うばっちゃった
半分寝そうになりながら、
頬杖をついてスマホをくるくると操作していた。
突然、右頬に柔らかい何かが押し付けられる。
びっくりして右を向くと十四松兄さんがいた。
まっすぐ前を向いていて口だけが笑顔だ。
「びっっっくりしたぁ、なに?十四松兄さん。」
「ううんー。」
絶妙に上の空な返事が気に障る。
全然こっち見ないしなんかムカつく。
ずっとまっすぐどこか見ているのを乗り出して覗き込んでやった。
「ねえ、なんかしたでしょ。」
「う、ううんー。」
目線を外された。
絶対変なことしてるじゃん。
そのまま睨みつけているとそろそろと黒目がボクと同じ視線に戻ってきた。
十四松兄さんはぱちぱち、と2回瞬きした。
ちゅ。
「へっ」
急に顔が近づいてそのまま一瞬キスをされた。
意味が分からなすぎて喉から変な声が出た。
一方で十四松兄さんは両目を手で塞いでいる。
「うばっ、ちゃっ、たぁ。へへ。」
何も見ずになんか言ってる。
照れて言葉がスラスラと出ていないくせになんかヘラヘラしている。
腹が立つので両目を塞いでる手をググッと引き剥がした。
頬がちょっと赤い。
「十四松兄さん、今何したの?」
「ちゅ、ちゅぅ、しました…」
「なんで?」
「したかったから…」
そんな赤ちゃんみたいな言い訳なのにすこぶる歯切れが悪い。
いい大人が兄弟でキスしていいわけがないでしょ。
きっと十四松兄さん以外だったらブチギレてたかもしれないけど、
なんか十四松兄さんには怒れなかった。
代わりにおでこだけゴンッとぶつけて、
さっきより目力強めで睨んだ。
「だめ。」
十四松兄さんから、えぇ、と弱々しい声が漏れる。
掴んでた手を離し、
2階で本格的に昼寝をしようと立ち上がった瞬間に逆に腕を掴まれた。
掴まれた方向を見ると十四松兄さんがすごい悲しそうな顔をしていた。
「ほっぺも!?」
「だめだよ!」
待って。
ほっぺ?
「もしかしてさっきした?」
ハッとした十四松兄さんは、
気まずそうに眼球を漂わせたあと、
小さく小さく頷いた。
「もう〜。」
「だって、寝てると思って…」
「寝ててもだめ!」
グーーーっと腕を引かれ、
さっきいた場所にまた座らされた。
今度は十四松兄さんはこちらをしっかり見ている。
「もう、なに?眠いんだけど。ちゅーしちゃだめだよって、わかんない?」
「なんで?」
不安そうな顔をされた。
なんだかボクがすごい悪いことをしている気分になる。
「ボクたち兄弟なんだよ、大人の。そんなこと普通はしないの。」
「好きでも?」
「すっ、」
いやまあ好きならキスするかもだけど。
兄弟でも好きなら…いいのだろうか?
いやそもそも、好きとか無いし。兄弟で。
あ、でもアメリカとかなら家族でキスしたりするか。
そのなんか、家族愛、みたいな。
「…十四松兄さんはアメリカの人になったの?」
「なってない。」
なってないってさ。
でも待って、家族として好き、でやってるなら他の兄さんたちにもやってるってこと?
こんなに食い下がるってことは受け入れてるやつがいるってこと!?
「他の兄さんたちにもちゅーしてんの?」
「してない。」
してないってさー。
よかったー!
良くないよ。
だったらますます意味がわからない。
なんでボクだけ、とここで好きという言葉を思い出す。
「…もしかして十四松兄さん、ボクのこと好き?」
「大好き。」
大好きだってさ!
なにそれ恥ずかし!!
ぱん、と顔が一気に赤くなるのがわかる。
あとちょっとうれしい。
「…やだ?」
「ぼ、ボクは別に?十四松兄さんのこと好きとか嫌いとか?そんなんじゃないし?」
「もうちゅーしちゃだめ?」
そうだった。
論点はそこだ。
正直今の自分の心情に正直になると、
少しだけなら…いいかなって…。
少しの定義がわからないけど。
でも、兄弟であろうと特別好かれているというのはすごく気分が良い。
「…ちょっとなら」
「もう一回させて。」
はやかった。
もう許可されるものだと見きっていたように、
食い気味でもう一回の申請をしてきた。
で、今は返事も待たずに顔が近づいてきている。
ボクは反射的に目を瞑った。
ちゅ。ちゅ。ちゅ。
目を開ける隙も与えず3回。
もう一回、って言ったのに。
なんて頭で思っている間にも、ちゅ、ちゅ、と繰り返されていた。
全然ちょっとではない。
けど、なんか、少しだけ気持ち良い気がしてきた。
その妙な感覚と、いつ目を開けるかの葛藤の中、
突然生え際あたりをゆっくり撫でられた。
そこでボクは目を開ける。
目の前には真っ赤になって目も少しとろんとした十四松兄さんがいた。
何故か一瞬、少しだけ苦しそうな顔をして、
ボクに体重を預けるようにもたれかかってきた。
十四松兄さんの顔が、ボクの肩に埋まる。
「しあわせ。」
耳元で噛みしめるように呟かれたそれは、
ダイレクトに心臓まで響いた。
しあわせだって。
良かった、ボクのこと好きな人はみんな幸せになってくれたほうがいいよね。
返事の代わりに背中を優しくポンポンとした。
最後、一度だけキスをして、
今日は終わり、と告げた。
十四松兄さんは寂しそうな顔をしてたけど、
収集つかなくなっちゃうもん。
「ボク、今から2階で昼寝するけど十四松兄さんはどうする?」
「い、一緒に寝る!」
「うん、いいよ。」
寝てるときに何されても別にいいか。
というわけではないけど、
今は気分が良いので優しさを見せてあげた。
まあその後、
結局最初から普通に一緒に寝ちゃったんだけど。
頬杖をついてスマホをくるくると操作していた。
突然、右頬に柔らかい何かが押し付けられる。
びっくりして右を向くと十四松兄さんがいた。
まっすぐ前を向いていて口だけが笑顔だ。
「びっっっくりしたぁ、なに?十四松兄さん。」
「ううんー。」
絶妙に上の空な返事が気に障る。
全然こっち見ないしなんかムカつく。
ずっとまっすぐどこか見ているのを乗り出して覗き込んでやった。
「ねえ、なんかしたでしょ。」
「う、ううんー。」
目線を外された。
絶対変なことしてるじゃん。
そのまま睨みつけているとそろそろと黒目がボクと同じ視線に戻ってきた。
十四松兄さんはぱちぱち、と2回瞬きした。
ちゅ。
「へっ」
急に顔が近づいてそのまま一瞬キスをされた。
意味が分からなすぎて喉から変な声が出た。
一方で十四松兄さんは両目を手で塞いでいる。
「うばっ、ちゃっ、たぁ。へへ。」
何も見ずになんか言ってる。
照れて言葉がスラスラと出ていないくせになんかヘラヘラしている。
腹が立つので両目を塞いでる手をググッと引き剥がした。
頬がちょっと赤い。
「十四松兄さん、今何したの?」
「ちゅ、ちゅぅ、しました…」
「なんで?」
「したかったから…」
そんな赤ちゃんみたいな言い訳なのにすこぶる歯切れが悪い。
いい大人が兄弟でキスしていいわけがないでしょ。
きっと十四松兄さん以外だったらブチギレてたかもしれないけど、
なんか十四松兄さんには怒れなかった。
代わりにおでこだけゴンッとぶつけて、
さっきより目力強めで睨んだ。
「だめ。」
十四松兄さんから、えぇ、と弱々しい声が漏れる。
掴んでた手を離し、
2階で本格的に昼寝をしようと立ち上がった瞬間に逆に腕を掴まれた。
掴まれた方向を見ると十四松兄さんがすごい悲しそうな顔をしていた。
「ほっぺも!?」
「だめだよ!」
待って。
ほっぺ?
「もしかしてさっきした?」
ハッとした十四松兄さんは、
気まずそうに眼球を漂わせたあと、
小さく小さく頷いた。
「もう〜。」
「だって、寝てると思って…」
「寝ててもだめ!」
グーーーっと腕を引かれ、
さっきいた場所にまた座らされた。
今度は十四松兄さんはこちらをしっかり見ている。
「もう、なに?眠いんだけど。ちゅーしちゃだめだよって、わかんない?」
「なんで?」
不安そうな顔をされた。
なんだかボクがすごい悪いことをしている気分になる。
「ボクたち兄弟なんだよ、大人の。そんなこと普通はしないの。」
「好きでも?」
「すっ、」
いやまあ好きならキスするかもだけど。
兄弟でも好きなら…いいのだろうか?
いやそもそも、好きとか無いし。兄弟で。
あ、でもアメリカとかなら家族でキスしたりするか。
そのなんか、家族愛、みたいな。
「…十四松兄さんはアメリカの人になったの?」
「なってない。」
なってないってさ。
でも待って、家族として好き、でやってるなら他の兄さんたちにもやってるってこと?
こんなに食い下がるってことは受け入れてるやつがいるってこと!?
「他の兄さんたちにもちゅーしてんの?」
「してない。」
してないってさー。
よかったー!
良くないよ。
だったらますます意味がわからない。
なんでボクだけ、とここで好きという言葉を思い出す。
「…もしかして十四松兄さん、ボクのこと好き?」
「大好き。」
大好きだってさ!
なにそれ恥ずかし!!
ぱん、と顔が一気に赤くなるのがわかる。
あとちょっとうれしい。
「…やだ?」
「ぼ、ボクは別に?十四松兄さんのこと好きとか嫌いとか?そんなんじゃないし?」
「もうちゅーしちゃだめ?」
そうだった。
論点はそこだ。
正直今の自分の心情に正直になると、
少しだけなら…いいかなって…。
少しの定義がわからないけど。
でも、兄弟であろうと特別好かれているというのはすごく気分が良い。
「…ちょっとなら」
「もう一回させて。」
はやかった。
もう許可されるものだと見きっていたように、
食い気味でもう一回の申請をしてきた。
で、今は返事も待たずに顔が近づいてきている。
ボクは反射的に目を瞑った。
ちゅ。ちゅ。ちゅ。
目を開ける隙も与えず3回。
もう一回、って言ったのに。
なんて頭で思っている間にも、ちゅ、ちゅ、と繰り返されていた。
全然ちょっとではない。
けど、なんか、少しだけ気持ち良い気がしてきた。
その妙な感覚と、いつ目を開けるかの葛藤の中、
突然生え際あたりをゆっくり撫でられた。
そこでボクは目を開ける。
目の前には真っ赤になって目も少しとろんとした十四松兄さんがいた。
何故か一瞬、少しだけ苦しそうな顔をして、
ボクに体重を預けるようにもたれかかってきた。
十四松兄さんの顔が、ボクの肩に埋まる。
「しあわせ。」
耳元で噛みしめるように呟かれたそれは、
ダイレクトに心臓まで響いた。
しあわせだって。
良かった、ボクのこと好きな人はみんな幸せになってくれたほうがいいよね。
返事の代わりに背中を優しくポンポンとした。
最後、一度だけキスをして、
今日は終わり、と告げた。
十四松兄さんは寂しそうな顔をしてたけど、
収集つかなくなっちゃうもん。
「ボク、今から2階で昼寝するけど十四松兄さんはどうする?」
「い、一緒に寝る!」
「うん、いいよ。」
寝てるときに何されても別にいいか。
というわけではないけど、
今は気分が良いので優しさを見せてあげた。
まあその後、
結局最初から普通に一緒に寝ちゃったんだけど。
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