終、偉大なるマジシャン
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アグラバーはジャスミン女王治世のころ。政務で多忙な彼女は、この日久々の外出を楽しんでいた。やってきた場所は、アグラバーで最も大きな劇場だ。夫のアラジンが隣で読んでいるパンフレットから察するに、マジックショーらしい。
「大丈夫?これ。なんかすっごく胡散臭そうなおじさんだけど。それより、遅いなぁ。あいつが勧めたショーなのに……」
「大丈夫、きっとね」
そう言って、ジャスミンは微笑みながら舞台に目を向けた。まるで、これから始まるショーが最高のものだと知っているかのように。
同刻、舞台の裏では少しだけ大人びた少年の声が響いている。少年は赤い丸メガネをかけていた。
「はーい!準備して!もう本番ですよ。あーっ!!!そこ、通り道に燃えるゴミ置かないでください!」
その様子を見ながら、本日の主役が苦笑いする。
「相変わらず騒がしいやつだな、アシームは」
「あなたの声も大概だと思うけどね。特に、アーブラカタブラってとこ」
「何言ってるんだ。マジックには声量が大事なんだよ」
そう言いながら、一組の男女――――シャバーンとラティーファが笑い合う。そして舞台からはベキートの声が響いた。
「それでは、レディース・アンド・ジェントルメン。まもなく、名実ともに偉大なるマジシャン・シャバーンの登場です!」
シャバーンは姿勢を正すと、ラティーファに微笑みかけて手を差し出した。お揃いの踊り子衣装に身を包んでいる彼女が、そっとその手に自分の手を重ねる。
「さて、行こうか」
「ええ」
「忘れるなよ。偉大なるマジックには――――」
「「サプライズが必要」」
二人は暖かな視線を交わすと、笑顔で舞台へと駆け出していった。
その姿に、魔法で得たものではない本物の歓声が向けられる。アシームは二人の数歩後ろからそんな光景をみつめながら、観客席を見渡して感慨深さにふけっていた。
ふと、来賓席を見上げるとそこに彼は見覚えのある人物を見つけた。ジャスミン姫、アラジン、そして――――
「ねえねえ聞いてアラジンくん!あの助手の子、俺の友達なんだ!」
「へぇ、そうなんだ」
ジーニーが客席からアシームに向かって手を振る。シャバーンも気づいているようで、苦笑いを浮かべつつも嬉しそうだ。
しかし、サプライズはこれで終わりではなかった。万雷の拍手の中、ラティーファはジーニーの隣に一人の人物を見つけた。
「――――お父様……?」
「なんだと?お父様がここに?」
ラティーファは瞳を輝かせると、音楽を始めるように合図した。活き活きとあの日と同じようにダンスを踊る彼女を、シャバーンは愛しさいっぱいの眼差しを向けている。
偉大なるマジシャン・シャバーンはこうして真の偉大さと愛を知り、自らの夢を叶えた。一度目は魔法の力で、そして二度目は自分自身とその周りの支えで。
彼は拍手の中で、夢を諦めないことの大切さを教えたお返しに、ラティーファという人から教えてもらったことを反芻した。
ときには遠回りをし、やりなおすこともある。それが夢に向かうということなのだと。
もちろん今の評判も、時代とともに移り変わり称号が変わってしまうこともあるだろう。だが、彼はそれでも構わないと今では心の底から思っていた。
あの日、ジーニーが言った『2つの願い』のうち、既に1つは揺るぎない真実なのだから。
ラティーファが踊りながらシャバーンを見つめる。彼女が差し伸べた手を取ると、彼は観客に深々とお辞儀した。そしてあの日のように金色のハンカチを取り出してこう言った。
「あなたがたはなんと幸運な方々。そして私はなんと幸運なマジシャン。本日はこのシャバーンのワンマンショーでございます!」
言い終わると同時に、ハンカチから白い花が飛び出る。
もう、その花は舞台上で萎れることはないだろう。
まるでそれは、二人の永遠に続く愛と同じように。
Fin.
「大丈夫?これ。なんかすっごく胡散臭そうなおじさんだけど。それより、遅いなぁ。あいつが勧めたショーなのに……」
「大丈夫、きっとね」
そう言って、ジャスミンは微笑みながら舞台に目を向けた。まるで、これから始まるショーが最高のものだと知っているかのように。
同刻、舞台の裏では少しだけ大人びた少年の声が響いている。少年は赤い丸メガネをかけていた。
「はーい!準備して!もう本番ですよ。あーっ!!!そこ、通り道に燃えるゴミ置かないでください!」
その様子を見ながら、本日の主役が苦笑いする。
「相変わらず騒がしいやつだな、アシームは」
「あなたの声も大概だと思うけどね。特に、アーブラカタブラってとこ」
「何言ってるんだ。マジックには声量が大事なんだよ」
そう言いながら、一組の男女――――シャバーンとラティーファが笑い合う。そして舞台からはベキートの声が響いた。
「それでは、レディース・アンド・ジェントルメン。まもなく、名実ともに偉大なるマジシャン・シャバーンの登場です!」
シャバーンは姿勢を正すと、ラティーファに微笑みかけて手を差し出した。お揃いの踊り子衣装に身を包んでいる彼女が、そっとその手に自分の手を重ねる。
「さて、行こうか」
「ええ」
「忘れるなよ。偉大なるマジックには――――」
「「サプライズが必要」」
二人は暖かな視線を交わすと、笑顔で舞台へと駆け出していった。
その姿に、魔法で得たものではない本物の歓声が向けられる。アシームは二人の数歩後ろからそんな光景をみつめながら、観客席を見渡して感慨深さにふけっていた。
ふと、来賓席を見上げるとそこに彼は見覚えのある人物を見つけた。ジャスミン姫、アラジン、そして――――
「ねえねえ聞いてアラジンくん!あの助手の子、俺の友達なんだ!」
「へぇ、そうなんだ」
ジーニーが客席からアシームに向かって手を振る。シャバーンも気づいているようで、苦笑いを浮かべつつも嬉しそうだ。
しかし、サプライズはこれで終わりではなかった。万雷の拍手の中、ラティーファはジーニーの隣に一人の人物を見つけた。
「――――お父様……?」
「なんだと?お父様がここに?」
ラティーファは瞳を輝かせると、音楽を始めるように合図した。活き活きとあの日と同じようにダンスを踊る彼女を、シャバーンは愛しさいっぱいの眼差しを向けている。
偉大なるマジシャン・シャバーンはこうして真の偉大さと愛を知り、自らの夢を叶えた。一度目は魔法の力で、そして二度目は自分自身とその周りの支えで。
彼は拍手の中で、夢を諦めないことの大切さを教えたお返しに、ラティーファという人から教えてもらったことを反芻した。
ときには遠回りをし、やりなおすこともある。それが夢に向かうということなのだと。
もちろん今の評判も、時代とともに移り変わり称号が変わってしまうこともあるだろう。だが、彼はそれでも構わないと今では心の底から思っていた。
あの日、ジーニーが言った『2つの願い』のうち、既に1つは揺るぎない真実なのだから。
ラティーファが踊りながらシャバーンを見つめる。彼女が差し伸べた手を取ると、彼は観客に深々とお辞儀した。そしてあの日のように金色のハンカチを取り出してこう言った。
「あなたがたはなんと幸運な方々。そして私はなんと幸運なマジシャン。本日はこのシャバーンのワンマンショーでございます!」
言い終わると同時に、ハンカチから白い花が飛び出る。
もう、その花は舞台上で萎れることはないだろう。
まるでそれは、二人の永遠に続く愛と同じように。
Fin.
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