tukimi
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「あの…シンさん?私の顔、何かついてますか?」
「いや…」
見た目はハヤテさんだけれど、段々慣れてくるとシンさんに見えてくるから不思議だ。
やっぱり印象って内側から出てくるものだからかな…?
「ドクター。舵取りの手伝いをお願いします。航海図は俺の頭の中だが、実際に動かすのは俺の身体の方が向いてるかもしれない」
「ん?そうだね。さっきみたいに荒いと皆も眠れないだろう。試してみる価値はある」
「2日かかるところを1日で行ってやる。一刻も早く自分の身体に戻りたい」
シンさんが決意を込めた様子で言うと、ソウシさん(中身ナギさん)も大きく頷いた。
「ああ。これ以上不味いメシを作って食材を無駄に消費したくねえしな」
「早く着いてもらえれば私は助かるわ。あなた達ならきっとやってくれるわよね」
リュナさんの色っぽい視線に船長がニヤリと笑う。
「シリウス海賊団に出来ないことはねえ。とにかく見張りのトワを残してそれ以外はまずは身体を休めろ。あっちに着けば何が起こるかわからねえからな」
「「「「「イエッサー」」」」
船長の声にいつも通りに皆が答える。
マンソンジュの街に行けば、元に戻れることを願って――
「敵襲っ!」
トワ君の大きな声と共に、船上から騒がしい音がきこえてきた。
ドオンッと響く大砲の轟音。そしてシリウス号は大きく揺れる。
「どうやら素直に街には行かせてくれないみたいね」
「リュナさん!目が覚めたんですか?えっと、ファジーさんは…」
隣を見るとファジーさんが大きなイビキをかいて眠っている。
「ファジーさん!敵襲ですっ」
身体を揺すると、ファジーさんはむくっと起き上がる。
「ちょっとぉ~寝不足は美容の敵だってのにどこのどいつだい?!」
「わかりません。すぐに甲板に…あっ!リュナさんは危ないからここにいた方が」
「私も行くわ。何か役立てるかもしれないし」
リュナさんはそう言ってさっさと甲板へと行ってしまう。
「あいつら…しつこいわね」
シリウス号に大砲を撃ち込みギリギリまで近づいてきていたのは、さっきの街で絡んできていた男の人達だった。
ついには船を横付けにして乗り込んできてしまう。
「女を渡してもらおうか」
スキンヘッドのリーダーらしき男の人が言う。
「ちょっと!アタイはアンタ達についてくほど安い女じゃないよ!」
ファジーさんが声を張り上げると、
「お前はいらねえ。そっちの美人と…そうだな。もう一人の女のガキも、まあまあの値段で売れそうだ」
舌なめずりしてこっちを見られると、ぞわっと悪寒が走った。
「お前達、手配書のシリウス海賊団だってな」
「ほう…俺達をシリウスと知って喧嘩売ってきやがったのか」
船長が感心したように答えた。
「高い賞金かけられてる割には逃げ回りやがって、たいしたことねーんじゃねえのか」
「んだと!人が大人しくしてりゃ…調子のるんじゃねーぞ」
ハヤテさん(見た目ナギさん)が鎖鎌を構える。
「船長。船の上なら問題ないですよね」
ナギさん(見た目ソウシさん)がハヤテさんに目配せすると、船長も、
「しかたねえな。本調子じゃねえのはわかるが、誰と誰が代わってようとお前らがやられるようなタマじゃねえのに変わりねえ。船を壊さねー程度に好きにしろ」
その言葉に一斉に乱闘が始まった。
「ふぬー!アタイの美肌ゴールデンタイムを邪魔した報いは受けてもらうよっ!」
ファジーさんがバタバタと男の人たちを倒していく。
「ふふ。さすが女海賊。あの子凄いわね」
リュナさんは興味深そうにファジーさんを見つめる。
「でもさすがはシリウス海賊団ね。敵の数は多いけど全く問題ないみたい」
リュナさんの言うとおり、中身が入れ替わっているとはいえ、銃を構えるハヤテさん(中身シンさん)、鎖鎌を構えるソウシさん(中身ナギさん)、二刀流のナギさん(中身ハヤテさん)、手刀で応戦するシンさん(中身ソウシさん)、そして船長とトワ君。
次々とシリウス号へ乗り込もうとしてくる怖そうな人たちをあっという間に追い払ってしまう。
そして――
ドーンッ
大きくシリウス号が揺れた。
「おーい!ファジー!真珠ちゃん!そして美人の女!このロイ様が助けに来てやったぞ~!!」
ロイ船長が二隻の船に並んで大砲を撃ちこんできた。
「馬鹿かアイツは。こんな時に大砲なんか撃ってきやがって…!」
船長がリカー号を呆れた顔で見て、ロイ船長へ止めろという合図を送ろうとするけれど。
「ん?何だリュウガ。ロイ様に助けて欲しいって?しょうがねえなあ。おい、もっと大砲を撃て」
勘違いしたリカー号から大量に大砲が撃ち込まれ――
「っ撤退だ!」
慌てて襲撃してきた男の人たちは逃げていくけれど、
どぉぉぉんっ
ぐらり
シリウス号も大きく揺れ、帆に損傷を受けた。
「チッ…これじゃうまく進めねえ」
シンさん(見た目ハヤテさん)は憎々しげにリカー号を睨んだ。
「おいシン!マンソンジュまでもつか?」
船長がシンさんに訊ねる。
「すぐに帆の修復が必要ですが、途中の街に寄港し直せば時間がかかる」
「ロイの野郎。相変わらず余計なことしやがって」
ハヤテさん(見た目ナギさん)の腹立たしそうに言った言葉にファジーさんがロイ船長を庇って、いつもの言い合いが始まってしまう。
「ロイ様を悪く言うんじゃないよ!帆の一つや二つくらいアンタがちゃちゃっと直しなっ」
「んだと?!」
「あっ!アンタ今ガウンの下のアタイのネグリジェ姿に欲情しただろ!?アタイをイヤラシイ目で見ていいのはシン様とソウシ様だけなんだからねっ!」
「お前をそんな目で見ることは永遠にない」
隣に立っていたハヤテさんの見た目のシンさんは言い切る。
「…っシン様。見た目が顔だけ剣士だからやっぱり違和感あるね…アタイを見つめているのはシン様なのかそれとも違う瞳になるのか」
「見つめてねえ。見たくねえ物が視界に入って困ってはいるがな」
「うっ、そのS発言はシン様らしくてゾクゾクするけど…アタイのダイナマイトバディを見てもそう言えるかい?」
羽織っていたガウンをファジーさんが脱ごうとして、シンさん見た目のソウシさんがそっとその肩にガウンをかけ直した。
「ファジー。そんな恰好でいたら風邪引くよ?」
「シン様~!…じゃない!ソウシ様~!!やっぱり貴方だけがアタイの運命の人だよ!」
「医者の立場で言ってるだけだろ」
ソウシさん(中身ナギさん)が冷静に言う。
「いやどー見ても見たくねえから脱ぐの阻止しただけだろ。つーか肉布団で風邪もひかねえだろうしな」
ハヤテさん(見た目ナギさん)も付け加える。
「アンタ達。乙女に対して失礼すぎるけど、冷たいソウシ様も悪くは無い気がしてきたよ」
ファジーさんが擦り寄り、ソウシさん(中身ナギさん)は後ずさる。
「悪いままでいい」
「皆さん!それより帆を直さないと!」
トワ君が脱線し始めた皆に訴える。
「それならアタシに任せて」
リュナさんが甲板に何かを書き始め、ブツブツと唱える。それからマストに触れると――不思議なことに損傷部分があっという間に元に戻っていく。
「なっ…なにもんだ…」
ハヤテさん(見た目ナギさん)はあっけにとられた顔で呟いた。
「ふふ。錬金術師だって言ったでしょう?」
「すげえな」
船長も感心した様子で帆を見上げる。
「これでマンソンジュまでの速度は変わらない。ただ長くは持たないわ。損傷を受ける前の状態に一時的に戻しただけだから後でちゃんと修理は必要よ。金貨みたいにね」
皆は改めて驚いた顔でリュナさんを見た。
「いや…」
見た目はハヤテさんだけれど、段々慣れてくるとシンさんに見えてくるから不思議だ。
やっぱり印象って内側から出てくるものだからかな…?
「ドクター。舵取りの手伝いをお願いします。航海図は俺の頭の中だが、実際に動かすのは俺の身体の方が向いてるかもしれない」
「ん?そうだね。さっきみたいに荒いと皆も眠れないだろう。試してみる価値はある」
「2日かかるところを1日で行ってやる。一刻も早く自分の身体に戻りたい」
シンさんが決意を込めた様子で言うと、ソウシさん(中身ナギさん)も大きく頷いた。
「ああ。これ以上不味いメシを作って食材を無駄に消費したくねえしな」
「早く着いてもらえれば私は助かるわ。あなた達ならきっとやってくれるわよね」
リュナさんの色っぽい視線に船長がニヤリと笑う。
「シリウス海賊団に出来ないことはねえ。とにかく見張りのトワを残してそれ以外はまずは身体を休めろ。あっちに着けば何が起こるかわからねえからな」
「「「「「イエッサー」」」」
船長の声にいつも通りに皆が答える。
マンソンジュの街に行けば、元に戻れることを願って――
「敵襲っ!」
トワ君の大きな声と共に、船上から騒がしい音がきこえてきた。
ドオンッと響く大砲の轟音。そしてシリウス号は大きく揺れる。
「どうやら素直に街には行かせてくれないみたいね」
「リュナさん!目が覚めたんですか?えっと、ファジーさんは…」
隣を見るとファジーさんが大きなイビキをかいて眠っている。
「ファジーさん!敵襲ですっ」
身体を揺すると、ファジーさんはむくっと起き上がる。
「ちょっとぉ~寝不足は美容の敵だってのにどこのどいつだい?!」
「わかりません。すぐに甲板に…あっ!リュナさんは危ないからここにいた方が」
「私も行くわ。何か役立てるかもしれないし」
リュナさんはそう言ってさっさと甲板へと行ってしまう。
「あいつら…しつこいわね」
シリウス号に大砲を撃ち込みギリギリまで近づいてきていたのは、さっきの街で絡んできていた男の人達だった。
ついには船を横付けにして乗り込んできてしまう。
「女を渡してもらおうか」
スキンヘッドのリーダーらしき男の人が言う。
「ちょっと!アタイはアンタ達についてくほど安い女じゃないよ!」
ファジーさんが声を張り上げると、
「お前はいらねえ。そっちの美人と…そうだな。もう一人の女のガキも、まあまあの値段で売れそうだ」
舌なめずりしてこっちを見られると、ぞわっと悪寒が走った。
「お前達、手配書のシリウス海賊団だってな」
「ほう…俺達をシリウスと知って喧嘩売ってきやがったのか」
船長が感心したように答えた。
「高い賞金かけられてる割には逃げ回りやがって、たいしたことねーんじゃねえのか」
「んだと!人が大人しくしてりゃ…調子のるんじゃねーぞ」
ハヤテさん(見た目ナギさん)が鎖鎌を構える。
「船長。船の上なら問題ないですよね」
ナギさん(見た目ソウシさん)がハヤテさんに目配せすると、船長も、
「しかたねえな。本調子じゃねえのはわかるが、誰と誰が代わってようとお前らがやられるようなタマじゃねえのに変わりねえ。船を壊さねー程度に好きにしろ」
その言葉に一斉に乱闘が始まった。
「ふぬー!アタイの美肌ゴールデンタイムを邪魔した報いは受けてもらうよっ!」
ファジーさんがバタバタと男の人たちを倒していく。
「ふふ。さすが女海賊。あの子凄いわね」
リュナさんは興味深そうにファジーさんを見つめる。
「でもさすがはシリウス海賊団ね。敵の数は多いけど全く問題ないみたい」
リュナさんの言うとおり、中身が入れ替わっているとはいえ、銃を構えるハヤテさん(中身シンさん)、鎖鎌を構えるソウシさん(中身ナギさん)、二刀流のナギさん(中身ハヤテさん)、手刀で応戦するシンさん(中身ソウシさん)、そして船長とトワ君。
次々とシリウス号へ乗り込もうとしてくる怖そうな人たちをあっという間に追い払ってしまう。
そして――
ドーンッ
大きくシリウス号が揺れた。
「おーい!ファジー!真珠ちゃん!そして美人の女!このロイ様が助けに来てやったぞ~!!」
ロイ船長が二隻の船に並んで大砲を撃ちこんできた。
「馬鹿かアイツは。こんな時に大砲なんか撃ってきやがって…!」
船長がリカー号を呆れた顔で見て、ロイ船長へ止めろという合図を送ろうとするけれど。
「ん?何だリュウガ。ロイ様に助けて欲しいって?しょうがねえなあ。おい、もっと大砲を撃て」
勘違いしたリカー号から大量に大砲が撃ち込まれ――
「っ撤退だ!」
慌てて襲撃してきた男の人たちは逃げていくけれど、
どぉぉぉんっ
ぐらり
シリウス号も大きく揺れ、帆に損傷を受けた。
「チッ…これじゃうまく進めねえ」
シンさん(見た目ハヤテさん)は憎々しげにリカー号を睨んだ。
「おいシン!マンソンジュまでもつか?」
船長がシンさんに訊ねる。
「すぐに帆の修復が必要ですが、途中の街に寄港し直せば時間がかかる」
「ロイの野郎。相変わらず余計なことしやがって」
ハヤテさん(見た目ナギさん)の腹立たしそうに言った言葉にファジーさんがロイ船長を庇って、いつもの言い合いが始まってしまう。
「ロイ様を悪く言うんじゃないよ!帆の一つや二つくらいアンタがちゃちゃっと直しなっ」
「んだと?!」
「あっ!アンタ今ガウンの下のアタイのネグリジェ姿に欲情しただろ!?アタイをイヤラシイ目で見ていいのはシン様とソウシ様だけなんだからねっ!」
「お前をそんな目で見ることは永遠にない」
隣に立っていたハヤテさんの見た目のシンさんは言い切る。
「…っシン様。見た目が顔だけ剣士だからやっぱり違和感あるね…アタイを見つめているのはシン様なのかそれとも違う瞳になるのか」
「見つめてねえ。見たくねえ物が視界に入って困ってはいるがな」
「うっ、そのS発言はシン様らしくてゾクゾクするけど…アタイのダイナマイトバディを見てもそう言えるかい?」
羽織っていたガウンをファジーさんが脱ごうとして、シンさん見た目のソウシさんがそっとその肩にガウンをかけ直した。
「ファジー。そんな恰好でいたら風邪引くよ?」
「シン様~!…じゃない!ソウシ様~!!やっぱり貴方だけがアタイの運命の人だよ!」
「医者の立場で言ってるだけだろ」
ソウシさん(中身ナギさん)が冷静に言う。
「いやどー見ても見たくねえから脱ぐの阻止しただけだろ。つーか肉布団で風邪もひかねえだろうしな」
ハヤテさん(見た目ナギさん)も付け加える。
「アンタ達。乙女に対して失礼すぎるけど、冷たいソウシ様も悪くは無い気がしてきたよ」
ファジーさんが擦り寄り、ソウシさん(中身ナギさん)は後ずさる。
「悪いままでいい」
「皆さん!それより帆を直さないと!」
トワ君が脱線し始めた皆に訴える。
「それならアタシに任せて」
リュナさんが甲板に何かを書き始め、ブツブツと唱える。それからマストに触れると――不思議なことに損傷部分があっという間に元に戻っていく。
「なっ…なにもんだ…」
ハヤテさん(見た目ナギさん)はあっけにとられた顔で呟いた。
「ふふ。錬金術師だって言ったでしょう?」
「すげえな」
船長も感心した様子で帆を見上げる。
「これでマンソンジュまでの速度は変わらない。ただ長くは持たないわ。損傷を受ける前の状態に一時的に戻しただけだから後でちゃんと修理は必要よ。金貨みたいにね」
皆は改めて驚いた顔でリュナさんを見た。
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