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グズマは頼られる
バスの窓に映る景色は随分前から木々一色だ。
浅い窓枠に頬杖を突っ掛けて、気怠げな男が一人、枯れ始めた緑を流し見ている。朝陽はまだ東の空、低い位置に見えている。
隣のシート、通路側に居るのは日雇い主のミミ。
みついりりんご が有名だよ!まだ旬じゃないけど!なんて右手の方から聞こえてくる浮かれガイダンスに、興味も湧かぬ彼はへぃへぃと生返事をする。
まっさらもち の形は丸いんだって!因みにホウエンのお餅は丸でカントーのお餅は四角ね。等のスマホ片手の豆知識も、右耳から左耳へと抜けていく。
道中アスファルトのひび割れを踏んだのか、林間を走るそのバスが、不意にガクン、と大きく揺れた。
肘が落ちて脊髄反射、チッと舌を打つのは元スカル団ボス グズマと言う輩。ドリンクホルダーに置いてあるエネココア缶、中身が残り少なくて良かった。
『次は終点、スイリョクタウン、スイリョクタウンでございます。お降りの際は――』
ここに来て最後の乗客へアナウンスが向けられる。これはある種の試合開始のアナウンスだ。
ミミが窓側にある降車ボタンを狙っていることには気付いていたので先手必勝。窓側有利。
グズマはポチっと“よこどり”をした。
ビィーッと試合終了の音が鳴る。
押したかったのにい。そんな声も右から左。彼女の弱い拳が彼の肩へぐりぐり捩じ込まれるが、痛くも痒くもないことは言うまでもないだろう。
へっ。と、幼稚な競争の勝者は余裕を見せ付けた。
程なくしてバスはスイリョクタウン手前のバス停に停車して、2人の長旅基通勤は終了となる。
「2人分払います。ありがとうございましたあ」
「……ッス……」
運転手への感謝を忘れずに。
さてカントー地方出身者とアローラ地方出身者は、無事、キタカミの地スイリョクタウンに現着。
田んぼの匂いを胸いっぱいに吸い込んでいるミミの横で、グズマは首をコキコキと鳴らした。
縁も所縁もない何もないこんな辺鄙な所。出張好き冒険好きなこの腐れ縁の女にでも拉致られなきゃ、訪れることは一生なかっただろう。
村の祭りも先々月までだったらしいから、今の時期に見られるものは年中無休の絶景六選だけだそうだ。
「寒っ……」
「でしょ?アウター持って来て良かったでしょ」
「五月蝿ぇ。余計なお世話だ」
ウィンドブレーカーを羽織るグズマ。南国育ちにはキタカミの朝はちと肌寒かったみたい。
「よおし。グズマ、ミッションを再確認する?」
「わーってんよ、やさいドロボーを捕まえりゃいいんだろぉ?」
やる気あるんだかないんだか。彼は相変わらずな目をしているが、その代わり頭に乗せたサングラスがギラリと太陽を弾いた。
ミミはパチンと手を合わせてにっこり微笑む。
「うんっ!その通りっ!盗難被害に遭っている無人販売所を見張って、現行犯逮捕だよ!」
依頼人は個人農家の方々ではなくて、この村出身のブルーベリー学園生。被害者はその窃盗を当たり前の損失として割り切っていると言うけれども。それを聞いた女生徒はどうしても解せなかったとのことで以下略、破格の価格な便利屋の出番と相成った。
部外者が居る理由?それは、旅行したいが金がないとぼやいたグズマをミミが捕まえて来たからだ。
交通費全額支給。欲を言えば勤務地はミアレシティが良かったが、島を出られるならまぁ悪くない。
「調査する販売所は全部で3つあるからね。好きな所を選んでいいよっ!コーンとパンプキンとエッグの中から1つ!どれがいい?」
「あぁ?Eggは野菜じゃねぇじゃねぇかローロー」
「野菜と一緒に時々売ってあるんだって、玉子も」
話しながら歩き出したミミを追うようにグズマも続く。のんびりびより。車やトラックが来ないのを良い事に、ド田舎道路のド真ん中を行く。
補足しておくと、彼が言うアローラ語 ローロー を翻訳すると バカ となる。仲良しで何より。
「じゃあグズマの担当は町の入口の無人販売所ね。私は北の住宅街にしようかな」
「チッ……、勝手に決めてくれ……」
棚田のその先に見える大きな看板を目指して。金色に実った稲穂がさわさわと波打つ中、数分も歩けばスイリョクタウンの入口に辿り着いた。
そして件の無人販売所がある。木造の小さな棚に、小型の料金箱と幾つかの野菜がころころと置かれていた。今日は玉子は未入荷みたいだ。
「……キタカミじゃ木の根っ子も食うのかよ」
「それゴボウ。歴とした野菜だよ」
「ハッ……これがぁ?……土臭そうだな……」
「ほほう、言ってくれるね。今日の晩御飯には金平 牛蒡 を御馳走しようねえ」
葉物野菜もアローラの物とは形から違ってグズマには新鮮な様子。チンゲンサイは1袋に3株入り。
画鋲で留めてある貼り紙には“どれでも100円”と書かれている。彼には一部の文字が読めなかったが、数字と円が読めたのでそれが単価を表していることは十分伝わった。
最近の売上不足に際して、もう1枚貼り紙が増えたと言う。そちらには“一円玉やコレクレーのコインを入れないでください”と書いてあるそう。
「やさいドロボーは算数が出来ねぇバカって事かぁ?
……払った振りされちゃ、見分けんのも怠ぃな……」
そう尋ねながらグズマは徐に料金箱を持ち上げる。
鍵付きの小箱だけれど棚に固定されておらず、とどの詰まりこれを泥棒するのも簡単なのに、こっちが持ち去られた事例は驚くことに0件だとか。
「ごめんね、犯人が何人居るのかもまだ特定出来ていなくてさ、やさいドロボーと算数バカが同一人物なのか、その辺も調査対象だから」
「……。どぉでもいいけどよぉ……、算数バカは逆に賢そうに聞こえんだが……」
「……確かに……!?」
阿呆な遣り取りありつつも、調査員2名は張り込み地点へ移動する流れに。
何時までも無人販売所の前に居たら、それはもう只の店番になってしまうし、今更だけど交代制なので夜間当番が待っているからね。
真っ直ぐ、胸を張って歩きながらミミは語る。
「……でも払った振りを見破る方法なら大丈夫ッ!私だって頭脳プレイ!ばっちりだしッ!」
曰く、いつもの料金箱にちょこっと細工がしてあるらしい。内部に硬貨選別機を取り付け、連携させたポケッチことポケモンウォッチのアプリでチェック可能にしたと説明を受ける。
エラー検出時に音で報せる機能付き。そのポケッチは夜番の手元にあるのでここにはないけど。
「そりゃまた懐かしいガジェットを……」
「自作アプリだからね。スマホにインストールしてねって言われても、怖いでしょ?」
「はぁ?別に、テメエが作ったもんならどぉって事ぁねぇよ」
「……!」
元々話し相手の方を向いていなかったが。ミミの方向からニタニタなオーラを感じて、しまった、と意識的に顔を背けるグズマ。
そちらにはブロック塀しかない。
「グズマ……!私を信頼し「実害出た時ゃ合法的にテメエをブッ壊せるしなぁ」
「……のおおん……いや、まあ、そんな事だろうと。知っていたけども?察していたけども?
一瞬感じた絆返してー」
怖いだろう?と訊かれたからつい怖くないと答えただけで、彼に他意はなかったのだ。
しかし、だからって信頼していない訳じゃなくて、これは好敵手故の喧嘩腰。
「Heyブラザー、んなもん貰った覚えがねぇぜオレぁ。言い掛かりは止せよ」
両手をマフポケットへ突っ込んだ男は、ぶすくれた振りする悪友へ、挑発的に笑ってみせた。
「ううわ、ドロボーだあ、きずなドロボー。
じゃあジャンプしてみろよお」
「意味わかんねぇカツアゲ咬ましてんじゃねぇよ」
バスの窓に映る景色は随分前から木々一色だ。
浅い窓枠に頬杖を突っ掛けて、気怠げな男が一人、枯れ始めた緑を流し見ている。朝陽はまだ東の空、低い位置に見えている。
隣のシート、通路側に居るのは日雇い主のミミ。
みついりりんご が有名だよ!まだ旬じゃないけど!なんて右手の方から聞こえてくる浮かれガイダンスに、興味も湧かぬ彼はへぃへぃと生返事をする。
まっさらもち の形は丸いんだって!因みにホウエンのお餅は丸でカントーのお餅は四角ね。等のスマホ片手の豆知識も、右耳から左耳へと抜けていく。
道中アスファルトのひび割れを踏んだのか、林間を走るそのバスが、不意にガクン、と大きく揺れた。
肘が落ちて脊髄反射、チッと舌を打つのは元スカル団ボス グズマと言う輩。ドリンクホルダーに置いてあるエネココア缶、中身が残り少なくて良かった。
『次は終点、スイリョクタウン、スイリョクタウンでございます。お降りの際は――』
ここに来て最後の乗客へアナウンスが向けられる。これはある種の試合開始のアナウンスだ。
ミミが窓側にある降車ボタンを狙っていることには気付いていたので先手必勝。窓側有利。
グズマはポチっと“よこどり”をした。
ビィーッと試合終了の音が鳴る。
押したかったのにい。そんな声も右から左。彼女の弱い拳が彼の肩へぐりぐり捩じ込まれるが、痛くも痒くもないことは言うまでもないだろう。
へっ。と、幼稚な競争の勝者は余裕を見せ付けた。
程なくしてバスはスイリョクタウン手前のバス停に停車して、2人の長旅基通勤は終了となる。
「2人分払います。ありがとうございましたあ」
「……ッス……」
運転手への感謝を忘れずに。
さてカントー地方出身者とアローラ地方出身者は、無事、キタカミの地スイリョクタウンに現着。
田んぼの匂いを胸いっぱいに吸い込んでいるミミの横で、グズマは首をコキコキと鳴らした。
縁も所縁もない何もないこんな辺鄙な所。出張好き冒険好きなこの腐れ縁の女にでも拉致られなきゃ、訪れることは一生なかっただろう。
村の祭りも先々月までだったらしいから、今の時期に見られるものは年中無休の絶景六選だけだそうだ。
「寒っ……」
「でしょ?アウター持って来て良かったでしょ」
「五月蝿ぇ。余計なお世話だ」
ウィンドブレーカーを羽織るグズマ。南国育ちにはキタカミの朝はちと肌寒かったみたい。
「よおし。グズマ、ミッションを再確認する?」
「わーってんよ、やさいドロボーを捕まえりゃいいんだろぉ?」
やる気あるんだかないんだか。彼は相変わらずな目をしているが、その代わり頭に乗せたサングラスがギラリと太陽を弾いた。
ミミはパチンと手を合わせてにっこり微笑む。
「うんっ!その通りっ!盗難被害に遭っている無人販売所を見張って、現行犯逮捕だよ!」
依頼人は個人農家の方々ではなくて、この村出身のブルーベリー学園生。被害者はその窃盗を当たり前の損失として割り切っていると言うけれども。それを聞いた女生徒はどうしても解せなかったとのことで以下略、破格の価格な便利屋の出番と相成った。
部外者が居る理由?それは、旅行したいが金がないとぼやいたグズマをミミが捕まえて来たからだ。
交通費全額支給。欲を言えば勤務地はミアレシティが良かったが、島を出られるならまぁ悪くない。
「調査する販売所は全部で3つあるからね。好きな所を選んでいいよっ!コーンとパンプキンとエッグの中から1つ!どれがいい?」
「あぁ?Eggは野菜じゃねぇじゃねぇかローロー」
「野菜と一緒に時々売ってあるんだって、玉子も」
話しながら歩き出したミミを追うようにグズマも続く。のんびりびより。車やトラックが来ないのを良い事に、ド田舎道路のド真ん中を行く。
補足しておくと、彼が言うアローラ語 ローロー を翻訳すると バカ となる。仲良しで何より。
「じゃあグズマの担当は町の入口の無人販売所ね。私は北の住宅街にしようかな」
「チッ……、勝手に決めてくれ……」
棚田のその先に見える大きな看板を目指して。金色に実った稲穂がさわさわと波打つ中、数分も歩けばスイリョクタウンの入口に辿り着いた。
そして件の無人販売所がある。木造の小さな棚に、小型の料金箱と幾つかの野菜がころころと置かれていた。今日は玉子は未入荷みたいだ。
「……キタカミじゃ木の根っ子も食うのかよ」
「それゴボウ。歴とした野菜だよ」
「ハッ……これがぁ?……土臭そうだな……」
「ほほう、言ってくれるね。今日の晩御飯には
葉物野菜もアローラの物とは形から違ってグズマには新鮮な様子。チンゲンサイは1袋に3株入り。
画鋲で留めてある貼り紙には“どれでも100円”と書かれている。彼には一部の文字が読めなかったが、数字と円が読めたのでそれが単価を表していることは十分伝わった。
最近の売上不足に際して、もう1枚貼り紙が増えたと言う。そちらには“一円玉やコレクレーのコインを入れないでください”と書いてあるそう。
「やさいドロボーは算数が出来ねぇバカって事かぁ?
……払った振りされちゃ、見分けんのも怠ぃな……」
そう尋ねながらグズマは徐に料金箱を持ち上げる。
鍵付きの小箱だけれど棚に固定されておらず、とどの詰まりこれを泥棒するのも簡単なのに、こっちが持ち去られた事例は驚くことに0件だとか。
「ごめんね、犯人が何人居るのかもまだ特定出来ていなくてさ、やさいドロボーと算数バカが同一人物なのか、その辺も調査対象だから」
「……。どぉでもいいけどよぉ……、算数バカは逆に賢そうに聞こえんだが……」
「……確かに……!?」
阿呆な遣り取りありつつも、調査員2名は張り込み地点へ移動する流れに。
何時までも無人販売所の前に居たら、それはもう只の店番になってしまうし、今更だけど交代制なので夜間当番が待っているからね。
真っ直ぐ、胸を張って歩きながらミミは語る。
「……でも払った振りを見破る方法なら大丈夫ッ!私だって頭脳プレイ!ばっちりだしッ!」
曰く、いつもの料金箱にちょこっと細工がしてあるらしい。内部に硬貨選別機を取り付け、連携させたポケッチことポケモンウォッチのアプリでチェック可能にしたと説明を受ける。
エラー検出時に音で報せる機能付き。そのポケッチは夜番の手元にあるのでここにはないけど。
「そりゃまた懐かしいガジェットを……」
「自作アプリだからね。スマホにインストールしてねって言われても、怖いでしょ?」
「はぁ?別に、テメエが作ったもんならどぉって事ぁねぇよ」
「……!」
元々話し相手の方を向いていなかったが。ミミの方向からニタニタなオーラを感じて、しまった、と意識的に顔を背けるグズマ。
そちらにはブロック塀しかない。
「グズマ……!私を信頼し「実害出た時ゃ合法的にテメエをブッ壊せるしなぁ」
「……のおおん……いや、まあ、そんな事だろうと。知っていたけども?察していたけども?
一瞬感じた絆返してー」
怖いだろう?と訊かれたからつい怖くないと答えただけで、彼に他意はなかったのだ。
しかし、だからって信頼していない訳じゃなくて、これは好敵手故の喧嘩腰。
「Heyブラザー、んなもん貰った覚えがねぇぜオレぁ。言い掛かりは止せよ」
両手をマフポケットへ突っ込んだ男は、ぶすくれた振りする悪友へ、挑発的に笑ってみせた。
「ううわ、ドロボーだあ、きずなドロボー。
じゃあジャンプしてみろよお」
「意味わかんねぇカツアゲ咬ましてんじゃねぇよ」
つづく