tukimi
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リュナさんに案内された人が殆どいないという港の端へ碇泊する。
薄暗いマンソンジュの街並みは人が誰も歩いておらず、どんよりとした空気から逃れるように固く閉ざされた扉の家々からは僅かな生活の煙だけが上がり続けていた。
「外をうろつくヤツは誰もいねえな」
船長が辺りを見回す。
「軍隊がウロウロしているから私達も気を付けたほうがいいわ。めったに客がない街だから高くつくけど帆の修理は知り合いに頼んでおくわ」
船長は離れた場所にあるリカー号を見た。
「金は問題ねえが、そりゃ後でロイに請求だな」
「あの丘の上の家よ」
リュナさんが指差した方向には金色の屋根の家が見えた。
「国家錬金術師って割には小さな家だな」
ナギさん(見た目ソウシさん)の言葉にリュナさんがクスッと笑う。
「そうね。師匠は贅沢を好まないから質素ね。ひっそりと研究に打ち込んでいたいだけなのに国がそれを赦さないの。急ぎましょう…嫌な予感がするわ。前にいた時よりこの国は酷くなってる」
皆は一斉に丘の上の家をめざして駆けだした。
「リュナちゃん、おかえり」
家の前には小さな女の子が立っていた。
白いローブを着てくりっとした瞳が印象的な可愛らしい女の子だ。
「あーっ!!!ぼ、僕に団子を売った子!!」
トワ君がその姿をみるなり叫ぶ。
「へえ、お兄ちゃんも一緒なんだね」
「…アンジュ。やはり着いてたのね」
アンジュと呼ばれたその子はニコッと笑う。
「今ついたとこだよ。リュナちゃんと同時みたいだね」
「僕達は団子売った君を探してたんだ!みずぼらしい格好してたから僕はてっきり市場で働く子供だと…」
「はくしんの演技だった?だって誰も買ってくれないから人の良さそうなお兄ちゃんに声かけたんだー」
「アンジュ。師匠は?」
「留守みたい。返事がないの」
「おいガキ!俺達を元に戻せっ!!!」
ハヤテさん(見た目ナギさん)は詰め寄る。
「そ、そうですよ!君から買ったお団子で大変なことになってるんだ」
トワ君が言うと、
「へえ、お兄ちゃんはお団子食べなかったんだね。でも他の人達が何人か入れ替わったんだ。ふふ、おもしろーい」
「面白いだと?このクソガキ」
ハヤテさんの見た目のシンさんが不機嫌な顔でアンジュちゃんを睨むと、アンジュちゃんはさっとリュナさんの後ろに隠れた。
「金髪のお兄ちゃん怖い…」
「シン、怖がらせては駄目だ。ねえ私達は戻れるんだろう?」
シンさんの見た目のソウシさんが優しく訊ねる。
「え?うそ!戻りたいの?」
アンジュちゃんは不思議そうに皆に訊ねる。
「アンジュ。ポージョンを口にした人間を不幸にしないって言われてるでしょう」
リュナさんが諭すように言う。
「うん。だから不幸になんてなるわけないよ。だってそのお団子、『一緒にお団子を食べた人の中で一番なりたい人になれる』ように作ったもん」
え?なりたい人になる団子?!
アンジュちゃんの言葉に皆が顔を見合わせる。
「確かにオレはナギ兄スゲーと思ってるし、メシうまいし…だからナギ兄になってんのか?」
ハヤテさん(見た目ナギさん)は自分の手を見つめた。
「ドクターにか。尊敬してるが…そうかもな…」
ナギさん(見た目ソウシさん)は何か言いたげに呟いた。
「団子を食べる前に船長とシンが航路の打ち合わせをしていた所を見て、私ももっと役に立てたらと思っていたけれど…そうか。うん、確かにあの時シンになりたかったよ私は」
ソウシさん(見た目シンさん)も頷いた。
「俺は絶対に間違いだ」
シンさん(見た目ハヤテさん)は眉間に皺を寄せて首を振る。
「ンなこと言ってシン!まさかオレになりたかったとはな~!!しょうがねえよな、オレ強えーしな!かっこいいしな!」
ハヤテさん(見た目ナギさん)は上機嫌でハヤテさんになっているシンさんをからかう。
「能天気に物事を考えられたらなんて一瞬思ったこともあったが、気の迷いだ。一番ありえねえ」
「素直じゃねえな。実際オレになってンだからやっぱオレになりたかったんだろ?」
「このメンバーで俺が最後に団子を食った。その時点で残っていた身体がコレだけだったって事だろ」
「はぁっ!?人の身体を余りモンみたいに言うなっての!!」
「絶対余ってたに決まっている」
「んだと!?」
「でもこのままってわけにもいかないし、元に戻して欲しいんだ」
ソウシさん(見た目シンさん)がアンジュちゃんに改めてお願いする。
「リュナちゃん、わたし魂の定着まで出来そうみたい!すごいでしょ」
アンジュちゃんはソウシさんの言葉に応えず、リュナさんに抱きついた。
「そうね。でも彼らを戻してあげましょう。入れ替わりと定着を望んでいないわ。分解のポージョンが必要だけど私じゃ作れない」
「私は作れるけど、分子まで分解しちゃうからお兄ちゃん達が水とタンパク質とその他になっちゃうよ」
「それどーゆーことだ?」
ハヤテさん(見た目ナギさん)が聞く。
「がっはっは!体が消えて残らねえってことだろ」
船長は笑う。
「笑い事じゃないです!それじゃあどーすれば…」
トワくんが困った顔になる。
「師匠なら魂だけ分解する方法知ってると思う。だから教えてもらわなきゃ」
アンジュちゃんは嬉しそうに飛び跳ねる。
「くそっ!自分で直せねえもん作るんじゃねえよ!チッ、とっととそのシショーとやらに何とかしてもらおうぜ」
ハヤテさん(見た目ナギさん)は勢いよく扉を蹴破った。
壊れたドアの向こう側の惨状に全員、驚いた顔になった。
床に物が散乱し、血痕が残っている。
あちこちの瓶が割れて液体が飛散したまま、その中に年老いた執事らしき男性が倒れていた。
「ねえ…師匠に何かあったの?!」
リュナさんは血相を変えてその男性を抱き起した。
「リュナ様…旦那様は…国王の命によって軍に連れ去られました…お弟子様方がいなくなったのを見計らって不老不死の薬を狙っていたのです。私はお守りできず…」
「そんな!だめだよ!試験を受けて薬を引き継ぐのは私なんだからっ」
アンジュちゃんはそう言って外に飛び出していった。
薄暗いマンソンジュの街並みは人が誰も歩いておらず、どんよりとした空気から逃れるように固く閉ざされた扉の家々からは僅かな生活の煙だけが上がり続けていた。
「外をうろつくヤツは誰もいねえな」
船長が辺りを見回す。
「軍隊がウロウロしているから私達も気を付けたほうがいいわ。めったに客がない街だから高くつくけど帆の修理は知り合いに頼んでおくわ」
船長は離れた場所にあるリカー号を見た。
「金は問題ねえが、そりゃ後でロイに請求だな」
「あの丘の上の家よ」
リュナさんが指差した方向には金色の屋根の家が見えた。
「国家錬金術師って割には小さな家だな」
ナギさん(見た目ソウシさん)の言葉にリュナさんがクスッと笑う。
「そうね。師匠は贅沢を好まないから質素ね。ひっそりと研究に打ち込んでいたいだけなのに国がそれを赦さないの。急ぎましょう…嫌な予感がするわ。前にいた時よりこの国は酷くなってる」
皆は一斉に丘の上の家をめざして駆けだした。
「リュナちゃん、おかえり」
家の前には小さな女の子が立っていた。
白いローブを着てくりっとした瞳が印象的な可愛らしい女の子だ。
「あーっ!!!ぼ、僕に団子を売った子!!」
トワ君がその姿をみるなり叫ぶ。
「へえ、お兄ちゃんも一緒なんだね」
「…アンジュ。やはり着いてたのね」
アンジュと呼ばれたその子はニコッと笑う。
「今ついたとこだよ。リュナちゃんと同時みたいだね」
「僕達は団子売った君を探してたんだ!みずぼらしい格好してたから僕はてっきり市場で働く子供だと…」
「はくしんの演技だった?だって誰も買ってくれないから人の良さそうなお兄ちゃんに声かけたんだー」
「アンジュ。師匠は?」
「留守みたい。返事がないの」
「おいガキ!俺達を元に戻せっ!!!」
ハヤテさん(見た目ナギさん)は詰め寄る。
「そ、そうですよ!君から買ったお団子で大変なことになってるんだ」
トワ君が言うと、
「へえ、お兄ちゃんはお団子食べなかったんだね。でも他の人達が何人か入れ替わったんだ。ふふ、おもしろーい」
「面白いだと?このクソガキ」
ハヤテさんの見た目のシンさんが不機嫌な顔でアンジュちゃんを睨むと、アンジュちゃんはさっとリュナさんの後ろに隠れた。
「金髪のお兄ちゃん怖い…」
「シン、怖がらせては駄目だ。ねえ私達は戻れるんだろう?」
シンさんの見た目のソウシさんが優しく訊ねる。
「え?うそ!戻りたいの?」
アンジュちゃんは不思議そうに皆に訊ねる。
「アンジュ。ポージョンを口にした人間を不幸にしないって言われてるでしょう」
リュナさんが諭すように言う。
「うん。だから不幸になんてなるわけないよ。だってそのお団子、『一緒にお団子を食べた人の中で一番なりたい人になれる』ように作ったもん」
え?なりたい人になる団子?!
アンジュちゃんの言葉に皆が顔を見合わせる。
「確かにオレはナギ兄スゲーと思ってるし、メシうまいし…だからナギ兄になってんのか?」
ハヤテさん(見た目ナギさん)は自分の手を見つめた。
「ドクターにか。尊敬してるが…そうかもな…」
ナギさん(見た目ソウシさん)は何か言いたげに呟いた。
「団子を食べる前に船長とシンが航路の打ち合わせをしていた所を見て、私ももっと役に立てたらと思っていたけれど…そうか。うん、確かにあの時シンになりたかったよ私は」
ソウシさん(見た目シンさん)も頷いた。
「俺は絶対に間違いだ」
シンさん(見た目ハヤテさん)は眉間に皺を寄せて首を振る。
「ンなこと言ってシン!まさかオレになりたかったとはな~!!しょうがねえよな、オレ強えーしな!かっこいいしな!」
ハヤテさん(見た目ナギさん)は上機嫌でハヤテさんになっているシンさんをからかう。
「能天気に物事を考えられたらなんて一瞬思ったこともあったが、気の迷いだ。一番ありえねえ」
「素直じゃねえな。実際オレになってンだからやっぱオレになりたかったんだろ?」
「このメンバーで俺が最後に団子を食った。その時点で残っていた身体がコレだけだったって事だろ」
「はぁっ!?人の身体を余りモンみたいに言うなっての!!」
「絶対余ってたに決まっている」
「んだと!?」
「でもこのままってわけにもいかないし、元に戻して欲しいんだ」
ソウシさん(見た目シンさん)がアンジュちゃんに改めてお願いする。
「リュナちゃん、わたし魂の定着まで出来そうみたい!すごいでしょ」
アンジュちゃんはソウシさんの言葉に応えず、リュナさんに抱きついた。
「そうね。でも彼らを戻してあげましょう。入れ替わりと定着を望んでいないわ。分解のポージョンが必要だけど私じゃ作れない」
「私は作れるけど、分子まで分解しちゃうからお兄ちゃん達が水とタンパク質とその他になっちゃうよ」
「それどーゆーことだ?」
ハヤテさん(見た目ナギさん)が聞く。
「がっはっは!体が消えて残らねえってことだろ」
船長は笑う。
「笑い事じゃないです!それじゃあどーすれば…」
トワくんが困った顔になる。
「師匠なら魂だけ分解する方法知ってると思う。だから教えてもらわなきゃ」
アンジュちゃんは嬉しそうに飛び跳ねる。
「くそっ!自分で直せねえもん作るんじゃねえよ!チッ、とっととそのシショーとやらに何とかしてもらおうぜ」
ハヤテさん(見た目ナギさん)は勢いよく扉を蹴破った。
壊れたドアの向こう側の惨状に全員、驚いた顔になった。
床に物が散乱し、血痕が残っている。
あちこちの瓶が割れて液体が飛散したまま、その中に年老いた執事らしき男性が倒れていた。
「ねえ…師匠に何かあったの?!」
リュナさんは血相を変えてその男性を抱き起した。
「リュナ様…旦那様は…国王の命によって軍に連れ去られました…お弟子様方がいなくなったのを見計らって不老不死の薬を狙っていたのです。私はお守りできず…」
「そんな!だめだよ!試験を受けて薬を引き継ぐのは私なんだからっ」
アンジュちゃんはそう言って外に飛び出していった。
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