本編【Shinside】
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顔を真っ白に塗りたくり、唇からはみ出すほど大きく真っ赤な口紅に、殴られたのかと錯覚するような青く厚塗りされた目元。
目の前に、二人の女のバケモンのような顔が並んでいる。
「ヒィッ!おばけっ」
一番近くで見ていたトワが叫んで、ドクターの後ろに隠れた。
「はは。個性的だね」
ドクターは苦笑している。
「化けモンかよ」
ナギが冷めた突っ込みを入れた。
「そりゃいつもより多めに塗ってるけどさー。魅惑的な美女二人つかまえてバケモンはひどいじゃないかっ」
ファジーが抗議するが、こいつら鏡見てねーのか?
見ててアレなら、ファジーの眼はよっぽどメデタイ作りなのか、完全に視力を失っているかだ。
「ははっ、おもしれー!魅惑っていうより、恐怖のモンスター姉妹登場だなっ」
ハヤテが大声で笑っている。
……
グイッと彼女の腕を掴み、力づくで引っ張る。
「し、シンさんっ…?!」
「いーからこっちに来い」
「よかったじゃないか●●!女豹に化けたアンタにシン様もノックアウトだよ!」
ファジーの余計すぎる声援が背後から飛んでくる。
馬鹿か。
別の意味でノックアウトだ。
ガンッ
シャワールームのドアを開け、水を張ったタライの中に彼女の顔を突っ込む。
「さっさと顔を洗え」
「んん~~っ
~~ぷはっっ」
タオルで何度か擦ってやると化粧が落ち、いつもの稚い顔が現れる。
「あの…やっぱりおかしい…?」
「バカか、お前は。おかしいに決まってんだろ」
彼女の表情が固まった。
「がーん。やっぱり…」
ブツブツと呟いている。
相当ショックを受けたらしい。
あの顔に化粧された時点で気付け。
「お前、本気でバカだろ」
「…すびません」
鼻に水が入ったのか、ずるずると鼻を啜り、●●は俯く。
そして更に落ち込んだのか、そのまま黙り込んでしまう。
「そのままでいいって言ってんだよ」
「え…?」
「だから、ガキでも何でもいいから、そのままでいいってことだ」
「シンさん…」
「心配しなくてもお前が大人になるのを俺が見届けてやる」
●●が俺の首に抱きつく。
ふわりと、柔らかく温かい空気が俺を包んだ。
「ごめんなさいっ!バカでっ!!…でもね、不安なんです。」
首元に抱きついたまま、少し震えた声で彼女が続ける。
「私は色気とか全くないし…おまけにばー…」
「バージン、か?」
首にきつく絡みついた彼女の腕を和らげてから、
俺は顔を覗き込んだ。
小さくコクリと、●●は頷いた。
「シンさんが大好きだから、怖いんです。こんな私でいいのかなって…」
「そーだな。色気ないのは会った時から分かってたから仕方がないとして、ありえねーほど寝相わりーし」
「うっ」
「寝言でナギの名前言うし」
「えっ、いつ…!?」
「俺の夢を見てると思ったらロクな登場のさせ方じゃねーしな」
「えっと、それは…いつものシンさんっていうか」
「へえ。俺はいつもそんなに極悪非道なのか。そうだな。一番怖くて近寄り難かった相手だしな。海の藻くずやサメのエサにしてやると言われたから悔しくて俺の部屋を選んだんだろう」
「き、きいて…?!」
たんですか、と続けられずにぱくぱくと口を動かす。
「でけー声でベラベラとしゃべているからだ」
「ち、違うんです!今思えば出会った時からというか、どうしてもシンさんの部屋が良かったというか!」
「なに必死になってんだよ」
「だって…」
「お前が俺に惚れるのはわかりきっていた。しばらく自分で自覚が無かったようだがな」
「じ…自信満々ですね」
「そう言いたいんだろ?最初から俺しか見えてなかった、と。言ってみろ」
「そうです。シンさんのことが気になって仕方なくて、一緒にいるうちにどんどん好きになっていって、もうシンさん以外考えられなくて。だから夢みたいで…釣り合ってないんじゃないかって心配で…覚めるのか怖くて」
目の前の困ったあどけない表情が、俺を笑顔にする。
目の前に、二人の女のバケモンのような顔が並んでいる。
「ヒィッ!おばけっ」
一番近くで見ていたトワが叫んで、ドクターの後ろに隠れた。
「はは。個性的だね」
ドクターは苦笑している。
「化けモンかよ」
ナギが冷めた突っ込みを入れた。
「そりゃいつもより多めに塗ってるけどさー。魅惑的な美女二人つかまえてバケモンはひどいじゃないかっ」
ファジーが抗議するが、こいつら鏡見てねーのか?
見ててアレなら、ファジーの眼はよっぽどメデタイ作りなのか、完全に視力を失っているかだ。
「ははっ、おもしれー!魅惑っていうより、恐怖のモンスター姉妹登場だなっ」
ハヤテが大声で笑っている。
……
グイッと彼女の腕を掴み、力づくで引っ張る。
「し、シンさんっ…?!」
「いーからこっちに来い」
「よかったじゃないか●●!女豹に化けたアンタにシン様もノックアウトだよ!」
ファジーの余計すぎる声援が背後から飛んでくる。
馬鹿か。
別の意味でノックアウトだ。
ガンッ
シャワールームのドアを開け、水を張ったタライの中に彼女の顔を突っ込む。
「さっさと顔を洗え」
「んん~~っ
~~ぷはっっ」
タオルで何度か擦ってやると化粧が落ち、いつもの稚い顔が現れる。
「あの…やっぱりおかしい…?」
「バカか、お前は。おかしいに決まってんだろ」
彼女の表情が固まった。
「がーん。やっぱり…」
ブツブツと呟いている。
相当ショックを受けたらしい。
あの顔に化粧された時点で気付け。
「お前、本気でバカだろ」
「…すびません」
鼻に水が入ったのか、ずるずると鼻を啜り、●●は俯く。
そして更に落ち込んだのか、そのまま黙り込んでしまう。
「そのままでいいって言ってんだよ」
「え…?」
「だから、ガキでも何でもいいから、そのままでいいってことだ」
「シンさん…」
「心配しなくてもお前が大人になるのを俺が見届けてやる」
●●が俺の首に抱きつく。
ふわりと、柔らかく温かい空気が俺を包んだ。
「ごめんなさいっ!バカでっ!!…でもね、不安なんです。」
首元に抱きついたまま、少し震えた声で彼女が続ける。
「私は色気とか全くないし…おまけにばー…」
「バージン、か?」
首にきつく絡みついた彼女の腕を和らげてから、
俺は顔を覗き込んだ。
小さくコクリと、●●は頷いた。
「シンさんが大好きだから、怖いんです。こんな私でいいのかなって…」
「そーだな。色気ないのは会った時から分かってたから仕方がないとして、ありえねーほど寝相わりーし」
「うっ」
「寝言でナギの名前言うし」
「えっ、いつ…!?」
「俺の夢を見てると思ったらロクな登場のさせ方じゃねーしな」
「えっと、それは…いつものシンさんっていうか」
「へえ。俺はいつもそんなに極悪非道なのか。そうだな。一番怖くて近寄り難かった相手だしな。海の藻くずやサメのエサにしてやると言われたから悔しくて俺の部屋を選んだんだろう」
「き、きいて…?!」
たんですか、と続けられずにぱくぱくと口を動かす。
「でけー声でベラベラとしゃべているからだ」
「ち、違うんです!今思えば出会った時からというか、どうしてもシンさんの部屋が良かったというか!」
「なに必死になってんだよ」
「だって…」
「お前が俺に惚れるのはわかりきっていた。しばらく自分で自覚が無かったようだがな」
「じ…自信満々ですね」
「そう言いたいんだろ?最初から俺しか見えてなかった、と。言ってみろ」
「そうです。シンさんのことが気になって仕方なくて、一緒にいるうちにどんどん好きになっていって、もうシンさん以外考えられなくて。だから夢みたいで…釣り合ってないんじゃないかって心配で…覚めるのか怖くて」
目の前の困ったあどけない表情が、俺を笑顔にする。