小説や漫画みたいな素敵な恋がしてみたい、だなんて女の子なら一度は思ったことがあるだろう。勿論、わたしもその一人。そして、わたしは今、恋をしている。

進くんとは中学生のときから同じクラスだ。彼ほど生真面目、という言葉が似合う人はなかなかいないだろう。綺麗な黒髪にスポーツマン体型、更には学業成績だって優秀、モテないはずがない。彼はアメフト部に所属していて最強のラインバッカーと呼ばれている。チームメイトの桜庭くんのようにファンクラブはないけれど、進くん目当てでアメフトの試合に足を運ぶファンが多い。ちょっと近寄りがたいって思う人もいるかもしれないけれど、進くんはとても優しくて頼りになる素敵な人。単純かもしれないけれど、ちょっとした進くんの気遣いと優しさに日に日に惹かれていった。

放課後、近くの書店へ行こうと歩き出すと、目の前に進くんがいた。これからジョギングだろうか。私は思い切って彼に声をかけた。
「進くん！」
「みなみ？」
「あ、あの……お疲れ様。これからジョギング？」
「あぁ。」
アメフト部は春大会も終わり次の秋大会に向けて練習をしている。こうした日々のトレーニングは必要不可欠だ。
「みなみ、俺はそろそろ走る。明るいとはいえ、気を付けて帰るように。また来週な」
「あ、うん、引き留めてしまってごめんなさい。進くん、いってらっしゃい」
「ああ」
進くんは颯爽と走っていった。少しでもこうして彼と話せたことが何より嬉しい。進くんのさりげない優しさに幸せを感じる。いつか、彼の一番近くにいられる日が来たら・・・なんて夢をみてしまう私はすでに恋に落ちているんだろう。