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第1夜~第7夜

ありえない光景。
それが、目の前で起こった。
柱たち、視力を失い何が起こったか分からない産屋敷家当主以外の人間は驚きで言葉も出なかった。
禰豆子、炭治郎は自分の身に起こった治癒に呆然としている中、風鈴のような姿になった生き物はくるんっと回転し、ベビーピンク色の姿に戻ると少年へと近づいていく。

「ミュ!ミュミュ!(サトシ!やったよ!)」
「ミュウ、ありがとう」
「ミュミュ~(どういたしまして~)」

ベビーピンクの生き物はサトシと呼ばれた少年の肩に乗り、すりすりと頬擦りをした。
その様子をサトシの反対の肩に乗っていた黄色いネズミはギリッと歯ぎしりしそうな勢いで、すりすりと頬擦りをしているベビーピンク色の生き物を睨みつけた。

――ぼくのサトシに馴れ馴れしいんだけど!

サトシ大好きなピカチュウは、ミュウが馴れ馴れしくサトシと戯れている様子に嫉妬のあまり歯ぎしりした上に、電気袋からパチパチと放電してしまう。

微笑ましい光景を前に、いち早く正気を取り戻した柱の一人、蟲柱の胡蝶しのぶがおずおずと声をかける。

「・・・今のは」
「あの!」

しのぶがぽつりと言葉を発したのと同時に炭治郎が言葉を被せる様に声を発し、ベビーピンクの生き物と少年の方を向いた。

「ありがとう!禰豆子の怪我を治してくれて!」
「オレは何もしてないよ。礼ならこいつに言ってくれ」
「ありがとう。えっと・・・」
「ミュ?」
「あ、そっか。こいつはミュウ。オレの足元にいるのがリオルで、あなたに攻撃してしまったのがゲンガー。それから・・・」

炭治郎の困った様子に少年はニコッと笑い、肩に乗っている生き物を紹介すると、そのまま今この場にいるポケモンたちの紹介を始め、それから・・・といい、ミュウの反対側の肩に乗るピカチュウに視線を向けると、黄色いネズミは胸を張ってサトシの紹介を待つ。

「オレの相棒のピカチュウ!みんなオレの自慢の仲間たちさ!!」
「ピカピッカ!!」
「ゲン」
「リオリオ」
「ミュミュ」

少年の紹介にポケモンたちは元気いっぱい、一部はふいっとそっぽを向いているが――鳴き声をあげると、ふとピカチュウは肝心なことを言っていないぞ、というかのように少年の頬を小突く。

「ピィカ」
「あ!そうだった。オレはサトシ。ポケモンマスターを目指して旅をしてるんだ。よろしく!」

まっすぐ、含みのない笑顔で言い切った少年――サトシにその場にいた全員が毒気を抜かれた。

「・・・ポケモンマスター」

サトシの言う【ポケモンマスター】が分からず呆然と呟く柱。だが、その中でも聞き間違いではないかと思う単語を見つけ凝視してしまう。

「・・・旅・・・」
「鬼が蔓延っているのにか?」
「鬼?鬼って・・・そんなポケモンいたっけ?」

鬼と言われて何か分からず、傍らにいるピカチュウに聞いてみるが、ピカチュウは首を傾げ、他のポケモンたちも首を振って見せた。そこで、サトシは普段使わないものを使うことにした。

「ロトム図鑑なら、分かるかな?」
「サトシ!呼んだロト?」
「!」
「鬼ってポケモンいるのか?」

サトシがロトム図鑑を呼ぶと、背負っていたリュックから飛び出してくる赤い四角の見知らぬ機械。しかも自我があると見て取れる。そんなものを前にサトシたち以外は目を見張る。
その間もロトム図鑑と呼ばれた物は何かを探しているのか、うんともすんとも言わずにいたが――

「ブーブーエラーロト!そんなポケモンいないロトよ。よく大人が悪いことをした子供に言い聞かせるのに使うロトね」
「へぇ」

ロトム図鑑の説明に素直に頷くサトシに、その場にいた人間たちは慌てる。実際に鬼に遭遇し、鬼殺をしているのだから。そんな、サトシに真っ先に反応するのは炭治郎だ。

「いやいや違うぞ!実際、君も会ってるから。その瞬間に遭遇してるからっ」
「!?」
「?」

炭治郎の叫びにサトシは記憶がないのか首を傾げ、柱たちは炭治郎を見、サトシを見た。

「ほら!鬼になってしまった男性が女性に襲い掛かっていた時!その・・・ゲンガーだっけ?その生き物の目から何かやっていただろう」
「・・・・・・あの人が・・・鬼?」

炭治郎の言葉にサトシは信じられない。姿形は自分と全く変わらない。そんな人が鬼だというのだから。
でも、サトシには少しばかり分かってしまった。今、この瞬間に感じる波動が違うものがあるから。
サトシは禰豆子を見て、ぽつりと呟いた。

「・・・・・・君は【鬼】・・・なんだね」
「!」
「でも・・・人に近い?いや、人よりポケモン?」

うんうんと唸りながら、必死に考えて答えを見つけたサトシの言葉にポケモンたちは呆れたような様子であり、その他の人はポカンと呆けている。

「ポケモンに悪い奴はいない!なっ、ピカチュウ」
「ピィカピカ(ロケット団のニャースは悪い奴だけど)」
「んー、それは・・・たしかに・・・悪いことばっかりしてるよなぁ」
「ミュウミュ」
「でもさ!困ったときは助けてくれる!だろ?」
「・・・チャァ(・・・10万ボルト打ってやる)」
「手加減はしてやれよ」

サトシとピカチュウのやりとりが終わった頃に産屋敷が口を開く。

「君は炭治郎と一緒に鬼舞辻無惨に遭遇しているね」
「鬼舞辻無惨?」
「鬼の頭領だ。俺は・・・俺と禰豆子は鬼舞辻無惨を絶対倒す!」
「今の炭治郎にはできないから十二鬼月を一人倒しておいで。それからサトシ、君は鬼舞辻無惨に狙われるかもしれない。だから柱と過ごしてもらえるかい」

優しい話し方をしているが、産屋敷の言葉に柱たちは鬼舞辻無惨と遭遇しただけにしてはなぜ?という顔をする。
そんな中、一人の柱は手を挙げた。

「でしたら、竈門君とサトシ君は私の屋敷でお預かり致しましょう」

パンパンと手を叩き隠を呼び、竈門を自分の屋敷に運ぶよう伝えると、穏は竈門と禰豆子の入った箱を連れ出し、サトシの手を引いていく。


つづく
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