Jack-o'-Lantern
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「…ッ、それ…だけか」
<なに?>
「言い…たいことは…それだけかといっている」
パンッ
ランタン目掛けて銃弾を撃ちこむ。
無駄かどうかなんて関係ない。
ただ、失いたくない。
失ったりしない。
破裂音の後、強い光とともに溢れてくる。
『私こそごめんなさい これからは4回ノックしますね』
『どうせ泣き虫のガキですよ』
『あいたっ、何であたまをこづくんですか』
『シンさんはわたしのこと女としてみてないのかなって思って…』
『私とシンさんの愛の力で乗り越えました!』
『はい!シリウス海賊団を大切にしてるシンさんが私は大好きです!』
『私はずっとシンさんの傍にいるって言いましたよね?だから…覚悟もできてます』
身体中を支配する声。
何度失われようと、俺がするべきことはただ一つ。
「奪われたなら、奪い返すだけだ」
「おう!シン。遅かったじゃねーか。」
食堂に入ると船長が上機嫌で俺を呼ぶ。
全員が仮装した格好で酒を飲みはじめていた。
フランケン、包帯男、狼男、悪魔、魔法使い。
●●は俺を見るなり気まずそうに瞳を逸らした。
だがイモムシの仮装をしていることが俺を満足させる。
『船長がくれたバニーガールを着るかイモムシの着ぐるみを着るか…うーん。究極の選択ですよね』
『し、シンさん?何で笑ってるんですか?え?お前には色気のないイモムシのほうが似合うって?ヒドイ!』
『うっ…そういうこと言うの反則です…イモムシにするしかなくなるじゃないですか』
忘れる呪いを掛けられていても、必ず本能は覚えている。
●●、お前は俺の―
グイッ
「な、何ですか?」
●●の腕を掴むと、焦ったように俺を見る。
「瞳を逸らすな」
「おい、何してる」
ナギが口を出してくるが、制する。
「シン。声が出るのかい?」
ドクターが驚いた顔をした。
「ええ。おかしな呪いを掛けられたようですが、コイツにキスをしたせいか随分話せるようになりました」
俺の言葉に全員が殺気立った。
「き、キスだと?!おい!●●から手を離せよ」
ハヤテが立ち上がる。
俺はかまうことなく、言葉を吐き出した。
「●●、お前はわかっているはずだ。お前にとって俺がどういう存在なのかを。そして俺にとって、お前がどういう存在なのかをな」
「言ってる意味が…」
●●はそう言いかけて、俺を真正面から見つめてから言葉を止めた。
忘れるはずなんてない。
忘れさせてやるわけもない。
「俺を…見つけてくれ」
視線がぶつかった瞬間、瞳の奥に揺らぎが生まれる。
揺らぎはやがて確かな炎へと姿を変える。
―何度でも。
「シン…さん…?」
「ずっと俺の傍にいると覚悟してるんだろう?」
「私…どうしてシンさんを忘れたりなんか…」
<俺の呪いが…>
パァァァッ
いつの間にか隣にあらわれたランタンが眩い光に包まれた。
「…シンさんっっっ!シンさんっ!!シンさぁんっ!!!」
―――ああ、俺を必死に呼ぶ、
愛しい声が聴こえる。
俺は光のほうへと手を伸ばした。
俺が帰る場所だ。
「シンさんっ!!!」
気付けば●●は腕の中にいた。
ついさっきまでの生意気な態度はどこへやら、
しっぽ振った犬みたいに従順にしがみついている。
解けた…のか?
安堵した瞬間、自然と強気な言葉が漏れる。
「…うるせーな」
「だ、だってっ…!!」
「そんなに抱きつくな。しっぽ振った犬か、お前は」
「だ、だって目が覚めたらシンさんが居なかったんですよ!しかも私も皆も忘れちゃってて!いったいどうなってたんですか?!どこに行ってたんですか?!」
「どこって言われてもな…」
あそこが何処だったかなんてわからない。
ふざけたカボチャにふざけた呪いを掛けられただけだ。
「あ!こいつ!」
ハヤテがランタンを掴もうとするが、よけて浮かび上がる。
<俺の呪いを解いた人間は初めてだ>
<誰も見つけてくれない。どこに向かえばいいのかもわからない。俺はずっとずっと彷徨っている>
それは俺も同じだった。
昔に戻るだけだとランタンは言った。
誰も信用せず一人、
殻の中に閉じこもって憎しみを反芻する日々に―
だが俺は、二度と戻るつもりなどない。
もう知ってしまった。
●●を。
愛するということを…
シリウスを。
自分を受け入れてくれる場所があることも。
どんなにもがいても失いたくはない。
<俺も、いつか誰かが見つけてくれるかもしれない。希望をもっていいんだよな?>
「ああ」
初めて見た時に苦しげだったランタンの表情は穏やかなものへと変わっていた。
<探してみるよ>
夜闇にジャック・オ・ランタンは溶けていく。
「何だアレ…どっかの宝箱に混じってたのか?」
「またトワが積荷を間違えて、前の港とかで変なのを乗っけちまったんじゃねえの?」
「いた!ぼ、僕じゃないですよ!多分…」
それぞれが賑やかに騒ぐなか、俺はずっとランタンが消えた先を見つめていた。
そっと●●が俺の隣に並び、
泣きそうな声で独り言のように夜空に囁く。
「悪い夢を見てたみたいです。醒めて良かった…!本当に良かったです!」
「醒めないわけはない。まだまだお前にシリウスの舵取りなんて任せられるか」
「ふふっ、そうですね!」
「それに、俺は泣き出しそうな顔なんてしてねー。…多分な」
●●は訳がわからない、といった表情で、
「え?それどういうことですか?シンさん?!」
と訊ねてくるが、
「私達がシンを忘れてしまってたのには驚いたけど、とにかく解決してよかったね」
「よし!シンも戻ったし、これで本当に全員だ!野郎ども!ハロウィンの宴の仕切り直しだ!」
「「「「アイアイサー」」」」
船長の声に全員が勢いよく返す掛け声で掻き消されてしまう。
ふと、●●の首筋に点々と附いた小さな紅いアザを見つける。
無茶苦茶に浮き上がったアトに自分の必死さを感じて、
照れ臭いような滑稽な気持ちになる。
グイッ
「え?し、シンさん?!」
皆の方へと歩き出そうとしていた●●の腕を引っ張り、
その背中から抱き締める。
腕に感じる確かな温もりに急速に満たされていく。
強く廻した腕にそっと●●の手が重ねられ、冷えた俺の腕を優しく撫でる。
「シンさんがもういいって言ったって、私はずっと、シンさんの傍にいるって決めてますから!」
腕の中で振り返って彼女は微笑む。
この笑顔を側に置くためなら俺は何だってするんだろう―
「イチャついてないでとっとと始めようぜ!」
「そうです!お菓子もいっぱいありますよ」
「まぁまぁ。記念すべき再会みたいだから私たちはそっと見守ろう」
「料理食う前に腹一杯になりそうだ」
「一体シンはどこにいってたんだ?まさか女だらけの別世界シリウス号とかな!」
「せんちょー。トワが女装するらしいっす!」
「え!ハヤテさん!それは言い出しっぺが…」
「私は結構女装イケると思うんだけどな」
「ドクター…酔うのはまだ早い」
賑やかな面々が勝手なことを言い合う。
戻ってきたという実感が後から湧いてくる。
●●はもう一度微笑んで、
「おかえりなさい!シンさん!」
と言った。
…ああ、馬鹿。
せっかく耐えたってのに…
「シンさん?どうしました?」
「うるさい。今は俺を見るな」
ハロウィンの夜に起きた
ジャック・オ・ランタンの呪い。
以前の俺なら考えられないことだが―相当、堪えたらしい。
あのカボチャに二度と会うつもりはないが、
今度出会ったらタダじゃおかない。
<なに?>
「言い…たいことは…それだけかといっている」
パンッ
ランタン目掛けて銃弾を撃ちこむ。
無駄かどうかなんて関係ない。
ただ、失いたくない。
失ったりしない。
破裂音の後、強い光とともに溢れてくる。
『私こそごめんなさい これからは4回ノックしますね』
『どうせ泣き虫のガキですよ』
『あいたっ、何であたまをこづくんですか』
『シンさんはわたしのこと女としてみてないのかなって思って…』
『私とシンさんの愛の力で乗り越えました!』
『はい!シリウス海賊団を大切にしてるシンさんが私は大好きです!』
『私はずっとシンさんの傍にいるって言いましたよね?だから…覚悟もできてます』
身体中を支配する声。
何度失われようと、俺がするべきことはただ一つ。
「奪われたなら、奪い返すだけだ」
「おう!シン。遅かったじゃねーか。」
食堂に入ると船長が上機嫌で俺を呼ぶ。
全員が仮装した格好で酒を飲みはじめていた。
フランケン、包帯男、狼男、悪魔、魔法使い。
●●は俺を見るなり気まずそうに瞳を逸らした。
だがイモムシの仮装をしていることが俺を満足させる。
『船長がくれたバニーガールを着るかイモムシの着ぐるみを着るか…うーん。究極の選択ですよね』
『し、シンさん?何で笑ってるんですか?え?お前には色気のないイモムシのほうが似合うって?ヒドイ!』
『うっ…そういうこと言うの反則です…イモムシにするしかなくなるじゃないですか』
忘れる呪いを掛けられていても、必ず本能は覚えている。
●●、お前は俺の―
グイッ
「な、何ですか?」
●●の腕を掴むと、焦ったように俺を見る。
「瞳を逸らすな」
「おい、何してる」
ナギが口を出してくるが、制する。
「シン。声が出るのかい?」
ドクターが驚いた顔をした。
「ええ。おかしな呪いを掛けられたようですが、コイツにキスをしたせいか随分話せるようになりました」
俺の言葉に全員が殺気立った。
「き、キスだと?!おい!●●から手を離せよ」
ハヤテが立ち上がる。
俺はかまうことなく、言葉を吐き出した。
「●●、お前はわかっているはずだ。お前にとって俺がどういう存在なのかを。そして俺にとって、お前がどういう存在なのかをな」
「言ってる意味が…」
●●はそう言いかけて、俺を真正面から見つめてから言葉を止めた。
忘れるはずなんてない。
忘れさせてやるわけもない。
「俺を…見つけてくれ」
視線がぶつかった瞬間、瞳の奥に揺らぎが生まれる。
揺らぎはやがて確かな炎へと姿を変える。
―何度でも。
「シン…さん…?」
「ずっと俺の傍にいると覚悟してるんだろう?」
「私…どうしてシンさんを忘れたりなんか…」
<俺の呪いが…>
パァァァッ
いつの間にか隣にあらわれたランタンが眩い光に包まれた。
「…シンさんっっっ!シンさんっ!!シンさぁんっ!!!」
―――ああ、俺を必死に呼ぶ、
愛しい声が聴こえる。
俺は光のほうへと手を伸ばした。
俺が帰る場所だ。
「シンさんっ!!!」
気付けば●●は腕の中にいた。
ついさっきまでの生意気な態度はどこへやら、
しっぽ振った犬みたいに従順にしがみついている。
解けた…のか?
安堵した瞬間、自然と強気な言葉が漏れる。
「…うるせーな」
「だ、だってっ…!!」
「そんなに抱きつくな。しっぽ振った犬か、お前は」
「だ、だって目が覚めたらシンさんが居なかったんですよ!しかも私も皆も忘れちゃってて!いったいどうなってたんですか?!どこに行ってたんですか?!」
「どこって言われてもな…」
あそこが何処だったかなんてわからない。
ふざけたカボチャにふざけた呪いを掛けられただけだ。
「あ!こいつ!」
ハヤテがランタンを掴もうとするが、よけて浮かび上がる。
<俺の呪いを解いた人間は初めてだ>
<誰も見つけてくれない。どこに向かえばいいのかもわからない。俺はずっとずっと彷徨っている>
それは俺も同じだった。
昔に戻るだけだとランタンは言った。
誰も信用せず一人、
殻の中に閉じこもって憎しみを反芻する日々に―
だが俺は、二度と戻るつもりなどない。
もう知ってしまった。
●●を。
愛するということを…
シリウスを。
自分を受け入れてくれる場所があることも。
どんなにもがいても失いたくはない。
<俺も、いつか誰かが見つけてくれるかもしれない。希望をもっていいんだよな?>
「ああ」
初めて見た時に苦しげだったランタンの表情は穏やかなものへと変わっていた。
<探してみるよ>
夜闇にジャック・オ・ランタンは溶けていく。
「何だアレ…どっかの宝箱に混じってたのか?」
「またトワが積荷を間違えて、前の港とかで変なのを乗っけちまったんじゃねえの?」
「いた!ぼ、僕じゃないですよ!多分…」
それぞれが賑やかに騒ぐなか、俺はずっとランタンが消えた先を見つめていた。
そっと●●が俺の隣に並び、
泣きそうな声で独り言のように夜空に囁く。
「悪い夢を見てたみたいです。醒めて良かった…!本当に良かったです!」
「醒めないわけはない。まだまだお前にシリウスの舵取りなんて任せられるか」
「ふふっ、そうですね!」
「それに、俺は泣き出しそうな顔なんてしてねー。…多分な」
●●は訳がわからない、といった表情で、
「え?それどういうことですか?シンさん?!」
と訊ねてくるが、
「私達がシンを忘れてしまってたのには驚いたけど、とにかく解決してよかったね」
「よし!シンも戻ったし、これで本当に全員だ!野郎ども!ハロウィンの宴の仕切り直しだ!」
「「「「アイアイサー」」」」
船長の声に全員が勢いよく返す掛け声で掻き消されてしまう。
ふと、●●の首筋に点々と附いた小さな紅いアザを見つける。
無茶苦茶に浮き上がったアトに自分の必死さを感じて、
照れ臭いような滑稽な気持ちになる。
グイッ
「え?し、シンさん?!」
皆の方へと歩き出そうとしていた●●の腕を引っ張り、
その背中から抱き締める。
腕に感じる確かな温もりに急速に満たされていく。
強く廻した腕にそっと●●の手が重ねられ、冷えた俺の腕を優しく撫でる。
「シンさんがもういいって言ったって、私はずっと、シンさんの傍にいるって決めてますから!」
腕の中で振り返って彼女は微笑む。
この笑顔を側に置くためなら俺は何だってするんだろう―
「イチャついてないでとっとと始めようぜ!」
「そうです!お菓子もいっぱいありますよ」
「まぁまぁ。記念すべき再会みたいだから私たちはそっと見守ろう」
「料理食う前に腹一杯になりそうだ」
「一体シンはどこにいってたんだ?まさか女だらけの別世界シリウス号とかな!」
「せんちょー。トワが女装するらしいっす!」
「え!ハヤテさん!それは言い出しっぺが…」
「私は結構女装イケると思うんだけどな」
「ドクター…酔うのはまだ早い」
賑やかな面々が勝手なことを言い合う。
戻ってきたという実感が後から湧いてくる。
●●はもう一度微笑んで、
「おかえりなさい!シンさん!」
と言った。
…ああ、馬鹿。
せっかく耐えたってのに…
「シンさん?どうしました?」
「うるさい。今は俺を見るな」
ハロウィンの夜に起きた
ジャック・オ・ランタンの呪い。
以前の俺なら考えられないことだが―相当、堪えたらしい。
あのカボチャに二度と会うつもりはないが、
今度出会ったらタダじゃおかない。
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