彼氏の使命 彼女の特権
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「なんや元気ないなぁ、比奈」
朝食を終えて再びグラウンドに向かう途中、隣を歩く忍足に顔を覗き込まれ、比奈はハッと顔を上げた。
「そ・・・んなことないよ。ちょっとぼんやりしてただけ」
「悩み事か?」
忍足の顔が心配そうに歪むと、比奈は慌てて首を横に振った。
「違うよ!ホラ、跡部に没収された防寒グッズ!あれをどうやって取り返そうかな~って」
「あぁ・・・そういえば取られとったなぁ。なんや、まだ寒いんか?」
「侑士は寒くないの?」
「我慢できん程やないなぁ」
「―――比奈は僕らより体脂肪があるから寒さには強いはずなんだけどね」
唐突に後ろから伸びてきた指に頬を摘まれ、からかうように耳元で囁かれる。
「女の子の方が体脂肪あるのは当たり前でしょ!滝ちゃんこそ男の子の割にがっしりしてないじゃない!」
「僕は美人だからね。顔が綺麗なのに体はゴツゴツしてるなんて可笑しいだろ?」
一瞬、比奈と忍足の脳裏に滝の顔をした樺地が浮かぶ。
「そら・・・見たくないなぁ」
「うん・・・滝ちゃんにはスレンダーラインの眩しい美人のままでいてほしいね」
「だから必要以上に筋肉をつけないよう僕も気をつけてるんだよ」
理解できた?と蠱惑的な笑みを浮かべる滝に、二人は素直に頷いた。
そのまま何だかんだで楽しそうにグラウンドへ向かう三人を、少し離れた所から見ていた集団がいた。
「・・・何よ。アレ」
「ムカつくっ!氷帝で彼氏ができたからっていい気になって・・・っ!」
「あ~ん!忍足選手ファンだったのに~っ」
青学の女子テニス部の三年、つまり比奈の昔の友人達だった。
「都合良く昔の事を忘れようなんてムシが良いわっ!―――そうよね、瑞穂」
不機嫌丸出しの彼女達に囲まれ、去っていく比奈の後ろ姿を見送っていた瑞穂は微かに目を細める。
「そうねぇ・・・。忘れられたままなのは面白くないし・・・寂しいわ」
赤い唇をゆっくり吊り上げると、瑞穂は妖しい笑みを浮かべた。
「―――少し、皆で思い出させてあげましょうか」
(昔のように、ね・・・)
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