森を出ると島の人たちが総出で待っていた。

「勝ったのか…」
「倒してくれたのか…」

ザワザワとする島民の前に宝石の割れた剣を落とす。

カランっという音と共に転がった剣を見た島民たちは

バンザーイ！と声をあげた。

酒場でリュウガたちに声をかけてきた男たちが駆け寄ってきて泣きながら土下座をして礼を言う。

「ありがとう！ありがとう！あんたたちのおかげで島から犠牲者が出る事は無くなった！本当にありがとう！」

「命の恩人だ！何でもする！遠慮なく言ってくれ！！！」

少し疲れたように笑ったリュウガはそれじゃあ、と、医療器具と、ケガが治るまでいられる宿を頼んだ。

今すぐに！と島の病院を案内し、軽症の者にはこの島一番の高級宿を用意した。

病院はかなり設備が揃っていた。
神成試合は怪我人が多く出るため、医療も発展したのだと言った。

リュウガの怪我は幸いにして、神経や太い血管を傷つける事は無かったので後遺症も無く治りそうだった。
大きな傷であったにも関わらず、その回復力に島の医者は驚いていた。

ハヤテの手首の傷もトワがすぐに止血をしたおかげで、数針縫うだけで大丈夫であった。


ソウシの配慮でリュウガとヒロインは同室で入院している。

ヒロインの身体はかなりダメージを負ったものの、骨に異常はなく、安静にしながら回復を待つことになった。

だが、問題は心の方だった。

手に残る人の肉を割く感触は、戦闘とは無関係に生きてきた彼女の心に深く傷を残し、なかなか消えてはくれなかった。

「…っ！リュウガ、リュウガぁぁ！！」

寝ていると突然悲鳴のような叫び声をあげるヒロイン。

「俺はここにいる。大丈夫だ。」

その度にリュウガはヒロインを抱きしめ、優しく囁く。
リュウガの顔を確認し、ホッとしたように胸元に顔を擦り付けるヒロインの頭を優しく撫でていると、「ごめん…ごめんね…」と言って涙を流しながら、またスーッと眠りに落ちていく。

小さく細い身体を抱きしめ、手足の包帯や湿布を見て苦しそうに眉を寄せるリュウガもまた、守り切ってやれなかったことに腹を立て、悔しく思っていた。