tukimi
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駕籠のなかでネズミになってしまったサルテはチューチューとずっと鳴いていた。
「現国王はサルテの言いなり、でもサルテはネズミと入れ替わってるし国政はどうなるの?」
リュナが心配そうに溜息をついた。
「リュナ。前国王の側近の大臣がこの牢獄に居た。地下深く幽閉されていた彼は今回の騒動で解放されたから、これからこの国は戒厳令も解かれて少しずつ以前の豊かな国に戻るだろう」
男はドクター(見た目俺)から傷の手当を受けながら微笑んだ。
「師匠…まさか大臣の居場所を突き止めて解放するためにわざとサルテの罠に?」
リュナさんが尋ねる。
「錬金術師が自発的に国政に関与することは禁じられている。人間に戻ったらサルテには厳罰が待っているが…これで錬金術の発展も進む」
男は穏やかに答えた。
なるほど…。
コイツの本来の目的はそれか。
術師自らが力を持つことを禁じた現国王に幕を下ろさせるために、馬鹿な弟子の一人を利用した。同時に弟子の粛正も出来る。温厚そうに見せておいてなかなか食えない男だ。
「師匠!わたしとリュナちゃんのどっちに薬の作り方を教えてくれるの?わたしは負けないけど!」
アンジュはネズミのサルテに菓子を与えながら無邪気にたずねる。
コトン
男は棚から一本の瓶を取り出し、テーブルの上においた。
「ここに不老不死の薬がある。これは今までの錬金術とは全く違った精製法でしか作れない。君たちはこの国を出て旅したなかで、薬の材料に何が必要なのか学んだか?」
「金の精製、食べ物の変性…色々試みてみたけれど、人間の魂を変性させることについて『変える』ことは出来ても『増やす』ことは出来ないと思いました」
リュナが真面目な顔で答えた。
「リュナちゃん!簡単じゃない!『増やす』ためには材料も同じものを沢山使わないといけないってことだよ」
アンジュが淡々と答える。
「同じものって…まさか…」
「そう。不老不死の薬は人間の魂を材料にしなきゃ作れない」
アンジュの答えに、全員が息を呑んだ。
「アンジュ。君はかつてないほど優秀だ。稀に見る逸材だろう。私以上に完全な薬をつくりあげるかもしれないね」
男はアンジュの答えを肯定するようにゆっくりと頷いた。
「でしょ?だから師匠、わたしに譲ってよ!もっといい薬に完成させてあげる」
アンジュはまるで面白い玩具を受け取る子供みたいに瞳を輝かせた。
「師匠…」
リュナは対照的に薬を見つめたまま動かない。
それからポツリポツリと話し出した。
「私は…どうしてもその薬を手に入れなければいけなかったんです」
「君には故郷にたった一人の家族…幼い妹がいるね。そして彼女は誰よりも早く年を取ってしまう病にかかっている」
「…はい。私の腕では師匠と同じように不老不死の薬が作れると思っていませんでした。ですから年を取ることを遅らせる…そんな薬を作ろうと思っていました。ですが…」
リュナは言葉を詰まらせる。
「君にこれを譲るとすれば、君自身、もしくは妹に不老不死の薬を使うかい?」
男はリュナにたずねた。
「…いいえ。私は…」
「なぜ?劇薬だから命を落とす危険が怖いのかい?」
「いえ。私達が目指すのは魂の変性。今更自分を実験にすることを厭うわけじゃない。でも…今回の旅で彼らに出会って思ったんです」
リュナがシリウス海賊団を見る。
「自分の身体に生を受けて生きるということの喜び。誰も奪う権利は無い。だからこそ自由だということ」
「海賊達に教えられたのか?」
「ええ。永遠の時を生きれたとして、大切な相手を何度も失うことになる…私は自分が失うことが怖くて妹を変える薬を作ろうとしていました。でも妹を変性させてしまったら、今度は妹にその苦しみを与えることになる…」
リュナさんの言葉に師匠さんは優しく微笑んだ。
「それに材料が同じ人間の魂でしかないのなら、不老不死の薬を私は永遠に完成させることは出来そうにありません」
「ではどうするつもりだ?」
「故郷に戻り、医術を学びながら妹の側にいます。彼女の身体は私より早く年を重ねてしまうけれど…それが彼女だから。他の誰かになってしまっても意味がないんです」
男はリュナの答えに満足そうに告げた。
「私がこれを作った時、この国は大きな戦争をしていた。その大義名分を元に己の研究心のままコレを作ってしまった。私が永劫の時を生きる咎を受けたのは当然の報いだ。君たちには自ら学んで欲しかった。己の研究が人々に何をもたらすのかを…その未来まで」
「作ったのを誰がどう使おうとわたしたちには関係ないでしょ?師匠。すごいのを作れればそれでいいんじゃないの?」
アンジュが純粋に問う。
男は笑う。
「二人の試験結果は不合格とする。アンジュは基礎から学び直しなさい。君には知識や技術ではなく経験が必要だ。リュナには暇を出そう。戒厳令が解かれれば故郷に帰れるようになるだろう。卒業まで通信教育とする。錬金術と医術を融合させれば病への効果も高まるだろう」
アンジュは落胆の表情、リュナは安堵の表情を浮かべた。
「現国王はサルテの言いなり、でもサルテはネズミと入れ替わってるし国政はどうなるの?」
リュナが心配そうに溜息をついた。
「リュナ。前国王の側近の大臣がこの牢獄に居た。地下深く幽閉されていた彼は今回の騒動で解放されたから、これからこの国は戒厳令も解かれて少しずつ以前の豊かな国に戻るだろう」
男はドクター(見た目俺)から傷の手当を受けながら微笑んだ。
「師匠…まさか大臣の居場所を突き止めて解放するためにわざとサルテの罠に?」
リュナさんが尋ねる。
「錬金術師が自発的に国政に関与することは禁じられている。人間に戻ったらサルテには厳罰が待っているが…これで錬金術の発展も進む」
男は穏やかに答えた。
なるほど…。
コイツの本来の目的はそれか。
術師自らが力を持つことを禁じた現国王に幕を下ろさせるために、馬鹿な弟子の一人を利用した。同時に弟子の粛正も出来る。温厚そうに見せておいてなかなか食えない男だ。
「師匠!わたしとリュナちゃんのどっちに薬の作り方を教えてくれるの?わたしは負けないけど!」
アンジュはネズミのサルテに菓子を与えながら無邪気にたずねる。
コトン
男は棚から一本の瓶を取り出し、テーブルの上においた。
「ここに不老不死の薬がある。これは今までの錬金術とは全く違った精製法でしか作れない。君たちはこの国を出て旅したなかで、薬の材料に何が必要なのか学んだか?」
「金の精製、食べ物の変性…色々試みてみたけれど、人間の魂を変性させることについて『変える』ことは出来ても『増やす』ことは出来ないと思いました」
リュナが真面目な顔で答えた。
「リュナちゃん!簡単じゃない!『増やす』ためには材料も同じものを沢山使わないといけないってことだよ」
アンジュが淡々と答える。
「同じものって…まさか…」
「そう。不老不死の薬は人間の魂を材料にしなきゃ作れない」
アンジュの答えに、全員が息を呑んだ。
「アンジュ。君はかつてないほど優秀だ。稀に見る逸材だろう。私以上に完全な薬をつくりあげるかもしれないね」
男はアンジュの答えを肯定するようにゆっくりと頷いた。
「でしょ?だから師匠、わたしに譲ってよ!もっといい薬に完成させてあげる」
アンジュはまるで面白い玩具を受け取る子供みたいに瞳を輝かせた。
「師匠…」
リュナは対照的に薬を見つめたまま動かない。
それからポツリポツリと話し出した。
「私は…どうしてもその薬を手に入れなければいけなかったんです」
「君には故郷にたった一人の家族…幼い妹がいるね。そして彼女は誰よりも早く年を取ってしまう病にかかっている」
「…はい。私の腕では師匠と同じように不老不死の薬が作れると思っていませんでした。ですから年を取ることを遅らせる…そんな薬を作ろうと思っていました。ですが…」
リュナは言葉を詰まらせる。
「君にこれを譲るとすれば、君自身、もしくは妹に不老不死の薬を使うかい?」
男はリュナにたずねた。
「…いいえ。私は…」
「なぜ?劇薬だから命を落とす危険が怖いのかい?」
「いえ。私達が目指すのは魂の変性。今更自分を実験にすることを厭うわけじゃない。でも…今回の旅で彼らに出会って思ったんです」
リュナがシリウス海賊団を見る。
「自分の身体に生を受けて生きるということの喜び。誰も奪う権利は無い。だからこそ自由だということ」
「海賊達に教えられたのか?」
「ええ。永遠の時を生きれたとして、大切な相手を何度も失うことになる…私は自分が失うことが怖くて妹を変える薬を作ろうとしていました。でも妹を変性させてしまったら、今度は妹にその苦しみを与えることになる…」
リュナさんの言葉に師匠さんは優しく微笑んだ。
「それに材料が同じ人間の魂でしかないのなら、不老不死の薬を私は永遠に完成させることは出来そうにありません」
「ではどうするつもりだ?」
「故郷に戻り、医術を学びながら妹の側にいます。彼女の身体は私より早く年を重ねてしまうけれど…それが彼女だから。他の誰かになってしまっても意味がないんです」
男はリュナの答えに満足そうに告げた。
「私がこれを作った時、この国は大きな戦争をしていた。その大義名分を元に己の研究心のままコレを作ってしまった。私が永劫の時を生きる咎を受けたのは当然の報いだ。君たちには自ら学んで欲しかった。己の研究が人々に何をもたらすのかを…その未来まで」
「作ったのを誰がどう使おうとわたしたちには関係ないでしょ?師匠。すごいのを作れればそれでいいんじゃないの?」
アンジュが純粋に問う。
男は笑う。
「二人の試験結果は不合格とする。アンジュは基礎から学び直しなさい。君には知識や技術ではなく経験が必要だ。リュナには暇を出そう。戒厳令が解かれれば故郷に帰れるようになるだろう。卒業まで通信教育とする。錬金術と医術を融合させれば病への効果も高まるだろう」
アンジュは落胆の表情、リュナは安堵の表情を浮かべた。
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