SIRIUS.BOEKI
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あれから数週間――
「おい」
「はい?」
俺はイラつきを押さえながら、コンピューターをいじる手を止めて振り返った。
「さっきからブツブツとうるせーんだよ。気が散る」
「す、すいませんっ。声に出さないと覚えられなくて…小さな声で言ってたつもりなんですけど」
開発部で個室を与えられた俺は仕事に集中できるはず―だったが、何故かコイツのデスクも俺の部屋の中に用意されている。
「Fortran、COBOL、Java、Perl、PHP、Python・・・さっきから何度同じ言葉を繰り返す気だ?とっとと先に進め」
「だって全然覚えられなくて。プログラミング言語の本ってどうしてこう横文字ばっかりで難しいことばっかり書いてるんですか?」
「アホか。言語の種類なんて覚えてもキリがねーだろ。オモチャみてーなのを合わせると一体いくつあるのか正確な数字が出ていない程なんだから」
「そ、そうなんですか…?」
「目的に応じて的確な言語を用いられることが重要だ。とりあえずC言語が呑み込めればJavaやPHPは理解しやすいだろうな…って何だその顔は」
「あのぅ、C言語って何ですか?」
「1972年に開発されたプログラミング言語でコーディング上の自由度が高く、コンパイル速度を考慮した為にコンピューターよりの言語になっているが仕様規格や派生言語も多いから使用できるホームが多い…おい、遠い目をするな」
「はぁ~道のりが遠そうで」
社長の思いつきで●●は俺の部下になったが、彼女は総務の仕事を手放すわけにもいかず、午前は総務、午後はこちらに顔を出すようになっていた。
結局はここで手を出せる仕事なんてないはずなんだが―
やる気だけはあるのか、システムやプログラミングの本を買い込んでは四六時中デスクで拡げている。
俺が何か専門的な言葉を使うたびにいちいち辞書で引いて調べる徹底ぶりだ。
だが、懸命さと反比例してあきれるほど覚えは悪い。
「こんなんじゃネコの手どころか全然お役に立ててない気がしちゃう」
彼女は大きくため息をついた。
「気に病むな。最初から全く期待などしていないから」
俺がそう言うと、むっとした顔をした後、気合いを入れて再び本を読み始める。
本当にわかりやすいヤツだ。
「就業時間は終わってるだろ。いつまでここにいる気だ。帰れ」
「いいえっ!シンさんが残るなら一人にして帰れません!私は部下ですから!」
「チッ」
まだ少し仕事は残っている。
だが後ろでブツブツ言われ続けられては進むものも進みやしない。
「ここはシステム開発部で、貿易実務に特化した社内のコンピュータシステム全般管理と外部へのシステム設計やソフトウエア開発を行っているが、お前にはそんなことは求めていない。できるとも思っていない。何度も言うが、これっぽっちもな」
俺が言い放つと、●●は今度は少しシュンとした表情になった。
「だからとりあえず、飲み物を買って来い」
「へ?」
「俺は味にうるさい。仕事中は、駅前のカフェで買っている特別なエスプレッソしか飲まない。お前の分は好きなものを買え」
財布から札を抜き取って机に置く。
「お前は俺の犬、なんだろ?」
「い、犬じゃないです!ぶ、部下ですっ」
「どっちでも同じようなものだ」
全然違いますけど、と呟きながら、彼女は札を手に出て行った。
●●がようやく戻ってくる頃にはデバッグも最終テストも終えて、仕事は一段落ついていた。
「ちゃんと使いは出来たようだな。褒めてやる」
飲みなれたエスプレッソを流し込むと、落ち着いた。
「うわぁシンさん!コレ、お酒入ってますよ」
彼女は一口飲んでから顔をしかめた。
「カフェ・コレットと言ってエスプレッソに少量の蒸留酒を入れたものだ。たいした量じゃない。って、何でお前も同じものを飲んでるんだ」
「え?部下ですから!シンさんがどんなものを好んで飲んでるのか調査しておこうと思いまして」
ブドウ酒を発酵させたものを含んだエスプレッソを、彼女は時々顔をしかめながら飲み干していた。
「はぁ勝手にしろ。俺は仕事が仕上がったことをプログラムデザイナーに報告してくる。その後は帰るから、もういい。お前は先に帰っていろ」
そう言い残して部屋を出た。
報告を終えて部屋へと戻ると、ここ最近の疲れのうえに少量の酒が効いたのか、彼女は机に突っ伏したまま眠っていた。
「帰れと言ったのに命令をきかねーヤツだな」
ジャケットを脱いで●●の肩に掛ける。
「ぜったい認めてもら…」
彼女がモゴモゴと呟いた。
「寝言か?ったく…」
ふと、寝言を呟く唇が目にとまる。
紅く色づいた唇が透けるように白い肌と対を為して円やかなラインを造っている。
何故か引き寄せられるように
俺は顔を近づけて――
「で?どーするつもりだ?」
急に声がして振り返るとナギが立っていた。
「フン。ノックぐらいしろ」
俺は近付けた顔を離してイラついた声を返した。
「したんだが、それどころじゃねーみたいだったんでな」
ナギがぞんざいに答える。
「デザイナーから仕上がったシステムを営業部が受け取るように言われた」
「ああ」
ディスクに移したものをナギに手渡す。
「…そいつに手を出すな」
受け取ると同時にナギが低い声で口にした。
「なぜお前にそんなことを言われなきゃならねーんだよ」
「どうせお前は本気じゃないんだろ?だったら、遊び半分で手を出すな。そいつはそんな扱いをしていいヤツじゃない」
ナギの真剣な目に俺はわざと意地悪く応える。
「…フーン。社長といい専務といい、お前といい。こんなどこにでもいるような鈍くさい女に、随分と優しいんだな。」
「そんなことはどうでもいい。二度とさっきみたいなふざけた真似はするな」
ナギが俺の胸ぐらを掴んだ。
コイツは言葉を饒舌に喋らない分、本気でイラついた時はすぐに手が出る。
「ふざけてなかったとしたら、どうするって言うんだ?」
買い言葉のように言い放って、俺はナギの手を振り払った。
俺の言葉が意外だったのかナギは一瞬だけ驚いた顔を見せた。
「う~ん…あれ?ナギさん?」
ナギと睨みあっていると、●●が目を覚ました。
「それはコイツが決めることだ」
ナギはそれだけ言い残すと、ディスクを手に、背を向けて出て行った。
「私が決める?ん?何かあったんですか?シンさん??」
「いや、何でもねーよ。10分後に会社の正面前で待ってろ。車を回してくる」
俺はふてくされたように車の鍵を手にした。
「えっ!それって…」
「遅くなったから送ってやる。何かあったら上司の俺の責任が問われるからな。ただし1分でも遅れたら放って帰る。いいな?」
「は、はいっ!」
「おい」
「はい?」
俺はイラつきを押さえながら、コンピューターをいじる手を止めて振り返った。
「さっきからブツブツとうるせーんだよ。気が散る」
「す、すいませんっ。声に出さないと覚えられなくて…小さな声で言ってたつもりなんですけど」
開発部で個室を与えられた俺は仕事に集中できるはず―だったが、何故かコイツのデスクも俺の部屋の中に用意されている。
「Fortran、COBOL、Java、Perl、PHP、Python・・・さっきから何度同じ言葉を繰り返す気だ?とっとと先に進め」
「だって全然覚えられなくて。プログラミング言語の本ってどうしてこう横文字ばっかりで難しいことばっかり書いてるんですか?」
「アホか。言語の種類なんて覚えてもキリがねーだろ。オモチャみてーなのを合わせると一体いくつあるのか正確な数字が出ていない程なんだから」
「そ、そうなんですか…?」
「目的に応じて的確な言語を用いられることが重要だ。とりあえずC言語が呑み込めればJavaやPHPは理解しやすいだろうな…って何だその顔は」
「あのぅ、C言語って何ですか?」
「1972年に開発されたプログラミング言語でコーディング上の自由度が高く、コンパイル速度を考慮した為にコンピューターよりの言語になっているが仕様規格や派生言語も多いから使用できるホームが多い…おい、遠い目をするな」
「はぁ~道のりが遠そうで」
社長の思いつきで●●は俺の部下になったが、彼女は総務の仕事を手放すわけにもいかず、午前は総務、午後はこちらに顔を出すようになっていた。
結局はここで手を出せる仕事なんてないはずなんだが―
やる気だけはあるのか、システムやプログラミングの本を買い込んでは四六時中デスクで拡げている。
俺が何か専門的な言葉を使うたびにいちいち辞書で引いて調べる徹底ぶりだ。
だが、懸命さと反比例してあきれるほど覚えは悪い。
「こんなんじゃネコの手どころか全然お役に立ててない気がしちゃう」
彼女は大きくため息をついた。
「気に病むな。最初から全く期待などしていないから」
俺がそう言うと、むっとした顔をした後、気合いを入れて再び本を読み始める。
本当にわかりやすいヤツだ。
「就業時間は終わってるだろ。いつまでここにいる気だ。帰れ」
「いいえっ!シンさんが残るなら一人にして帰れません!私は部下ですから!」
「チッ」
まだ少し仕事は残っている。
だが後ろでブツブツ言われ続けられては進むものも進みやしない。
「ここはシステム開発部で、貿易実務に特化した社内のコンピュータシステム全般管理と外部へのシステム設計やソフトウエア開発を行っているが、お前にはそんなことは求めていない。できるとも思っていない。何度も言うが、これっぽっちもな」
俺が言い放つと、●●は今度は少しシュンとした表情になった。
「だからとりあえず、飲み物を買って来い」
「へ?」
「俺は味にうるさい。仕事中は、駅前のカフェで買っている特別なエスプレッソしか飲まない。お前の分は好きなものを買え」
財布から札を抜き取って机に置く。
「お前は俺の犬、なんだろ?」
「い、犬じゃないです!ぶ、部下ですっ」
「どっちでも同じようなものだ」
全然違いますけど、と呟きながら、彼女は札を手に出て行った。
●●がようやく戻ってくる頃にはデバッグも最終テストも終えて、仕事は一段落ついていた。
「ちゃんと使いは出来たようだな。褒めてやる」
飲みなれたエスプレッソを流し込むと、落ち着いた。
「うわぁシンさん!コレ、お酒入ってますよ」
彼女は一口飲んでから顔をしかめた。
「カフェ・コレットと言ってエスプレッソに少量の蒸留酒を入れたものだ。たいした量じゃない。って、何でお前も同じものを飲んでるんだ」
「え?部下ですから!シンさんがどんなものを好んで飲んでるのか調査しておこうと思いまして」
ブドウ酒を発酵させたものを含んだエスプレッソを、彼女は時々顔をしかめながら飲み干していた。
「はぁ勝手にしろ。俺は仕事が仕上がったことをプログラムデザイナーに報告してくる。その後は帰るから、もういい。お前は先に帰っていろ」
そう言い残して部屋を出た。
報告を終えて部屋へと戻ると、ここ最近の疲れのうえに少量の酒が効いたのか、彼女は机に突っ伏したまま眠っていた。
「帰れと言ったのに命令をきかねーヤツだな」
ジャケットを脱いで●●の肩に掛ける。
「ぜったい認めてもら…」
彼女がモゴモゴと呟いた。
「寝言か?ったく…」
ふと、寝言を呟く唇が目にとまる。
紅く色づいた唇が透けるように白い肌と対を為して円やかなラインを造っている。
何故か引き寄せられるように
俺は顔を近づけて――
「で?どーするつもりだ?」
急に声がして振り返るとナギが立っていた。
「フン。ノックぐらいしろ」
俺は近付けた顔を離してイラついた声を返した。
「したんだが、それどころじゃねーみたいだったんでな」
ナギがぞんざいに答える。
「デザイナーから仕上がったシステムを営業部が受け取るように言われた」
「ああ」
ディスクに移したものをナギに手渡す。
「…そいつに手を出すな」
受け取ると同時にナギが低い声で口にした。
「なぜお前にそんなことを言われなきゃならねーんだよ」
「どうせお前は本気じゃないんだろ?だったら、遊び半分で手を出すな。そいつはそんな扱いをしていいヤツじゃない」
ナギの真剣な目に俺はわざと意地悪く応える。
「…フーン。社長といい専務といい、お前といい。こんなどこにでもいるような鈍くさい女に、随分と優しいんだな。」
「そんなことはどうでもいい。二度とさっきみたいなふざけた真似はするな」
ナギが俺の胸ぐらを掴んだ。
コイツは言葉を饒舌に喋らない分、本気でイラついた時はすぐに手が出る。
「ふざけてなかったとしたら、どうするって言うんだ?」
買い言葉のように言い放って、俺はナギの手を振り払った。
俺の言葉が意外だったのかナギは一瞬だけ驚いた顔を見せた。
「う~ん…あれ?ナギさん?」
ナギと睨みあっていると、●●が目を覚ました。
「それはコイツが決めることだ」
ナギはそれだけ言い残すと、ディスクを手に、背を向けて出て行った。
「私が決める?ん?何かあったんですか?シンさん??」
「いや、何でもねーよ。10分後に会社の正面前で待ってろ。車を回してくる」
俺はふてくされたように車の鍵を手にした。
「えっ!それって…」
「遅くなったから送ってやる。何かあったら上司の俺の責任が問われるからな。ただし1分でも遅れたら放って帰る。いいな?」
「は、はいっ!」