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SS

彼だけが私を気遣ってくれるから

私はあなたに恋をしたの。

だけど、あなたは私の気持ちなんて、ちっとも気付かない。

それがどんなに心苦しいかなんて分からないでしょう?





【大好きな主人の腕の中で】





彼は私の横で微笑んでいる。柔らかな笑みを浮かべて。
どうしたら、あなたは私の気持ちに気付くのかな?

チコリータはサトシの膝に乗せられた顔を上げながら思わずにはいられない。

彼の隣にはいつもピカチュウがいるから。

「チィコ・・・」
「どうしたんだ?」

チコリータの甘えるような鳴き声にサトシは首を傾げて見下ろす。

「何か悲しいことでもあったのか?」

サトシの問いかけにチコリータは首を何度も横に振る。

「じゃあ」

なんだ?と言いかけた言葉をチコリータのキスで飲み込む。

「チィコリ~」

チコリータはぎゅっとサトシに抱きつくが、サトシはその場に縫い止められたかのように身を固くした。

「チ、チコリータ?」

サトシの驚きの言葉にチコリータは瞬きを繰り返し、鈍感なサトシに溜め息を吐く。

(サトシったら、何で私の気持ちに気付かないの!?)

恨めしそうな目でサトシを見つめ、諦めたように溜息を吐き視線を外す。

「チコリータ?」

何が何だか分からないといった表情でサトシはチコリータを見つめる。
その表情はどこか困ったように、だが心配そうに覗き込む優しい眼差しにチコリータは胸が温かくなる。

「チコチコ」
「?」

チコリータの鳴き声にサトシは首を傾げて、ゆっくりとチコリータの体を抱き上げる。

「どうしたんだ?」

サトシの心配そうな声音と言葉にもどかしさを覚えながら、サトシの旅に着いていくことを決めた日の事を思い浮かべる。

「チコチィコ」

チコリータは自分の頭にある葉をサトシの顔近くに持っていき「甘い香り」を出した。
その香りにサトシは目を閉じ、香りを楽しむ。

「チコリータ、あの日も『あまいかおり』を使ったよな」

サトシの言う【あの日】が、チコリータの考えていた【あの日】と重なり、チコリータは瞳を輝かせてサトシを見上げた。

「オレを好いてくれてありがとう、チコリータ。オレも…」

サトシはチコリータを自分に近付けて囁くように告げる。

「オレもチコリータのこと、大好きだぞ」

チコリータの大好きな笑みを浮かべて笑いかけるサトシを見つめ、チコリータは心の底から思う。

(私もサトシの事、大好き!)

サトシには届かない声。だけどサトシに届いたのか一層、優しく愛しさの込もった眼差しで自分を見つめるサトシに笑顔を向ける。






この想いに気付いてほしくて仕方のない毎日

だけど、ちゃんと届いていた。

そのことが嬉しくて

幸せで

もう何もいらないとさえ思う。



私の大好きな人…

これからも一緒にいられることを願うの。


END
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