Jack-o'-Lantern
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「また消えちゃったのかと思いました…」
宴の途中、姿が見当たらないシンさんを追って、甲板の端までやってきた。
「俺が消えても、お前は何度でも見つけるんだろう?」
「はい、勿論です!」
勢いよく答えると、シンさんはふっと笑顔になった。
「本当に俺は幸せ者だな」
「へ?」
「何でもない。…似通ったところがあったから呼び寄せてしまったのかもしれねーな」
「あのランタンをですか?」
「あれは昔の俺なのかもしれない」
シンさんは小さく呟いた。
「お前たちが俺を忘れている間、俺は別世界にいた。お前もあいつらも俺を見知らぬ人間として扱う世界だった。正直少し、悲しかった」
独り言みたいに言葉は紡がれる。
「以前の俺なら…自分が居なくなっても忘れられても構わない、その方が好都合だと思っていた」
海を見つめるシンさんの横顔は切なげで。
思わず手を伸ばして、海風に冷やされたシンさんの頬に触れる。
「今のシンさんなら?今は、どうなんですか?」
シンさんが私の手に掌を重ねる。
互いの僅かな熱が触れたところを暖めあう。
「今は…」
その視線は私の首筋にクッキリとついている紅く小さなアザに向けられた。
「ようやく見つけた自分が生きる居場所を失いたくないと思っている。だから向こうの世界でお前に印をつけた」
「これ、シンさんだったんですね。ふふっ。まるで本当にドラキュラに血を吸われたみたい」
「俺を見つけた褒美にもっとしてやろうか?」
「い、いやそのっ…それはっ」
「ハッキリしないヤツだな。なら褒美は無しだ」
「ちょっと待ってくださいっ!もしかして今からですかっ?!こ、心の準備をしますから!」
「待たない。目を閉じろ」
「ええっ!ちょっとっ…」
「ククッ、バカ。ニヤけた顔をしやがって。相変わらず面白い反応だな」
「…もしかしてからかいました?!」
「からかってねーよ。それはもっと夜が深まってから…あとのお楽しみだろう?」
シンさんが笑顔になる。
「●●ちゃん!望み通りドラキュラになってきたぞー!」
声がする方を見ると、リカー号の船首に立ったロイ船長がこっちに手を振っている。
青白い顔にキバ、口から赤い液体を垂らして、かなり本格的な仮装だ。
凝りすぎててちょっと怖いかも…!
私とロイ船長の間に、すっと黒いマントの影が立ちふさがる。
「バカか。気持ちわりーモン見せてんじゃねーよ」
ドラキュラの格好の、シンさん。
その背中のぬくもりが触れられる距離に確かに存在することを確認して幸せな気分になる。
「気持ち悪いだと?!あっ!ほら見ろ眼帯!●●ちゃんは満面の笑みだぞ!!ロイ様の仮装が気に入ったに決まってる!眼帯の仮装よりオレの方が上手いだろう!?」
「ありがとうございます、ロイ船長」
「●●ちゃんにお礼を言われたぞ!」
浮かれるロイ船長に呆れ顔になったシンさんが振り返って私を見る。
「だってねシンさん。うまく言えないんだけど…ロイ船長がいて皆がいて…だから私、シンさんが確かに此処にいてくれることを、もっと実感できてるんだと思うんです」
呆れたシンさんもヤキモチをやいてくれるシンさんも、笑顔のシンさんも―
みんなが存在して、こうして賑やかに過ごす日常から作りだされてゆくものだから。
「チッ。ロイの馬鹿は放っておいてあいつらのところに戻るぞ。そろそろハヤテあたりがうるせー頃だしな」
「待て眼帯!いや待たなくていい!お前は戻って真珠ちゃんは置いていけ!今からそっちに…ってうわ!マントが引っかかった!た、助けてくれー!」
マントが引っかかり、ロイ船長が船首にぶら下がっている。
「シンさん…助けてあげたほうが…」
「俺もお前もここで誰も見てねー、聞いてねー。戻るぞ」
「えっ…あのっ」
ばしゃーんっ
何かが海に落ちる音がして、
「ロイ様~!!ハロウィンパーティーの途中で何処いったんですか~?」
「ファジー!!助けてくれ!」
「さすがロイ様!海から登場してアタイらを驚かそうって演出だね!」
「はっはっ…ごぼごぼ…マントが巻き付いて泳げん…ってファジー早く浮き輪だ!」
「アイアイサー」
良かった…大丈夫みたい。
船のむこうから騒ぐロイ船長達に背を向けシンさんが私の手を取る。
目線の高さまで繋いだ手は持ちあげられ、シンさんの唇がそっと手の甲に触れた。
そしてまるで誓うように――
「ひとつ言っておく。●●…お前が世界中を探さなくても、俺は必ずお前のいる場所に戻ってくる。どんなことをしても、何があってもだ。永遠に離すつもりは無いから覚悟しておくんだな」
突然の甘い言葉に放心していると…
「返事は?」
麗しいドラキュラが惑わせるように微笑む。
「は、はい!」
イモムシとドラキュラ。
妙な組み合わせで繋がれた手のあたたかさを確かめ合いながら、私達はハロウィンの宴へと戻った。
宴の途中、姿が見当たらないシンさんを追って、甲板の端までやってきた。
「俺が消えても、お前は何度でも見つけるんだろう?」
「はい、勿論です!」
勢いよく答えると、シンさんはふっと笑顔になった。
「本当に俺は幸せ者だな」
「へ?」
「何でもない。…似通ったところがあったから呼び寄せてしまったのかもしれねーな」
「あのランタンをですか?」
「あれは昔の俺なのかもしれない」
シンさんは小さく呟いた。
「お前たちが俺を忘れている間、俺は別世界にいた。お前もあいつらも俺を見知らぬ人間として扱う世界だった。正直少し、悲しかった」
独り言みたいに言葉は紡がれる。
「以前の俺なら…自分が居なくなっても忘れられても構わない、その方が好都合だと思っていた」
海を見つめるシンさんの横顔は切なげで。
思わず手を伸ばして、海風に冷やされたシンさんの頬に触れる。
「今のシンさんなら?今は、どうなんですか?」
シンさんが私の手に掌を重ねる。
互いの僅かな熱が触れたところを暖めあう。
「今は…」
その視線は私の首筋にクッキリとついている紅く小さなアザに向けられた。
「ようやく見つけた自分が生きる居場所を失いたくないと思っている。だから向こうの世界でお前に印をつけた」
「これ、シンさんだったんですね。ふふっ。まるで本当にドラキュラに血を吸われたみたい」
「俺を見つけた褒美にもっとしてやろうか?」
「い、いやそのっ…それはっ」
「ハッキリしないヤツだな。なら褒美は無しだ」
「ちょっと待ってくださいっ!もしかして今からですかっ?!こ、心の準備をしますから!」
「待たない。目を閉じろ」
「ええっ!ちょっとっ…」
「ククッ、バカ。ニヤけた顔をしやがって。相変わらず面白い反応だな」
「…もしかしてからかいました?!」
「からかってねーよ。それはもっと夜が深まってから…あとのお楽しみだろう?」
シンさんが笑顔になる。
「●●ちゃん!望み通りドラキュラになってきたぞー!」
声がする方を見ると、リカー号の船首に立ったロイ船長がこっちに手を振っている。
青白い顔にキバ、口から赤い液体を垂らして、かなり本格的な仮装だ。
凝りすぎててちょっと怖いかも…!
私とロイ船長の間に、すっと黒いマントの影が立ちふさがる。
「バカか。気持ちわりーモン見せてんじゃねーよ」
ドラキュラの格好の、シンさん。
その背中のぬくもりが触れられる距離に確かに存在することを確認して幸せな気分になる。
「気持ち悪いだと?!あっ!ほら見ろ眼帯!●●ちゃんは満面の笑みだぞ!!ロイ様の仮装が気に入ったに決まってる!眼帯の仮装よりオレの方が上手いだろう!?」
「ありがとうございます、ロイ船長」
「●●ちゃんにお礼を言われたぞ!」
浮かれるロイ船長に呆れ顔になったシンさんが振り返って私を見る。
「だってねシンさん。うまく言えないんだけど…ロイ船長がいて皆がいて…だから私、シンさんが確かに此処にいてくれることを、もっと実感できてるんだと思うんです」
呆れたシンさんもヤキモチをやいてくれるシンさんも、笑顔のシンさんも―
みんなが存在して、こうして賑やかに過ごす日常から作りだされてゆくものだから。
「チッ。ロイの馬鹿は放っておいてあいつらのところに戻るぞ。そろそろハヤテあたりがうるせー頃だしな」
「待て眼帯!いや待たなくていい!お前は戻って真珠ちゃんは置いていけ!今からそっちに…ってうわ!マントが引っかかった!た、助けてくれー!」
マントが引っかかり、ロイ船長が船首にぶら下がっている。
「シンさん…助けてあげたほうが…」
「俺もお前もここで誰も見てねー、聞いてねー。戻るぞ」
「えっ…あのっ」
ばしゃーんっ
何かが海に落ちる音がして、
「ロイ様~!!ハロウィンパーティーの途中で何処いったんですか~?」
「ファジー!!助けてくれ!」
「さすがロイ様!海から登場してアタイらを驚かそうって演出だね!」
「はっはっ…ごぼごぼ…マントが巻き付いて泳げん…ってファジー早く浮き輪だ!」
「アイアイサー」
良かった…大丈夫みたい。
船のむこうから騒ぐロイ船長達に背を向けシンさんが私の手を取る。
目線の高さまで繋いだ手は持ちあげられ、シンさんの唇がそっと手の甲に触れた。
そしてまるで誓うように――
「ひとつ言っておく。●●…お前が世界中を探さなくても、俺は必ずお前のいる場所に戻ってくる。どんなことをしても、何があってもだ。永遠に離すつもりは無いから覚悟しておくんだな」
突然の甘い言葉に放心していると…
「返事は?」
麗しいドラキュラが惑わせるように微笑む。
「は、はい!」
イモムシとドラキュラ。
妙な組み合わせで繋がれた手のあたたかさを確かめ合いながら、私達はハロウィンの宴へと戻った。