SIRIUS.BOEKI
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SIRIUS.BOEKIのロゴ入りカップを会議室の机に順に並べていく。 世界貿易で財を成しているこの巨大企業に入社して3年―
最近は仕事にも随分慣れてきて、可愛い後輩も出来た。
「●●先輩。この資料は何部用意すればいいですか?」
後ろから声をかけられて振り返ると、トワ君が立っていた。
彼は今年入った新人で、今日開かれる大きな会議に心なしか朝から興奮気味だった。
「ええと、この部屋の分は100で足りると思うんだけど、会議中継が流される部屋も合わせて…」
説明をしていると、
「まだノロノロやってんのかよ?●●」
顔を出したのはハヤテ。
私の同期だ。
「の、ノロノロって!そんなこと言うなら少し手伝ってくれてもいいじゃない」
「俺はナギ兄のチームだから忙しーんだよ。今日の会議には海外支社から優秀な開発部のメンバーが来るとかで、数週間前から休む暇もねーし」
「あっ、それ僕も聞きました!総務部の女子社員も楽しみにしてるくらいカッコいい人がいるとか」
確かにここ数週間、
うちの部署の女の子たちはずっと浮足立っている。
抜け駆け禁止、という暗黙の掟が出来たくらいで―
だからあまり事情を知らない私とトワ君が、お化粧の準備に忙しいという皆の代わりに会議準備を任されることになった。
「チッ。女どもはぎゃあぎゃあと騒ぎすぎなんだよな。まっ。でもシステム開発部と言えばありえねーくらい細かいヤツが多いから、営業部も手を抜けなくて仕方なく気合い入っちまうわけ。トワ、お前は新人だし呑気でいいよなぁ~」
忙しいと言う割にハヤテは私たちをからかいに来ているようにしか見えない。
営業本部所属なのにしょっちゅう総務部の私の所に来てはちょっかいをかけてくるし。
営業本部って花形部署だけど、実は暇なの?って思ったりもするんだけれど
「俺のチームだっていうなら、サボってねーで手伝え」
ハヤテの後ろに、ぬうっと背の高い人影が現れる。
「ナギさん!」
私とハヤテより何期か先輩にあたるナギさんは、ハヤテも所属する本社営業部企画室の責任者だった。
もうすぐ営業部長になるという噂もあるくらい期待されている先輩だけれど、派手な営業本部の責任者と思えないくらい、いつも無口な人だった。
でも社内からも取引先からも信頼が厚くて、ナギさんが一言云うだけですんなりと商談が決まったりするらしい。
本人は商品管理部に異動してのんびりと食材貿易をしたいらしいけれど、慕う後輩が多いために営業部を抜けられずにいるという。
ハヤテも心から尊敬している先輩だと、何度も何度も聞かされた。
「●●…ハヤテがジャマしたな」
ナギさんは私を見てあっさりとそう言って、
ハヤテの耳を掴んで連行していった。
「私、ナギさんに嫌われてるのかな?」
ぽつりと言うと、トワ君が慌てて声をかけてくる。
「ナギさんって元々ぶっきらぼうと言うか、あんな感じじゃないですか?確かに●●先輩と話すときは更にぶっきらぼうな気もしますけど…」
「だよね?いつも睨まれるし。何かしたかなぁ」
「女性が苦手って聞いたことありますよ?」
「えっ!ま、まさか…」
「ちち違います!そういう意味じゃなくて、女性と話すのに慣れてないらしいです」
「そっか、そういう意味かぁ」
それならわかるかも。
ナギさんって女性からも男性からも人望あるけれど、特に男性から慕われている気がする。嫌われるほど接点も無い気がするし私の気にしすぎかな?
「私は会議室内をもう一度チェックしておくから」
「ええと、じゃあ僕は資料の予備を取ってきますね!」
トワ君は元気よくデスクに戻って行った。
明るくてかいがいしくて、本当に可愛い後輩だなぁ!
とぼんやりしていると、
「おっ。総務のビーナスじゃねーか」
声をかけられる。
私をこんなふうに恥ずかしい名前で呼ぶのは―
「社長!!」
もうすぐ大きな会議が始まるというのに、
リュウガ社長がコーヒー片手に呑気に欠伸をしていた。
「いいんですか?こんなところで」
「ん?部屋にいても退屈だしなぁ。さすがに会議前に酒は呑むなってソウシに止められてるし」
「そうですよ。今から海外からも人が集まるような、大きな会議があるんですよね?」
「おー!色んな国の支社やグループ会社から人が集まるぞ。手みやげの酒が楽しみだな!」
この人は、本当にこんなに大きなグループ会社の代表なの?というくらいに、いつもお酒と…
「そういや●●、お前いつになったら俺の秘書室に来るんだ?」
そう、女性のことばかり考えている。
「行きませんっ。辞令だっていうなら仕方ないですけど秘書室ってもうすでに沢山女性がいるじゃないですか」
「はっはっは!無理やりっつーのは嫌なんだよ。俺の大人の魅力に惚れこんで、俺の側で働きたいって女じゃねえとなぁ」
社長の探るような視線に戸惑っていると、
「社長、そのくらいにしてください。セクハラになりますよ?」
穏やかな声がして、ソウシ専務が立っていた。
「もうすぐ会議が始まるから、お呼びするまで部屋で大人しく待っていてくださいと言ったじゃないですか」
にこやかな様子で言ってるけれど、瞳は笑っていない気が…
「仕方ねえなぁ。んじゃ、またな」
しぶしぶリュウガ社長は来た道を戻って行った。
「●●ちゃん、大丈夫だったかな?強引に社長秘書室に勧誘されてない?」
私を気遣わしげに、訊ねてくれる。
ソウシ専務はこの会社の影のボスで一番敵に廻してはいけない人だと聞かされているけれど、そんな噂が嘘のように、いつもとても優しかった。
「はい。大丈夫です」
「そう?良かった。準備大変だと思うけど頑張ってね。何か困ったことがあったら、いつでも相談にのるから専務室においで」
「ありがとうございます!」
全ての用意を終えて広い会議室を見廻していると、トワ君が冷たいミネラルウォーターをもってきてくれた。
冷たい水で喉を潤す。
「お疲れ様です先輩。音声機器の最終チェックは僕がしておきますので、オフィスに戻って少し休んだらどうですか?人が集まりだしたらまた忙しくなりますし」
「そうだね。そうさせてもらうね」
優しい言葉に甘えて、
ボトルを持ったまま会議室を出た――瞬間。
あっ…!
ばしゃっ
ボトルのふたをゆるく閉めていたせいで、会議室に入ってこようとしていた人に、手に持っていたミネラルウォーターが勢いよくかかってしまった。
「…」
「ご、ごめんなさいっ!!あのっ…」
おそるおそるビシャビシャになったグレイの高価そうなスーツとタイを見上げていくと、そこには、恐ろしく綺麗だけれど、恐ろしく不機嫌な顔をした男の人が、私を見下ろしていた。
えっ、眼帯…?
その人は長い指で髪を掻き上げてから、
更に眉間のシワを深くした。
濡れた姿があまりに様になっていてぼおっと見ていると―
「おい」
「は、はいっ」
廊下の壁にどんっと手をつかれて閉じ込められ、逃げ場を失う。
うっ!
き、綺麗な顔が近いんですけどーっ!
「どうするつもりだ?」
更に顔が近付いてくる。
どうするったって、
こんなに顔が近いとドキドキしてどうしたらっ?!
「あのっ、拭く物をすぐに用意…」
そう言いながらポケットを探る。
ふと滴る雫を見ると濡れた黒髪の先がクルンと勢いよく跳ねていた。
それが何だか可愛らしくて、
絶対に笑ってはいけない状況のはずなのに、私は思わず、ぷっと噴き出してしまった。
「あっ、す、すみません。つい…」
「つい?この状況で笑えるとはいい度胸だな。この俺に水をぶっかけるとは、仕置きを欲しがってるとしか思えねーな」
し、仕置き?
「だから謝ってますし…」
「足りると思ってるのか?」
息が耳にかかる。くすぐったくて顔が熱くなる。
「あのっ…近…」
えっ…キスされ…る…????
思わず目をぎゅっとつむると、
手元から何か奪われる感覚がして―
「クックッ…バカか、お前」
「へ??」
ボトルに残った僅かなミネラルウォーターが私の頭からかけられる。
ぽたぽたと目の前を雫が流れ落ちた。
そしてカラになったボトルを、再び手渡される。
「目まで瞑って、どんな仕置きを期待してたんだ?やらしー女」
綺麗な男の人は馬鹿にしたように笑うと、ピシッとアイロンのかかったハンカチを取り出して自分のスーツを丁寧に拭き、振り返ることなく会議室へと入って行った。
最近は仕事にも随分慣れてきて、可愛い後輩も出来た。
「●●先輩。この資料は何部用意すればいいですか?」
後ろから声をかけられて振り返ると、トワ君が立っていた。
彼は今年入った新人で、今日開かれる大きな会議に心なしか朝から興奮気味だった。
「ええと、この部屋の分は100で足りると思うんだけど、会議中継が流される部屋も合わせて…」
説明をしていると、
「まだノロノロやってんのかよ?●●」
顔を出したのはハヤテ。
私の同期だ。
「の、ノロノロって!そんなこと言うなら少し手伝ってくれてもいいじゃない」
「俺はナギ兄のチームだから忙しーんだよ。今日の会議には海外支社から優秀な開発部のメンバーが来るとかで、数週間前から休む暇もねーし」
「あっ、それ僕も聞きました!総務部の女子社員も楽しみにしてるくらいカッコいい人がいるとか」
確かにここ数週間、
うちの部署の女の子たちはずっと浮足立っている。
抜け駆け禁止、という暗黙の掟が出来たくらいで―
だからあまり事情を知らない私とトワ君が、お化粧の準備に忙しいという皆の代わりに会議準備を任されることになった。
「チッ。女どもはぎゃあぎゃあと騒ぎすぎなんだよな。まっ。でもシステム開発部と言えばありえねーくらい細かいヤツが多いから、営業部も手を抜けなくて仕方なく気合い入っちまうわけ。トワ、お前は新人だし呑気でいいよなぁ~」
忙しいと言う割にハヤテは私たちをからかいに来ているようにしか見えない。
営業本部所属なのにしょっちゅう総務部の私の所に来てはちょっかいをかけてくるし。
営業本部って花形部署だけど、実は暇なの?って思ったりもするんだけれど
「俺のチームだっていうなら、サボってねーで手伝え」
ハヤテの後ろに、ぬうっと背の高い人影が現れる。
「ナギさん!」
私とハヤテより何期か先輩にあたるナギさんは、ハヤテも所属する本社営業部企画室の責任者だった。
もうすぐ営業部長になるという噂もあるくらい期待されている先輩だけれど、派手な営業本部の責任者と思えないくらい、いつも無口な人だった。
でも社内からも取引先からも信頼が厚くて、ナギさんが一言云うだけですんなりと商談が決まったりするらしい。
本人は商品管理部に異動してのんびりと食材貿易をしたいらしいけれど、慕う後輩が多いために営業部を抜けられずにいるという。
ハヤテも心から尊敬している先輩だと、何度も何度も聞かされた。
「●●…ハヤテがジャマしたな」
ナギさんは私を見てあっさりとそう言って、
ハヤテの耳を掴んで連行していった。
「私、ナギさんに嫌われてるのかな?」
ぽつりと言うと、トワ君が慌てて声をかけてくる。
「ナギさんって元々ぶっきらぼうと言うか、あんな感じじゃないですか?確かに●●先輩と話すときは更にぶっきらぼうな気もしますけど…」
「だよね?いつも睨まれるし。何かしたかなぁ」
「女性が苦手って聞いたことありますよ?」
「えっ!ま、まさか…」
「ちち違います!そういう意味じゃなくて、女性と話すのに慣れてないらしいです」
「そっか、そういう意味かぁ」
それならわかるかも。
ナギさんって女性からも男性からも人望あるけれど、特に男性から慕われている気がする。嫌われるほど接点も無い気がするし私の気にしすぎかな?
「私は会議室内をもう一度チェックしておくから」
「ええと、じゃあ僕は資料の予備を取ってきますね!」
トワ君は元気よくデスクに戻って行った。
明るくてかいがいしくて、本当に可愛い後輩だなぁ!
とぼんやりしていると、
「おっ。総務のビーナスじゃねーか」
声をかけられる。
私をこんなふうに恥ずかしい名前で呼ぶのは―
「社長!!」
もうすぐ大きな会議が始まるというのに、
リュウガ社長がコーヒー片手に呑気に欠伸をしていた。
「いいんですか?こんなところで」
「ん?部屋にいても退屈だしなぁ。さすがに会議前に酒は呑むなってソウシに止められてるし」
「そうですよ。今から海外からも人が集まるような、大きな会議があるんですよね?」
「おー!色んな国の支社やグループ会社から人が集まるぞ。手みやげの酒が楽しみだな!」
この人は、本当にこんなに大きなグループ会社の代表なの?というくらいに、いつもお酒と…
「そういや●●、お前いつになったら俺の秘書室に来るんだ?」
そう、女性のことばかり考えている。
「行きませんっ。辞令だっていうなら仕方ないですけど秘書室ってもうすでに沢山女性がいるじゃないですか」
「はっはっは!無理やりっつーのは嫌なんだよ。俺の大人の魅力に惚れこんで、俺の側で働きたいって女じゃねえとなぁ」
社長の探るような視線に戸惑っていると、
「社長、そのくらいにしてください。セクハラになりますよ?」
穏やかな声がして、ソウシ専務が立っていた。
「もうすぐ会議が始まるから、お呼びするまで部屋で大人しく待っていてくださいと言ったじゃないですか」
にこやかな様子で言ってるけれど、瞳は笑っていない気が…
「仕方ねえなぁ。んじゃ、またな」
しぶしぶリュウガ社長は来た道を戻って行った。
「●●ちゃん、大丈夫だったかな?強引に社長秘書室に勧誘されてない?」
私を気遣わしげに、訊ねてくれる。
ソウシ専務はこの会社の影のボスで一番敵に廻してはいけない人だと聞かされているけれど、そんな噂が嘘のように、いつもとても優しかった。
「はい。大丈夫です」
「そう?良かった。準備大変だと思うけど頑張ってね。何か困ったことがあったら、いつでも相談にのるから専務室においで」
「ありがとうございます!」
全ての用意を終えて広い会議室を見廻していると、トワ君が冷たいミネラルウォーターをもってきてくれた。
冷たい水で喉を潤す。
「お疲れ様です先輩。音声機器の最終チェックは僕がしておきますので、オフィスに戻って少し休んだらどうですか?人が集まりだしたらまた忙しくなりますし」
「そうだね。そうさせてもらうね」
優しい言葉に甘えて、
ボトルを持ったまま会議室を出た――瞬間。
あっ…!
ばしゃっ
ボトルのふたをゆるく閉めていたせいで、会議室に入ってこようとしていた人に、手に持っていたミネラルウォーターが勢いよくかかってしまった。
「…」
「ご、ごめんなさいっ!!あのっ…」
おそるおそるビシャビシャになったグレイの高価そうなスーツとタイを見上げていくと、そこには、恐ろしく綺麗だけれど、恐ろしく不機嫌な顔をした男の人が、私を見下ろしていた。
えっ、眼帯…?
その人は長い指で髪を掻き上げてから、
更に眉間のシワを深くした。
濡れた姿があまりに様になっていてぼおっと見ていると―
「おい」
「は、はいっ」
廊下の壁にどんっと手をつかれて閉じ込められ、逃げ場を失う。
うっ!
き、綺麗な顔が近いんですけどーっ!
「どうするつもりだ?」
更に顔が近付いてくる。
どうするったって、
こんなに顔が近いとドキドキしてどうしたらっ?!
「あのっ、拭く物をすぐに用意…」
そう言いながらポケットを探る。
ふと滴る雫を見ると濡れた黒髪の先がクルンと勢いよく跳ねていた。
それが何だか可愛らしくて、
絶対に笑ってはいけない状況のはずなのに、私は思わず、ぷっと噴き出してしまった。
「あっ、す、すみません。つい…」
「つい?この状況で笑えるとはいい度胸だな。この俺に水をぶっかけるとは、仕置きを欲しがってるとしか思えねーな」
し、仕置き?
「だから謝ってますし…」
「足りると思ってるのか?」
息が耳にかかる。くすぐったくて顔が熱くなる。
「あのっ…近…」
えっ…キスされ…る…????
思わず目をぎゅっとつむると、
手元から何か奪われる感覚がして―
「クックッ…バカか、お前」
「へ??」
ボトルに残った僅かなミネラルウォーターが私の頭からかけられる。
ぽたぽたと目の前を雫が流れ落ちた。
そしてカラになったボトルを、再び手渡される。
「目まで瞑って、どんな仕置きを期待してたんだ?やらしー女」
綺麗な男の人は馬鹿にしたように笑うと、ピシッとアイロンのかかったハンカチを取り出して自分のスーツを丁寧に拭き、振り返ることなく会議室へと入って行った。
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