ゴミばこ
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VSモンスタークライアント
小さな「困った」から大きな「困った」まで。相談は無料、世界各地方津々浦々へ出張可。ポケモンと人の豊かな縁の為ならば、どこへなりと馳せ参じては、微力ながら全力で助太刀致す所存。
そんな気概のポケモンレンジャー ミミは、どこにでもあるファミリーレストランへ赴いた。
日が大分傾いた夕飯時。その名に相応しく家族連れが増えてきて、ガヤガヤとその賑わいを見せる頃。
今からそこで困り事の相談をされる筈だった。
ミミは入口へ向かいながら昼間に届いたメールを再確認する。初めましての後に続くのは依頼内容を直接会って言いたいという旨と、ここで待っているという、指定の日時、指定の場所。
受け付ける側の都合を全く考慮していない行き成りで一方的な文面ではあったが、困り事、そいつ自体はそういうものだ、クライアントにも事情があるのだろう。運良くその日の頼まれ事を終わらせていた彼女は、二つ返事で承諾していた。
さて、日時と場所は間違いないものの。時間丁度、店の外に突っ立っている人影はない。
服装や目印になる持ち物を訊いておくべきだったなあと頭を撫でつつ。もしかしてがあってはいけないので、ミミは店の中への突入を決めた。
「いらっしゃいませ!デニーズへようこそ!」
エイパムを連れたホールスタッフが1名のお客様を歓迎する。その客が、待ち合わせをしていて……と話し出したところで彼は、ああ!とポン!と掌に拳の判を押した。
皆まで説明されるまでもなく該当者に覚えがあったそうで、案内するッス、と客を率いて店内の一角へ向かう。
出入口から一番遠くて、窓からも離れたテーブル席。壁付ソファと椅子が対面するその席の椅子の方に、何だか場違いにも思える女性の背中があった。
腰までの長さのストレートヘア、は普通だとして。普段着にしては珍しい、袴スタイル。
髪や服の色の所為ではないのだろうけれども、辺りの空気にまで黒が滲み出ているような印象を受けるのだった。
わお。と思わず顔に出たミミ。大変失礼。人間の背中に目が付いていなくて良かった良かった。
ごゆっくりどうぞ!とマニュアル通りの台詞を読み上げて、元気金賞なスタッフは下がって行った。
「すみません、私、萬屋の者です。えっと……貴女が私にメールをくれた方ですか?」
そういえばメールには名前も書かれていなかったっけ。そんな今更な記憶と思考を巡らせながら萬屋の者は接客する。
畏まって話し掛けたなら、そうだが、と一瞥、睨むような返事が返ってきた。
不健康そうな顔色と相俟って、白いカチューシャが死装束の天冠に見えなくもない。
「ああ良かった。遅れてすみません。では、本日はよろしくお願いします」
1分2分とはいえ遅刻したことへの謝罪にはフンと鼻を鳴らされただけ。しかし先程とベクトルは違うらしく、お前はその程度の人間なんだとどこか勝ち誇った様子だった。
この人は一体何と戦っているの。わからないままでいいような気もする。
親子で夫婦で、或いは友人恋人と。楽しげな話し声が飽和するファミリーレストランの片隅で。座っていた1人と、そこへ座る1人は他人同士だ。
「お話の前に、ワンオーダーだけさせてもらいますね」
テーブルの上にはグラスが1つある。レストランへの最低限の礼儀として、ドリンクの1杯は注文しておこう。その為ミミが相手へ断りを入れるけど、その際にも勝手にしろといった感じで突慳貪。
おいおいこれから依頼を受ける受けないの話をするのにそれでいいのかい?信用って大事だよ?何でも屋は一人、先が思い遣られている。
溜息は心中。タブレットを充電ドックから外す。
端末が待機モードから覚めると同時にプラズマ身体の従業員がリンクして、ビビッと画面に飛び込んで来た。
君も働き者だねえ。勝手にシンパシーを感じてそのパチクリお目目にこっくりと瞬きを。している猶予は余りなくて。
両手でグラスを持った依頼人が、ロトムとミミの遣り取り主にミミの所作を、モクテルをずるずる啜りつつ指の先の爪の先まで監視していた。
『かしこまりロ!お水とおしぼりはドリンクバーにご用意しておりますロ。どうぞご利用くださいませロト~』
「うん、ありがとうございます」
「………………」
ギョロっとした金色の瞳がずっとミミを直視していた。否、睨め付けていたと表現した方が正しいか。兎角、始終そういう具合で居心地は悪かった。
ロトムは既にタブレットから抜け出しているし、腰のモンスターボールの中に居る相棒達がせめてもの拠り所だ。
「お待たせしました。それでは、依頼内容をお聞きしてもいいですか?」
促せば待っていたと言わんばかり。それを皮切りに和服の女性はコトリとグラスを置いて、ぐわっと目を見開く。無駄に迫力があって引く。
「マツバくんに、近付くな」
「「………………」」
「……はい……?いや、はいじゃないです。ええっと……?」
Now loading...頭がくるくる回る。彼女が発した言葉は文字通りには理解出来る。が、何故彼女が、何故自分に。紐付けが出来ないのだ。
実は仕事後仕事仲間から買物の誘いを受けていて、断わって。人助けを優先した積もりがこれである。逆に助けて欲しい。そちらが恋しくなってきた。
遠くの席でお子様がジュースか何かを溢したようで、ホール清掃スタッフ基シャワーズがバタバタと走って行く。偉いなあ、なんて目の前から逃避行。
「何度も言わせるな。
マ・ツ・バ・く・ん・に、ち・か・づ・く・な」
「あ、その……聞こえていない訳じゃなくってですね……?」
ぬらりと顔を近付けて来たその人物は、一言一言に合わせて伸びた爪でコツコツとテーブルを叩いた。
前方にそんな厄介な依頼人。後方は壁。両隣も片側は壁になっていて追い詰められている気分になる。退席するには横を通らないといけない配置だ。
「幾ら払えばいいんだ?」
「うええ……っ?いえいえ、お金じゃ買えない人間関係ってありまして、いや、ええと、先ず、貴女はマツバさんとどういう関係なんですか?」
自称ファンを名乗る厄介オタクを説き伏せる。今回の任務は骨が折れる案件だった。
――――――――
――――
――
「――って事がさっきあって……って、ちょおマツバさん?笑おて済ませんでよね?聞いてくれとお?」
「ハハハ聞いてる聞いてる。ミミさんの愚痴からしか得られへん栄養があるんやもん。続きは?」
性の悪か人たい。
お互い様やろ。
何をか言わんや依頼の結末ならばこの状況が示してくれているので、マツバは至極嬉し気に彼女の苦労話を聞いている。
困らせたのが自分のファンらしいから申し訳なさを感じている。でもその被害者が謝らせたくて自分に話をしている訳でない事を知っている。厄介オタクの管理等どうにも出来ない話なのだし許されたい。
「ほんで、相手の名前は?」
「守秘義務が。って言うかマツバさん名前で呪えるやん、無理無理」
「ハハハ。しいひん、しいひん」
相手がポケモントレーナーであれば楽な解決方法はポケモンバトル。世界中のジムバッジを集められる程の芸達者に敵う者はそうそう居ないだろう。
考えられないが仮に彼女が負けていたら。この世界のどこかに居る特定の誰かが、今頃何かしらの不幸に遭っていた可能性は否定出来ないかも。
「まあね、取り敢えず明日一緒ん裁縫教室行くこつなったけん楽しみ」
「何でや。
展開謎過ぎてネタバレされても信用出来ひんわ」
小さな「困った」から大きな「困った」まで。相談は無料、世界各地方津々浦々へ出張可。ポケモンと人の豊かな縁の為ならば、どこへなりと馳せ参じては、微力ながら全力で助太刀致す所存。
そんな気概のポケモンレンジャー ミミは、どこにでもあるファミリーレストランへ赴いた。
日が大分傾いた夕飯時。その名に相応しく家族連れが増えてきて、ガヤガヤとその賑わいを見せる頃。
今からそこで困り事の相談をされる筈だった。
ミミは入口へ向かいながら昼間に届いたメールを再確認する。初めましての後に続くのは依頼内容を直接会って言いたいという旨と、ここで待っているという、指定の日時、指定の場所。
受け付ける側の都合を全く考慮していない行き成りで一方的な文面ではあったが、困り事、そいつ自体はそういうものだ、クライアントにも事情があるのだろう。運良くその日の頼まれ事を終わらせていた彼女は、二つ返事で承諾していた。
さて、日時と場所は間違いないものの。時間丁度、店の外に突っ立っている人影はない。
服装や目印になる持ち物を訊いておくべきだったなあと頭を撫でつつ。もしかしてがあってはいけないので、ミミは店の中への突入を決めた。
「いらっしゃいませ!デニーズへようこそ!」
エイパムを連れたホールスタッフが1名のお客様を歓迎する。その客が、待ち合わせをしていて……と話し出したところで彼は、ああ!とポン!と掌に拳の判を押した。
皆まで説明されるまでもなく該当者に覚えがあったそうで、案内するッス、と客を率いて店内の一角へ向かう。
出入口から一番遠くて、窓からも離れたテーブル席。壁付ソファと椅子が対面するその席の椅子の方に、何だか場違いにも思える女性の背中があった。
腰までの長さのストレートヘア、は普通だとして。普段着にしては珍しい、袴スタイル。
髪や服の色の所為ではないのだろうけれども、辺りの空気にまで黒が滲み出ているような印象を受けるのだった。
わお。と思わず顔に出たミミ。大変失礼。人間の背中に目が付いていなくて良かった良かった。
ごゆっくりどうぞ!とマニュアル通りの台詞を読み上げて、元気金賞なスタッフは下がって行った。
「すみません、私、萬屋の者です。えっと……貴女が私にメールをくれた方ですか?」
そういえばメールには名前も書かれていなかったっけ。そんな今更な記憶と思考を巡らせながら萬屋の者は接客する。
畏まって話し掛けたなら、そうだが、と一瞥、睨むような返事が返ってきた。
不健康そうな顔色と相俟って、白いカチューシャが死装束の天冠に見えなくもない。
「ああ良かった。遅れてすみません。では、本日はよろしくお願いします」
1分2分とはいえ遅刻したことへの謝罪にはフンと鼻を鳴らされただけ。しかし先程とベクトルは違うらしく、お前はその程度の人間なんだとどこか勝ち誇った様子だった。
この人は一体何と戦っているの。わからないままでいいような気もする。
親子で夫婦で、或いは友人恋人と。楽しげな話し声が飽和するファミリーレストランの片隅で。座っていた1人と、そこへ座る1人は他人同士だ。
「お話の前に、ワンオーダーだけさせてもらいますね」
テーブルの上にはグラスが1つある。レストランへの最低限の礼儀として、ドリンクの1杯は注文しておこう。その為ミミが相手へ断りを入れるけど、その際にも勝手にしろといった感じで突慳貪。
おいおいこれから依頼を受ける受けないの話をするのにそれでいいのかい?信用って大事だよ?何でも屋は一人、先が思い遣られている。
溜息は心中。タブレットを充電ドックから外す。
端末が待機モードから覚めると同時にプラズマ身体の従業員がリンクして、ビビッと画面に飛び込んで来た。
君も働き者だねえ。勝手にシンパシーを感じてそのパチクリお目目にこっくりと瞬きを。している猶予は余りなくて。
両手でグラスを持った依頼人が、ロトムとミミの遣り取り主にミミの所作を、モクテルをずるずる啜りつつ指の先の爪の先まで監視していた。
『かしこまりロ!お水とおしぼりはドリンクバーにご用意しておりますロ。どうぞご利用くださいませロト~』
「うん、ありがとうございます」
「………………」
ギョロっとした金色の瞳がずっとミミを直視していた。否、睨め付けていたと表現した方が正しいか。兎角、始終そういう具合で居心地は悪かった。
ロトムは既にタブレットから抜け出しているし、腰のモンスターボールの中に居る相棒達がせめてもの拠り所だ。
「お待たせしました。それでは、依頼内容をお聞きしてもいいですか?」
促せば待っていたと言わんばかり。それを皮切りに和服の女性はコトリとグラスを置いて、ぐわっと目を見開く。無駄に迫力があって引く。
「マツバくんに、近付くな」
「「………………」」
「……はい……?いや、はいじゃないです。ええっと……?」
Now loading...頭がくるくる回る。彼女が発した言葉は文字通りには理解出来る。が、何故彼女が、何故自分に。紐付けが出来ないのだ。
実は仕事後仕事仲間から買物の誘いを受けていて、断わって。人助けを優先した積もりがこれである。逆に助けて欲しい。そちらが恋しくなってきた。
遠くの席でお子様がジュースか何かを溢したようで、ホール清掃スタッフ基シャワーズがバタバタと走って行く。偉いなあ、なんて目の前から逃避行。
「何度も言わせるな。
マ・ツ・バ・く・ん・に、ち・か・づ・く・な」
「あ、その……聞こえていない訳じゃなくってですね……?」
ぬらりと顔を近付けて来たその人物は、一言一言に合わせて伸びた爪でコツコツとテーブルを叩いた。
前方にそんな厄介な依頼人。後方は壁。両隣も片側は壁になっていて追い詰められている気分になる。退席するには横を通らないといけない配置だ。
「幾ら払えばいいんだ?」
「うええ……っ?いえいえ、お金じゃ買えない人間関係ってありまして、いや、ええと、先ず、貴女はマツバさんとどういう関係なんですか?」
自称ファンを名乗る厄介オタクを説き伏せる。今回の任務は骨が折れる案件だった。
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「――って事がさっきあって……って、ちょおマツバさん?笑おて済ませんでよね?聞いてくれとお?」
「ハハハ聞いてる聞いてる。ミミさんの愚痴からしか得られへん栄養があるんやもん。続きは?」
性の悪か人たい。
お互い様やろ。
何をか言わんや依頼の結末ならばこの状況が示してくれているので、マツバは至極嬉し気に彼女の苦労話を聞いている。
困らせたのが自分のファンらしいから申し訳なさを感じている。でもその被害者が謝らせたくて自分に話をしている訳でない事を知っている。厄介オタクの管理等どうにも出来ない話なのだし許されたい。
「ほんで、相手の名前は?」
「守秘義務が。って言うかマツバさん名前で呪えるやん、無理無理」
「ハハハ。しいひん、しいひん」
相手がポケモントレーナーであれば楽な解決方法はポケモンバトル。世界中のジムバッジを集められる程の芸達者に敵う者はそうそう居ないだろう。
考えられないが仮に彼女が負けていたら。この世界のどこかに居る特定の誰かが、今頃何かしらの不幸に遭っていた可能性は否定出来ないかも。
「まあね、取り敢えず明日一緒ん裁縫教室行くこつなったけん楽しみ」
「何でや。
展開謎過ぎてネタバレされても信用出来ひんわ」
おしまい
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