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西へ

「は〜〜〜!おつかれさま!!」

それからおれたちは5日間バイトを頑張った。
朝起きて、飯食って、出勤ついでに猫に餌をあげるのがこの5日間のルーティンだった。
毎日二人で同じ時間に出かけ、同じ時間に帰ってくるので他の奴らに不審がられるかと思ったが特に何も聞かれなかった。
聞かれないと特に言う必要がない。
これはドライモンスターの言い分と同じか。
今なら気持ちがわかる気がするよ、トッティ。

最終日、5時間のバイトを難なく終え、お金の入った封筒を至極大事に握りしめながら帰路についていた。
ふたりとも、特大の伸びをしながら。

「よし、一松兄さん、このままこのお金でバスの入金いこ!」
「あぁ、行こう。」

コンビニへ向かう。
いらっしゃいませと店員の気だるげな声が耳に引っかかる。
トド松は機械を操作してレシートみたいなやつを出して…なんかよくわからないことを淡々とやってのけた。

「一松兄さん、万札ちょうだい。」
「あ、はい。」
「これでお願いしまーす。」

店員にレシートみたいなやつとお金を渡し、
代わりにチケットみたいなやつを手に入れていた。
すごい。
文明の利器を使いこなしている。

「おっけ!入金完了っ!はいおつり。これで大阪まで行って帰ってくる足は確保しましたあ〜!」

何枚かの千円札を受け取り、大事に封筒へ戻した。

「すごいねコンビニって。」
「なにが?」
「…何がかもわからないけど。」

コンビニを出ると、トド松は封筒の中をちらりと見て、
おれの方を見た。

「にしても、一松兄さん5日間働けたね?」
「うん、働けた。」
「えらいねぇ!大阪のために!」
「トッティもでしょ。えらいねぇ。」
「へへ、まあスタッフの女の子とも仲良くなれたし、割とバイト行くの楽しみだったけど。」
「は、なにそれ。お前そういうとこあるわー萎えるわー。」
「ふふ、まあ一番は大阪行きたいからだよ?一松兄さんと。」

一松兄さんと。
こんな分かりやすいあざとさにも浮かれてしまう。
てか女の子ってなんだよ。
こちとらずっと一人で看板持って座ってたんだぞ。
でもおれと大阪行くんだよな。
女の子でなく、おれと。

「楽しみだな。」
「うん!他の兄さんたちにお金取られないでね?」
「お前もな。」

すっかり日の落ちた空にトド松の高めの笑い声が響く。
出発は五日後。
楽しみな気持ちがあと5日も続くなんて、ちょっと耐えられないけど悪くない。
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