tukimi
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「おにいちゃん、月見だんご買ってくれない?今夜はおつきみだよ」
買い出しを終えて人で溢れかえった市場を歩いていると、突然シャツの袖を引かれる。
振り返ると小さな女の子が立っていた。
「月見だんごかぁ…ナギさんが作ってくれるから間に合ってるんだけどなぁ」
「とってもおいしいんだよ?」
「う、うん…」
改めて女の子の身なりを見ればお世辞にも綺麗とは言えない。
リボンの掛けられた袋に入った団子をぎゅっと握りしめながら、
「買ってくれないの?」
と訴えるようにじぃっと見上げている。
もしかして団子を売らないとこの子は帰れないのかもしれない。
「…じゃあ僕、買います!」
そう言うと、女の子は嬉しそうに値段を答えた。
「えっ!ず、ずいぶん高価な団子なんだね…!」
驚く値段だったけれど、買うと言ってしまったので今更後には引けない。
何とか手持ちで足りそうだ。
懐から金貨を取り出していると女の子は満面の笑みで付け加えた。
「このおだんごね、特別なの。きっと楽しいことがおこるよ。おにいちゃん、ラッキーだね!」
「え?楽しいことって―?」
僕の質問に答えることなく女の子は団子を押し付け金貨を受け取ると勢いよく走りだし、あっと言う間に人の波のなかへと消えて行った。
「あ!お釣りがまだ…って、もう見えなくなっちゃった…」
「バッカじゃねーの、トワ!それ、ガキに騙されたんだろ」
食堂でハヤテさんが笑いながら僕の肩をバンバンと叩く。
「だ、騙されてません!ちゃんと団子は受け取りましたし」
「フン、ボッタくられたんだな。感情に流されて不必要な物を安易に買うからだ」
シンさんが呆れたように僕を見おろす。
「い、いいえ!不必要なんかじゃないんです!特別って言ってましたし、きっとものすごく美味しいお団子なんです!」
「ふふ。ハヤテもシンもトワを苛めるんじゃないよ。もしトワの立場だったら、私だってやはり買ってしまってただろうしね。」
「ソウシさん~!!僕、一生ついていきます!」
「あはは。おおげさだね」
「フン、ドクターは甘いんですよ。ガキにぼったくられるなんてそれでも海賊か、トワ」
「オレならそんなクソ高い団子を買うなら酒か肉買うけどな!」
「まだ小さい子供だったんだろう?そういうシンもハヤテも、きっと出会ってたらトワと同じように買ってしまったんじゃないかな」
「何にせよ団子の数は多い方がいい。足りなくなるほど食う奴もいるしな」
ナギさんがハヤテさんを見た。
「ヤマト風団子はウマイからな。まっ、アイツが船に来てくれたおかげで、ツキミっつー団子食べ放題な祭りができるワケだし!」
ハヤテさんの言葉に、シンさんがすかさず突っ込んだ。
「馬鹿か。食べ放題じゃない。ちゃんと団子の並べ方も数も決まっている。それに本来は団子がメインではなく月への信仰と風雅を愉しむ祭りだ」
「風雅じゃ腹いっぱいにならねーだろ」
「チッ。単細胞が」
「なんだと?!シンはいちいち細けーんだよ!コジュウトかっつーの」
ハヤテさんとシンさんのいつもの言い合いが始まったところで、ナギさんが声をかける。
「無駄口たたく暇があるなら料理を甲板に運べ」
今夜は甲板でお月見の宴だ。
睨みあっていた二人はナギさんに促されて、
しぶしぶ視線をテーブルへと移した。
僕が袋から団子を取り出してお皿に並べていると、
皆が興味深そうに団子を眺める。
もっちりとしていて弾力がありそれはまるで宝石のように輝いていた。
「うわぁ!何だかこのお団子つやつやしてませんか?」
高値で買ってしまったから、というワケじゃないけれど、本当に美味しそうだ。
「すっげえ美味そうじゃねえ?沢山あるみたいだし労働前の腹ごしらえに味見を兼ねてひとついただき!」
ハヤテさんが団子の一つをすかさず口に入れた。
「う、うめー!!これすげぇ美味い!!ナギ兄の団子も美味いけど、コレはコレでなんつうか不思議な味でクセになる!」
興奮気味のハヤテさんに、ナギさんが反応した。
「そんなに美味いのか?念のため味付けの参考に食ってみるか」
ナギさんもひとつ、口に入れる。
「…コレは!!!」
ナギさんの目が驚きに見開かれる。
「ナギが驚くほど美味しいの?やっぱり特別な団子なのかな。どれ、私もいただこうかな」
ソウシさんも一つ口に入れる。
「なるほど。これは不思議な美味しさだね。ほら、シンも食べてみて」
行儀が悪い、といって傍観していたシンさんだったけれど、ソウシさんに団子を口元に近づけられると断りきれずに受け取った。
「確かに美味だ。が…ん?…うっ!」
…え?!
シンさんが低い呻き声をあげた後、
呼応するように次々と全員その場に倒れ込んでいく。
「え?ええっ!?みなさん!!ど、どうしたんですか?!もしかして団子に毒が!?ハヤテさん!シンさん!ナギさん!ソウシさん!!」
叫ぶけれど、反応は無い。
「どうしよう…!ナギさん!起きて下さい!」
目の前のナギさんの身体を揺すっていると、むくっと起き上がる。
「よかった!大丈夫ですか?!」
「ったく、トワ、耳元でわめくなよ。叫ばなくても聴こえてるっつーの。すげー美味いと思ったらイキナリ意識が飛んじまって……ん?あれ?そんなにちっちゃかったか、お前?」
ナギさんの様子がおかしい。
べらべら喋っているし僕を不思議そうに見下ろしてる…!
「チッ。何だこの団子は。トワ、事と次第によっては海の藻くずにするぞ」
起き上がったハヤテさんが、シンさんの口癖を言っている!
「もしかして気を失うほど美味しかったってことなのかな。シン、トワを責めても仕方ないだろう?」
シンさんが自分のことを『シン』と呼び、僕を優しく庇っている!
お、おかしい。色々おかしい。
…けど。
溢れだす違和感と湧き上がる嫌な予感を僕は必死で打ち消そうとする。
「とにかく宴の準備だな」
黙々と手を動かそうとしたソウシさんが、
ハッとした顔で隣のナギさんを見た…
そして全員がお互いを見つめ、
口を揃えて―――
「「「「何でオレ(私)がそこ(目の前)にいるんだ?!!!!」」」」
もしかして…
いや、もしかしなくても。
コレは…………
中身が入れ替わってる?!
「じゃあ僕は宴の準備をしますので…これで失礼しま…」
「ちょっと待てえ!!!!トワ、どーゆーことだコレ!!何でオレはナギ兄になってんだよ!!!この団子は何だ?!」
やっぱりナギさんの中にはハヤテさんが入ってるみたいだ。
いつもの三倍くらい声が大きい。
「し、知らないです僕!!市場でお団子を買っただけです!!」
「なぜ団子食べただけで中身が入れ替わるんだ」
そう言って睨むソウシさんの中はたぶんナギさんが入っている。
いつもの三倍くらい目つきが怖い。
買い出しを終えて人で溢れかえった市場を歩いていると、突然シャツの袖を引かれる。
振り返ると小さな女の子が立っていた。
「月見だんごかぁ…ナギさんが作ってくれるから間に合ってるんだけどなぁ」
「とってもおいしいんだよ?」
「う、うん…」
改めて女の子の身なりを見ればお世辞にも綺麗とは言えない。
リボンの掛けられた袋に入った団子をぎゅっと握りしめながら、
「買ってくれないの?」
と訴えるようにじぃっと見上げている。
もしかして団子を売らないとこの子は帰れないのかもしれない。
「…じゃあ僕、買います!」
そう言うと、女の子は嬉しそうに値段を答えた。
「えっ!ず、ずいぶん高価な団子なんだね…!」
驚く値段だったけれど、買うと言ってしまったので今更後には引けない。
何とか手持ちで足りそうだ。
懐から金貨を取り出していると女の子は満面の笑みで付け加えた。
「このおだんごね、特別なの。きっと楽しいことがおこるよ。おにいちゃん、ラッキーだね!」
「え?楽しいことって―?」
僕の質問に答えることなく女の子は団子を押し付け金貨を受け取ると勢いよく走りだし、あっと言う間に人の波のなかへと消えて行った。
「あ!お釣りがまだ…って、もう見えなくなっちゃった…」
「バッカじゃねーの、トワ!それ、ガキに騙されたんだろ」
食堂でハヤテさんが笑いながら僕の肩をバンバンと叩く。
「だ、騙されてません!ちゃんと団子は受け取りましたし」
「フン、ボッタくられたんだな。感情に流されて不必要な物を安易に買うからだ」
シンさんが呆れたように僕を見おろす。
「い、いいえ!不必要なんかじゃないんです!特別って言ってましたし、きっとものすごく美味しいお団子なんです!」
「ふふ。ハヤテもシンもトワを苛めるんじゃないよ。もしトワの立場だったら、私だってやはり買ってしまってただろうしね。」
「ソウシさん~!!僕、一生ついていきます!」
「あはは。おおげさだね」
「フン、ドクターは甘いんですよ。ガキにぼったくられるなんてそれでも海賊か、トワ」
「オレならそんなクソ高い団子を買うなら酒か肉買うけどな!」
「まだ小さい子供だったんだろう?そういうシンもハヤテも、きっと出会ってたらトワと同じように買ってしまったんじゃないかな」
「何にせよ団子の数は多い方がいい。足りなくなるほど食う奴もいるしな」
ナギさんがハヤテさんを見た。
「ヤマト風団子はウマイからな。まっ、アイツが船に来てくれたおかげで、ツキミっつー団子食べ放題な祭りができるワケだし!」
ハヤテさんの言葉に、シンさんがすかさず突っ込んだ。
「馬鹿か。食べ放題じゃない。ちゃんと団子の並べ方も数も決まっている。それに本来は団子がメインではなく月への信仰と風雅を愉しむ祭りだ」
「風雅じゃ腹いっぱいにならねーだろ」
「チッ。単細胞が」
「なんだと?!シンはいちいち細けーんだよ!コジュウトかっつーの」
ハヤテさんとシンさんのいつもの言い合いが始まったところで、ナギさんが声をかける。
「無駄口たたく暇があるなら料理を甲板に運べ」
今夜は甲板でお月見の宴だ。
睨みあっていた二人はナギさんに促されて、
しぶしぶ視線をテーブルへと移した。
僕が袋から団子を取り出してお皿に並べていると、
皆が興味深そうに団子を眺める。
もっちりとしていて弾力がありそれはまるで宝石のように輝いていた。
「うわぁ!何だかこのお団子つやつやしてませんか?」
高値で買ってしまったから、というワケじゃないけれど、本当に美味しそうだ。
「すっげえ美味そうじゃねえ?沢山あるみたいだし労働前の腹ごしらえに味見を兼ねてひとついただき!」
ハヤテさんが団子の一つをすかさず口に入れた。
「う、うめー!!これすげぇ美味い!!ナギ兄の団子も美味いけど、コレはコレでなんつうか不思議な味でクセになる!」
興奮気味のハヤテさんに、ナギさんが反応した。
「そんなに美味いのか?念のため味付けの参考に食ってみるか」
ナギさんもひとつ、口に入れる。
「…コレは!!!」
ナギさんの目が驚きに見開かれる。
「ナギが驚くほど美味しいの?やっぱり特別な団子なのかな。どれ、私もいただこうかな」
ソウシさんも一つ口に入れる。
「なるほど。これは不思議な美味しさだね。ほら、シンも食べてみて」
行儀が悪い、といって傍観していたシンさんだったけれど、ソウシさんに団子を口元に近づけられると断りきれずに受け取った。
「確かに美味だ。が…ん?…うっ!」
…え?!
シンさんが低い呻き声をあげた後、
呼応するように次々と全員その場に倒れ込んでいく。
「え?ええっ!?みなさん!!ど、どうしたんですか?!もしかして団子に毒が!?ハヤテさん!シンさん!ナギさん!ソウシさん!!」
叫ぶけれど、反応は無い。
「どうしよう…!ナギさん!起きて下さい!」
目の前のナギさんの身体を揺すっていると、むくっと起き上がる。
「よかった!大丈夫ですか?!」
「ったく、トワ、耳元でわめくなよ。叫ばなくても聴こえてるっつーの。すげー美味いと思ったらイキナリ意識が飛んじまって……ん?あれ?そんなにちっちゃかったか、お前?」
ナギさんの様子がおかしい。
べらべら喋っているし僕を不思議そうに見下ろしてる…!
「チッ。何だこの団子は。トワ、事と次第によっては海の藻くずにするぞ」
起き上がったハヤテさんが、シンさんの口癖を言っている!
「もしかして気を失うほど美味しかったってことなのかな。シン、トワを責めても仕方ないだろう?」
シンさんが自分のことを『シン』と呼び、僕を優しく庇っている!
お、おかしい。色々おかしい。
…けど。
溢れだす違和感と湧き上がる嫌な予感を僕は必死で打ち消そうとする。
「とにかく宴の準備だな」
黙々と手を動かそうとしたソウシさんが、
ハッとした顔で隣のナギさんを見た…
そして全員がお互いを見つめ、
口を揃えて―――
「「「「何でオレ(私)がそこ(目の前)にいるんだ?!!!!」」」」
もしかして…
いや、もしかしなくても。
コレは…………
中身が入れ替わってる?!
「じゃあ僕は宴の準備をしますので…これで失礼しま…」
「ちょっと待てえ!!!!トワ、どーゆーことだコレ!!何でオレはナギ兄になってんだよ!!!この団子は何だ?!」
やっぱりナギさんの中にはハヤテさんが入ってるみたいだ。
いつもの三倍くらい声が大きい。
「し、知らないです僕!!市場でお団子を買っただけです!!」
「なぜ団子食べただけで中身が入れ替わるんだ」
そう言って睨むソウシさんの中はたぶんナギさんが入っている。
いつもの三倍くらい目つきが怖い。
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