初期短編
「なあトッティ。」
トド松はこの状況で名を呼ぶチョロ松に、
そりゃあんた二人称はボクしかいないでしょうよと呑気にツッコミを入れていた。
逆にパニック状態だからこそ変に冷静なツッコミをしているのかもしれない。
今、仰向けに転がったトド松の上には四つん這いになったチョロ松がいる。
つまり、トド松は押し倒されている状況であった。
「なに…???」
チョロ松兄さん、とかいう二人称はもう要らないよね、とまた変なことを考えてしまっている。
恐怖と意味不明さでトド松は動けずにいた。
「あのさぁ、僕になにか頼むとき女の格好してくんない?」
「…ハ?」
「いやだから、トイレついてきてーとか?ラーメン作ってーとか?普通にトド松に頼まれてもだりぃなぁとしか思えないわけ。だけど女の格好したお前に頼まれんのはまあありっちゃアリだなーって思ったわけよ。」
ダラダラともっともらしく謎なことを話すチョロ松のよく動く口を見つめていたトド松だったが、
ようやくこの兄が馬鹿であることを思い出しゆっくりと抜け出すことができた。
「はぁ、こんな押し倒してまで言うこと?」
「おした…!?べ、別に押し倒してねーし!」
「いや肩押されて倒されたんだけど。怖かったー、何されるのかと思った。それでなに?女装してモノ頼めって?きしょすぎでしょ。」
完全に体を起こしたトド松は精一杯の軽蔑の目をチョロ松へ向ける。
ただしチョロ松にはそんなものは1つもダメージとして入らない。
「僕も気持よーーく弟の世話がしたいんだ。」
「世話って。」
「ちょっっっっとでもかわいい弟ならちょっっっっとでも優しくできるよ僕。」
「いや元からちょっとは可愛いでしょボク。何言ってんの。」
「何言ってんのはこっちのセリフだボケェ!僕はね、優しくなりたいんだよトド松にも。」
チョロ松は眉を下げ、ずいとトド松に顔を近づけた。
これはシンプルにトド松の不快感を買った。
このまま自分が折れずにいっても膠着状態が続くだけだと察したトド松は、
折衷案を考える。
「…とりあえず一回ね。それでほんとに優しくなれるか考えて。」
「よし。」
承諾したチョロ松の鼻の下が一瞬伸びかけたのをトド松は見逃さなかった。
こいつはイカれた性癖の延長線上でこんなことを言っている。
とっとと満足させて終わろう、と諦め自前の女装セットに着替えた。
「…はい。これでいいの?」
「う、うん。」
チョロ松の喉仏がさがる。
生唾を飲み込んだのだろう。
「じゃあチョロ松兄さん。トイレついてきて。」
「と、ととと、といれ!?それはちょっと、あの、」
「はあ?いつもついてきてくれてるじゃん!」
「いつもと今は違うだろ!ラーメンなら作ってやるよ!」
「いや意味分かんないし…まあいいやラーメン作って、兄さん。」
チョロ松は頼まれると同時にキッチンへ走っていった。
数分後、ラーメンを持って戻ってきたチョロ松に、
トド松は怪訝な目をしながら聞いた。
「チョロ松兄さん、優しくなれた?」
「そ、それはお前が判断しろよぉ!」
「…できないことがある時点でダメなんだけど。」
結局この日はあまりにもチョロ松がキョドるので話にならず、
翌日冷静に考えても気色が悪すぎるとトド松に告げられ、
とりあえずこの提案は帳消しになったのだった。
トド松はこの状況で名を呼ぶチョロ松に、
そりゃあんた二人称はボクしかいないでしょうよと呑気にツッコミを入れていた。
逆にパニック状態だからこそ変に冷静なツッコミをしているのかもしれない。
今、仰向けに転がったトド松の上には四つん這いになったチョロ松がいる。
つまり、トド松は押し倒されている状況であった。
「なに…???」
チョロ松兄さん、とかいう二人称はもう要らないよね、とまた変なことを考えてしまっている。
恐怖と意味不明さでトド松は動けずにいた。
「あのさぁ、僕になにか頼むとき女の格好してくんない?」
「…ハ?」
「いやだから、トイレついてきてーとか?ラーメン作ってーとか?普通にトド松に頼まれてもだりぃなぁとしか思えないわけ。だけど女の格好したお前に頼まれんのはまあありっちゃアリだなーって思ったわけよ。」
ダラダラともっともらしく謎なことを話すチョロ松のよく動く口を見つめていたトド松だったが、
ようやくこの兄が馬鹿であることを思い出しゆっくりと抜け出すことができた。
「はぁ、こんな押し倒してまで言うこと?」
「おした…!?べ、別に押し倒してねーし!」
「いや肩押されて倒されたんだけど。怖かったー、何されるのかと思った。それでなに?女装してモノ頼めって?きしょすぎでしょ。」
完全に体を起こしたトド松は精一杯の軽蔑の目をチョロ松へ向ける。
ただしチョロ松にはそんなものは1つもダメージとして入らない。
「僕も気持よーーく弟の世話がしたいんだ。」
「世話って。」
「ちょっっっっとでもかわいい弟ならちょっっっっとでも優しくできるよ僕。」
「いや元からちょっとは可愛いでしょボク。何言ってんの。」
「何言ってんのはこっちのセリフだボケェ!僕はね、優しくなりたいんだよトド松にも。」
チョロ松は眉を下げ、ずいとトド松に顔を近づけた。
これはシンプルにトド松の不快感を買った。
このまま自分が折れずにいっても膠着状態が続くだけだと察したトド松は、
折衷案を考える。
「…とりあえず一回ね。それでほんとに優しくなれるか考えて。」
「よし。」
承諾したチョロ松の鼻の下が一瞬伸びかけたのをトド松は見逃さなかった。
こいつはイカれた性癖の延長線上でこんなことを言っている。
とっとと満足させて終わろう、と諦め自前の女装セットに着替えた。
「…はい。これでいいの?」
「う、うん。」
チョロ松の喉仏がさがる。
生唾を飲み込んだのだろう。
「じゃあチョロ松兄さん。トイレついてきて。」
「と、ととと、といれ!?それはちょっと、あの、」
「はあ?いつもついてきてくれてるじゃん!」
「いつもと今は違うだろ!ラーメンなら作ってやるよ!」
「いや意味分かんないし…まあいいやラーメン作って、兄さん。」
チョロ松は頼まれると同時にキッチンへ走っていった。
数分後、ラーメンを持って戻ってきたチョロ松に、
トド松は怪訝な目をしながら聞いた。
「チョロ松兄さん、優しくなれた?」
「そ、それはお前が判断しろよぉ!」
「…できないことがある時点でダメなんだけど。」
結局この日はあまりにもチョロ松がキョドるので話にならず、
翌日冷静に考えても気色が悪すぎるとトド松に告げられ、
とりあえずこの提案は帳消しになったのだった。
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