curse ~呪いの街~
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「…にしても、だだッ広いな。全部の部屋を探すのにどんだけかかるんだ。幸い誰もいねーみたいだけど」
ハヤテの声が静まり返った城内に響き渡りそうなほど、廊下は人影もなく薄暗かった。
外には兵士があれだけいたのに、城内は人の気配すらない。
「船長達はどこにいンのかなー」
「さっきから黙って歩けねえのか、アホ」
「アホゆーな!」
「あっ、シンさん、ハヤテさんっ…あの部屋…」
冷たく暗い廊下に一つの部屋の入り口から灯が洩れていた。
僅かに開いたドアの隙間から、かすかに音楽が聴こえてくる。
「マドリガーレか」
「まどりがーれ?何ですか、それ?」
彼女が首をかしげた。
「世俗を謳った歌曲だ」
「フーン。興味ねえな」
「フン。ハヤテは馬鹿の一つ覚えみたいにシリウス海賊団の歌しか歌えねーからな」
「シン、てめー、アホの次はバカって言ったな?!」
「シッ…騒ぐな」
部屋の中に誰かがいるのだろう。
グラスを置く音が聞こえる。
だが大人数というわけではなさそうだ。
「どうしますか?シンさん」
彼女がごくりと喉を鳴らして、俺をじっと見つめた。
「このまま無人廊下を歩きまわっても仕方ねーし、入るぞ。」
「だな」
ハヤテは剣を構え、ギィッと鈍い音を立ててドアを開いた。
ドアを開けた途端に、乱暴な半音階と無調の音が耳に飛び込む。
部屋の中は廊下より更に薄暗く、長いダイニングテーブルの一番奥に、誰かが背を向けて座っている。
燭台の火がチラチラと燃え、壁に掲げられた一枚の絵を照らし出していた。
豪奢なドレスを着た、若く美しい女の絵だ。
おお、苦しい喜びよ/
この上なく幸せな眠りよ/
もしわたしとともに悲しんでくれるなら/
おお、暗黒の日よ/
あなたを愛している、わが生命よ/
お前を愛する故に私はやつれ果てる/
「カルロ・ジェズアルド…」
思わずそう呟いた途端、音楽がピタリと止んだ。
イスがふわりと反転し、不釣り合いなほど立派なヒゲを蓄えた青白い男が現れた。
鋭い眼光と豊かな髪が男を若く見せているが、手や首に刻まれた深い皺は年老いたようにも見える。
もしかしてコイツがルルの言っていた男か?
男は冷えた瞳で悠然と俺達を見た。
「薄汚い海賊に、喋る黒猫に、女のガキ、か」
「薄汚いだと?!」
剣を構えたハヤテが男を睨みつけた。
「テメーがロべールなんとかって水着集めさせてる変態貴族のオッサンだろ」
口にした途端、黒い影がハヤテの頭上から降りかかる。
ハヤテは咄嗟に剣でそれを弾き飛ばした。
「少しは腕に覚えがあるようだが、迂闊に私の名を呼ばないことだ。私は薄汚い海賊に名乗る名など持ち合わせていない」
パチン、と男が指を弾くと、床下からイスがせり上がった。
「せ、船長!」
彼女が驚いた声をあげる。
床から浮き出てきたイスには、船長が手足に枷をされた状態で括りつけられていた。
「何してんスか?!」
ハヤテが素っ頓狂な声をあげる。
「何って…ハッハッハッ!ちょっとヘマしちまってな」
「呑気に笑ってる場合じゃないっスよ!ナギ兄は?ソウシさんは?トワは?」
「他の海賊達なら意識を奪って地下牢に閉じ込めてある。私が必要なのはこの男だけだからな」
男は凍るような瞳で船長を見た。
「船長、知り合いなんですか?」
彼女が問うと、船長は首をかしげる。
「さぁ?俺はちっとも知らねえんだけどな、こんなヤツ」
船長の言葉に男がかっと目を見開いた。
「本当に覚えていないのか?!海賊王リュウガ。私はずっとお前を探していた」
「せんちょー。探されてたみたいっスけど、やっぱ知り合いなんじゃないっすか?」
「だから知らねえって。女なら覚えてるが、俺は野郎の顔なんて一度見たら忘れる。記憶にすら残さねえ」
「そんな状態で真顔で言いきらないでください…」
彼女はふぅっと大きくため息をついた。
「あなたが湖の女神さんを困らせている貴族の方なんですか?」
彼女の問いに、男は声をあげて笑う。
「困らせている?馬鹿を言うんじゃない。困っているのはこちらのほうだ。私があの湖とあの女の力を欲しているのに、いう事をきかないから追い出しただけだ」
「でも…っ、呪いをかけるなんてひどいっ」
男は応えずに、フン、と鼻をならしてから、視線を船長に向けた。
いつしかマドリガーレが再び流れ出している。
狂気的で乱暴でいびつな、絶望の音。
「リュウガ。お前の罪は永遠に消えない。私は未来永劫お前を許さない。じっくりといたぶってやる」
「せんちょー。相当恨み買ってるみたいっすけど、酒代のツケ払ってねえとか、お宝奪っちまったとか、マジで覚えないんっスか?」
ハヤテの質問に船長はますます、さーなと首をひねる。
「宝…そう、お前は私の何よりも大切な宝を奪った。だから私は契約したんだ、悪魔と。目的を果たすために」
「宝?奪いすぎてていちいち覚えてねーな」
船長が不敵に笑うと、男の殺気は強くなる。
ハヤテの声が静まり返った城内に響き渡りそうなほど、廊下は人影もなく薄暗かった。
外には兵士があれだけいたのに、城内は人の気配すらない。
「船長達はどこにいンのかなー」
「さっきから黙って歩けねえのか、アホ」
「アホゆーな!」
「あっ、シンさん、ハヤテさんっ…あの部屋…」
冷たく暗い廊下に一つの部屋の入り口から灯が洩れていた。
僅かに開いたドアの隙間から、かすかに音楽が聴こえてくる。
「マドリガーレか」
「まどりがーれ?何ですか、それ?」
彼女が首をかしげた。
「世俗を謳った歌曲だ」
「フーン。興味ねえな」
「フン。ハヤテは馬鹿の一つ覚えみたいにシリウス海賊団の歌しか歌えねーからな」
「シン、てめー、アホの次はバカって言ったな?!」
「シッ…騒ぐな」
部屋の中に誰かがいるのだろう。
グラスを置く音が聞こえる。
だが大人数というわけではなさそうだ。
「どうしますか?シンさん」
彼女がごくりと喉を鳴らして、俺をじっと見つめた。
「このまま無人廊下を歩きまわっても仕方ねーし、入るぞ。」
「だな」
ハヤテは剣を構え、ギィッと鈍い音を立ててドアを開いた。
ドアを開けた途端に、乱暴な半音階と無調の音が耳に飛び込む。
部屋の中は廊下より更に薄暗く、長いダイニングテーブルの一番奥に、誰かが背を向けて座っている。
燭台の火がチラチラと燃え、壁に掲げられた一枚の絵を照らし出していた。
豪奢なドレスを着た、若く美しい女の絵だ。
おお、苦しい喜びよ/
この上なく幸せな眠りよ/
もしわたしとともに悲しんでくれるなら/
おお、暗黒の日よ/
あなたを愛している、わが生命よ/
お前を愛する故に私はやつれ果てる/
「カルロ・ジェズアルド…」
思わずそう呟いた途端、音楽がピタリと止んだ。
イスがふわりと反転し、不釣り合いなほど立派なヒゲを蓄えた青白い男が現れた。
鋭い眼光と豊かな髪が男を若く見せているが、手や首に刻まれた深い皺は年老いたようにも見える。
もしかしてコイツがルルの言っていた男か?
男は冷えた瞳で悠然と俺達を見た。
「薄汚い海賊に、喋る黒猫に、女のガキ、か」
「薄汚いだと?!」
剣を構えたハヤテが男を睨みつけた。
「テメーがロべールなんとかって水着集めさせてる変態貴族のオッサンだろ」
口にした途端、黒い影がハヤテの頭上から降りかかる。
ハヤテは咄嗟に剣でそれを弾き飛ばした。
「少しは腕に覚えがあるようだが、迂闊に私の名を呼ばないことだ。私は薄汚い海賊に名乗る名など持ち合わせていない」
パチン、と男が指を弾くと、床下からイスがせり上がった。
「せ、船長!」
彼女が驚いた声をあげる。
床から浮き出てきたイスには、船長が手足に枷をされた状態で括りつけられていた。
「何してんスか?!」
ハヤテが素っ頓狂な声をあげる。
「何って…ハッハッハッ!ちょっとヘマしちまってな」
「呑気に笑ってる場合じゃないっスよ!ナギ兄は?ソウシさんは?トワは?」
「他の海賊達なら意識を奪って地下牢に閉じ込めてある。私が必要なのはこの男だけだからな」
男は凍るような瞳で船長を見た。
「船長、知り合いなんですか?」
彼女が問うと、船長は首をかしげる。
「さぁ?俺はちっとも知らねえんだけどな、こんなヤツ」
船長の言葉に男がかっと目を見開いた。
「本当に覚えていないのか?!海賊王リュウガ。私はずっとお前を探していた」
「せんちょー。探されてたみたいっスけど、やっぱ知り合いなんじゃないっすか?」
「だから知らねえって。女なら覚えてるが、俺は野郎の顔なんて一度見たら忘れる。記憶にすら残さねえ」
「そんな状態で真顔で言いきらないでください…」
彼女はふぅっと大きくため息をついた。
「あなたが湖の女神さんを困らせている貴族の方なんですか?」
彼女の問いに、男は声をあげて笑う。
「困らせている?馬鹿を言うんじゃない。困っているのはこちらのほうだ。私があの湖とあの女の力を欲しているのに、いう事をきかないから追い出しただけだ」
「でも…っ、呪いをかけるなんてひどいっ」
男は応えずに、フン、と鼻をならしてから、視線を船長に向けた。
いつしかマドリガーレが再び流れ出している。
狂気的で乱暴でいびつな、絶望の音。
「リュウガ。お前の罪は永遠に消えない。私は未来永劫お前を許さない。じっくりといたぶってやる」
「せんちょー。相当恨み買ってるみたいっすけど、酒代のツケ払ってねえとか、お宝奪っちまったとか、マジで覚えないんっスか?」
ハヤテの質問に船長はますます、さーなと首をひねる。
「宝…そう、お前は私の何よりも大切な宝を奪った。だから私は契約したんだ、悪魔と。目的を果たすために」
「宝?奪いすぎてていちいち覚えてねーな」
船長が不敵に笑うと、男の殺気は強くなる。