れて相手に気付かれていない。
彼女が寝間着にしているのは黒色の大きめのTシャツで、その首元から覗ける白い谷間は絶景だった。
「………………」
彼の顔に前足が届くところまで来るとミミはその首に腕を回してぱふと倒れ込む。ベッドが沈む。
これは明晰夢だと確信するレッド。
レッドはまさしく夢のような出来事にドキドキしつつ、彼女の背に両の掌を添えた。あくまで添えただけ。夢なのにだがしかし夢でもここで女を抱けないのは未経験故か。
「レッドくん……」
「………………」
耳にかかる甘い吐息に体が騒めく。
ピカチュウが顔の横に居るのだろうか。惚けたままの頭脳では現実との違い探しも難航する。
「くださいな……」
「………………」
何をかは加えられた腕の力が示してくれていた。大丈夫、コントロールはできているのだから拒まれることはない、筈。
念じる男は彼女の服をぐっと握って腹を括る。なだらかな背中をなぞるよう手を動かして、そして、遂に、ミミの体をぎゅっと抱き締めた。
「……ん、ありがとう……」
「……こ、こちらこそ……」
柔らかい。心地好い。
吸って吐いてと深呼吸をすれば鼻腔を湯上がりの香りがくすぐる。
レッドは自分ではない自分のことを尊敬した。夢の方のレッドではないレッドはきっと、この子に告白してここまでの関係を作ったに違いないのだ。
「……ミミちゃん……」
「んー……?」
臆病な性格が戻らぬ内にとここぞとばかりに頬を寄せて甘える。
「僕は何て言って告白したの……?」
訊かれたミミは、ん、と眠そうに喉を鳴らした後、何も、と答えた。
「そっか………………」
残念だがそれはこちら側のレッドが頑張って考えるしかなさそう。好意を伝える手段は言葉以外にない等と考えているが、何も言われていないのなら、何でもありな夢の世界には言葉以外があるのかも知れない。
男はその両手に託して気持ち強めに抱き締めてみた。ん、とにこやかな声と共に倍返しされる。
幸福感に包まれる。
「………………」
レッドは自分ではない自分のことを羨望する。夢の方のレッドではない彼はもしかしたらもしかして童貞を卒業しているのではないか。
「……ミミちゃん……」
「んー……?」
おかしな話だが瞳を閉じればこの夢から覚めてしまう気がして、レッドはまどろみの中で他愛のない会話を続けていく。
ベッドの隅っこでまるくなっていたレッドのピカチュウは無音で伸びと“あくび”を一つずつ。抜き足差し足忍び足で自分のモンスターボールに待避した。2人にはサムズアップを送るのを忘れずに。
「ん……ピカチュウ………………?」
夢の入口に居たレッドは体に感じた重みに意識を浮上させられた。体の上にあるのはホテルの羽毛布団とは別の温かさ。
彼は重い瞼を抉じ開けて、のろのろと布団の中の腕を持ち上げる。幸い金縛りにはなっていないらしい。
「………………」
寝惚眼で見るとどうだ、自分の腹の上に頭を乗せているのがあの子だと確認できる。ついでに、眠りかけの感覚をよくよく働かせると自分の腰にその子の腕が回されていることも知覚できる。
「………………」
無言。自分が驚いているのかさえも今の彼には把握できなかった。
そおっと布団を戻してそのふちを腕で封印するレッド。瞼を閉じる。更に瞼を手で押さえる。尊顔が見えずとも見間違える筈がない。
「………………」
これが夢だと結論付けるまでに差程時間は要さなかった。
この人物が人間である以上侵入経路に成り得るのは扉か窓。この寝室に限らず隣の寝室この客室のそれらが開けられたその時点で気付ける自信が彼にはあったからだ。野宿の賜物と呼ぶべきか野生化している感覚器は姿を隠しているゴーストタイプのポケモンすら察知する。
「……ミミちゃん……?」
もう一度、布団の端を持ち上げる。エアコンからの冷風がするりと中へ入って行く。
少し掠れた声で名前を呼べば彼女は目を擦ってレッドの方を向いた。
お邪魔しています。とむにゃむにゃ挨拶。夢を叶えに来ました。と来訪の理由と思しき文字列を続ける。
「………………」
男は寝る直前の記憶を思い出した。どう告白したものかとあれこれ策を練っている内に会いたくなって、夢でもいいから出て来てください、と幼稚に願ったことを。
これは明晰夢?
自覚している夢はコントロールすることができる。誰しも一度は経験があるだろう。
「……んー……特別だからね……?」
ミミはそう前置きをしてから体を起こして四つん這い。軋む音のないベッドの上をよじよじ這い上がる。微かに赤くした頬は薄暗闇に紛れて相手に気付かれていない。
彼女が寝間着にしているのは黒色の大きめのTシャツで、その首元から覗ける白い谷間は絶景だった。
「………………」
彼の顔に前足が届くところまで来るとミミはその首に腕を回してぱふと倒れ込む。ベッドが沈む。
これは明晰夢だと確信するレッド。
レッドはまさしく夢のような出来事にドキドキしつつ、彼女の背に両の掌を添えた。あくまで添えただけ。夢なのにだがしかし夢でもここで女を抱けないのは未経験故か。
「レッドくん……」
「………………」
耳にかかる甘い吐息に体が騒めく。
ピカチュウが顔の横に居るのだろうか。惚けたままの頭脳では現実との違い探しも難航する。
「くださいな……」
「………………」
何をかは加えられた腕の力が示してくれていた。大丈夫、コントロールはできているのだから拒まれることはない、筈。
念じる男は彼女の服をぐっと握って腹を括る。なだらかな背中をなぞるよう手を動かして、そして、遂に、ミミの体をぎゅっと抱き締めた。
「……ん、ありがとう……」
「……こ、こちらこそ……」
柔らかい。心地好い。
吸って吐いてと深呼吸をすれば鼻腔を湯上がりの香りがくすぐる。
レッドは自分ではない自分のことを尊敬した。夢の方のレッドではないレッドはきっと、この子に告白してここまでの関係を作ったに違いないのだ。
「……ミミちゃん……」
「んー……?」
臆病な性格が戻らぬ内にとここぞとばかりに頬を寄せて甘える。
「僕は何て言って告白したの……?」
訊かれたミミは、ん、と眠そうに喉を鳴らした後、何も、と答えた。
「そっか………………」
残念だがそれはこちら側のレッドが頑張って考えるしかなさそう。好意を伝える手段は言葉以外にない等と考えているが、何も言われていないのなら、何でもありな夢の世界には言葉以外があるのかも知れない。
男はその両手に託して気持ち強めに抱き締めてみた。ん、とにこやかな声と共に倍返しされる。
幸福感に包まれる。
「………………」
レッドは自分ではない自分のことを羨望する。夢の方のレッドではない彼はもしかしたらもしかして童貞を卒業しているのではないか。
「……ミミちゃん……」
「んー……?」
おかしな話だが瞳を閉じればこの夢から覚めてしまう気がして、レッドはまどろみの中で他愛のない会話を続けていく。
ベッドの隅っこでまるくなっていたレッドのピカチュウは無音で伸びと“あくび”を一つずつ。抜き足差し足忍び足で自分のモンスターボールに待避した。2人にはサムズアップを送るのを忘れずに。
おしまい