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軟派師が大誤算
(ファンタジーな所だなあ……)
陽の目も届かぬ大樹の根元。上を見遣れば千歳緑の大天蓋。太陽の粒がちらほらきらきらと星の様に瞬いていて、下を見遣れば苔色の大地まで幾筋かの細い光の道が出来ている。
(溢れる浪漫……)
アローラキルトの赤いタペストリーを胸に掲げる大岩を背に、ミミはぽうっと景色を観賞する。
(ヒワマキシティのツリーハウスと違って、家の中じゃなくて木の中に入れるんだもんねえ……)
そうして精々1分弱、次にそう人気が多くない通りをぽんやり見渡した後は暇。
(……。ギリーに自慢しておこう……)
写真でも撮ろうとスマホを弄り始める。そんな時――
「相方を探しているのかな?リトルレディ?」
ザッと視界の上部に入ってきたのは見知らぬ白い靴だった。何者だろうかと顔を上げる。知らない声の出処を辿れど、当然、そこには知らない男の顔があった。
年の頃はミミと同じくらいだろうか、ランプブラックのハンチング帽の下は幼さ残る顔立をしている。日に焼けた肌と跳ね上げた媚茶色の髪に、一際目立つプラチナの虹彩。
「?」
男はミミを見ているが、ミミはふりふりと左右を確認する。近くに人はおらず、声を掛けられたリトルレディとは自分の事か、と認識。
怪しい者ではないと言い張る初対面の人物を訝しむ素振りは全くない。小さな淑女は前へ向き直る。
「ボクがコンビ組んであげるんだ?礼の準備をしておくんだぜ?」
目が搗ち合えば、背の高さがって訳ではなくて上から目線な男はニイッと白い歯を見せて笑った。
とてもルックスが良いことはしかし関係のない話だ。コンビ?何の話?首を傾げ掛けたミミだったが直ぐに合点が行って、ああ!と頭を引き戻す。
「ごめんなさい!私はバトルツリーのチャレンジャーじゃないんです」
「あ、そうなんだ?」
そう。今彼女が居る場所はアローラ地方のバトル施設、バトルツリー。かがやきのとうだい も悠々呑み込むその大樹は、その名が示す通りポケモントレーナー達がポケモンバトルの頂点を目指す場所である。
ダブルバトルも受け付けているのでスカウトしたりスカウトされたりは至極自然な光景だったのだ。
「それじゃ何だ?観光?観戦?それともポケモンをジャッジしてもらいに来たのかな?」
「いえ、友人との待ち合わせ場所がここでして……。私はそいつを待っているだけです」
しかし此度のスカウトは少し様子が違うようだ。申し出の辞退や理由を伝えられても、ふぅん……と相槌を一つ返しただけで立ち去らない。
それもその筈、彼の目的は初めからコンビ結成なんかではなかった。否、共闘且死闘という、仲間意識を芽生えさせる吊橋理論を狙っていたのは確かだが。その根本は友好関係を築きたいそんな純粋な動機。ま、あわ良くば連絡先GETとかは視野に入れているか。
「……お友達が来るまで、付き合ってあげるぜ?ボクとお話でも?」
「いいんですか……?お兄さんの用事は……」
「あぁいいのいいの?バトルツリーにはいつでも挑戦できるんだし?」
自信家男の意向は意に介さず、そのターゲットは聞く姿勢を取るためにとスマホを雑に鞄へ捩じ込んだ。
これは?脈有り?期待したのも束の間。
「では……約束した場所から離れる訳にいかないので、立ち話になりますが。
よろしくお願いしますね、お兄さんっ!」
優しい顔をした軟派師はあどけない笑顔で対応される。
ツリー内のカフェへ誘導するという道も早々に断たれた彼はうぅん……と苦笑いをしたが、まだ舞える!それこそ真剣勝負、駆け引きを続ける。
「『お兄さん』は何か嫌だな?先ずは自己紹介、ボクの事はルシと呼ぶがいいぜ」
「ルシさんですね!私はミミって言います」
差し出した手を受け取って控え目に会釈をした女の子の姿。取り敢えず男は、視界を遮るよう前に居たままでは彼女も友達も互いに待ち人を見付け難かろうと思って隣へ立つ。
そして気を引くため距離を近付けるため、話題を見付けていた彼は語り掛けた。
「ミミはカントーの方の出なんだ?」
「わ!良くわかりましたね!?そうです、生まれも育ちもカントーですよ。育ててくれた祖父母がホウエンの人なので、言葉とかはそっちですけど」
そうだろうそうだろう?反応は上々でテンション高めの声。凄い凄いと褒め称えられて悪い気はしない。
まあ?ボクにかかれば?
なんて自分を持ち上げるのは程々にして。先程お辞儀をしていたことを指して種を明かせば。
冴えた観察眼をお持ちですね!
と尊敬の念を示されて気分が良い。
「んではでは、今度はこの私がルシさんのプロフィールの隠された部分を当ててみせましょうかっ!」
「え?」
ミミの目の色が変わる。雲行きが怪しくなってきた。
但し葉っぱの海の上は平らかに快晴だ。
(ファンタジーな所だなあ……)
陽の目も届かぬ大樹の根元。上を見遣れば千歳緑の大天蓋。太陽の粒がちらほらきらきらと星の様に瞬いていて、下を見遣れば苔色の大地まで幾筋かの細い光の道が出来ている。
(溢れる浪漫……)
アローラキルトの赤いタペストリーを胸に掲げる大岩を背に、ミミはぽうっと景色を観賞する。
(ヒワマキシティのツリーハウスと違って、家の中じゃなくて木の中に入れるんだもんねえ……)
そうして精々1分弱、次にそう人気が多くない通りをぽんやり見渡した後は暇。
(……。ギリーに自慢しておこう……)
写真でも撮ろうとスマホを弄り始める。そんな時――
「相方を探しているのかな?リトルレディ?」
ザッと視界の上部に入ってきたのは見知らぬ白い靴だった。何者だろうかと顔を上げる。知らない声の出処を辿れど、当然、そこには知らない男の顔があった。
年の頃はミミと同じくらいだろうか、ランプブラックのハンチング帽の下は幼さ残る顔立をしている。日に焼けた肌と跳ね上げた媚茶色の髪に、一際目立つプラチナの虹彩。
「?」
男はミミを見ているが、ミミはふりふりと左右を確認する。近くに人はおらず、声を掛けられたリトルレディとは自分の事か、と認識。
怪しい者ではないと言い張る初対面の人物を訝しむ素振りは全くない。小さな淑女は前へ向き直る。
「ボクがコンビ組んであげるんだ?礼の準備をしておくんだぜ?」
目が搗ち合えば、背の高さがって訳ではなくて上から目線な男はニイッと白い歯を見せて笑った。
とてもルックスが良いことはしかし関係のない話だ。コンビ?何の話?首を傾げ掛けたミミだったが直ぐに合点が行って、ああ!と頭を引き戻す。
「ごめんなさい!私はバトルツリーのチャレンジャーじゃないんです」
「あ、そうなんだ?」
そう。今彼女が居る場所はアローラ地方のバトル施設、バトルツリー。かがやきのとうだい も悠々呑み込むその大樹は、その名が示す通りポケモントレーナー達がポケモンバトルの頂点を目指す場所である。
ダブルバトルも受け付けているのでスカウトしたりスカウトされたりは至極自然な光景だったのだ。
「それじゃ何だ?観光?観戦?それともポケモンをジャッジしてもらいに来たのかな?」
「いえ、友人との待ち合わせ場所がここでして……。私はそいつを待っているだけです」
しかし此度のスカウトは少し様子が違うようだ。申し出の辞退や理由を伝えられても、ふぅん……と相槌を一つ返しただけで立ち去らない。
それもその筈、彼の目的は初めからコンビ結成なんかではなかった。否、共闘且死闘という、仲間意識を芽生えさせる吊橋理論を狙っていたのは確かだが。その根本は友好関係を築きたいそんな純粋な動機。ま、あわ良くば連絡先GETとかは視野に入れているか。
「……お友達が来るまで、付き合ってあげるぜ?ボクとお話でも?」
「いいんですか……?お兄さんの用事は……」
「あぁいいのいいの?バトルツリーにはいつでも挑戦できるんだし?」
自信家男の意向は意に介さず、そのターゲットは聞く姿勢を取るためにとスマホを雑に鞄へ捩じ込んだ。
これは?脈有り?期待したのも束の間。
「では……約束した場所から離れる訳にいかないので、立ち話になりますが。
よろしくお願いしますね、お兄さんっ!」
優しい顔をした軟派師はあどけない笑顔で対応される。
ツリー内のカフェへ誘導するという道も早々に断たれた彼はうぅん……と苦笑いをしたが、まだ舞える!それこそ真剣勝負、駆け引きを続ける。
「『お兄さん』は何か嫌だな?先ずは自己紹介、ボクの事はルシと呼ぶがいいぜ」
「ルシさんですね!私はミミって言います」
差し出した手を受け取って控え目に会釈をした女の子の姿。取り敢えず男は、視界を遮るよう前に居たままでは彼女も友達も互いに待ち人を見付け難かろうと思って隣へ立つ。
そして気を引くため距離を近付けるため、話題を見付けていた彼は語り掛けた。
「ミミはカントーの方の出なんだ?」
「わ!良くわかりましたね!?そうです、生まれも育ちもカントーですよ。育ててくれた祖父母がホウエンの人なので、言葉とかはそっちですけど」
そうだろうそうだろう?反応は上々でテンション高めの声。凄い凄いと褒め称えられて悪い気はしない。
まあ?ボクにかかれば?
なんて自分を持ち上げるのは程々にして。先程お辞儀をしていたことを指して種を明かせば。
冴えた観察眼をお持ちですね!
と尊敬の念を示されて気分が良い。
「んではでは、今度はこの私がルシさんのプロフィールの隠された部分を当ててみせましょうかっ!」
「え?」
ミミの目の色が変わる。雲行きが怪しくなってきた。
但し葉っぱの海の上は平らかに快晴だ。
おしまい