本編【Shinside】
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目覚めると部屋に寝かされていた。
「…っ」
痛みを覚え、こめかみに手を添えると包帯が指先に触れる。
「お、シン。目が覚めたか?ドクターに知らせねーと」
ハヤテが傍に立っていた。
「待て。あいつは?無事か?」
ぼやけた意識のなかで、その不安だけが鮮明に浮かんできた。
「ああ。身体に大きなけがは無かったみてーだし、一命は取り留めたみたいだぜ」
「そうか…つっ…」
「無理に動くなって。お前は体中打ち付けてたみてーだから相当痛いはずだ」
確かに体中が悲鳴をあげるかのように痛む。
アイツが来てから、俺は雪崩に巻き込まれたり、海に落ちたり。
ありえねーことばかり起きる。
俺の身体は、女を危険から守るために勝手に動くようになったらしい。
しかも、あのちんちくりんの為に、だ。
それが一番ありえねーことだった。
二日後。
「ドクター!まだ熱がさがらないのか?!」
ナギがイラついている。
砲撃の夜も、ナギは泳げもしないのに、止める間もなく海に飛び込んだとドクターから聞いた。
ナギも俺と同じように、たった一人の女のために勝手に身体が動くようになってしまったらしい。
いつも落ち着いているクセに、彼女の事になると取り乱す。
「一時間以上海にいたんだ。命が助かったことにまず感謝だよ」
肝心の彼女は何か言いたげだったが、喉が腫れて話せないようだ。
コクコクとうなずく。
「頬もこけてかわいそうに」
ドクターがため息交じりに憂うと、
「ちゃんと食えよ…」
ナギが彼女の頬に触れた。
部屋の隅にいた俺は、こんな時でも、その仕草に無性に妬けた。
「食べ物も薬も、すぐ吐いてしまうから」
ドクターも手の施しようがないようだった。
「命の草は残ってないんですか?」
ナギは悔しげにドクターに訊ねる。
「あれは雪崩の時のシンの治療に使ってしまったし…薬を飲めさえすれば体調も良くなると思うんだが、どうやっても喉を通らないようなんだ。無理に飲ませて詰まらせても困るしね」
「ドクター。このままだと、こいつはどうなります?」
わかっていて俺は。
口に出さずにいられなかった。
「ひどい肺炎だから…」
ドクターが言いにくそうに言葉を続ける。
「こいつは死ぬんですか?」
「シン!お前ッ!お前を助けるためにこんなことになってるってのにっ…」
ナギが俺の胸倉を掴む。
ああ、わかってるさ。
あの夜、俺を引き上げようとしてコイツは一緒に海に落ちた。
意識の無かった俺を浮かんでいた破片に掴まらせ、俺を温め、必死に助けを呼んでくれた。
だから―――
「言われなくてもわかってるよ。コイツが死んだら俺のせいだってな」
俺の吐き捨てるような言葉に、ナギが掴んだ手を強め、しばらく睨みあう。
大事な女が苦しんでいるのに、何もできない自分に。
お互い、やり場のない怒りを抱えていた。
「いい加減にしないか!病人のまえだぞ!」
ドクターが声を荒げる。
どうして俺の腕を離さなかった。
どうしてあんな必死な顔で、俺のことを…
何故俺は、コイツを船から降ろさなかった?
何度だって機会はあった。
俺のエゴで傍に置き続けて、
結局危ない目にあわせてしまってるじゃねーか。
もし、コイツが死んでしまったら。
苛立ちと不安。後悔ばかりがよぎる。
…いや。
何があっても死なせねー。
「…ドクター。トワも怪我してましたね」
「ああ。様子を見てくるよ。何かあったらすぐ呼んでくれ」
ドクターは部屋から出て行き、
「粥を作ってくる」
ナギもそう言って俺を睨んでから出て行った。
赤い顔で苦しそうにしている彼女と二人きりになる。
「なんで…俺なんか助けた」
独り言のように俺の口から言葉が吐きだされる。
彼女は言葉のかわりに、何かを言いたげに瞳を潤ませた。
何を言いたいんだ…?
「薬も吐き出さずにちゃんと飲め。死にてーのか」
ゴホゴホ。
彼女が咳込む。
そう。
死なせるわけにいかねーんだよ。
俺は薬を口に含んで、彼女の顎を持ち上げる。
「んっ…」
驚く彼女の唇を強引に開き、俺の口内から彼女の喉へ薬が流し込まれる。
ごくん。
薬が彼女の喉を通った。
…呑み込んだ、な。
「よしよし、良い子だ」
彼女は事態を飲み込めないのか、ひどく驚いた顔をしていた。
そういえば、コイツの意識があるうちにキスしたことは無い。
「何だ?ファーストキスを奪われて怒ってるのか?」
●●は顔を赤らめたままぶんぶんと勢いよく首を横に振り、じっと俺の顔を見つめてくる。
「何?もっと飲ませて欲しいのか?」
コクンコクンと思いっきり縦にうなづく●●。
結構意識がしっかりしてきてるようだ。
「バカか。調子にのるな。目をつぶってゆっくり眠れ。今夜は傍にいてやるから」
彼女は少し笑顔になって、安心しきった顔でその瞳を閉じた。
「…っ」
痛みを覚え、こめかみに手を添えると包帯が指先に触れる。
「お、シン。目が覚めたか?ドクターに知らせねーと」
ハヤテが傍に立っていた。
「待て。あいつは?無事か?」
ぼやけた意識のなかで、その不安だけが鮮明に浮かんできた。
「ああ。身体に大きなけがは無かったみてーだし、一命は取り留めたみたいだぜ」
「そうか…つっ…」
「無理に動くなって。お前は体中打ち付けてたみてーだから相当痛いはずだ」
確かに体中が悲鳴をあげるかのように痛む。
アイツが来てから、俺は雪崩に巻き込まれたり、海に落ちたり。
ありえねーことばかり起きる。
俺の身体は、女を危険から守るために勝手に動くようになったらしい。
しかも、あのちんちくりんの為に、だ。
それが一番ありえねーことだった。
二日後。
「ドクター!まだ熱がさがらないのか?!」
ナギがイラついている。
砲撃の夜も、ナギは泳げもしないのに、止める間もなく海に飛び込んだとドクターから聞いた。
ナギも俺と同じように、たった一人の女のために勝手に身体が動くようになってしまったらしい。
いつも落ち着いているクセに、彼女の事になると取り乱す。
「一時間以上海にいたんだ。命が助かったことにまず感謝だよ」
肝心の彼女は何か言いたげだったが、喉が腫れて話せないようだ。
コクコクとうなずく。
「頬もこけてかわいそうに」
ドクターがため息交じりに憂うと、
「ちゃんと食えよ…」
ナギが彼女の頬に触れた。
部屋の隅にいた俺は、こんな時でも、その仕草に無性に妬けた。
「食べ物も薬も、すぐ吐いてしまうから」
ドクターも手の施しようがないようだった。
「命の草は残ってないんですか?」
ナギは悔しげにドクターに訊ねる。
「あれは雪崩の時のシンの治療に使ってしまったし…薬を飲めさえすれば体調も良くなると思うんだが、どうやっても喉を通らないようなんだ。無理に飲ませて詰まらせても困るしね」
「ドクター。このままだと、こいつはどうなります?」
わかっていて俺は。
口に出さずにいられなかった。
「ひどい肺炎だから…」
ドクターが言いにくそうに言葉を続ける。
「こいつは死ぬんですか?」
「シン!お前ッ!お前を助けるためにこんなことになってるってのにっ…」
ナギが俺の胸倉を掴む。
ああ、わかってるさ。
あの夜、俺を引き上げようとしてコイツは一緒に海に落ちた。
意識の無かった俺を浮かんでいた破片に掴まらせ、俺を温め、必死に助けを呼んでくれた。
だから―――
「言われなくてもわかってるよ。コイツが死んだら俺のせいだってな」
俺の吐き捨てるような言葉に、ナギが掴んだ手を強め、しばらく睨みあう。
大事な女が苦しんでいるのに、何もできない自分に。
お互い、やり場のない怒りを抱えていた。
「いい加減にしないか!病人のまえだぞ!」
ドクターが声を荒げる。
どうして俺の腕を離さなかった。
どうしてあんな必死な顔で、俺のことを…
何故俺は、コイツを船から降ろさなかった?
何度だって機会はあった。
俺のエゴで傍に置き続けて、
結局危ない目にあわせてしまってるじゃねーか。
もし、コイツが死んでしまったら。
苛立ちと不安。後悔ばかりがよぎる。
…いや。
何があっても死なせねー。
「…ドクター。トワも怪我してましたね」
「ああ。様子を見てくるよ。何かあったらすぐ呼んでくれ」
ドクターは部屋から出て行き、
「粥を作ってくる」
ナギもそう言って俺を睨んでから出て行った。
赤い顔で苦しそうにしている彼女と二人きりになる。
「なんで…俺なんか助けた」
独り言のように俺の口から言葉が吐きだされる。
彼女は言葉のかわりに、何かを言いたげに瞳を潤ませた。
何を言いたいんだ…?
「薬も吐き出さずにちゃんと飲め。死にてーのか」
ゴホゴホ。
彼女が咳込む。
そう。
死なせるわけにいかねーんだよ。
俺は薬を口に含んで、彼女の顎を持ち上げる。
「んっ…」
驚く彼女の唇を強引に開き、俺の口内から彼女の喉へ薬が流し込まれる。
ごくん。
薬が彼女の喉を通った。
…呑み込んだ、な。
「よしよし、良い子だ」
彼女は事態を飲み込めないのか、ひどく驚いた顔をしていた。
そういえば、コイツの意識があるうちにキスしたことは無い。
「何だ?ファーストキスを奪われて怒ってるのか?」
●●は顔を赤らめたままぶんぶんと勢いよく首を横に振り、じっと俺の顔を見つめてくる。
「何?もっと飲ませて欲しいのか?」
コクンコクンと思いっきり縦にうなづく●●。
結構意識がしっかりしてきてるようだ。
「バカか。調子にのるな。目をつぶってゆっくり眠れ。今夜は傍にいてやるから」
彼女は少し笑顔になって、安心しきった顔でその瞳を閉じた。