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初期短編

小腹がすいたカラ松が階段を降りていると、
トド松と鉢あった。

「おぅ、ブラザー。これからコンビニへ行くんだが、何か買ってきてやろうか?」
「えー優しいね、どうしよ、アイス食べたいかも。」
「オーケイ。」
「ありがと。」

お互い目的の方向へ進み出す。
すると少し行ったところでトド松は立ち止まってカラ松の方を向いた。

「あ待って、今もしかして部屋に誰もいない?」

声に反応し、カラ松もトド松の方を見上げる。

「あぁ、オレ一人だった。」
「あーそっかぁ…ねぇボクもやっぱついてっていい?」

トド松はカラ松に駆け寄った。
カラ松はもちろんだ、と答え手を伸ばしたがあっさりスルーされ、
お財布取ってくるね、と遠ざかるトド松の背中を見つめた。

「あ、おい、今日はオレが出すぞ。」
「信用ならないから。兄さんたちのお財布。」

トド松はべ、と舌を出しくるりと踵を返した。
ふ、とだけ吐息を漏らし玄関へ向かう。
トタトタと財布を持ったトド松も追いついた。

「なあトド松。なんで着いてきてくれるんだ?」
「えー別にー?なんとなくだけど。」

慌ただしく靴を履いたトド松は玄関から出た。
カラ松もそれに続く。
真夏一歩手前の晴れた空が心地よい。
カラ松は先程の「なんとなく」を脳内で反芻していた。
あの言い方はきっと、照れ隠しに違いない。
そう思っているといつの間にか脳内の「なんとなく」は、
「カラ松兄さんと出かけたかったから」に変わっていた。
そうなると途端、いつも以上にかわいい弟に見え、
絶対にオレがトド松のアイスを買うぞという使命感を抱いた。
そんなことも知らないトド松は、
誰でもいいから話したい話があったはずなのに、
1ミリも思い出せない現象に襲われていたのだった。

結局、カラ松の財布の中身ではアイスは買えず、
トド松が自分の分を自分で払うことになることはまだ知る由もない。
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