愛していると言えない1
「………」
俺は黎を部屋に案内した。
二年前は一つしか無かったベットも、この間二つに増やした。
真新しいベットを見つめたまま…
黎は10分近く黙り込んでいる。
『黎…どうかしたのか?』
「俺、誠と一緒に寝たい…」
俺の声に、黎はゆっくりと振り返ると…
二年前と同じ…少し潤んだ瞳で俺を誘った。
『…っ…』
上目遣いで見つめられると、理性が消えて無くなるような……
そんな錯覚に陥って、身体中が熱くなった。
俺は黎しか抱けない。
こういうのを、トラウマとでも言うのだろうか……
黎以外ではダメなんだ。
欲情できない……
黎だけを抱きたい。
……この二年間、誰とも肉体関係は無かった。
28歳にもなる男が、綺麗な女性に目もくれず……
こんな…我が儘な子供に夢中になるなんて。
……しかも同じ男にだ。
自分で自分が信じられない。
黎に会うまでは、ずっとノーマルだったんだ。
それが今では、女性に欲情しない。
…かといって男に欲情するわけでもない。
黎だけなんだ……
俺は黎に溺れている……
「…誠?」
『ダメだ。お前は、そっちのベッドで寝てくれ』
不安そうな瞳が俺を見つめる。
黎と同じベッドでなんか眠れるわけがない。
二年間自慰しかしていない男が正気でいられると思うのか?
『明日は休みだから…ゆっくりお休み』
そう言って、頭を撫でてやる。
偽善者ぶって、紳士的なふりをして……
ただの好奇心で、何も知らない子供を抱いた。