ルームメイト5
「ね。有森…兄弟いるの?」
『…どうした急に?』
僕の突然の質問に…有森は戸惑っている。
「…双子…とか、弟とか……」
『……弟なら。昔はいたぞ』
有森は悲しそうな顔をして、俯いてしまったから。
…きっと、聞いてはイケナイ事なのかもしれない。
「ゆうひって…名前?」
それでも…
聞かずにはいられなかった。
昨日の有森が、この優しい有森だなんて……信じたくない。
「今は、もういないの?」
僕の言葉に、有森は驚いて目を見開いた。
何度も何度も…首を横に振って『どこで聞いたんだ?』って、僕を責めた。
『悠陽だって…?』
「…ぅ…ん」
『アイツは…ちゃんと消せたはずなんだ……』
有森は急いで部屋に戻ると、僕をそこに呼んだ。
薬の入った瓶を持ったまま、ただ黙ってベットに座って…
有森は…自分の病気について話し出した。
「…二重…人格?」
『簡単に言うと…、そうだな…』
有森は薬を飲み込んで『悠陽と俺の区別がつけば良いのにな…』って、呟いた。
「…なんとなくなら分かるよ」
『なんとなく…?』
「瞳が…」
優しい有森の瞳と、
冷たい悠陽の瞳。
口調も違うし、性格だって全然違う。
『分かるなら良いんだ。悠陽に接触しなければ、良い…』
「…どうするの…?」
ベットに座ったまま…頭を抱えて悩む有森。
…僕が少しでも、有森の役に立てれば良いのに。
『水瀬が、俺の様子がおかしいと思ったら…』
「うん…?」
『夏樹と北条の部屋に行くか、自分の部屋から出て…こないでほしい』
僕から悠陽を遠ざけて…
僕は確かに助かるけれど……
「…有森は?」
『どうしようもないだろ。…悠陽は俺の一部だ』
「…っ…」
ガラス瓶の中には、おびただしい量の薬。
一日の摂取量なんて…
もう…守っていられないんだ……