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第1夜~第7夜

森の中――
サトシは波動で感じた「何か」の場所まで急いで向かう。

そして、見つけた小さな影。
体は煤だらけで、何か怖いことでもあったのか意識をなくしているようだ。
サトシはそっと抱え、煤以外に怪我がないかザッと見渡したが外傷はないようで一息つくと、屋敷に戻り腕に抱えたモノを洗ってやろうと森を下りていく。

サトシの腕の中にいたモノはしばらくして、目を覚ました。
ふわふわとした浮遊感に、夜の出来事は夢だったのだと思ったが、微睡の中、それでも感じる匂い――に意識は急速に浮上し、唸り声をあげる。

「ガルル」

唸り声がしたかと思ったのと同時にサトシに衝撃が襲う。

「っつ、だい・・・じょうぶ、だ。怖くない・・・怖くないよ」
「ガゥウ」
「なにも怖いことなんてないよ」

サトシの腕に噛みつくモノは威嚇の鳴き声を上げ、腕から牙を放すことはない。よっぽど、怖いことがあったのだろうとサトシはトントンと宥める様に煤で汚れた体を軽く叩いてやる。
そこに、ピカチュウたちがサトシに合流した。

したのだが、サトシの腕に牙を突き立てているモノにピカチュウはキレる一歩手前。
サトシはピカチュウの様子に苦笑を浮かべ、大丈夫だと声をかける。

「ピカチュウ、こいつなんか怖いことでもあったみたいだ」
「ピィカ?」
「今、こいつは混乱しているんだ。だから・・・な?」
「・・・ピィカ」

サトシの言葉に仕方ないとピカチュウはため息一つ。だが、理由次第ではサトシのいないところで制裁を加えようと考えている。

「大丈夫。ここにはお前、に、危害を加える奴はいないよ」

にっこりと微笑み、安心させるようポンポンと撫でつけるように軽く叩くとサトシの腕に噛みついているモノは浮遊感と体力の限界から意識を手放した。

「・・・こいつ、よっぽど怖い目にあったみたいだな」

意識を手放したことでサトシの腕から牙が離れ、噛みつかれる痛みから解放されたがじくじくと痛みと熱を持ち始めた腕に、目の前のモノの恐怖心の大きさが伝わるかのようだ。

☆★☆

蝶屋敷に到着し、サトシはまず腕の中で眠る煤だらけの身体を洗うため、アオイやなほ、きよ、すみを探す。

「あ!サトシさん」
「どうしました?」
「サトシさんの腕に抱えているのは?」
「なほさん、きよさん、すみさん!あの、こいつの体を洗ってやりたいんだけど」
「でしたら」
「井戸を」
「お使いください!」

サトシの腕で眠っているモノにキョトンとしていたが、サトシの言葉に裏手にある井戸を使ってくださいと言うとサトシはありがとうとお礼を言い、井戸に向かう。
なほ、きよ、すみの三人は手拭いを手にサトシの後を追う。

井戸に着くとサトシはそっと、腕の中のポケモンを地面に下ろし、井戸から水を汲んだところで三人が手拭いを手にやってきた。

「あの、サトシさん」
「これ、使ってください」
「この子は大丈夫ですか?」

サトシはニコッと笑んで見せると、手拭いを水に浸しポケモンの体を拭いてやる。すると、山吹色と黒の模様が現れた。そう、山吹色の体。
色違いのポケモンが目の前に現れ、サトシは一瞬言葉に詰まる。

「わあ!」
「わんちゃんみたいですね」
「でも、わんちゃんとは少し違いますね」
「・・・ガーディ」
「ガーディ?」
「この子の名前ですか」
「すてきな子ですね」

煤を落とし、姿がはっきりするとサトシは痛ましい様子で黙り込んでしまった。色違いのガーディが煤だらけだったことに、天災に合ったのだろうとは思うが、サトシへの威嚇で何となくわかってしまった。

「お前は・・・」
「あ」
「サトシさんの腕」
「傷がありますよ」

三人はサトシの腕に傷があるのを見つけ、サトシにも傷の手当をした方がいいと進言し、サトシは苦笑を浮かべガーディを連れて治療室へ向かう。
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