本編【Shinside】
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「すげー!!こんだけありゃ国が丸ごと買えるぜ!」
地下室いっぱいに詰め込まれたまばゆい財宝に、ウルサイぐらいハヤテがはしゃいでいる。
「よし!お前ら袋にありったけの財宝を詰めろ」
船長の合図で、トワとハヤテは勢いよく財宝を袋に詰めていくが―
俺はその様子を黙って見つめていた。
いつしかドクターが隣に立っていて俺の肩に手を置いた。
「シン…お前の複雑な気持ちはわかる。俺たちはウルの宝を持ち出そうとしているんだから」
今のこの感情を何と表現すればいいのか、わからない。
「だがこれがあれば、ウルの人たちを救えるだろう。ウルが遺した宝によってウルの人たちは救われるんだ」
この宝が、持ち出されることが悔しいわけじゃない。
ただ自分の中で欠けていたピースが突然見つかってしまったことが俺を戸惑わせていた。
「ちぇっ。宝を横取りして、真珠ちゃんとウハウハ生活だったのになぁー」
ロイのカンに障る言葉が、俺を現実に引き戻す。
「お前にやる宝はない。ついでに気安くアイツを呼ぶな」
「別にいいだろ!ケチ!ムッツリ眼帯!」
「手だけじゃなく口も塞いで欲しいようだな?ヘボ船長」
「ふんっ。シリウスの連中はケチなうえに教育がなってないぞ!リュウガ」
「塞いだだけでは不十分だな。やはり永遠に口がきけないようにした方がいいんじゃないですか?船長」
「がっはっは。シン、ロイの戯言くらい放っておけ」
「あれ…?船長!あれは何ですか?」
ふと、トワが指さした奥の台座には、青い大きな石が鎮座していた。
「ん?ネックレスと同じ石のようだな。シン、台座に何か書いてあるのか?」
俺は台座に近づいて、そこに書かれた文字を読み上げた。
「<ウラルを正しく使う者には繁栄が訪れる。誤って使う者には滅亡が訪れる>と」
「ふーん。ウラルってその青い石の名前なのか?」
ハヤテは財宝をまだ袋に詰めながら、顔だけこちらに向けた。
「そういえば古文書で読んだことがあるな。大昔ウルには天然の鉱物資源があったって」
ドクターの言葉は続いた。
「おそらくウルはその資源をもとに繁栄したんだ。だが、モルドーが兵器に悪用しようとウルに侵攻した。」
「侵略の本当の目的はその石か」
船長が呟いた。
「ウルの高い文明を手に入れたかったのかもね。実際ウルを支配下にしてからのモルドーの繁栄は飛ぶ鳥を落とす勢いだ」
「確かにキレーな石だけど、それが国を滅ぼすほどの力をもってるのかよ。それにスゲー兵器になるっつーんならウルが使えばよかったんじゃねえのか」
ハヤテが不思議そうに言う。
「ウルは昔から争いを好まず、芸術と文化を愛する誇り高い種族だ。だから命を賭しても石を守り、兵器として使われることを拒んだんだろう」
ドクターが答えてくれる。
この石を兵器としてモルドーに使わせない為に、王族の地下室に隠した。
そして地下室を開けるカギとなる子孫を物語と共にこの島から逃がしてウルの未来に希望を託した。
「じゃあ結局モルドーはウラルを奪えなかったんですね」
トワの言葉にドクターが頷く。
「そうだ。シンの祖先は命がけで平和を守った。王座に書いてあった真の宝とはこの資源だったんだ」
「それじゃ、真の宝はこの俺がいただこう」
ロイが場違いな声を上げて、台座に飛び乗った。
「おい!てめーー!!」
ハヤテが叫ぶより先に、ロイはウラルを足で挟んで飛び降りる。
ガガガガガガガ…
地響きが起き、城が揺れ始めた。
「やべ!城がっ…!」
「はやく逃げるんだ!」
「ったくお前は昔から余計なことばっかするな…」
「う、うるさいっ!リュウガ!今は逃げるのが先だっ!!トム、コリンついてこいよ!」
ドドドドドド
轟音が響き、地面が激しく揺れうごく。
城の外に出ると、地面が裂けて木々が倒れてきた。
「これは城だけじゃない。島全体が沈んでるぞ!!!みんな、海岸まで走れ!」
ドクターの声に、みんなが一斉に駆け出した。
「走れったって、クソ。宝が重くて…!」
ハヤテが大きな袋を引きずりながら走る。
まだ、ここで知りたいことが山ほどあったが…
俺は後ろ髪を引かれる思いで後方の城を見つめる。
前を走っていた●●を見ていると、
足がもつれたのか、突然つまづく。
すぐに抱き上げようと駆け寄ろうとした瞬間、
大きな木が彼女の頭上めがけて倒れてきた。
っ…!!
間に合わねえ!!!
全身の血の気が引いた―
その瞬間。
見慣れた黒いバンダナが視界に入る。
「…お前、肩を脱臼してるんだろ…」
目の前にはナギが立っていた。
間一髪のところでナギが木を支え、
●●は木の下敷きにはならず無事だった。
俺は木を支えようとして
手が届く直前に、木の重みでナギが倒れた。
「みんな!手を貸してくれ!ナギが木の下敷きに!」
俺は必死で叫んでいた。
「ナギさん…どうしてここに…どうして…っ」
どうして助けてくれたのか
そう言葉を紡ごうとして続かずに、
●●は泣きそうな顔で必死に木を持ち上げようとする。
俺と●●でナギを助けようとするが、大木はビクともしない。
「お前が、呼んだ気がして」
ナギは苦しげに、一言そう呟いた。
「う~!クソッ!重くて持ち上がらねー!」
ハヤテも加わるが、わずかに動くだけで持ち上がりはしない。
「ふぬー!いつものアタイならこんなモンよゆーだってのに!!」
肝心のファジーも、腕に怪我を負っていていつもの力が出せないようだ。
船長もナギもトワも、全員で木をどかそうとするがナギが脱出できるほどには動かない。
地面が揺れ続けていることで、皆がうまく力を使えずにいた。
「俺を置いていけ」
ナギが微笑む。
「ナギ…」
ナギは俺と彼女を交互に見つめてから、
「お前には守るべきものがあるだろう。本気で愛する女が。そういうヤツは死んじゃいけねーんだ」
覚悟を決めたナギが、ひどく眩しく見えた。
何カッコつけてるんだ…
お前こそ…
命を投げ出してしまえるほどに
●●を愛しているくせに…
「バカ野郎…お前も死んじゃいけねーんだよ」
震える声で精一杯絞り出す。
こんなとこで、ナギを死なせてたまるか。
お前は生きて、●●が俺のもので、幸せな女だということを、
もっと…知らなきゃならねーんだ
だから、こんなところで絶対に死なせはしない。
地響きは止まる気配もなく地面を狂ったように揺らしつづけ、
巨大な木は、怪我を負っていたナギの体力をどんどん奪っていく―
くそっ…どうすれば―
「おい。そこのチビ。俺たちの縄を解け」
「え?」
トワがロイに聞き返す。
「いーから解け!!」
「…解いてやれ」
船長の言葉に、トワがロイ達の縄を解いた。
「リュウガ、貸しだぞ」
ロイとトム、コリン。
三人が加わって、ようやく木が持ち上がる。
意識を失ったナギを抱えながら、俺たちは必死に海岸まで走り抜けた。
地下室いっぱいに詰め込まれたまばゆい財宝に、ウルサイぐらいハヤテがはしゃいでいる。
「よし!お前ら袋にありったけの財宝を詰めろ」
船長の合図で、トワとハヤテは勢いよく財宝を袋に詰めていくが―
俺はその様子を黙って見つめていた。
いつしかドクターが隣に立っていて俺の肩に手を置いた。
「シン…お前の複雑な気持ちはわかる。俺たちはウルの宝を持ち出そうとしているんだから」
今のこの感情を何と表現すればいいのか、わからない。
「だがこれがあれば、ウルの人たちを救えるだろう。ウルが遺した宝によってウルの人たちは救われるんだ」
この宝が、持ち出されることが悔しいわけじゃない。
ただ自分の中で欠けていたピースが突然見つかってしまったことが俺を戸惑わせていた。
「ちぇっ。宝を横取りして、真珠ちゃんとウハウハ生活だったのになぁー」
ロイのカンに障る言葉が、俺を現実に引き戻す。
「お前にやる宝はない。ついでに気安くアイツを呼ぶな」
「別にいいだろ!ケチ!ムッツリ眼帯!」
「手だけじゃなく口も塞いで欲しいようだな?ヘボ船長」
「ふんっ。シリウスの連中はケチなうえに教育がなってないぞ!リュウガ」
「塞いだだけでは不十分だな。やはり永遠に口がきけないようにした方がいいんじゃないですか?船長」
「がっはっは。シン、ロイの戯言くらい放っておけ」
「あれ…?船長!あれは何ですか?」
ふと、トワが指さした奥の台座には、青い大きな石が鎮座していた。
「ん?ネックレスと同じ石のようだな。シン、台座に何か書いてあるのか?」
俺は台座に近づいて、そこに書かれた文字を読み上げた。
「<ウラルを正しく使う者には繁栄が訪れる。誤って使う者には滅亡が訪れる>と」
「ふーん。ウラルってその青い石の名前なのか?」
ハヤテは財宝をまだ袋に詰めながら、顔だけこちらに向けた。
「そういえば古文書で読んだことがあるな。大昔ウルには天然の鉱物資源があったって」
ドクターの言葉は続いた。
「おそらくウルはその資源をもとに繁栄したんだ。だが、モルドーが兵器に悪用しようとウルに侵攻した。」
「侵略の本当の目的はその石か」
船長が呟いた。
「ウルの高い文明を手に入れたかったのかもね。実際ウルを支配下にしてからのモルドーの繁栄は飛ぶ鳥を落とす勢いだ」
「確かにキレーな石だけど、それが国を滅ぼすほどの力をもってるのかよ。それにスゲー兵器になるっつーんならウルが使えばよかったんじゃねえのか」
ハヤテが不思議そうに言う。
「ウルは昔から争いを好まず、芸術と文化を愛する誇り高い種族だ。だから命を賭しても石を守り、兵器として使われることを拒んだんだろう」
ドクターが答えてくれる。
この石を兵器としてモルドーに使わせない為に、王族の地下室に隠した。
そして地下室を開けるカギとなる子孫を物語と共にこの島から逃がしてウルの未来に希望を託した。
「じゃあ結局モルドーはウラルを奪えなかったんですね」
トワの言葉にドクターが頷く。
「そうだ。シンの祖先は命がけで平和を守った。王座に書いてあった真の宝とはこの資源だったんだ」
「それじゃ、真の宝はこの俺がいただこう」
ロイが場違いな声を上げて、台座に飛び乗った。
「おい!てめーー!!」
ハヤテが叫ぶより先に、ロイはウラルを足で挟んで飛び降りる。
ガガガガガガガ…
地響きが起き、城が揺れ始めた。
「やべ!城がっ…!」
「はやく逃げるんだ!」
「ったくお前は昔から余計なことばっかするな…」
「う、うるさいっ!リュウガ!今は逃げるのが先だっ!!トム、コリンついてこいよ!」
ドドドドドド
轟音が響き、地面が激しく揺れうごく。
城の外に出ると、地面が裂けて木々が倒れてきた。
「これは城だけじゃない。島全体が沈んでるぞ!!!みんな、海岸まで走れ!」
ドクターの声に、みんなが一斉に駆け出した。
「走れったって、クソ。宝が重くて…!」
ハヤテが大きな袋を引きずりながら走る。
まだ、ここで知りたいことが山ほどあったが…
俺は後ろ髪を引かれる思いで後方の城を見つめる。
前を走っていた●●を見ていると、
足がもつれたのか、突然つまづく。
すぐに抱き上げようと駆け寄ろうとした瞬間、
大きな木が彼女の頭上めがけて倒れてきた。
っ…!!
間に合わねえ!!!
全身の血の気が引いた―
その瞬間。
見慣れた黒いバンダナが視界に入る。
「…お前、肩を脱臼してるんだろ…」
目の前にはナギが立っていた。
間一髪のところでナギが木を支え、
●●は木の下敷きにはならず無事だった。
俺は木を支えようとして
手が届く直前に、木の重みでナギが倒れた。
「みんな!手を貸してくれ!ナギが木の下敷きに!」
俺は必死で叫んでいた。
「ナギさん…どうしてここに…どうして…っ」
どうして助けてくれたのか
そう言葉を紡ごうとして続かずに、
●●は泣きそうな顔で必死に木を持ち上げようとする。
俺と●●でナギを助けようとするが、大木はビクともしない。
「お前が、呼んだ気がして」
ナギは苦しげに、一言そう呟いた。
「う~!クソッ!重くて持ち上がらねー!」
ハヤテも加わるが、わずかに動くだけで持ち上がりはしない。
「ふぬー!いつものアタイならこんなモンよゆーだってのに!!」
肝心のファジーも、腕に怪我を負っていていつもの力が出せないようだ。
船長もナギもトワも、全員で木をどかそうとするがナギが脱出できるほどには動かない。
地面が揺れ続けていることで、皆がうまく力を使えずにいた。
「俺を置いていけ」
ナギが微笑む。
「ナギ…」
ナギは俺と彼女を交互に見つめてから、
「お前には守るべきものがあるだろう。本気で愛する女が。そういうヤツは死んじゃいけねーんだ」
覚悟を決めたナギが、ひどく眩しく見えた。
何カッコつけてるんだ…
お前こそ…
命を投げ出してしまえるほどに
●●を愛しているくせに…
「バカ野郎…お前も死んじゃいけねーんだよ」
震える声で精一杯絞り出す。
こんなとこで、ナギを死なせてたまるか。
お前は生きて、●●が俺のもので、幸せな女だということを、
もっと…知らなきゃならねーんだ
だから、こんなところで絶対に死なせはしない。
地響きは止まる気配もなく地面を狂ったように揺らしつづけ、
巨大な木は、怪我を負っていたナギの体力をどんどん奪っていく―
くそっ…どうすれば―
「おい。そこのチビ。俺たちの縄を解け」
「え?」
トワがロイに聞き返す。
「いーから解け!!」
「…解いてやれ」
船長の言葉に、トワがロイ達の縄を解いた。
「リュウガ、貸しだぞ」
ロイとトム、コリン。
三人が加わって、ようやく木が持ち上がる。
意識を失ったナギを抱えながら、俺たちは必死に海岸まで走り抜けた。