前編
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その日シリウス海賊団はヤマトに停泊することにした。燃料や、食糧の補給と、ちょっと前にあった襲撃戦で船に開けられた穴を修復する為だ。
ヤマトの周りは常に渦潮があり、海流を読むのが難しい。下手をすると海流に飲まれ海の藻屑となるか、座礁するという危険な場所にある為、海賊や、海軍、商船ですらあまり寄りつかない島だった。
その点では流石海賊王の船に乗る航海士と言えるだろう。シンは見事に海流を読み、あの痛んだ船を操り無事ヤマトへ到着することができた。
ヤマトへ来るのは二度目だ。
まだ俺がリュウガと名乗る前、傭兵だった頃に来た記憶がある。
その頃はもっぱら剣の修行に明け暮れていた為、ヤマトのことはほとんど覚えていない。
唯一覚えているとすれば、娼館のことくらいだ。
ヤマトの娼館は数は少ないがとても珍しかった。
檻のように窓が柵になっている部屋にヤマトの伝統衣装であるキモノで着飾った女たちが目を伏せるようにして座っていた。
そして、気に入った女が見つかれば、男が店の者に伝え、案内された部屋で女が座って、床に手と頭をつけた状態で出迎えるという形式だと、当時の兄貴分が言っていた。
今までは娼館の周りにはキツイ匂いを振りまき、キラキラした衣装を身にまとった女が、男の腕を掴んで半強制的とも言える強引さで部屋に連れ込むものだとばかり思っていたし、実際他の島の殆どはそうだった中で、ヤマトの娼館には衝撃を受けた。
柵の向こう側にいる女たちには気品があった。たとえ男に弄ばれる事になろうと、心までは渡さない。それが私のプライドだと言わんばかりの気位を感じさせる女たち。
それが、ヤマトの女は美しく強いと言われる所以であり、大きな魅力の一つだった。
その中でも、一際目を引く女がいた。蘇芳色の打掛が白い肌を際立たせ、更に真紅の唇がとても妖艶であったが、綺麗に結われた髪にはとても可愛らしい薄紅色の花のかんざしが刺さっていた。
思わずじっと見ていると、ふと視線が交わった。
その時に見た、黒真珠のような美しい瞳に吸い込まれそうになったのを覚えている。
あの女はどうなったのかーー
まだいるのであれば、会ってみたいーー
そんな昔のことを思い出していた時だったー
ドンッ!!?
???「きゃっ!!」
体の前面で人とぶつかった。
リュウガ「!?」
(人がいることに気付かなかった。
人の気配を感じないなんて、どんなに酔った時でも無かったのにー)
???「ご、ごめんなさい!私、考え事しながら歩いていて…!」
「お怪我はありませんか?」
目の前で慌ててこちらを見上げてるのは、美しい黒髪と黒い瞳を持った少女だった。
リュウガ「いや、こっちもぼんやりしてた。悪かったな」
「そっちこそ大丈夫か?お嬢ちゃん」
思わずポンッと頭の上に手を乗せてしまった。
リュウガはその見た目故、大人の女性にはモテるが、少女や子供には怯えられるのが常だった。
怯えられるかと思いきや、じーっとこぼれそうな瞳でこちらを見ている。その目に怯えは無い。
不思議な子だ・・・
リュウガは直感でそう思った。
怯えないことも去る事ながら、ぶつかったことが今だに信じられない。
数々の修羅場を経験し、海賊王の代わりとしてその称号を受け取ってからは、常に体全体の神経を研ぎ澄ませていた。
海賊王と知れば逃げる輩がいる一方で、賞金稼ぎや、称号を奪おうと、首を狙う輩も多い。
それが、海賊王という称号が持つ力であり、脅威であった。
そんなリュウガが、ぶつかるまで存在に気付かなかった。
ハヤテ「おーい、船長。なにしてんすか」
トワ「あっ!船長がまた女の人をナンパしてる…」
後ろから仲間の声がする。
ぶつかっただけだ、と返事をしていると、この海賊団の中で一番長く共にいる船医のソウシが少し驚いた顔をした後、怪我は無いかと少女に優しく尋ねていた。
体格差は一目瞭然だった。
180cmもあるリュウガと、160cmも無いだろうその少女。
ぶつかった時、その衝撃は断然少女の方が強かったはずだ。
それなのに、まず相手の心配をした。
美しく強いヤマトの女か・・・
その少女の事が気になったものの、今日は上陸初日なのでやる事がたくさんある。
航海士のシンと料理人のナギに急かされ、別れを告げた。
ヤマトの周りは常に渦潮があり、海流を読むのが難しい。下手をすると海流に飲まれ海の藻屑となるか、座礁するという危険な場所にある為、海賊や、海軍、商船ですらあまり寄りつかない島だった。
その点では流石海賊王の船に乗る航海士と言えるだろう。シンは見事に海流を読み、あの痛んだ船を操り無事ヤマトへ到着することができた。
ヤマトへ来るのは二度目だ。
まだ俺がリュウガと名乗る前、傭兵だった頃に来た記憶がある。
その頃はもっぱら剣の修行に明け暮れていた為、ヤマトのことはほとんど覚えていない。
唯一覚えているとすれば、娼館のことくらいだ。
ヤマトの娼館は数は少ないがとても珍しかった。
檻のように窓が柵になっている部屋にヤマトの伝統衣装であるキモノで着飾った女たちが目を伏せるようにして座っていた。
そして、気に入った女が見つかれば、男が店の者に伝え、案内された部屋で女が座って、床に手と頭をつけた状態で出迎えるという形式だと、当時の兄貴分が言っていた。
今までは娼館の周りにはキツイ匂いを振りまき、キラキラした衣装を身にまとった女が、男の腕を掴んで半強制的とも言える強引さで部屋に連れ込むものだとばかり思っていたし、実際他の島の殆どはそうだった中で、ヤマトの娼館には衝撃を受けた。
柵の向こう側にいる女たちには気品があった。たとえ男に弄ばれる事になろうと、心までは渡さない。それが私のプライドだと言わんばかりの気位を感じさせる女たち。
それが、ヤマトの女は美しく強いと言われる所以であり、大きな魅力の一つだった。
その中でも、一際目を引く女がいた。蘇芳色の打掛が白い肌を際立たせ、更に真紅の唇がとても妖艶であったが、綺麗に結われた髪にはとても可愛らしい薄紅色の花のかんざしが刺さっていた。
思わずじっと見ていると、ふと視線が交わった。
その時に見た、黒真珠のような美しい瞳に吸い込まれそうになったのを覚えている。
あの女はどうなったのかーー
まだいるのであれば、会ってみたいーー
そんな昔のことを思い出していた時だったー
ドンッ!!?
???「きゃっ!!」
体の前面で人とぶつかった。
リュウガ「!?」
(人がいることに気付かなかった。
人の気配を感じないなんて、どんなに酔った時でも無かったのにー)
???「ご、ごめんなさい!私、考え事しながら歩いていて…!」
「お怪我はありませんか?」
目の前で慌ててこちらを見上げてるのは、美しい黒髪と黒い瞳を持った少女だった。
リュウガ「いや、こっちもぼんやりしてた。悪かったな」
「そっちこそ大丈夫か?お嬢ちゃん」
思わずポンッと頭の上に手を乗せてしまった。
リュウガはその見た目故、大人の女性にはモテるが、少女や子供には怯えられるのが常だった。
怯えられるかと思いきや、じーっとこぼれそうな瞳でこちらを見ている。その目に怯えは無い。
不思議な子だ・・・
リュウガは直感でそう思った。
怯えないことも去る事ながら、ぶつかったことが今だに信じられない。
数々の修羅場を経験し、海賊王の代わりとしてその称号を受け取ってからは、常に体全体の神経を研ぎ澄ませていた。
海賊王と知れば逃げる輩がいる一方で、賞金稼ぎや、称号を奪おうと、首を狙う輩も多い。
それが、海賊王という称号が持つ力であり、脅威であった。
そんなリュウガが、ぶつかるまで存在に気付かなかった。
ハヤテ「おーい、船長。なにしてんすか」
トワ「あっ!船長がまた女の人をナンパしてる…」
後ろから仲間の声がする。
ぶつかっただけだ、と返事をしていると、この海賊団の中で一番長く共にいる船医のソウシが少し驚いた顔をした後、怪我は無いかと少女に優しく尋ねていた。
体格差は一目瞭然だった。
180cmもあるリュウガと、160cmも無いだろうその少女。
ぶつかった時、その衝撃は断然少女の方が強かったはずだ。
それなのに、まず相手の心配をした。
美しく強いヤマトの女か・・・
その少女の事が気になったものの、今日は上陸初日なのでやる事がたくさんある。
航海士のシンと料理人のナギに急かされ、別れを告げた。
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