SIRIUS.BOEKI
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「おいトワ、てめー何避けてんだよ」
オレの顔を見るなりクルリと向きを変えたトワを捕まえる。
「えっ、べ、べつに避けてませんよ…?」
「ほんとかよ。ま、ちょうど良かった。オレ今日はもう仕事終わりなんだよ。お前付き合えよ」
「えっ、僕、今日はちょっと呑みに行く気分じゃあ…」
「はぁ?お前の気分なんて関係ねーし。もう仕事終わりなんだろ?いつもの店に行こうぜ」
「ええ~…」
トワの肩に手を回して強制的に連行する。
受付を通り過ぎようとすると、女達が集まっているのが目に留まった。
「あ、シンさん」
トワが人だかりの中心を見て呟いた。
その声が聞こえたのか、中心に居たシンがチラリとこっちを見る。
シンを取り囲んで、女達はせわしなく我先にとシンに話しかけていた。
「シンさん。最近素敵なワインバー見つけたんです!今日これからどうですか?」
「あっ!私も美味しいイタリアンのお店を知ってるんですよ」
「夜景の綺麗なラウンジはどうですか?きっとシンさんも気に入ると思うんです!」
シンは誰の相手をするふうでもなく、受付のパソコンと向き合っていた。
シンが本社に戻ってから、やたらと女社員のパソコンがメンテナンス希望出てるってソウシさんがボヤいてたな…
ケッ。
どこがいいんだ、あんなスカした根暗野郎。
「行くぞ、トワ」
トワを引っ張った瞬間、珍しくシンが声を上げた。
「総務のトワと営業のハヤテ、か」
オレはシンを睨みつけた。
「お前に呼び捨てされる筋合いはねーよ!ハヤテさんって呼べよ、ハヤテさんって!オレのほうが本社では先輩なんだからな!」
「フン。相変わらず騒がしいヤツだな」
「シンさん、営業のハヤテ君と総務のトワ君と知り合いなんですか?」
「じゃあみんなで呑みにいきましょうよ~」
女達はこっちにまでネチッコイ声をかけてくる。
げっ…!
こいつらにつかまったら、めんどくせえ!
「オレは別にこんな野郎と知り合いでも何でもねーし!ほら、行くぞ、トワ!」
「えっ?あ、は、はい…」
「おい、トワ。しばらくあいつを一日中システム部に借りると総務部の上司に言っておけ」
シンがトワに話しかける。
あいつって、アイツのことだよな…
「せ、先輩をですか?」
「今こっちは忙しいからな。例えドンくさいヤツの手でも借りたいんだ。社長許可はとってある。」
「は、はい。わかりました。伝えておきます」
「おい。…アイツは確かにドンくせえカモしれねーけど、お前、いくら上司だからってそんな言い方しなくてもいいんじゃねーの?」
オレはシンに向き直って睨みつけた。
「別に俺がアイツをどう扱おうがお前には関係ないだろ」
シンは動かしていた手を止め、冷えた声で言い放った。
そしてゆっくりと唇の端を持ち上げて、底意地悪そうに笑う。
「いい機会だから言っておくがアイツは俺の女だ。ちょっかいかけようなんて思わねーことだな」
なっ……!
「それは単なる噂じゃなかったの~!?」
「ええ~っ!!」
「ちょっと、どの子よ?」
「シン様を独り占めなんて許せないわ」
周りの女達が一斉に騒ぎ出す。
「は、ハヤテさんっ!僕、すごくお酒飲みたくてたまらなくなってきました!!早く行きましょう!!!」
茫然と立ち尽くす俺の腕を、トワが引っ張った。
「くっそ!何なんだよっ!シンの嘘に決まってる!あんな性格悪い野郎と付き合うわけねーよな!百歩譲ってそうだとしても絶対脅されてるに決まってる!そう思うだろ!?トワ」
「ハヤテさ~ん。飲みすぎですよ…ペース早すぎ」
「うるせー!トワももっと呑め!…そうだ!アイツは抜けてっから、シンに弱みとか握られてて強要されて…」
酒をぐっと飲み干して呟いた希望が、意味のないものだと俺だって少しくらいはわかってる。
「ハヤテさん。シンさんって、そんなに悪い人じゃないみたいですよ?」
「悪い人じゃない?!お前、オレとシンとどっちの味方なワケ?」
「み、味方って、そんなこと言われても困りますけど…」
「じゃあドッチなんだよ?!」
「僕は先輩の味方なんです!」
「はぁ?!お前もアイツを狙ってんのかよ」
「お前もって…他に誰が?やっぱりハヤテさんは先輩のこと…」
「ちちちちげーよ!!オレはあんなチンチクリン別になんっとも思ってねーしっ」
勢いよくテーブルに置いたグラスは大きな音を立てる。
「あ!トワお前。オレがアイツの事、す、好きだとか思ってるんじゃねえだろうな?あー。あれだよ、あれ!同期だからな!気にかけてやってるだけだ。わかるよな!?」
「わ、わかりましたけど…そんなに大声出さないでくださいよ」
トワが溜息をついて周りを見廻すと、ちょうど入口からナギ兄が入ってきた。
「………。じゃあな」
俺たちの姿を見て背を向けたナギ兄の背広の裾を、トワが掴んだ。
「な、ナギさんっ!!助かった~!!!」
「助かった、じゃねえ。離せ」
「いいえ離しませんっ!僕だけじゃハヤテさんが手に負えないんですぅ」
「知るか」
「僕を助けると思って帰らないでくださいよ~。ナギさんもお酒を飲みにきたんですよね?!」
「…急に帰りたくなった」
「おいトワ!手に負えないって何だよっ?!ナギ兄!おつかれっス!」
俺が満面の笑みでナギ兄に笑いかけると、ナギ兄は何故か舌打ちしてからどかっと椅子に腰を下ろした。
「ったく、何をそんな荒れた酒を飲んでるんだ」
「シンがむかつくんっス!」
「…今日に限ったことじゃねーだろ。お前がいつも言ってることじゃねえか」
「今日は…アイツは俺の女だ~とかってテキトーなこと言ってっから…」
俺の言葉にナギ兄はしばらく黙り込んだ。
「それは事実だろ」
「へ?」
「俺達がとやかく言うことじゃねー。彼女を好きなら男らしくはっきりと伝えればよかったんだ。想いも伝えられずにあっさりシンにとられる方がわりーんだ」
ナギ兄は淡々と酒を口に運んで、そう言った。
「伝えるって…お、オレはべつになんともっ…」
「ならグダグダ言ってんじゃねえ」
心なしかナギ兄の声は怒っているように聞こえる。
何でナギ兄は…怒ってんだ…??
「さすがナギさん。ハヤテさんが一気に大人しくなった」
「おいトワ、さっきからテメー生意気だぞ!だいだいお前知ってたんだろ?!たいして驚いてねーじゃねーかよ!」
「すみません。だって先輩を見てるとすぐわかるじゃないですか。それにシンさんもよく総務部に迎えに来るし、僕にけん制するみたいに睨んでいくし」
「あの冷血漢が?!ふんっ、女をわざわざ迎えにいくなんてカッコわり。おおオレならそうまでして女の気をひきたくねーケドな!」
「シンは口も悪いし冷たく見えるが、わりと世話焼きなんじゃねーか」
ナギ兄の言葉に、俺もトワも驚きを隠せない。
「「世話焼きっ?!」」
「アイツは細かいし、よく気が付く。プライドが高くて負けず嫌いで独占欲も強いしな」
「ナギさんはシンさんと同じ部署にいたんですよね」
「ああ。完璧主義だから他人にも厳しいし反感を買いやすいヤツだったが、仕事は出来る」
「だからって性格悪すぎだろっ?!あんな奴と一緒にいたら疲れるに決まってるぜ!」
「確かにハヤテはアバウトだから合わねーだろうな」
オレがアバウトだというナギ兄の発言には疑問があったが、合わねーってことに関して大納得だ。
「先輩はシンさんのこと、誤解されやすいけど本当はとっても優しい人だって言ってました。シンさんといる時の先輩、すごく可愛いんですよね」
トワが思い出すかのように頬杖をついた。
「あんな先輩はみたことないくらい、可愛らしいんです。あっ、もちろん先輩はもともと綺麗な人ですけど、こう、更に輝きが増すというか、見とれてしまうというか…」
トワの言葉に、俺もナギ兄も何故か黙り込んでしまった。
誰も数分間言葉を発せずに、目の前の酒を飲み干す。
「っしゃー!!!トワ!ナギ兄!!今日はオレが奢るからトコトン飲もうぜっ!!」
下がる感情を持ち直すかのように、オレは無理に大声をあげた。
「は、ハヤテさんっ。だから声大きすぎますって!す、すいません、みなさん…お騒がせしてます」
トワが周りに頭を下げた。
「しかたねーな。付き合うか」
ナギ兄が溜息と共にジョッキを掲げる。
明日になれば――――
酒臭いオレはいつもと変わらない態度でアイツに声をかける。
もう~ハヤテお酒飲みすぎだよってアイツが嗜めるのを、オレは笑って返してやる。
バーカ。
お前が誰を見ていようと、
俺だって浴びるほど飲んで気合入れたい日があンだよ!ってな。
オレの顔を見るなりクルリと向きを変えたトワを捕まえる。
「えっ、べ、べつに避けてませんよ…?」
「ほんとかよ。ま、ちょうど良かった。オレ今日はもう仕事終わりなんだよ。お前付き合えよ」
「えっ、僕、今日はちょっと呑みに行く気分じゃあ…」
「はぁ?お前の気分なんて関係ねーし。もう仕事終わりなんだろ?いつもの店に行こうぜ」
「ええ~…」
トワの肩に手を回して強制的に連行する。
受付を通り過ぎようとすると、女達が集まっているのが目に留まった。
「あ、シンさん」
トワが人だかりの中心を見て呟いた。
その声が聞こえたのか、中心に居たシンがチラリとこっちを見る。
シンを取り囲んで、女達はせわしなく我先にとシンに話しかけていた。
「シンさん。最近素敵なワインバー見つけたんです!今日これからどうですか?」
「あっ!私も美味しいイタリアンのお店を知ってるんですよ」
「夜景の綺麗なラウンジはどうですか?きっとシンさんも気に入ると思うんです!」
シンは誰の相手をするふうでもなく、受付のパソコンと向き合っていた。
シンが本社に戻ってから、やたらと女社員のパソコンがメンテナンス希望出てるってソウシさんがボヤいてたな…
ケッ。
どこがいいんだ、あんなスカした根暗野郎。
「行くぞ、トワ」
トワを引っ張った瞬間、珍しくシンが声を上げた。
「総務のトワと営業のハヤテ、か」
オレはシンを睨みつけた。
「お前に呼び捨てされる筋合いはねーよ!ハヤテさんって呼べよ、ハヤテさんって!オレのほうが本社では先輩なんだからな!」
「フン。相変わらず騒がしいヤツだな」
「シンさん、営業のハヤテ君と総務のトワ君と知り合いなんですか?」
「じゃあみんなで呑みにいきましょうよ~」
女達はこっちにまでネチッコイ声をかけてくる。
げっ…!
こいつらにつかまったら、めんどくせえ!
「オレは別にこんな野郎と知り合いでも何でもねーし!ほら、行くぞ、トワ!」
「えっ?あ、は、はい…」
「おい、トワ。しばらくあいつを一日中システム部に借りると総務部の上司に言っておけ」
シンがトワに話しかける。
あいつって、アイツのことだよな…
「せ、先輩をですか?」
「今こっちは忙しいからな。例えドンくさいヤツの手でも借りたいんだ。社長許可はとってある。」
「は、はい。わかりました。伝えておきます」
「おい。…アイツは確かにドンくせえカモしれねーけど、お前、いくら上司だからってそんな言い方しなくてもいいんじゃねーの?」
オレはシンに向き直って睨みつけた。
「別に俺がアイツをどう扱おうがお前には関係ないだろ」
シンは動かしていた手を止め、冷えた声で言い放った。
そしてゆっくりと唇の端を持ち上げて、底意地悪そうに笑う。
「いい機会だから言っておくがアイツは俺の女だ。ちょっかいかけようなんて思わねーことだな」
なっ……!
「それは単なる噂じゃなかったの~!?」
「ええ~っ!!」
「ちょっと、どの子よ?」
「シン様を独り占めなんて許せないわ」
周りの女達が一斉に騒ぎ出す。
「は、ハヤテさんっ!僕、すごくお酒飲みたくてたまらなくなってきました!!早く行きましょう!!!」
茫然と立ち尽くす俺の腕を、トワが引っ張った。
「くっそ!何なんだよっ!シンの嘘に決まってる!あんな性格悪い野郎と付き合うわけねーよな!百歩譲ってそうだとしても絶対脅されてるに決まってる!そう思うだろ!?トワ」
「ハヤテさ~ん。飲みすぎですよ…ペース早すぎ」
「うるせー!トワももっと呑め!…そうだ!アイツは抜けてっから、シンに弱みとか握られてて強要されて…」
酒をぐっと飲み干して呟いた希望が、意味のないものだと俺だって少しくらいはわかってる。
「ハヤテさん。シンさんって、そんなに悪い人じゃないみたいですよ?」
「悪い人じゃない?!お前、オレとシンとどっちの味方なワケ?」
「み、味方って、そんなこと言われても困りますけど…」
「じゃあドッチなんだよ?!」
「僕は先輩の味方なんです!」
「はぁ?!お前もアイツを狙ってんのかよ」
「お前もって…他に誰が?やっぱりハヤテさんは先輩のこと…」
「ちちちちげーよ!!オレはあんなチンチクリン別になんっとも思ってねーしっ」
勢いよくテーブルに置いたグラスは大きな音を立てる。
「あ!トワお前。オレがアイツの事、す、好きだとか思ってるんじゃねえだろうな?あー。あれだよ、あれ!同期だからな!気にかけてやってるだけだ。わかるよな!?」
「わ、わかりましたけど…そんなに大声出さないでくださいよ」
トワが溜息をついて周りを見廻すと、ちょうど入口からナギ兄が入ってきた。
「………。じゃあな」
俺たちの姿を見て背を向けたナギ兄の背広の裾を、トワが掴んだ。
「な、ナギさんっ!!助かった~!!!」
「助かった、じゃねえ。離せ」
「いいえ離しませんっ!僕だけじゃハヤテさんが手に負えないんですぅ」
「知るか」
「僕を助けると思って帰らないでくださいよ~。ナギさんもお酒を飲みにきたんですよね?!」
「…急に帰りたくなった」
「おいトワ!手に負えないって何だよっ?!ナギ兄!おつかれっス!」
俺が満面の笑みでナギ兄に笑いかけると、ナギ兄は何故か舌打ちしてからどかっと椅子に腰を下ろした。
「ったく、何をそんな荒れた酒を飲んでるんだ」
「シンがむかつくんっス!」
「…今日に限ったことじゃねーだろ。お前がいつも言ってることじゃねえか」
「今日は…アイツは俺の女だ~とかってテキトーなこと言ってっから…」
俺の言葉にナギ兄はしばらく黙り込んだ。
「それは事実だろ」
「へ?」
「俺達がとやかく言うことじゃねー。彼女を好きなら男らしくはっきりと伝えればよかったんだ。想いも伝えられずにあっさりシンにとられる方がわりーんだ」
ナギ兄は淡々と酒を口に運んで、そう言った。
「伝えるって…お、オレはべつになんともっ…」
「ならグダグダ言ってんじゃねえ」
心なしかナギ兄の声は怒っているように聞こえる。
何でナギ兄は…怒ってんだ…??
「さすがナギさん。ハヤテさんが一気に大人しくなった」
「おいトワ、さっきからテメー生意気だぞ!だいだいお前知ってたんだろ?!たいして驚いてねーじゃねーかよ!」
「すみません。だって先輩を見てるとすぐわかるじゃないですか。それにシンさんもよく総務部に迎えに来るし、僕にけん制するみたいに睨んでいくし」
「あの冷血漢が?!ふんっ、女をわざわざ迎えにいくなんてカッコわり。おおオレならそうまでして女の気をひきたくねーケドな!」
「シンは口も悪いし冷たく見えるが、わりと世話焼きなんじゃねーか」
ナギ兄の言葉に、俺もトワも驚きを隠せない。
「「世話焼きっ?!」」
「アイツは細かいし、よく気が付く。プライドが高くて負けず嫌いで独占欲も強いしな」
「ナギさんはシンさんと同じ部署にいたんですよね」
「ああ。完璧主義だから他人にも厳しいし反感を買いやすいヤツだったが、仕事は出来る」
「だからって性格悪すぎだろっ?!あんな奴と一緒にいたら疲れるに決まってるぜ!」
「確かにハヤテはアバウトだから合わねーだろうな」
オレがアバウトだというナギ兄の発言には疑問があったが、合わねーってことに関して大納得だ。
「先輩はシンさんのこと、誤解されやすいけど本当はとっても優しい人だって言ってました。シンさんといる時の先輩、すごく可愛いんですよね」
トワが思い出すかのように頬杖をついた。
「あんな先輩はみたことないくらい、可愛らしいんです。あっ、もちろん先輩はもともと綺麗な人ですけど、こう、更に輝きが増すというか、見とれてしまうというか…」
トワの言葉に、俺もナギ兄も何故か黙り込んでしまった。
誰も数分間言葉を発せずに、目の前の酒を飲み干す。
「っしゃー!!!トワ!ナギ兄!!今日はオレが奢るからトコトン飲もうぜっ!!」
下がる感情を持ち直すかのように、オレは無理に大声をあげた。
「は、ハヤテさんっ。だから声大きすぎますって!す、すいません、みなさん…お騒がせしてます」
トワが周りに頭を下げた。
「しかたねーな。付き合うか」
ナギ兄が溜息と共にジョッキを掲げる。
明日になれば――――
酒臭いオレはいつもと変わらない態度でアイツに声をかける。
もう~ハヤテお酒飲みすぎだよってアイツが嗜めるのを、オレは笑って返してやる。
バーカ。
お前が誰を見ていようと、
俺だって浴びるほど飲んで気合入れたい日があンだよ!ってな。
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