後編

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シリウス海賊団は戦況を見るなり愕然とした。

ほとんどの海賊たちが殲滅したのは聞いていたが、ここまでだとは正直信じられなかった。
嵐の海に浮かぶ無数の船の残骸はほぼ元海賊船であることが分かる。


幸いリカー海賊団は死闘を潜り抜けており、戦闘海域に着く前に合流することができた。

ロイ「セシルが雨の宝珠を奪われたのは、ちょうどお前たちがドクロ島に着いた頃だ・・・」

血だらけのロイや、ファジー、トム、コリンを手当てしながら戦況を聞いた。

雨の宝珠によって若干優勢を保っていた海賊側だったが、その日セシルの元に一通の手紙が届いた。
このまま雨の宝珠を使い続ければ、双方ひどい被害をうむことは明らかだった。
そこで、例のヒロインをさらった海軍の大尉は、野心家のセシルにある提案をした。

『一旦戦いをやめて、和平協定を結ぼうではないか。協定を結べば海軍はお前たちに手出しはしないし、ある程度お前たちの意見を聞き入れよう。そうなれば、お前はこの戦いを収めた海賊として、さらに海軍にも顔が利く海賊として、他の海賊たちから崇拝されるだろう。つまり、お前は現海賊王よりも多くの支持を集めることが出来よう。・・・海賊王になりたくはないか?』



トワ「そんな都合のいい・・・!!?」
トワが思わず叫ぶ。

ロイ「あぁ、普通なら注意深い奴のことだ、そう簡単に話に乗ることはなかっただろうさ」

ロイはギリッと奥歯を噛み締めた。

リュウガ「雨の宝珠か・・・」

苦虫を噛み潰したような顔をするリュウガに、意味を汲み取れなかったハヤテが聞いた。

ハヤテ「どういうことっすか?船長」

リュウガ「知っての通り、雨の宝珠は強い力を持つ。強い力を持つ宝を弱い人間が持つと勘違いしちまうんだ。・・・自分は最強だと。」

ロイ「雨の宝珠は、奴の欲望を剥き出しにした。船長会議でも口を滑らしてただろ。これさえあれば、世界を征服できる、と。」

雨の宝珠によって、理性が働かなかったセシルは、協定を結ぶ為に海軍の軍艦に足を踏み入れた。
笑顔で出迎えた大尉が片手を上げると、周りの兵は一斉に銃を構えてセシルを取り囲んだ。

こうして、雨の宝珠はセシルよりもさらに欲深い大尉の手に渡った。
それから、大尉が宝珠に理性を奪われるのは一瞬の出来事だった。
宝珠を手にした大尉は、気が狂ったように嵐を起こし、身近にいた海賊を片っ端から倒して行った。

大尉「アーヒャヒャヒャ!!ザマァないな海賊ども!!一人残らずこの雨の宝珠の餌食にしてやる!そしてこの海は俺のモノだぁぁぁ!!」

大尉は気が狂ったように宝珠を使い続けた。
宝珠は嵐を起こすだけでなく、任意の場所に雷を落とすこともできた。

海賊が持つ対肉弾戦用の武器は全く使えず、大砲も弾を込める前に攻撃され、手も足も出ない状況でどんどん船は沈められた。
リカーは、大尉の死角から大砲で奇襲をかけようとしたが、他の海軍に見つかり肉弾戦になった。
幸い、大尉は他の海賊に目がいっており、肉弾戦が得意なリカーは海軍一隻を沈めると、一旦体制を立て直す為に大尉の目が届かない場所まで退避した。
リーとヴァンにカモメ便を飛ばし、こちらに来るよう連絡を取った。その道中、リーは停泊中のシリウス号を見つけたのだった。

ロイ「とにかく、あの大尉の目に止まってしまえば雷を落とされて最後だ。どうやって奴に気付かれずに近づき、雨の宝珠を奪うかが問題だ」

ロイが見た海軍の配置、大尉のいる場所、沈没船の位置を海図に書き込み、これからの作戦を練る。

シン「この嵐ですからね、小船で軍艦に近づくのは難しいでしょう」

シンが窓の外を見てため息をつく。

???「なら、俺の用意した船を使えばいいさ」

誰も気配を感じなかったのに、食堂の扉の前にはいつの間にかヴァンが立っていた。

リュウガ「・・・相変わらず神出鬼没なジジイだな」

リュウガの言葉にヴァンはニヤリと笑うと、海図を指差した。

ヴァン「大尉の気をそらす為にリー船長も含め、俺たちが囮になってやる。その間に俺の用意した、海軍の船で背後に回り、海軍の制服を着て大尉の船に乗り込め。後は隙を見て雨の宝珠と太陽の宝珠を合わせるんだ」

ヴァンの提案にロイは反対をした。

ロイ「囮だと?相手は雷を操るんだぞ?大尉の目に止まった瞬間船は真っ二つだ!」

ヴァン「まぁ、もちろん一隻じゃああっという間だろうからな。俺もいろんなツテを使ってなるべく小回りのきく船をできるだけ集めた。幸い嵐のおかげで風は強いからな。なるべく撹乱するようにするさ」


ソウシ「・・・危険だけれどそれしか方法はないかもしれないね・・・」

ロイ「んな!?センセーまで!!?」

ソウシは決心したように頷くと、自分も囮になると言った。

ソウシ「大尉の船に乗り込むのは、なるべく腕が立つ人の方がいい。私は囮としてできるだけ手助けをするよ」

トワ「僕も、囮になります。僕はナギさんから教えてもらった大砲で応戦します!」

シン「・・・船長、俺も船に残り囮になります。誰かがこの船を護らなきゃいけないからな。俺はこの船で奴らを撹乱してやるさ。」

リュウガは腕組みをし、海図を睨んでいた。

リュウガ「・・・どうしたって犠牲は出ちまうか・・・」

はぁ、と頭をかくリュウガにヴァンは苦笑いをした。

ヴァン「オイオイ、甘いこと言ってんじゃねぇよ。ここまできたら、どれだけ早く決着をつけるかが問題だ。それこそ、無駄な犠牲を出す前にな。」

リュウガ「・・・分かってるさ。」

そう言って一呼吸置くと、リュウガは立ち上がり全員を見渡した。

リュウガ「ナギ、ハヤテ、お前らは俺と一緒に海軍に変装して敵陣へ乗り込むぞ。ソウシ、シン、トワ、お前らは囮としてヴァン船長と共にこの船で奴らを撹乱してくれ」

「「「アイアイサー!!!」」」

全員がリュウガの言葉に応えると、食堂の壁にもたれかかって座っていたファジーが突然立ち上がった。

ファジー「アタイも、この船で囮になるよ!」

ソウシ「ファジー!君は重傷なんだ!急に動いたらダメだ!」

ソウシが慌てて止める。

ファジー「何を言ってるんだい、ソウシ様!!アタイはリカーの女海賊ファジー様だよ!例え重傷でも、舵を切るシン様の盾になる事はできる!」

シン「ファジー・・・」

驚いたシンが、ファジーを見た。

ファジー「イヤだね、シン様。そんな熱い視線を投げかけてくれるだなんて・・・とうとうアタイに惚れたかい?」

くねっと身体を揺らすファジーにいつも通りの冷たい視線を投げるシン。

シン「いや、全く。・・・だがその心意気は評価する。さすがだな」

シンが笑うと、ファジーの頬は紅潮した。

ソウシ「ふふふ、ファジーは頼もしいね」

トドメの一撃であるソウシの言葉にファジーは舞い上がった。

ファジー「任せておいてくれよ、リュウガ!シリウス号はアタイが全力で守るよ!!」

鼻息荒く、宣言するファジーに、ロイはがっくりと肩を落とした。

ロイ「おい、お前はリカー海賊団じゃなかったのか、ファジー・・・」

「まぁ、だが我らのリカー号はボロボロで、もはや戦闘は出来ないからな・・・。センセーには治療してもらったし、俺もこのシリウス号を守ってやろうじゃないか。」

ニカっと笑い、拳を差し出したロイに、リュウガは自分の拳を当てた。

リュウガ「あぁ、頼む」
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