Gotcha!
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招待状
「おおい迎え 「わ~ ! きれ~ ! お姉ちゃんのお洋服ドレスみた~い ! 」 「かわい~ ! 」 「お兄ちゃんも真っ白々だから結婚式じゃーん ! 」 「じゃーさ ! じゃーさ ! 今から結婚式やろー ! 」 「「い~~ね~~ ! ! 」」
「にえッ!?ちょま何の……ああそういう話……いや何でそうなる!?」
「ボクにわかるように話そうという敬意はないの?」
グリーンやレッドへ話し掛けられる豪胆さとフットワークの軽さを持つ彼等が、遊び相手に誂え向きの人材に飛び付かない筈がなかった。子供達はあっと言う間にミミと エーテルざいだんしょくいん のペアを囲う。
八歩五歩で届く距離。しかし手が届かない距離。
あれよあれよと話が進められていく。
迎えに来たよと手を振り損ねた彼女へ振り返せず、胸の高さで引き返したレッドの手が迷いもなく腰のモンスターボールへ伸び「おい馬鹿やめろ」グリーンがその手を阻止した。なんだか切れそうな木やポケモンじゃないので実力行使はやめて頂きたい。
「待って待って!このお兄ちゃんとお姉ちゃんは只のお友達だからね!?2人だからって誰でも彼でもカップルって訳じゃないんだからねッ!?」
「え~っ?」「そぅなの~?」
思い思いの言葉を四方から投げられてあっちを向きこっちを向き、ミミは焦りながら返答する。だって低い壁の向こうには意中の人が、赤い帽子のその人が居るのだ。
「偶々そこで会って、偶々目的地が一緒だっただけで、絶対ここでお別れするんだからねえッ!?」
「必死に説明するね?」
「ルシさんももっと積極的に否定してよお!」
「えーっ?」「じゃー結婚式やらないのー?」
右手も左手も男の子女の子に捕らえられて身動きが取れない。帽子の上のピカチュウ耳がスゥと下がる様を見てついつい大きくなってしまう声量。子供達へと言うより彼の相棒への言い訳だった。
因みに、隣の男性は6時間程前に知り合いになったばかりのルシフェルさん。エーテル財団で働く彼が義務的に着用している制服が真っ白なだけである。
で以て。
何も問わぬその人はというと、心情はピカ耳と連動している訳なく、目には一抹の翳りもなかった。
しかし何を思ったのだろう、自分が着ている服をジと見遣る。裾を摘まんでピシと伸ばしてみた処で、それはワインレッドの無地の半袖Tシャツだ。
さてどうしたものか、決め倦ねているグリーンの隣で事態は静かに徐に動き始めるのだった。
「………………」
「何してんの」
グリーンのカメラがポケモン観察からレッド観察へシフトすれば、ガチャ、とボディバッグのバックルを外す観察対象。手荷物とバッグはそおっと地面へ置かれて。男は決意めいた雰囲気すら醸し出しつつ己のシャツの裾をがっぷりと掴む。
友人歴十五年を越えるベテランのグリーンは不穏な空気を察知した。居場所が危うくなったピカチュウが面倒臭そうに帽子を持って地面へ下りる。
うきゃうきゃ騒ぐ小猿達その相手をしている彼女と白い制服男性の蚊帳の外で、着々とTシャツを脱ぎ進めるレッド。シャツの下は言わずもがな、素肌。見えてくる腹直筋外腹斜筋。
「………………」
「お前マジで何してんのっ!?ちょっ!隠せ隠せ!ドサイドン!バンギラス!」
はしゃぎ声を打ち消す程の大きなツッコミに注目が集まった。
バカンスモード中での急な命令だったので少々読込が遅れたが、2匹の大型ポケモンがドッスドッスと指示実行。皆の視線を遮るようそいつの前へ移動し、身体を大きく見せるため顎を引き上げる。
一生お前の行動パターン読めねーわ!
バトルの話?
してねーよ!
所詮急造の目隠し。そんな会話も隙間っから見えている。勿論ミミにも見えている。
「うわあはああッ!?とれたて新鮮肩メロン!!――じゃなくって……レ、レッドくん!?」
「お兄ちゃんどぉしたんだろ……?」
「あ、あはは……ど、どうかしているねええ!」
手が塞がれているからとか関係なしに、彼女は赤面しながらもガンガン見ている。
ミミの友達って、え!?レッドって、あの!?
話ややこしくなるから後にしてもらっていい!?
ルシフェルの話は置いておいて。
人知れず彼女からちゃっかり興奮されたりなそんな中。服を着ろ服を。友人からそう注意された男は、わかってる、と一言しかし脱いだ物はバッグへ押し込んだ。
そしてそこから別の衣服を取り出して、袖を通す。もしも今夜一泊なんて時の為に用意しておいたそれは、奇跡的に真っ白なTシャツだ。
「………………」
「………………」
「………………」
うん。はい。ピカチュウを始めグリーンもミミも漸く事態の全貌を把握できた。下はライトブルーのジーンズだけど。
レッドがドサイドンとバンギラスの扉を押し開いてミミの元へ歩き出す。まるで式場の扉をちょっと待った!と開けたかのような――そういう青春恋愛映画ラストシーン宛らのロマンチックは行方不明。
奇行子が距離を詰めれば呆気に取られたままの子供とルシフェルはそのまま圧されて後退りしてミミだけが前へ出る。
「………………。………………」
「……な、何か言って……?」
帽子で潰れた髪を右手で雑に広げつつ、彷徨う視線は右下左下。正面へ向き直って、左手を差し出す。
察した女子が、頑張って、と彼女の後ろから小さく応援。
「ミミちゃん……その……その服、可愛い……です」
「……お、おおう……。あ、ありがとう……です」
残念な事に台詞は何も考えていなかったし特に思い付かないそうだ。それでも、名前を呼ばれた女の子は照れ照れと嬉しそうに笑いながら、男の子のその手に左手を重ねた。
白いTシャツと白いワンピースが、夕陽に染まって温かい。
「おおい迎え 「わ~ ! きれ~ ! お姉ちゃんのお洋服ドレスみた~い ! 」 「かわい~ ! 」 「お兄ちゃんも真っ白々だから結婚式じゃーん ! 」 「じゃーさ ! じゃーさ ! 今から結婚式やろー ! 」 「「い~~ね~~ ! ! 」」
「にえッ!?ちょま何の……ああそういう話……いや何でそうなる!?」
「ボクにわかるように話そうという敬意はないの?」
グリーンやレッドへ話し掛けられる豪胆さとフットワークの軽さを持つ彼等が、遊び相手に誂え向きの人材に飛び付かない筈がなかった。子供達はあっと言う間にミミと エーテルざいだんしょくいん のペアを囲う。
八歩五歩で届く距離。しかし手が届かない距離。
あれよあれよと話が進められていく。
迎えに来たよと手を振り損ねた彼女へ振り返せず、胸の高さで引き返したレッドの手が迷いもなく腰のモンスターボールへ伸び「おい馬鹿やめろ」グリーンがその手を阻止した。なんだか切れそうな木やポケモンじゃないので実力行使はやめて頂きたい。
「待って待って!このお兄ちゃんとお姉ちゃんは只のお友達だからね!?2人だからって誰でも彼でもカップルって訳じゃないんだからねッ!?」
「え~っ?」「そぅなの~?」
思い思いの言葉を四方から投げられてあっちを向きこっちを向き、ミミは焦りながら返答する。だって低い壁の向こうには意中の人が、赤い帽子のその人が居るのだ。
「偶々そこで会って、偶々目的地が一緒だっただけで、絶対ここでお別れするんだからねえッ!?」
「必死に説明するね?」
「ルシさんももっと積極的に否定してよお!」
「えーっ?」「じゃー結婚式やらないのー?」
右手も左手も男の子女の子に捕らえられて身動きが取れない。帽子の上のピカチュウ耳がスゥと下がる様を見てついつい大きくなってしまう声量。子供達へと言うより彼の相棒への言い訳だった。
因みに、隣の男性は6時間程前に知り合いになったばかりのルシフェルさん。エーテル財団で働く彼が義務的に着用している制服が真っ白なだけである。
で以て。
何も問わぬその人はというと、心情はピカ耳と連動している訳なく、目には一抹の翳りもなかった。
しかし何を思ったのだろう、自分が着ている服をジと見遣る。裾を摘まんでピシと伸ばしてみた処で、それはワインレッドの無地の半袖Tシャツだ。
さてどうしたものか、決め倦ねているグリーンの隣で事態は静かに徐に動き始めるのだった。
「………………」
「何してんの」
グリーンのカメラがポケモン観察からレッド観察へシフトすれば、ガチャ、とボディバッグのバックルを外す観察対象。手荷物とバッグはそおっと地面へ置かれて。男は決意めいた雰囲気すら醸し出しつつ己のシャツの裾をがっぷりと掴む。
友人歴十五年を越えるベテランのグリーンは不穏な空気を察知した。居場所が危うくなったピカチュウが面倒臭そうに帽子を持って地面へ下りる。
うきゃうきゃ騒ぐ小猿達その相手をしている彼女と白い制服男性の蚊帳の外で、着々とTシャツを脱ぎ進めるレッド。シャツの下は言わずもがな、素肌。見えてくる腹直筋外腹斜筋。
「………………」
「お前マジで何してんのっ!?ちょっ!隠せ隠せ!ドサイドン!バンギラス!」
はしゃぎ声を打ち消す程の大きなツッコミに注目が集まった。
バカンスモード中での急な命令だったので少々読込が遅れたが、2匹の大型ポケモンがドッスドッスと指示実行。皆の視線を遮るようそいつの前へ移動し、身体を大きく見せるため顎を引き上げる。
一生お前の行動パターン読めねーわ!
バトルの話?
してねーよ!
所詮急造の目隠し。そんな会話も隙間っから見えている。勿論ミミにも見えている。
「うわあはああッ!?とれたて新鮮肩メロン!!――じゃなくって……レ、レッドくん!?」
「お兄ちゃんどぉしたんだろ……?」
「あ、あはは……ど、どうかしているねええ!」
手が塞がれているからとか関係なしに、彼女は赤面しながらもガンガン見ている。
ミミの友達って、え!?レッドって、あの!?
話ややこしくなるから後にしてもらっていい!?
ルシフェルの話は置いておいて。
人知れず彼女からちゃっかり興奮されたりなそんな中。服を着ろ服を。友人からそう注意された男は、わかってる、と一言しかし脱いだ物はバッグへ押し込んだ。
そしてそこから別の衣服を取り出して、袖を通す。もしも今夜一泊なんて時の為に用意しておいたそれは、奇跡的に真っ白なTシャツだ。
「………………」
「………………」
「………………」
うん。はい。ピカチュウを始めグリーンもミミも漸く事態の全貌を把握できた。下はライトブルーのジーンズだけど。
レッドがドサイドンとバンギラスの扉を押し開いてミミの元へ歩き出す。まるで式場の扉をちょっと待った!と開けたかのような――そういう青春恋愛映画ラストシーン宛らのロマンチックは行方不明。
奇行子が距離を詰めれば呆気に取られたままの子供とルシフェルはそのまま圧されて後退りしてミミだけが前へ出る。
「………………。………………」
「……な、何か言って……?」
帽子で潰れた髪を右手で雑に広げつつ、彷徨う視線は右下左下。正面へ向き直って、左手を差し出す。
察した女子が、頑張って、と彼女の後ろから小さく応援。
「ミミちゃん……その……その服、可愛い……です」
「……お、おおう……。あ、ありがとう……です」
残念な事に台詞は何も考えていなかったし特に思い付かないそうだ。それでも、名前を呼ばれた女の子は照れ照れと嬉しそうに笑いながら、男の子のその手に左手を重ねた。
白いTシャツと白いワンピースが、夕陽に染まって温かい。
おしまい