西へ
「はあ、楽しかった。」
おれは独り言のように地面に向けて言った。
トド松は嬉しそうに、ボクも。とおれの顔を覗き込んできた。
1つ目の公演を見たあと、移動して次の劇場へ。
そこは1つ目のところより広く、坂になっている席なので後ろでも見やすかった。
どちらの公演も腹筋が痛くなるまで笑う場面が何回もあって、大満足だった。
大阪に来てよかった。本当に。
「ポッドキャストの芸人さん、ラジオも面白いけどネタも面白かったね!?すごかったあ。笑いすぎてお腹痛くなっちゃったもん。」
「ほんとにね。あと百個はネタ見れるわ。あ、あとおれ知らなかったんだけど、あの芸人さん、えっと、なんかアフロみたいな髪型の、」
「あー!!あのコンビも面白かったなー!!」
ああ、楽しい。
明日も明後日もトド松とここに留まって、毎日毎日一緒にライブ見て、ずっと感想を語り合ったりしてたい。
帰ってもどうせニートだし。
ふと今日はもう、あとは寝るだけということを思い出して寂しくなった。
「バスまでちょっと時間あるし、なんか食べる?」
「うん、軽く行こう。」
適当に居酒屋へ入り、そこでも今日のライブについて細かいところまで語り尽くした。
その度に鮮明にその場面が浮かび上がってきて、3日は思い出し笑いできそうだなと思った。
少しだけ入った酒も手伝い、ぺらぺらとよく口が動く。
「一松兄さん、また来ようね、大阪。」
「うん、絶対来る。二人でまた来たい。」
「えー、二人で?ふふ、いいよ、今度は泊まってもいいよねー。」
「とまっ、」
えっ。
当の本人からこんなこと言われるなんて。
おれが旅行前から思っていたことを。
しかもどうせ叶わないと一掃した妄想を。
ちらりとトド松を見たがおれが言い淀んだことを一ミリも気にしていないような顔をしている。
その程度だ、落ち着け。
「…いいね。」
「でしょ、そのほうがゆっくりできるし。でもそうなるとバイトはもっとしないとだね〜。」
「あぁ、ちょっとキツい…。」
「ふふ。一松兄さんはパチンコ頑張ってよ。」
トド松は2杯の酒で紅潮させた頬に杖をつき、
ふにゃりと笑った。
あざとい。かわいい。
おれのためだけの笑顔。
おれのためだけの視線。
それがもう終わりだなんて。
寂しい。
何度でも思う。
寂しい。
おれは独り言のように地面に向けて言った。
トド松は嬉しそうに、ボクも。とおれの顔を覗き込んできた。
1つ目の公演を見たあと、移動して次の劇場へ。
そこは1つ目のところより広く、坂になっている席なので後ろでも見やすかった。
どちらの公演も腹筋が痛くなるまで笑う場面が何回もあって、大満足だった。
大阪に来てよかった。本当に。
「ポッドキャストの芸人さん、ラジオも面白いけどネタも面白かったね!?すごかったあ。笑いすぎてお腹痛くなっちゃったもん。」
「ほんとにね。あと百個はネタ見れるわ。あ、あとおれ知らなかったんだけど、あの芸人さん、えっと、なんかアフロみたいな髪型の、」
「あー!!あのコンビも面白かったなー!!」
ああ、楽しい。
明日も明後日もトド松とここに留まって、毎日毎日一緒にライブ見て、ずっと感想を語り合ったりしてたい。
帰ってもどうせニートだし。
ふと今日はもう、あとは寝るだけということを思い出して寂しくなった。
「バスまでちょっと時間あるし、なんか食べる?」
「うん、軽く行こう。」
適当に居酒屋へ入り、そこでも今日のライブについて細かいところまで語り尽くした。
その度に鮮明にその場面が浮かび上がってきて、3日は思い出し笑いできそうだなと思った。
少しだけ入った酒も手伝い、ぺらぺらとよく口が動く。
「一松兄さん、また来ようね、大阪。」
「うん、絶対来る。二人でまた来たい。」
「えー、二人で?ふふ、いいよ、今度は泊まってもいいよねー。」
「とまっ、」
えっ。
当の本人からこんなこと言われるなんて。
おれが旅行前から思っていたことを。
しかもどうせ叶わないと一掃した妄想を。
ちらりとトド松を見たがおれが言い淀んだことを一ミリも気にしていないような顔をしている。
その程度だ、落ち着け。
「…いいね。」
「でしょ、そのほうがゆっくりできるし。でもそうなるとバイトはもっとしないとだね〜。」
「あぁ、ちょっとキツい…。」
「ふふ。一松兄さんはパチンコ頑張ってよ。」
トド松は2杯の酒で紅潮させた頬に杖をつき、
ふにゃりと笑った。
あざとい。かわいい。
おれのためだけの笑顔。
おれのためだけの視線。
それがもう終わりだなんて。
寂しい。
何度でも思う。
寂しい。