後編
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それから弟がどうして海賊王になったのかは知らないが、俺の方は無事傭兵として雇われた。
とにかく戦果をあげて有名になければと思っていたので、時には海軍と相対し、軍艦を一人で沈めたこともあった。
そのおかげか、海軍からは頻繁に雇われるようになった。
そして信用されるようになった頃、海軍内部に入り込み、"太陽の宝珠"の在処を見つけた。
モルドーという島にあること、そして代々その島の姫君に御守りとして受け継がれているのだということを知った。
島を出て、ここに至るまでに女の扱いも上手くなった。モルドーの姫君を惚れさせるのは恐らくそんなに難しくはないだろうから、まずはモルドー帝国に傭兵として雇ってもらわなければならなかった。
役人「お前が伝説の剣士か。噂は聞いているが、この目で確かめなければ雇うことはできない。この帝国で一番腕の立つ者と一戦交えてもらう。いいな。」
兄「あぁ」
目の前に現れたのは姫の護衛だという男だった。
目の前に立っただけで強い、と感じた。
兄「久しぶりに腕が鳴りそうだ。」
先手必勝とばかりに地面を蹴飛ばすと、相手の胸元に剣先を突き刺そうとするが、間一髪のところで弾かれた。
振り返しの剣を避けるために後ろに飛び退く。
その後も剣先が交わるばかりで、一向にダメージを与えることはできなかった。
役人「そこまでだ!!」
兄「へえ、アンタなかなかやるな。」
ディアス「姫の護衛のディアスだ。アンタこそいい腕前だ。」
差し出して来た手を握り、挨拶を交わす。
その後、傭兵として採用された俺は、姫君にも紹介された。
大切に育ててこられたことがよく分かる、大人しそうな姫君だった。
この子ならオトせる。
そう直感した俺は、姫君が一人になる時を見計らった。
夜、誰もが寝静まった頃、姫の部屋が見える中庭で様子を伺っていると、部屋の窓が開き姫君がコソコソと中庭に出て来た。
気配を消して後をつけていくと、外から見ると気付かないが、低木の脇を抜けると薔薇のドームになっている場所があった。
そこへ周りを見渡しながら入っていく姫君。
声をかけようとドームの中に入った瞬間、気配を感じて剣を抜いた。
姫「きゃっ・・・!」
剣と剣がぶつかる音と共に姫君が小さく叫んだ。
兄「お前は・・・リュウガ?」
剣の先にいたのは紛れもなく弟リュウガだった。海賊王リュウガと同じ顔だとバレないよう常に布でマスクをして顔を隠していたが、それを取ると、弟の顔が明るくなった。
弟「おぉ!久しぶりじゃねぇか!元気にしてたか?」
お互い剣を収めると、きつく抱き合った。
島を出て以来の再会だった。
兄「風の噂で、お前が海賊王になったのは知っていたが、ここで何してんだ?」
そういうと、弟は頬を少し染めて、姫君の肩を抱いた。
弟「俺はこの人を愛しているんだ!」
宝珠の為に嘘をついているようには思わなかった。
兄「だが、お前は海賊で、この方は帝国の姫君だぞ?どうするつもりだ?」
弟「駆け落ちをする!」
弟の突拍子も無い言葉に愕然とする。
なんて相変わらずなんだ・・・
そんな俺に姫君も言った。
姫君「私はリュウガと共に在りたいのです。祖国を捨ててでも・・・。」
姫君は弟の手に小さな箱を置いた。
それは探し求めていた"太陽の宝珠"だった。
姫君「これは私の一番大切なもの。これを私の心として貴方に渡しておくわ。」
弟「こんなん無くても、俺はお前のことを信じているぞ?」
姫君「ううん、貴方に持っていて欲しい。半月後に父が出張に行くの。その時に駆け落ちしましょう。」
そう言い終わった時に、何者かが近付いてくる気配を感じた。
兄「姫君、誰か来ます。早く外へ!お前も早く行くんだ!」
弟「姫、半月後に必ず!あと、これはお前に!俺の居場所だ!!」
そう言って紙を渡すと、弟はすぐに気配を消して城から出て行った。
姫君「ありがとう。貴方のおかげで見つからずに帰って来ることができました。」
兄「いえ・・・・どうかゆっくりお休みください」
軽く頭を下げながら窓を閉めると、背中にサーベルが突き付けられた。
ディアス「・・・何をしていた?」
両手を上げながら、軽い口調で答える。
兄「お前さんも知ってんだろ?」
ディアスの方を向くと、僅かに眉を寄せたのが分かる。
先程の場所で感じた気配は恐らくこいつだ。
今までもあそこで何度も2人が会っているのを黙認していたのだろう。
ディアス「その口元の布を取れ」
サーベルを突き付けたままのディアスに、やれやれと言った感じで口元の布を下にずらす。
ディアス「・・・!?貴様一体何者だ?」
兄「分かったよ。話してやるから場所を移動しないか?姫さんが怪しむぜ?」
その言葉に大人しくサーベルを収め、付いて来いと言った。
中庭の一角、姫君の部屋が見える小窓が1つあるだけの小さな小屋。おそらくディアスの住処だろうと思われるが、驚くほど何もない。
兄「ショボい家だな。姫さんの護衛なんだから、もっと豪華なところに住んでんのかと思ったぜ」
ディアス「・・・俺は姫さえ護れればそれでいい。他にはなにもいらん」
カチャ、と再びサーベルが突き付けられる。
ディアス「それで?貴様は何者だ?海賊王では無いのだろう?」
兄「へえ。会話までは聞いてないんだな。」
ディアスがサーベルを近づけ、殺気立つ。
兄「わーったよ。そう凄むなって。俺はアイツの双子の兄だよ」
ディアス「・・・双子?」
兄「あぁ、色々あって、アイツは海賊王、俺は傭兵をやってんだ。って事で俺は正真正銘この国に雇われた傭兵だ。今は敵じゃねぇよ。」
ディアスはサーベルを収め、少し考え込んだ。
ディアス「そうか・・・ではお前に頼みがある。姫は月に数回、あの場所で海賊王と会っている。が、薄々王に勘付かれ始めた。」
数ヶ月前に御忍びで市場に遊びに来ていた姫と、リュウガは偶然出会った。2人は一目で恋に落ち、逢瀬を繰り返すようになった。
姫が恋していることは誰の目から見ても明白だった。そうなると、相手はだれか、という事になる。王は焦り、どこぞの馬の骨に夢中になってはいけないと、急いで婚約者との面会を決めた。俺は半月後に王が姫の婚約者を連れて来る為の護衛として雇われたらしい。
ディアス「それまでは比較的自由に過ごせるはずだ。だから姫と海賊王の手伝いをしてくれないか?」
兄「あ?お前は2人の仲を取り持つのか?王に雇われた姫さんの護衛だろ?」
意外だった。弟を止めろと言われると思っていたが、まさか手伝えとは・・・
ディアス「俺は姫さえ幸せならそれでいいんだ・・・」
淡々と言っているようで、言葉の端々に寂しさが滲む。
兄「ディアスお前・・・姫さんのことを・・・」
ディアス「俺のことはいい。姫と海賊王のことをよろしく頼む」
姫の為に自分の全てを捧げるこの男の頼みを断る事は出来なかった。
その後、帝国の目を掻い潜り、リュウガと合流し、駆け落ちまでの手筈を整えていた。
その日俺は王の護衛につかねばならないため、見届ける事は叶わないが、上手くいくように細心の注意は払ったはずだった。
だが・・・
その日、王と大勢の護衛と共に行った先は、駆け落ちの待ち合わせ場所だった。
兄「・・・ここは?今日は婚約者を迎えにいくのでは無かったのか?」
近くの護衛に動揺がバレないように尋ねる。
護衛「あぁ、お前には伝わってなかったか。婚約者を迎えに行くというのは嘘だ。姫に付き纏うネズミを捕まえに来たんだよ。そのネズミってのがな、聞いて驚け、なんと海賊王なんだってよ!」
王は全てを知っていた!?
その上で泳がせて、駆け落ちの為にやってくるアイツを殺すつもりだったのかーーー!!?
まさかディアスが・・・?
そう思った瞬間、銃声が鳴り響いた。
弟「っかしいなぁ。俺は可憐な姫君を迎えに来たはずなんだが・・・。こんなむさ苦しい奴等の面を拝みに来たわけじゃねぇよ?」
利き腕を撃ち抜かれた弟がそこにはいた。
王「ようも、我が姫をたぶらかしてくれたな!容赦はせんぞ!」
もはや反射だった。
思うより先に身体が動いた。
弟に襲いかかる護衛たちを次々と倒していく。
だが人数が多い上に場所が悪い。
人目につかないよう選んだ場所は、木々に隠された城の抜け道に続く扉の前。抜け道は人1人がようやく通れるほどの海岸に続く道がある以外は断崖絶壁だった。
道の先で戦う弟に追いつくまではまだ数人倒さなければならない。
弟「ぐぅっ・・・!」
その声に弟を見ると、やはり利き腕が使えないためか、かなり負傷している。出血量も多い。
その時、弟は空に向かって銃を3回打った。
何かあった時のために本船に逃げるよう伝える合図。
兄「チッ・・・!」
この場は逃げるしかない。が、下は岩場。
一か八かにかけ、弟の所まで護衛たちを飛び越えるとその勢いのままやつを抱えて数十メートルもある崖の上から飛び降りた。
とにかく戦果をあげて有名になければと思っていたので、時には海軍と相対し、軍艦を一人で沈めたこともあった。
そのおかげか、海軍からは頻繁に雇われるようになった。
そして信用されるようになった頃、海軍内部に入り込み、"太陽の宝珠"の在処を見つけた。
モルドーという島にあること、そして代々その島の姫君に御守りとして受け継がれているのだということを知った。
島を出て、ここに至るまでに女の扱いも上手くなった。モルドーの姫君を惚れさせるのは恐らくそんなに難しくはないだろうから、まずはモルドー帝国に傭兵として雇ってもらわなければならなかった。
役人「お前が伝説の剣士か。噂は聞いているが、この目で確かめなければ雇うことはできない。この帝国で一番腕の立つ者と一戦交えてもらう。いいな。」
兄「あぁ」
目の前に現れたのは姫の護衛だという男だった。
目の前に立っただけで強い、と感じた。
兄「久しぶりに腕が鳴りそうだ。」
先手必勝とばかりに地面を蹴飛ばすと、相手の胸元に剣先を突き刺そうとするが、間一髪のところで弾かれた。
振り返しの剣を避けるために後ろに飛び退く。
その後も剣先が交わるばかりで、一向にダメージを与えることはできなかった。
役人「そこまでだ!!」
兄「へえ、アンタなかなかやるな。」
ディアス「姫の護衛のディアスだ。アンタこそいい腕前だ。」
差し出して来た手を握り、挨拶を交わす。
その後、傭兵として採用された俺は、姫君にも紹介された。
大切に育ててこられたことがよく分かる、大人しそうな姫君だった。
この子ならオトせる。
そう直感した俺は、姫君が一人になる時を見計らった。
夜、誰もが寝静まった頃、姫の部屋が見える中庭で様子を伺っていると、部屋の窓が開き姫君がコソコソと中庭に出て来た。
気配を消して後をつけていくと、外から見ると気付かないが、低木の脇を抜けると薔薇のドームになっている場所があった。
そこへ周りを見渡しながら入っていく姫君。
声をかけようとドームの中に入った瞬間、気配を感じて剣を抜いた。
姫「きゃっ・・・!」
剣と剣がぶつかる音と共に姫君が小さく叫んだ。
兄「お前は・・・リュウガ?」
剣の先にいたのは紛れもなく弟リュウガだった。海賊王リュウガと同じ顔だとバレないよう常に布でマスクをして顔を隠していたが、それを取ると、弟の顔が明るくなった。
弟「おぉ!久しぶりじゃねぇか!元気にしてたか?」
お互い剣を収めると、きつく抱き合った。
島を出て以来の再会だった。
兄「風の噂で、お前が海賊王になったのは知っていたが、ここで何してんだ?」
そういうと、弟は頬を少し染めて、姫君の肩を抱いた。
弟「俺はこの人を愛しているんだ!」
宝珠の為に嘘をついているようには思わなかった。
兄「だが、お前は海賊で、この方は帝国の姫君だぞ?どうするつもりだ?」
弟「駆け落ちをする!」
弟の突拍子も無い言葉に愕然とする。
なんて相変わらずなんだ・・・
そんな俺に姫君も言った。
姫君「私はリュウガと共に在りたいのです。祖国を捨ててでも・・・。」
姫君は弟の手に小さな箱を置いた。
それは探し求めていた"太陽の宝珠"だった。
姫君「これは私の一番大切なもの。これを私の心として貴方に渡しておくわ。」
弟「こんなん無くても、俺はお前のことを信じているぞ?」
姫君「ううん、貴方に持っていて欲しい。半月後に父が出張に行くの。その時に駆け落ちしましょう。」
そう言い終わった時に、何者かが近付いてくる気配を感じた。
兄「姫君、誰か来ます。早く外へ!お前も早く行くんだ!」
弟「姫、半月後に必ず!あと、これはお前に!俺の居場所だ!!」
そう言って紙を渡すと、弟はすぐに気配を消して城から出て行った。
姫君「ありがとう。貴方のおかげで見つからずに帰って来ることができました。」
兄「いえ・・・・どうかゆっくりお休みください」
軽く頭を下げながら窓を閉めると、背中にサーベルが突き付けられた。
ディアス「・・・何をしていた?」
両手を上げながら、軽い口調で答える。
兄「お前さんも知ってんだろ?」
ディアスの方を向くと、僅かに眉を寄せたのが分かる。
先程の場所で感じた気配は恐らくこいつだ。
今までもあそこで何度も2人が会っているのを黙認していたのだろう。
ディアス「その口元の布を取れ」
サーベルを突き付けたままのディアスに、やれやれと言った感じで口元の布を下にずらす。
ディアス「・・・!?貴様一体何者だ?」
兄「分かったよ。話してやるから場所を移動しないか?姫さんが怪しむぜ?」
その言葉に大人しくサーベルを収め、付いて来いと言った。
中庭の一角、姫君の部屋が見える小窓が1つあるだけの小さな小屋。おそらくディアスの住処だろうと思われるが、驚くほど何もない。
兄「ショボい家だな。姫さんの護衛なんだから、もっと豪華なところに住んでんのかと思ったぜ」
ディアス「・・・俺は姫さえ護れればそれでいい。他にはなにもいらん」
カチャ、と再びサーベルが突き付けられる。
ディアス「それで?貴様は何者だ?海賊王では無いのだろう?」
兄「へえ。会話までは聞いてないんだな。」
ディアスがサーベルを近づけ、殺気立つ。
兄「わーったよ。そう凄むなって。俺はアイツの双子の兄だよ」
ディアス「・・・双子?」
兄「あぁ、色々あって、アイツは海賊王、俺は傭兵をやってんだ。って事で俺は正真正銘この国に雇われた傭兵だ。今は敵じゃねぇよ。」
ディアスはサーベルを収め、少し考え込んだ。
ディアス「そうか・・・ではお前に頼みがある。姫は月に数回、あの場所で海賊王と会っている。が、薄々王に勘付かれ始めた。」
数ヶ月前に御忍びで市場に遊びに来ていた姫と、リュウガは偶然出会った。2人は一目で恋に落ち、逢瀬を繰り返すようになった。
姫が恋していることは誰の目から見ても明白だった。そうなると、相手はだれか、という事になる。王は焦り、どこぞの馬の骨に夢中になってはいけないと、急いで婚約者との面会を決めた。俺は半月後に王が姫の婚約者を連れて来る為の護衛として雇われたらしい。
ディアス「それまでは比較的自由に過ごせるはずだ。だから姫と海賊王の手伝いをしてくれないか?」
兄「あ?お前は2人の仲を取り持つのか?王に雇われた姫さんの護衛だろ?」
意外だった。弟を止めろと言われると思っていたが、まさか手伝えとは・・・
ディアス「俺は姫さえ幸せならそれでいいんだ・・・」
淡々と言っているようで、言葉の端々に寂しさが滲む。
兄「ディアスお前・・・姫さんのことを・・・」
ディアス「俺のことはいい。姫と海賊王のことをよろしく頼む」
姫の為に自分の全てを捧げるこの男の頼みを断る事は出来なかった。
その後、帝国の目を掻い潜り、リュウガと合流し、駆け落ちまでの手筈を整えていた。
その日俺は王の護衛につかねばならないため、見届ける事は叶わないが、上手くいくように細心の注意は払ったはずだった。
だが・・・
その日、王と大勢の護衛と共に行った先は、駆け落ちの待ち合わせ場所だった。
兄「・・・ここは?今日は婚約者を迎えにいくのでは無かったのか?」
近くの護衛に動揺がバレないように尋ねる。
護衛「あぁ、お前には伝わってなかったか。婚約者を迎えに行くというのは嘘だ。姫に付き纏うネズミを捕まえに来たんだよ。そのネズミってのがな、聞いて驚け、なんと海賊王なんだってよ!」
王は全てを知っていた!?
その上で泳がせて、駆け落ちの為にやってくるアイツを殺すつもりだったのかーーー!!?
まさかディアスが・・・?
そう思った瞬間、銃声が鳴り響いた。
弟「っかしいなぁ。俺は可憐な姫君を迎えに来たはずなんだが・・・。こんなむさ苦しい奴等の面を拝みに来たわけじゃねぇよ?」
利き腕を撃ち抜かれた弟がそこにはいた。
王「ようも、我が姫をたぶらかしてくれたな!容赦はせんぞ!」
もはや反射だった。
思うより先に身体が動いた。
弟に襲いかかる護衛たちを次々と倒していく。
だが人数が多い上に場所が悪い。
人目につかないよう選んだ場所は、木々に隠された城の抜け道に続く扉の前。抜け道は人1人がようやく通れるほどの海岸に続く道がある以外は断崖絶壁だった。
道の先で戦う弟に追いつくまではまだ数人倒さなければならない。
弟「ぐぅっ・・・!」
その声に弟を見ると、やはり利き腕が使えないためか、かなり負傷している。出血量も多い。
その時、弟は空に向かって銃を3回打った。
何かあった時のために本船に逃げるよう伝える合図。
兄「チッ・・・!」
この場は逃げるしかない。が、下は岩場。
一か八かにかけ、弟の所まで護衛たちを飛び越えるとその勢いのままやつを抱えて数十メートルもある崖の上から飛び降りた。