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僕の大事なトレーナー【ピカチュウ】

深夜――サトシの眠る病室。
サトシとピカチュウはぐっすりと睡眠を取っている。規則正しい寝息、時折身動ぎをするサトシにピカチュウの瞼はうっすらと開いていき、目を覚ます。

「ピィカ」

ピカチュウは眠っているサトシへと視線を移した。

(よく眠ってる)

のそのそとピカチュウはサトシに近付き寝顔を眺める。

(サトシ・・・夢の中だけでもいいから僕の事を思い出して)

そっとサトシの唇にキスを落とすピカチュウ。
夢の中にいるサトシにはピカチュウから贈られたキスには気付かない。それでも、サトシの顔には嬉しさが滲んでいるのが分かる。

「なあ、ピカチュウ」
「ピィカ?」

サトシの呼びかけにピカチュウは首を傾げてサトシの顔を見上げる。

「オレ、ピカチュウの事・・・・・・大好きだぜ!」
「ピカ!」
「うん、ありがとう。お前は特別だから」

サトシは隣に座るピカチュウから何もない空へ視線を移し真っ直ぐ見上げて呟いた。

「オレにとって、ピカチュウは大切で何ものにも変えられない——・・・特別な存在なんだ」

サトシはそう言うと、ピカチュウに視線を戻しニコリと笑いかける。

「だから、これからもずっと——ずっと傍にいてくれるか?」

サトシの告白に似た言葉にピカチュウは満面の笑みを浮かべて頷く。

——当り前だよ、サトシ。僕にとって君は・・・愛しい存在なんだから。君が思うよりも僕は・・・君なしでは生きてはいけないんだ。

——だから、絶対に離さないでよ?



翌朝、病室のカーテンの隙間から日差しが射し込む。それに合わせたかのようにサトシの瞼がゆっくりと持ち上がる。

「・・・・・・」

ぼーっとする意識の中、サトシは上半身を起こし傍で眠るピカチュウに目を向け、ピカチュウの姿を視界に捉えるとサトシの口元は笑みが形取られる。

「おはよう、ピカチュウ」

まだ眠そうに眼を擦り、大きく身体を伸ばしていたピカチュウは優しい声音に動きを止め、サトシの方に向き直る。

「ピカ!?(思い出したの!?)」

ピカチュウはサトシの目の前まで駆け寄り、サトシの顔を覗き込むがサトシは記憶を取り戻した気配がない。

「・・・ピィカ(・・・思い出してないのか)」
「ピカチュウ?」

心配そうにピカチュウを見つめるサトシに、これ以上心配をかけまいと笑みを浮かべるピカチュウに余計心配になるサトシは言葉をかける。

「ピカチュウ、無理・・・・・・しないでほしい、な」

ゆっくりとピカチュウの頭上に手を置き、撫でていく。

(ごめんね、サトシ。君を元気付けるつもりだったのに・・・。逆に君に元気付けられちゃったね)

ピカチュウは目を細めながら、そんな事を考える。
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