前編
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ランドルフは海賊王として、海の平定に苦心していた。
当時、海を4つに分けてはおらず、海賊王1人がこの広い海を統べていた。
しかし、どうしても目の届かない辺境の地では反乱が起こりやすい。
そこで、ランドルフは海を4つに分け、それぞれの海を統べる代表を選ぶことにするのだが、それはまだ先の話しである。
この時も、ランドルフ一行は辺境の地であるヤマト付近で反乱が起きているとの一報を受け、それを制圧しに来ていた。
だが、ヤマト付近は渦潮がいつどこに発生するのか読みにくい。
ランドルフたちが着いた時には、反乱を起こしていた海賊たちの船は渦潮に巻き込まれそうになっていた。
そんな時、船の破片にしがみついて溺れそうになっている1人の女を見つけた。
恐らく、運良くヤマトに着いたその海賊が攫って来た女であろうが、ヤマトを出港したところで渦潮に巻き込まれたのだろう。
ランドルフは躊躇いもせず、海に飛び込んだ。
ネストル「船員は全員で止めたんだがな。それを無視して、渦潮の近くに辛うじて浮かんでいたヤエの元に飛び込んだんだ。」
その時を思い出して、ネストルは苦笑する。
ネストル「普通の海賊ならそこで死んでるだろうよ。だが、あいつは無事に船に帰って来た。瀕死のヤエを連れて・・・」
それから、船医を伴いヤエを必死で看病した。ランドルフ自ら寝る間を惜しんで。
その甲斐あって、ヤエは数日後に目を覚ました。
だが、海賊たちに相当酷い目に合わされたのだろう。今いる場所が海賊船だと分かると、怯え、何度も海に飛び込もうとした。
その度にランドルフは、叩かれようと、噛みつかれようと、ヤエを抱きしめて止めていた。
ネストル「本来ならばすぐにでもヤマトに行って、看病してやりたかったが、反乱の一報を受けた海軍が巡回をしてたからな、ヤマトには近づけなかったんだ。」
そんな日々を繰り返すうちに、ヤエはランドルフを受け入れるようになった。
それからの二人はとても幸せそうだった。
ヤエはとても気遣いが出来、優しい女だった。
荒くれ者揃いの海賊王の船だったが、全員がヤエの優しさに癒されていた。
そんな矢先、ランドルフの船に海軍の軍隊が押し寄せて来た。
仰々しく罪状を掲げて。
「ヤマトの民を無理矢理攫い、人身売買をしている」
リュウガ「・・・その罪状でヤエを連れ去り、娶るつもりだったのか?」
ネストル「あぁ、そうだ。この頃からヤマトの女は海軍のステータスだったんだよ」
リュウガ「それにしても、軍隊たぁ、大袈裟だな」
呆れたように肩を竦めると、杯を煽る。
ネストル「なんてったって、やって来たのは海軍の総督様だったからな。」
片眉を釣り上げて言うネストルに、リュウガは苦虫を噛み潰したような顔をして答えた。
リュウガ「昔からお偉いさんのする事は変わんねーな。権力の為なら何でもするのか」
ヒロインは話を聞きながら、ギュッと手を握ると、リュウガは、落ち着くようにそっと背中を摩った。
そんな二人を優しい眼差しで見ていたネストルは、一呼吸置いて続きを話し始めた。
総督はランドルフに話し合いを持ち掛けた。
ここで海賊王が総攻撃を受けて、海に無秩序をもたらすか
大人しくヤマトの女をこちらに渡すか
ネストル「ヤエは賢い女だった。そんな長い時間を共にした訳では無かったが、海賊王の役割を理解していたんだ。」
海賊王が海からいなくなれば、海賊たちは私利私欲に溺れ、海は荒れてしまうだろう。
ヒロイン「おばあちゃんは、自ら海軍に行ったんですね?」
ネストルは頷いた。
ネストル「あぁ、ランドルフも船員も全員お前を護るからいくな、と言ったが、聞かなかったよ。海賊王ですら、あの頑とした態度には折れるしか無かった。」
そしてヤエは海軍総督の元へ行った。
ランドルフと、
必ず迎えに行く
という約束を交わして
ネストル「それからしばらく経ってのことだ。ヤエが総督の元から逃げたという話しを聞いたのは」
総督の元に、ヤエの味方をしてくれる人がいたらしく、逃亡の手助けをしたということまでは分かったが、その後のヤエの行方はなかなか分からなかった。
そして、海を4つに分け、それぞれを治める海賊の代表を選び、海に秩序が訪れた頃に、ランドルフはヤマトに行くことにした。
どうにかして、ヤマトに帰っていることを願って。
だが、誰に聞いてもヤエという女を知る者はいなかった。
ネストル「しばらくヤマトに滞在したんだが、全くと言っていい程情報が集まらなかった。」
それからも、島に降り立つ度にヤエの情報を集めた。
しかし、何も分からなかった。
生きているのか、死んでいるのかも・・・
ネストル「ランドルフは、一生をかけてヤエを探したんだ。だが見つからず、約束を果たせぬ自分を、死ぬその時まで悔やんでいたよ。自分に力があれば、ヤエを手放す事なく、共に在る事が出来たのに・・・と。」
ネストルは悔しそうに、グラスを持つ手に力を込めた。
そして、ふっと力を抜くと、ヒロインを見つめた。
ネストル「だが、ヤエはヤマトに戻り、良き伴侶を得て子を産み、暮らしていたのだな」
そう言い、何十年も心につかえていた重荷を吐き出すように、ホッと安堵の息を漏らした。
そんなネストルに、ヒロインはふるふると首を振る。
ヒロイン「いえ、おばあちゃんは生涯一人の男性しか愛しませんでした。」
「きっと、その相手がランドルフさんだったんですね・・・」
ネストルもリュウガも、その言葉に目を見開いた。
リュウガ「つまりは、お前のじいさんが前海賊王のランドルフということか!?」
あまりの驚きに思わず声を荒げてしまう。
ヒロイン「そうだと思います。だって、母はそんな祖母を誇りに思っていましたから。」
ネストルは声を震わせながら、信じられないというように、ヒロインに確認した。
ネストル「ヤエは・・・お前さんの母を身籠っていたのか?あの時にはもう・・・」
ヒロインは真っ直ぐネストルの目を見て頷くと、自分の知る八重の事を話し始めた。
ヒロイン「母から聞いた事しかわかりませんが・・・」
八重は、妊娠が分かるとすぐに協力者と共に命からがら海軍総督の元から逃げ出した。
しかし、八重と名乗っていてはいつ捕まるか分からないので、名を変え、髪型を変え、目立たないように逃げ、なんとかヤマトに辿り着いた。
幸い八重が降り立った場所は、八重の生まれ故郷からは正反対の場所だった。
そのため、自分を知る者が居ない中で、別人として生活を始めることができた。
「違う島で産まれたヤマトの人」
として。
しかし、妊娠中に無理をしたため、無事にヒロインの母を産み落としたものの、産後の肥立ちが悪く床に伏す日々が続いた。
協力者がなんとか生活を工面し、その日暮らしをしていたが、娘が8つになる頃、八重は息を引き取った。
ネストル「・・・何ということだ・・・。」
ネストルは両手で顔を覆うと、辛そうに肩を震わせた。
ネストル「あの時、海軍なんかに渡さなければ、ヤエはランドルフと共に幸せな日々を暮らせたかもしれないのに・・・っ!」
ヒロインは、ネストルの手をそっと取ると、自分の両手で挟んだ。
そして、にっこりと笑った。
ヒロイン「祖母は幸せでした。短かったけど、自分が一番愛した人と、共に過ごせたこと、そしてその子を宿したこと。」
「母にはいつも、笑顔で祖父の事を話していたそうです。仲間想いで、優しくて、強くて、お髭がとっても似合っていたと」
ネストル「・・・っつ!!・・・ヤエっ・・・!!」
ネストルの両目から大粒の涙が滴り落ちた。
ヒロイン「母は幼心にとても憧れたと言っていました。祖母と祖父の関係が、とても愛し合っていた2人が」
「おじいちゃんも、おばあちゃんをとても愛していたのですね・・・」
ヒロインはネストルの話を聞いて、母から伝え聞いた話しが本当であったと、確信したように呟いた。
ネストルは大粒の涙を流しながら、ヒロインの肩にそっと手を置いた。
ネストル「・・・お前さんを祖父の弟として、抱き締めてもいいかな?」
ヒロイン「もちろんですよ、大叔父さん」
ネストルの胸の中にヒロインは飛び込んだ。
肩に顔を埋めて涙を流す。
そんな二人を、リュウガをはじめとするシリウスのメンバーは、それぞれの場所から温かく見守った。
当時、海を4つに分けてはおらず、海賊王1人がこの広い海を統べていた。
しかし、どうしても目の届かない辺境の地では反乱が起こりやすい。
そこで、ランドルフは海を4つに分け、それぞれの海を統べる代表を選ぶことにするのだが、それはまだ先の話しである。
この時も、ランドルフ一行は辺境の地であるヤマト付近で反乱が起きているとの一報を受け、それを制圧しに来ていた。
だが、ヤマト付近は渦潮がいつどこに発生するのか読みにくい。
ランドルフたちが着いた時には、反乱を起こしていた海賊たちの船は渦潮に巻き込まれそうになっていた。
そんな時、船の破片にしがみついて溺れそうになっている1人の女を見つけた。
恐らく、運良くヤマトに着いたその海賊が攫って来た女であろうが、ヤマトを出港したところで渦潮に巻き込まれたのだろう。
ランドルフは躊躇いもせず、海に飛び込んだ。
ネストル「船員は全員で止めたんだがな。それを無視して、渦潮の近くに辛うじて浮かんでいたヤエの元に飛び込んだんだ。」
その時を思い出して、ネストルは苦笑する。
ネストル「普通の海賊ならそこで死んでるだろうよ。だが、あいつは無事に船に帰って来た。瀕死のヤエを連れて・・・」
それから、船医を伴いヤエを必死で看病した。ランドルフ自ら寝る間を惜しんで。
その甲斐あって、ヤエは数日後に目を覚ました。
だが、海賊たちに相当酷い目に合わされたのだろう。今いる場所が海賊船だと分かると、怯え、何度も海に飛び込もうとした。
その度にランドルフは、叩かれようと、噛みつかれようと、ヤエを抱きしめて止めていた。
ネストル「本来ならばすぐにでもヤマトに行って、看病してやりたかったが、反乱の一報を受けた海軍が巡回をしてたからな、ヤマトには近づけなかったんだ。」
そんな日々を繰り返すうちに、ヤエはランドルフを受け入れるようになった。
それからの二人はとても幸せそうだった。
ヤエはとても気遣いが出来、優しい女だった。
荒くれ者揃いの海賊王の船だったが、全員がヤエの優しさに癒されていた。
そんな矢先、ランドルフの船に海軍の軍隊が押し寄せて来た。
仰々しく罪状を掲げて。
「ヤマトの民を無理矢理攫い、人身売買をしている」
リュウガ「・・・その罪状でヤエを連れ去り、娶るつもりだったのか?」
ネストル「あぁ、そうだ。この頃からヤマトの女は海軍のステータスだったんだよ」
リュウガ「それにしても、軍隊たぁ、大袈裟だな」
呆れたように肩を竦めると、杯を煽る。
ネストル「なんてったって、やって来たのは海軍の総督様だったからな。」
片眉を釣り上げて言うネストルに、リュウガは苦虫を噛み潰したような顔をして答えた。
リュウガ「昔からお偉いさんのする事は変わんねーな。権力の為なら何でもするのか」
ヒロインは話を聞きながら、ギュッと手を握ると、リュウガは、落ち着くようにそっと背中を摩った。
そんな二人を優しい眼差しで見ていたネストルは、一呼吸置いて続きを話し始めた。
総督はランドルフに話し合いを持ち掛けた。
ここで海賊王が総攻撃を受けて、海に無秩序をもたらすか
大人しくヤマトの女をこちらに渡すか
ネストル「ヤエは賢い女だった。そんな長い時間を共にした訳では無かったが、海賊王の役割を理解していたんだ。」
海賊王が海からいなくなれば、海賊たちは私利私欲に溺れ、海は荒れてしまうだろう。
ヒロイン「おばあちゃんは、自ら海軍に行ったんですね?」
ネストルは頷いた。
ネストル「あぁ、ランドルフも船員も全員お前を護るからいくな、と言ったが、聞かなかったよ。海賊王ですら、あの頑とした態度には折れるしか無かった。」
そしてヤエは海軍総督の元へ行った。
ランドルフと、
必ず迎えに行く
という約束を交わして
ネストル「それからしばらく経ってのことだ。ヤエが総督の元から逃げたという話しを聞いたのは」
総督の元に、ヤエの味方をしてくれる人がいたらしく、逃亡の手助けをしたということまでは分かったが、その後のヤエの行方はなかなか分からなかった。
そして、海を4つに分け、それぞれを治める海賊の代表を選び、海に秩序が訪れた頃に、ランドルフはヤマトに行くことにした。
どうにかして、ヤマトに帰っていることを願って。
だが、誰に聞いてもヤエという女を知る者はいなかった。
ネストル「しばらくヤマトに滞在したんだが、全くと言っていい程情報が集まらなかった。」
それからも、島に降り立つ度にヤエの情報を集めた。
しかし、何も分からなかった。
生きているのか、死んでいるのかも・・・
ネストル「ランドルフは、一生をかけてヤエを探したんだ。だが見つからず、約束を果たせぬ自分を、死ぬその時まで悔やんでいたよ。自分に力があれば、ヤエを手放す事なく、共に在る事が出来たのに・・・と。」
ネストルは悔しそうに、グラスを持つ手に力を込めた。
そして、ふっと力を抜くと、ヒロインを見つめた。
ネストル「だが、ヤエはヤマトに戻り、良き伴侶を得て子を産み、暮らしていたのだな」
そう言い、何十年も心につかえていた重荷を吐き出すように、ホッと安堵の息を漏らした。
そんなネストルに、ヒロインはふるふると首を振る。
ヒロイン「いえ、おばあちゃんは生涯一人の男性しか愛しませんでした。」
「きっと、その相手がランドルフさんだったんですね・・・」
ネストルもリュウガも、その言葉に目を見開いた。
リュウガ「つまりは、お前のじいさんが前海賊王のランドルフということか!?」
あまりの驚きに思わず声を荒げてしまう。
ヒロイン「そうだと思います。だって、母はそんな祖母を誇りに思っていましたから。」
ネストルは声を震わせながら、信じられないというように、ヒロインに確認した。
ネストル「ヤエは・・・お前さんの母を身籠っていたのか?あの時にはもう・・・」
ヒロインは真っ直ぐネストルの目を見て頷くと、自分の知る八重の事を話し始めた。
ヒロイン「母から聞いた事しかわかりませんが・・・」
八重は、妊娠が分かるとすぐに協力者と共に命からがら海軍総督の元から逃げ出した。
しかし、八重と名乗っていてはいつ捕まるか分からないので、名を変え、髪型を変え、目立たないように逃げ、なんとかヤマトに辿り着いた。
幸い八重が降り立った場所は、八重の生まれ故郷からは正反対の場所だった。
そのため、自分を知る者が居ない中で、別人として生活を始めることができた。
「違う島で産まれたヤマトの人」
として。
しかし、妊娠中に無理をしたため、無事にヒロインの母を産み落としたものの、産後の肥立ちが悪く床に伏す日々が続いた。
協力者がなんとか生活を工面し、その日暮らしをしていたが、娘が8つになる頃、八重は息を引き取った。
ネストル「・・・何ということだ・・・。」
ネストルは両手で顔を覆うと、辛そうに肩を震わせた。
ネストル「あの時、海軍なんかに渡さなければ、ヤエはランドルフと共に幸せな日々を暮らせたかもしれないのに・・・っ!」
ヒロインは、ネストルの手をそっと取ると、自分の両手で挟んだ。
そして、にっこりと笑った。
ヒロイン「祖母は幸せでした。短かったけど、自分が一番愛した人と、共に過ごせたこと、そしてその子を宿したこと。」
「母にはいつも、笑顔で祖父の事を話していたそうです。仲間想いで、優しくて、強くて、お髭がとっても似合っていたと」
ネストル「・・・っつ!!・・・ヤエっ・・・!!」
ネストルの両目から大粒の涙が滴り落ちた。
ヒロイン「母は幼心にとても憧れたと言っていました。祖母と祖父の関係が、とても愛し合っていた2人が」
「おじいちゃんも、おばあちゃんをとても愛していたのですね・・・」
ヒロインはネストルの話を聞いて、母から伝え聞いた話しが本当であったと、確信したように呟いた。
ネストルは大粒の涙を流しながら、ヒロインの肩にそっと手を置いた。
ネストル「・・・お前さんを祖父の弟として、抱き締めてもいいかな?」
ヒロイン「もちろんですよ、大叔父さん」
ネストルの胸の中にヒロインは飛び込んだ。
肩に顔を埋めて涙を流す。
そんな二人を、リュウガをはじめとするシリウスのメンバーは、それぞれの場所から温かく見守った。