本編【Shinside】
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「きゃあああああ!!シンさまああああ!!!」
甲板に戻ると、ものすごい悲鳴と地響きが起こり、リカー海賊団のファジーが現れた。
「シ・ン・様ぁ!今夜はまた一段と麗しいですぅ」
「…」
俺がこの船に乗ってからずっと、こんなふうに付きまとわれている。
今のところ実害はないのでそのままにしているが、ゴリラやライオンと素手で戦って勝ったという伝説を持つ女海賊だ。
「相変わらずぎゃあぎゃあウルセーんだよ!デブ!帰れ」
「デブだと?!あんたに会いにきたんじゃないんだよ!アタイがグラマーだからってやらしー目で見ないでくれるかい?この豊満な肉体はシン様に捧げるって決めてんだよ!」
「頼まれたって見ねーよ!!!ゴリラ女!」
「ふぬー!!!」
ハヤテとファジーのいつもの喧嘩がきっかけで、リカーとシリウスの乱闘が始まった。
…アイツは?
乱闘を避けて走っていくアイツの姿が見えた。
…やはりこの船から出て行く気か。
「あっ…シンさん」
ロープを必死に引っ張ってボートを出そうとしていたところを俺に見つかり、彼女は戸惑った表情になった。
思わず、俺もロープを掴む。
「何してる」
気まずそうに目を泳がせて。
「この…ロープが可愛くて!!欲しいなあって!!」
と、嘘すぎる答が返ってくる。
「そんな力で取れるか」
俺は…どうしようというんだ。
ロープを解いて、ボートを出す。
「な、なんで逃がしてくれるんですか?」
驚いた表情で俺を見る。
逃がす?
いや、シリウスはコイツを拘束しているつもりはない。
ガキ一人のために航路を変えるわけにもいかず、多少は役に立ちそうだから置いていただけだ。
船長が女好きって理由もある。
だが、本当にそれだけか?
いつでも船から追い出せるのに。
仲間の誰もがそれを望んでいないようにも思える。
紛れ込んでまだ数日も経っていないというのに、やはりコイツの存在はシリウスに変化を与えはじめていた。
まさか、俺も…?
「別に。余計な邪魔をされたくないだけだ」
これは本心だったに違いない。
俺は怖いのかもしれない――
コイツがこれ以上この船にいることが。
俺が今まで信じてきたものを、容易く覆される気がして。
妙な胸騒ぎが確信に変わる前に、コイツを元の場所に戻してしまいたいのかもしれない。
「ボートにはコンパスと少しの食糧がある。東へ進めば、お前の家があるヤマトに帰れるだろう。これを持っていけ。サメに襲われたら撃て」
銃を渡す。
「こんな大事なもの…だって片時も離さないってハヤテさんが」
ああ。大事なものだ。
生きていくために命の次に、信じてきたものだ。
どうしてこんな、ちんちくりんに俺はそれを渡してるんだ。
きっと、拾った小動物に若干の愛着が湧いただけなんだ。たいしたことじゃない。
「死ぬなよ」
ボートがゆっくりと船から離れて、アイツの姿が小さくなる。
きっと、これでよかったんだ。
ズドーーーーン
突然、衝撃音がして、船が揺れた。
敵の砲撃だ!
「おい、シン!大変だ!モルドー海軍の船が!」
ハヤテが駆け寄ってくる。
とっさにボートを見ると、波の揺れで先が大きく持ち上がって海にのまれるアイツが見えた。
その瞬間、俺の身体は迷いなく海に飛びこんでいた。
甲板に戻ると、ものすごい悲鳴と地響きが起こり、リカー海賊団のファジーが現れた。
「シ・ン・様ぁ!今夜はまた一段と麗しいですぅ」
「…」
俺がこの船に乗ってからずっと、こんなふうに付きまとわれている。
今のところ実害はないのでそのままにしているが、ゴリラやライオンと素手で戦って勝ったという伝説を持つ女海賊だ。
「相変わらずぎゃあぎゃあウルセーんだよ!デブ!帰れ」
「デブだと?!あんたに会いにきたんじゃないんだよ!アタイがグラマーだからってやらしー目で見ないでくれるかい?この豊満な肉体はシン様に捧げるって決めてんだよ!」
「頼まれたって見ねーよ!!!ゴリラ女!」
「ふぬー!!!」
ハヤテとファジーのいつもの喧嘩がきっかけで、リカーとシリウスの乱闘が始まった。
…アイツは?
乱闘を避けて走っていくアイツの姿が見えた。
…やはりこの船から出て行く気か。
「あっ…シンさん」
ロープを必死に引っ張ってボートを出そうとしていたところを俺に見つかり、彼女は戸惑った表情になった。
思わず、俺もロープを掴む。
「何してる」
気まずそうに目を泳がせて。
「この…ロープが可愛くて!!欲しいなあって!!」
と、嘘すぎる答が返ってくる。
「そんな力で取れるか」
俺は…どうしようというんだ。
ロープを解いて、ボートを出す。
「な、なんで逃がしてくれるんですか?」
驚いた表情で俺を見る。
逃がす?
いや、シリウスはコイツを拘束しているつもりはない。
ガキ一人のために航路を変えるわけにもいかず、多少は役に立ちそうだから置いていただけだ。
船長が女好きって理由もある。
だが、本当にそれだけか?
いつでも船から追い出せるのに。
仲間の誰もがそれを望んでいないようにも思える。
紛れ込んでまだ数日も経っていないというのに、やはりコイツの存在はシリウスに変化を与えはじめていた。
まさか、俺も…?
「別に。余計な邪魔をされたくないだけだ」
これは本心だったに違いない。
俺は怖いのかもしれない――
コイツがこれ以上この船にいることが。
俺が今まで信じてきたものを、容易く覆される気がして。
妙な胸騒ぎが確信に変わる前に、コイツを元の場所に戻してしまいたいのかもしれない。
「ボートにはコンパスと少しの食糧がある。東へ進めば、お前の家があるヤマトに帰れるだろう。これを持っていけ。サメに襲われたら撃て」
銃を渡す。
「こんな大事なもの…だって片時も離さないってハヤテさんが」
ああ。大事なものだ。
生きていくために命の次に、信じてきたものだ。
どうしてこんな、ちんちくりんに俺はそれを渡してるんだ。
きっと、拾った小動物に若干の愛着が湧いただけなんだ。たいしたことじゃない。
「死ぬなよ」
ボートがゆっくりと船から離れて、アイツの姿が小さくなる。
きっと、これでよかったんだ。
ズドーーーーン
突然、衝撃音がして、船が揺れた。
敵の砲撃だ!
「おい、シン!大変だ!モルドー海軍の船が!」
ハヤテが駆け寄ってくる。
とっさにボートを見ると、波の揺れで先が大きく持ち上がって海にのまれるアイツが見えた。
その瞬間、俺の身体は迷いなく海に飛びこんでいた。