オリジナル
ベランダにあるいくつかの植木鉢、その中の白い鉢の一つに小さな芽が出ている。それを見た彼は頭に血が上るのを感じ、その怒りをすぐさま花好きの同居人にぶつけた。
「ねぇ、白いのには何も植えないでって言ったじゃん!」
「えっ? 言われた通り俺は白い鉢何も植えてないよ」
「嘘! だって芽が」
「種が土に最初から混じってたか、風で運ばれてきたやつじゃない?」
「あっ……」
「とりあえず何が生えたか見てみるよ」
最初から同居人を疑ってかかったのは良くなかった。頭に血が上りやすいのは彼の悪い癖だ。しかしそれを理解している同居人は、頭が冷えて己を恥じる彼の背中をさすりベランダへと促す。
同居人はベランダに出て白い鉢をまじまじと見る。そうして、芽の近くに白とこげ茶の縞模様の種のカラを発見した。
「これ、ひまわりの芽だよ」
「ひまわりの?」
「公太郎の頬袋に入ってたのかもね」
公太郎は彼が飼っていたハムスターだ。残念ながら梅雨の時期に死んでしまった。公太郎の骨を取って置きたかった彼は、しかし公太郎の無残な血肉を見たくないため、土に埋めて骨だけになるのを待つことにしたのだ。それが件の白い鉢だ。
同居人は彼に尋ねる。
「この芽、どうする? 抜いちゃう?」
「いや、そのままにする」
「それだと芽が骨に絡んで、骨が取り出せないかもよ」
「ひまわりを育てて、その種を毎年植えて、そしたら公太郎は永遠に近くなれるんじゃないかと思うんだ。毎年、夏の盆の時期、きっと公太郎はひまわりを目印に僕のところへ帰ってくるんだ……」
「ふーん。よく分からないけど、いいんじゃない?」
同居人はうっとりと物語を作り上げる彼を見てその壮大さに呆れる。それでもその考えを否定することはなかった。
「ひまわりの花が咲くの、楽しみだね」
「おう!」
「君は水やりをすぐ忘れそうだから、俺が他の花と一緒に水をあげるよ」
「悪いな、助かる!」
彼の純粋な笑顔に同居人も笑顔で返す。
ひまわりを植えたかったがベランダはもう鉢を置くスペースはない。同居人は上手くいって良かったとほくそ笑んだ。
「ねぇ、白いのには何も植えないでって言ったじゃん!」
「えっ? 言われた通り俺は白い鉢何も植えてないよ」
「嘘! だって芽が」
「種が土に最初から混じってたか、風で運ばれてきたやつじゃない?」
「あっ……」
「とりあえず何が生えたか見てみるよ」
最初から同居人を疑ってかかったのは良くなかった。頭に血が上りやすいのは彼の悪い癖だ。しかしそれを理解している同居人は、頭が冷えて己を恥じる彼の背中をさすりベランダへと促す。
同居人はベランダに出て白い鉢をまじまじと見る。そうして、芽の近くに白とこげ茶の縞模様の種のカラを発見した。
「これ、ひまわりの芽だよ」
「ひまわりの?」
「公太郎の頬袋に入ってたのかもね」
公太郎は彼が飼っていたハムスターだ。残念ながら梅雨の時期に死んでしまった。公太郎の骨を取って置きたかった彼は、しかし公太郎の無残な血肉を見たくないため、土に埋めて骨だけになるのを待つことにしたのだ。それが件の白い鉢だ。
同居人は彼に尋ねる。
「この芽、どうする? 抜いちゃう?」
「いや、そのままにする」
「それだと芽が骨に絡んで、骨が取り出せないかもよ」
「ひまわりを育てて、その種を毎年植えて、そしたら公太郎は永遠に近くなれるんじゃないかと思うんだ。毎年、夏の盆の時期、きっと公太郎はひまわりを目印に僕のところへ帰ってくるんだ……」
「ふーん。よく分からないけど、いいんじゃない?」
同居人はうっとりと物語を作り上げる彼を見てその壮大さに呆れる。それでもその考えを否定することはなかった。
「ひまわりの花が咲くの、楽しみだね」
「おう!」
「君は水やりをすぐ忘れそうだから、俺が他の花と一緒に水をあげるよ」
「悪いな、助かる!」
彼の純粋な笑顔に同居人も笑顔で返す。
ひまわりを植えたかったがベランダはもう鉢を置くスペースはない。同居人は上手くいって良かったとほくそ笑んだ。
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