Gotcha!
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レッドに持たされる
「またのご利用をお待ちしてます」
「ありがとうございましたあ」
仕事を終えたレッドとミミはポケモンセンターへ来ていた。ここでは24時間無料でポケモン達を回復してもらえるのだ。トレーナー御用達のフレンドリィショップが併設されている他、休憩や食事を取れるカフェスペースがある。更に奥にカプセルホテルまであるため睡眠も取れる、旅のトレーナーには至れり尽くせりの施設だ。
「にぃにおつかれさま」
『はい。おつかれさまです』
ミミは帰ってきたミュウツーの頭をよしよしと撫でて労う。彼は目をシバシバと瞬かせて嬉しそうにした後、では、と一言モンスターボールの中へ戻って行った。
おやつにと持たせたあおいポロックは彼の好物で彼女の手作り菓子。
ここでCM。ホウエンの誉れトップコーディネーターミクリのブランドポロックは全国のショップで大好評発売中です。
「あの……ミミちゃん」
「はい。何かな?」
先に回復を済ませていたレッドの方は受付の横にある公衆のパソコンを使って道具を引き出していた。
手中に収まるそれを握り締めて彼女の前へ。そして今その拳を彼女の胸の前へ。問答無用、というか台詞が何も出てこなかったので取り敢えずポスッと押し付ける。
「あの……これ………………」
「うん」
ミミが開いた掌の上に、リン、と心地良い音色が落ちてきた。
「あげる」
やすらぎのすず。持たせたポケモンはなかよくなりやすくなる、という道具だ。繰り返すがポケモンは、だ。
レッドの意図を察したピカチュウがボールから飛び出してきてその男を叱り付ける。ビビビと小煩い電気鼠に、何で?と意味がわからない様子の20代男性。レッド的にはミミのなかよし度を得たいだけなのだが。
そのミミは片手で口元を隠すようにして笑っていた。それをレッドに気付かれて、ごめんごめんとしかし笑いを抑えないまま謝る。
「わかるよ。
私がレッドくんにモンスターボールを投げたいのと似ているよね」
「!」
ピカチュウは自分の耳が変になったのかとぺたぺた触って診察した。次に夢ではないかと自分の頬とついでに主の頬を抓る。
投げるならマスターボールかなあ、と事も無げに言って退ける女の子の胸中を探ろうにも、当の主は理解を得られた方で解釈しきってしまって駄目だニコニコだ。恋愛関連になると徹底的に思考が鈍っている。
察しろ。だがミミにそのつもりがないようで会話が終了、彼女は愛用の鞄に鈴を付けていた。やるせないピカチュウは尻尾を下ろした。
「ありがとう。大切にするけん」
「……うん」
鈴が鳴る。女心を度外視した贈り物は殊の外喜んでもらえたらしく語尾に方言らしき言葉が付いてくる。
新鮮な感覚を味わうレッド。レッドのピカチュウも彼女の素の言葉に耳をピコンと動かした。
「私からは仕事の話をしよう」
手を叩いて話を変えるミミ。近くのカフェスペースに誘われてレッドは椅子に座る。ここの利用に飲食物の購入は必要ない。
狭いカフェテーブルの上に置かれたのは珈琲ではなくて赤い帽子。赤い帽子をソーサーにしてピカチュウが乗った。
「今回の報酬は14,000円だから取分は7,000円でいい?」
「……?……いらないよ」
「駄目。レッドくんは仕事をしたんだから。
フシギバナにもポロックは渡した」
そう言われても今回の行いは彼女に好かれたいがためで、金はどうでもいい。何ならフシギバナと同じ報酬をとさえ考える。ポロックは手作りだし頭を撫でてもらえる。
「………………」
「それでいい?」
おかしなことは言えないのでレッドは渋々呑んでおく。彼の了承を確認したミミは鈴が鳴る鞄から小瓶を取り出した。それは財布ではない。続いて小瓶からは黄緑色の立方体を取り出した。それは紙幣ではない。
「はい、どうぞ」
「……!」
細い白い指に摘ままれているのは、きみどりポロック。
「それなりに美味しいよ」
「い……いただきます……っ」
ぱ。く。唇が彼女の指の腹に触れてレッドは気が付いた。自分はフシギバナではないのだから手で貰うのが普通だったのではと。でもいいや、と思い改めて一粒のポロックを噛み締める。
舌上にほどけてからんで広がる味は甘酸っぱい。喉越しは冷んやり。
「……美味しい」
「よしよし」
「っ!」
強め頭を撫でられて緊張、レッドは歯を食い縛りながらも身を委ねる。顔から火が噴き出そうだ。だが彼がこいぬポケモンガーディだったならその巻き尻尾は狂喜乱舞しているのだろう。
あ゛ーー好き好き好き好き大好き。
次第に表情もとろけ出す。幸せそうな主人を見てピカチュウもその頭を撫でてやった。
離れていく手の先でミミが照れたように笑う。
「ハート5個かな?」
「………………っ」
仰る通りその男のなつき度はMAX、いつでもどこでもなつき進化可能で御座います。返す言葉もないレッドはそろりそろりと視線を逃がした。
出入口付近ではポケモンブリーダーがふしぎなアメを使ってミミロルをミミロップへと進化させていた。
「ん?ピカチュウ?」
張り切るピカチュウが主人のバッグのポケットから一枚の大きな金貨を取り出してテーブルに置く。表には名探偵姿のチュウジロウが描かれていた。
「あ……それ、は……」
「映画の記念メダル?」
ハノハノリゾートのコンシェルジュに渡せば酒と引き換えて貰えるよう取り計らわれている。特別報酬だ、とチュウジロウがレッドへ個人的に贈った代物だ。彼女と二人で飲めとは言われているが、さて。
男が誘い文句を決め兼ねている間、彼の相棒が道具の説明のみをする。ポケモンと話せるの?とか今更な話だ。
「成程ねえ。おじさんはお酒が趣味だからねえ。絶対に美味しいよ」
ミミは金貨を裏に表に返して傍観していた。
「……。ミミちゃんも飲む?」
「いいの?」
「その、よろしければ……僕と……」
それから二人は金曜日の夜にと約束を交わす。
やった。
ピカチュウを褒めたいレッドだが頭を撫で回そうとしたその両手は稲妻の尻尾に“でんこうせっか”で“はたきおとす”された。
「場所は?」
毎週金曜夜には花火が揚げられるとガイドブックに載っている。マリエていえんからも見えるらしい。そこで一献できたら最高ではなかろうか。
「アローラ地方は公共の場所で飲酒禁止だからね。
私が借りているモーテルに来る?」
「!?」
チュウジロウのダンディな笑みが目に浮かぶ。レッドは何だか謀られた気分だった。
「またのご利用をお待ちしてます」
「ありがとうございましたあ」
仕事を終えたレッドとミミはポケモンセンターへ来ていた。ここでは24時間無料でポケモン達を回復してもらえるのだ。トレーナー御用達のフレンドリィショップが併設されている他、休憩や食事を取れるカフェスペースがある。更に奥にカプセルホテルまであるため睡眠も取れる、旅のトレーナーには至れり尽くせりの施設だ。
「にぃにおつかれさま」
『はい。おつかれさまです』
ミミは帰ってきたミュウツーの頭をよしよしと撫でて労う。彼は目をシバシバと瞬かせて嬉しそうにした後、では、と一言モンスターボールの中へ戻って行った。
おやつにと持たせたあおいポロックは彼の好物で彼女の手作り菓子。
ここでCM。ホウエンの誉れトップコーディネーターミクリのブランドポロックは全国のショップで大好評発売中です。
「あの……ミミちゃん」
「はい。何かな?」
先に回復を済ませていたレッドの方は受付の横にある公衆のパソコンを使って道具を引き出していた。
手中に収まるそれを握り締めて彼女の前へ。そして今その拳を彼女の胸の前へ。問答無用、というか台詞が何も出てこなかったので取り敢えずポスッと押し付ける。
「あの……これ………………」
「うん」
ミミが開いた掌の上に、リン、と心地良い音色が落ちてきた。
「あげる」
やすらぎのすず。持たせたポケモンはなかよくなりやすくなる、という道具だ。繰り返すがポケモンは、だ。
レッドの意図を察したピカチュウがボールから飛び出してきてその男を叱り付ける。ビビビと小煩い電気鼠に、何で?と意味がわからない様子の20代男性。レッド的にはミミのなかよし度を得たいだけなのだが。
そのミミは片手で口元を隠すようにして笑っていた。それをレッドに気付かれて、ごめんごめんとしかし笑いを抑えないまま謝る。
「わかるよ。
私がレッドくんにモンスターボールを投げたいのと似ているよね」
「!」
ピカチュウは自分の耳が変になったのかとぺたぺた触って診察した。次に夢ではないかと自分の頬とついでに主の頬を抓る。
投げるならマスターボールかなあ、と事も無げに言って退ける女の子の胸中を探ろうにも、当の主は理解を得られた方で解釈しきってしまって駄目だニコニコだ。恋愛関連になると徹底的に思考が鈍っている。
察しろ。だがミミにそのつもりがないようで会話が終了、彼女は愛用の鞄に鈴を付けていた。やるせないピカチュウは尻尾を下ろした。
「ありがとう。大切にするけん」
「……うん」
鈴が鳴る。女心を度外視した贈り物は殊の外喜んでもらえたらしく語尾に方言らしき言葉が付いてくる。
新鮮な感覚を味わうレッド。レッドのピカチュウも彼女の素の言葉に耳をピコンと動かした。
「私からは仕事の話をしよう」
手を叩いて話を変えるミミ。近くのカフェスペースに誘われてレッドは椅子に座る。ここの利用に飲食物の購入は必要ない。
狭いカフェテーブルの上に置かれたのは珈琲ではなくて赤い帽子。赤い帽子をソーサーにしてピカチュウが乗った。
「今回の報酬は14,000円だから取分は7,000円でいい?」
「……?……いらないよ」
「駄目。レッドくんは仕事をしたんだから。
フシギバナにもポロックは渡した」
そう言われても今回の行いは彼女に好かれたいがためで、金はどうでもいい。何ならフシギバナと同じ報酬をとさえ考える。ポロックは手作りだし頭を撫でてもらえる。
「………………」
「それでいい?」
おかしなことは言えないのでレッドは渋々呑んでおく。彼の了承を確認したミミは鈴が鳴る鞄から小瓶を取り出した。それは財布ではない。続いて小瓶からは黄緑色の立方体を取り出した。それは紙幣ではない。
「はい、どうぞ」
「……!」
細い白い指に摘ままれているのは、きみどりポロック。
「それなりに美味しいよ」
「い……いただきます……っ」
ぱ。く。唇が彼女の指の腹に触れてレッドは気が付いた。自分はフシギバナではないのだから手で貰うのが普通だったのではと。でもいいや、と思い改めて一粒のポロックを噛み締める。
舌上にほどけてからんで広がる味は甘酸っぱい。喉越しは冷んやり。
「……美味しい」
「よしよし」
「っ!」
強め頭を撫でられて緊張、レッドは歯を食い縛りながらも身を委ねる。顔から火が噴き出そうだ。だが彼がこいぬポケモンガーディだったならその巻き尻尾は狂喜乱舞しているのだろう。
あ゛ーー好き好き好き好き大好き。
次第に表情もとろけ出す。幸せそうな主人を見てピカチュウもその頭を撫でてやった。
離れていく手の先でミミが照れたように笑う。
「ハート5個かな?」
「………………っ」
仰る通りその男のなつき度はMAX、いつでもどこでもなつき進化可能で御座います。返す言葉もないレッドはそろりそろりと視線を逃がした。
出入口付近ではポケモンブリーダーがふしぎなアメを使ってミミロルをミミロップへと進化させていた。
「ん?ピカチュウ?」
張り切るピカチュウが主人のバッグのポケットから一枚の大きな金貨を取り出してテーブルに置く。表には名探偵姿のチュウジロウが描かれていた。
「あ……それ、は……」
「映画の記念メダル?」
ハノハノリゾートのコンシェルジュに渡せば酒と引き換えて貰えるよう取り計らわれている。特別報酬だ、とチュウジロウがレッドへ個人的に贈った代物だ。彼女と二人で飲めとは言われているが、さて。
男が誘い文句を決め兼ねている間、彼の相棒が道具の説明のみをする。ポケモンと話せるの?とか今更な話だ。
「成程ねえ。おじさんはお酒が趣味だからねえ。絶対に美味しいよ」
ミミは金貨を裏に表に返して傍観していた。
「……。ミミちゃんも飲む?」
「いいの?」
「その、よろしければ……僕と……」
それから二人は金曜日の夜にと約束を交わす。
やった。
ピカチュウを褒めたいレッドだが頭を撫で回そうとしたその両手は稲妻の尻尾に“でんこうせっか”で“はたきおとす”された。
「場所は?」
毎週金曜夜には花火が揚げられるとガイドブックに載っている。マリエていえんからも見えるらしい。そこで一献できたら最高ではなかろうか。
「アローラ地方は公共の場所で飲酒禁止だからね。
私が借りているモーテルに来る?」
「!?」
チュウジロウのダンディな笑みが目に浮かぶ。レッドは何だか謀られた気分だった。
おしまい