番外編
今回は煉獄も登場していただいておりますが、口調など違う点もあるかもしれません。
また、番外編2に出ていたユリーカも最後に出てきますが、本編には関係がありませんのでご注意下さい。
それでもいいよという方はどうぞ
↓ ↓ ↓
番外編【黒歴史を暴露されて③】
サトシは今、一人――正確にはサトシの陰に潜り込んでいるゲンガーと一緒に蝶屋敷を離れ町の商店街のような所にいた。
装飾品や呉服屋、茶屋、食品売り場などの店がずらりと並び、大声で客を呼び込んでいる風景があり、サトシは物珍しさやアローラでの木の実売り場の人情溢れる店員を思い出し、懐かしさに自然と笑みが零れた。
「あ!着物?みたいなの来てる人もいる!!」
鬼殺隊の衣装は、この時代では現代的といえるだろう。そして、サトシは知り合いの中で隊服を着ている人しか見ていない。唯一隊服を着ていない着物姿なのは禰豆子くらいなものだろう。
そのため、この時代特有の着物を着た人たちがすれ違う度、ポケモン世界で唯一着物を着ていたジョウト地方エンジュシティで出会った“舞子さん”を思い出し、大声が出てしまい慌てて口元を両手で隠し、そそくさとその場を後にした。
それから、ゆっくりと店や町行く人を見て楽しんでいたサトシはある人物の後ろ姿を見つけた。
「うむ!店主!さつまいもを全て買おう!!」
「あ、兄上!それは買い過ぎです!!」
離れた場所にいるサトシの耳にも届く程の大音量で、産屋敷邸で出会った炎柱である煉獄杏寿郎が店主にお店に並んでいるさつまいもの買い占めを宣言し、その隣であわあわとした様子で煉獄そっくりの少年が窘めている姿があった。
「あの人たちは・・・」
サトシの呟きと、店先でのやり取りで少年の窘みをものともせずに両手いっぱいのさつまいもを抱え、ほくほく顔を浮かべた煉獄が踵を返し、早く好物のさつまいもを食べたいとばかりに歩き出す。その後を追いかける煉獄そっくりな少年。
「兄上、待ってくださいぃ」
「早く食べたいものだ!!」
2人がサトシに近づいてくる。そして、両手が塞がっている煉獄と呆然を立ち尽くしているサトシがドンッとぶつかり、サトシは衝撃で尻もちをついてしまう。
それに、煉獄そっくりの少年がサトシに手を差し出し助け起こす。
「すまない!前方不注意だった!!」
「いえ、オレもぼぅっとしていましたので」
はきはきとした物言いで謝罪の言葉を口にする煉獄杏寿郎と自分を助け起こしてくれた煉獄と瓜二つと言ってもいいほど似ている少年を前にサトシはちらりと視線を向ける。
「?どうしたのだ?」
「大丈夫ですか?どこか他にもぶつけてしまった所はございませんか?」
「煉獄・・・さん・・・でした、よね?」
「ふむ。そうだが、俺は君と会ったことはあったかな?」
「え?あ、えっと・・・」
煉獄に誰だと存外に言われ、サトシは返事に詰まってしまう。どう説明すればいいのかも分からず、そして、産屋敷邸の事もお館様の事も口にしていいのかが判断することができないためだ。
サトシの困惑する様子を影の中から見ていたゲンガーはキランと目を光らせ、特徴的な鳴き声を上げる。
「ゲンゲロゲー」
「む?」
「この声は?」
どこからともなく聞こえた声に煉獄たちはキョロキョロと辺りを見渡し、サトシは突然鳴き声を上げたゲンガーにキョトンとし、自分の影を見た。
「ゲンガー、出て来いよ」
「むむ」
「!」
サトシの呼びかけに、目の前の2人はどこから出てくるのかと辺りを見渡していたのだが、サトシの足元――影がパチッと目が浮かび、ずるずると浮かび上がってくると流石の煉獄もビックリしたのか声が少しばかり浮ついた。そして、サトシたちの横を通りがかっていた人たちは、影が浮かんでくるホラーのような出来事に腰を抜かしそうになったいた。
「お・・・・・・おばけ・・・」
煉獄そっくりの少年はビックリし過ぎのためか可哀そうなほど青褪め、ぽつりと呟いた。その横で煉獄本人はサトシの陰から浮かび上がったモノを見た時、産屋敷邸でのことを思い出した。
「よもや、君はあの時の少年か?」
「あ、あの時はゲンガーとピカチュウがすみませんでした」
「いや、俺の方こそ君に刃を向けたがためにそこの生き物と黄色い生き物が怒ったのだろう?」
だから、お互い様だと気にした風もなく言い切る煉獄とそう言っていただけると、と頭を下げるサトシ。
煉獄そっくりの少年は兄と目の前の少年(サトシ)が知り合いだったことに戸惑ったようにおろおろとしていると、煉獄はせっかくだからと紹介をする。
「少年!俺の弟を紹介しよう!!弟の千寿朗という!!」
「は、はじめまして!!僕は煉獄千寿朗といいます。よろしくお願いします!」
「じゃあ、オレもだな!オレはサトシ!こっちはゲンガーよろしく!」
「ゲンッ」
二カッと太陽の笑みを浮かべて自己紹介をするサトシと千寿朗に敵意もないかのようにサッと手を上げ、よろしくと言わんばかりに二カッと笑うゲンガー。
そんな様子を煉獄は何とも言えない表情を一瞬浮かべたが、気を取り直しサトシに声をかける。
「少年、君はここで何をしているんだ?」
「オレはこの辺りを散策してました!」
ちょっとした冒険です!知らない町、初めての町ってドキドキわくわくしますよね!!と曇りなき笑顔で言い切るサトシに煉獄兄弟は虚を突かれた様に呆然としたが、意味を理解するとワハハッと笑い出した。
「冒険!確かに初めての町は冒険と言ってもいいわけだな!!」
「そんな考えもあるのですね」
煉獄はその心意気はいいなと頷き、千寿朗は考え方一つで人生を楽しめるんだなと感慨深い。今の世は鬼が蔓延っているため、そんな考えはなかなか持つことができない。
だが、そんな暗い世を照らすかのような温かな、優しい笑みを浮かべるサトシは眩しい。そう、千寿朗は思う。
「サトシ少年も一緒にさつまいもを食べるか?」
煉獄は両手いっぱいのさつまいもをこれからおやつ代わりに食べるつもりだったようで、サトシも一緒にどうかと誘う。
「いいんですか!?じゃあ、お言葉に甘えて」
でも、もらうばかりもなぁと思うサトシはそういえばと思い出す。
「じゃあ、オレもお菓子がリュックの中にあったはずなので一緒にどうですか?」
この世界に来る前にゴウと一緒にシンオウ地方で手に入れた森の羊羹の存在やガラル地方などのお菓子等々を思い出し、一緒に食べましょうと声をかけると二人は是非にということになり、サトシの荷物がある蝶屋敷に向かう。
また、番外編2に出ていたユリーカも最後に出てきますが、本編には関係がありませんのでご注意下さい。
それでもいいよという方はどうぞ
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番外編【黒歴史を暴露されて③】
サトシは今、一人――正確にはサトシの陰に潜り込んでいるゲンガーと一緒に蝶屋敷を離れ町の商店街のような所にいた。
装飾品や呉服屋、茶屋、食品売り場などの店がずらりと並び、大声で客を呼び込んでいる風景があり、サトシは物珍しさやアローラでの木の実売り場の人情溢れる店員を思い出し、懐かしさに自然と笑みが零れた。
「あ!着物?みたいなの来てる人もいる!!」
鬼殺隊の衣装は、この時代では現代的といえるだろう。そして、サトシは知り合いの中で隊服を着ている人しか見ていない。唯一隊服を着ていない着物姿なのは禰豆子くらいなものだろう。
そのため、この時代特有の着物を着た人たちがすれ違う度、ポケモン世界で唯一着物を着ていたジョウト地方エンジュシティで出会った“舞子さん”を思い出し、大声が出てしまい慌てて口元を両手で隠し、そそくさとその場を後にした。
それから、ゆっくりと店や町行く人を見て楽しんでいたサトシはある人物の後ろ姿を見つけた。
「うむ!店主!さつまいもを全て買おう!!」
「あ、兄上!それは買い過ぎです!!」
離れた場所にいるサトシの耳にも届く程の大音量で、産屋敷邸で出会った炎柱である煉獄杏寿郎が店主にお店に並んでいるさつまいもの買い占めを宣言し、その隣であわあわとした様子で煉獄そっくりの少年が窘めている姿があった。
「あの人たちは・・・」
サトシの呟きと、店先でのやり取りで少年の窘みをものともせずに両手いっぱいのさつまいもを抱え、ほくほく顔を浮かべた煉獄が踵を返し、早く好物のさつまいもを食べたいとばかりに歩き出す。その後を追いかける煉獄そっくりな少年。
「兄上、待ってくださいぃ」
「早く食べたいものだ!!」
2人がサトシに近づいてくる。そして、両手が塞がっている煉獄と呆然を立ち尽くしているサトシがドンッとぶつかり、サトシは衝撃で尻もちをついてしまう。
それに、煉獄そっくりの少年がサトシに手を差し出し助け起こす。
「すまない!前方不注意だった!!」
「いえ、オレもぼぅっとしていましたので」
はきはきとした物言いで謝罪の言葉を口にする煉獄杏寿郎と自分を助け起こしてくれた煉獄と瓜二つと言ってもいいほど似ている少年を前にサトシはちらりと視線を向ける。
「?どうしたのだ?」
「大丈夫ですか?どこか他にもぶつけてしまった所はございませんか?」
「煉獄・・・さん・・・でした、よね?」
「ふむ。そうだが、俺は君と会ったことはあったかな?」
「え?あ、えっと・・・」
煉獄に誰だと存外に言われ、サトシは返事に詰まってしまう。どう説明すればいいのかも分からず、そして、産屋敷邸の事もお館様の事も口にしていいのかが判断することができないためだ。
サトシの困惑する様子を影の中から見ていたゲンガーはキランと目を光らせ、特徴的な鳴き声を上げる。
「ゲンゲロゲー」
「む?」
「この声は?」
どこからともなく聞こえた声に煉獄たちはキョロキョロと辺りを見渡し、サトシは突然鳴き声を上げたゲンガーにキョトンとし、自分の影を見た。
「ゲンガー、出て来いよ」
「むむ」
「!」
サトシの呼びかけに、目の前の2人はどこから出てくるのかと辺りを見渡していたのだが、サトシの足元――影がパチッと目が浮かび、ずるずると浮かび上がってくると流石の煉獄もビックリしたのか声が少しばかり浮ついた。そして、サトシたちの横を通りがかっていた人たちは、影が浮かんでくるホラーのような出来事に腰を抜かしそうになったいた。
「お・・・・・・おばけ・・・」
煉獄そっくりの少年はビックリし過ぎのためか可哀そうなほど青褪め、ぽつりと呟いた。その横で煉獄本人はサトシの陰から浮かび上がったモノを見た時、産屋敷邸でのことを思い出した。
「よもや、君はあの時の少年か?」
「あ、あの時はゲンガーとピカチュウがすみませんでした」
「いや、俺の方こそ君に刃を向けたがためにそこの生き物と黄色い生き物が怒ったのだろう?」
だから、お互い様だと気にした風もなく言い切る煉獄とそう言っていただけると、と頭を下げるサトシ。
煉獄そっくりの少年は兄と目の前の少年(サトシ)が知り合いだったことに戸惑ったようにおろおろとしていると、煉獄はせっかくだからと紹介をする。
「少年!俺の弟を紹介しよう!!弟の千寿朗という!!」
「は、はじめまして!!僕は煉獄千寿朗といいます。よろしくお願いします!」
「じゃあ、オレもだな!オレはサトシ!こっちはゲンガーよろしく!」
「ゲンッ」
二カッと太陽の笑みを浮かべて自己紹介をするサトシと千寿朗に敵意もないかのようにサッと手を上げ、よろしくと言わんばかりに二カッと笑うゲンガー。
そんな様子を煉獄は何とも言えない表情を一瞬浮かべたが、気を取り直しサトシに声をかける。
「少年、君はここで何をしているんだ?」
「オレはこの辺りを散策してました!」
ちょっとした冒険です!知らない町、初めての町ってドキドキわくわくしますよね!!と曇りなき笑顔で言い切るサトシに煉獄兄弟は虚を突かれた様に呆然としたが、意味を理解するとワハハッと笑い出した。
「冒険!確かに初めての町は冒険と言ってもいいわけだな!!」
「そんな考えもあるのですね」
煉獄はその心意気はいいなと頷き、千寿朗は考え方一つで人生を楽しめるんだなと感慨深い。今の世は鬼が蔓延っているため、そんな考えはなかなか持つことができない。
だが、そんな暗い世を照らすかのような温かな、優しい笑みを浮かべるサトシは眩しい。そう、千寿朗は思う。
「サトシ少年も一緒にさつまいもを食べるか?」
煉獄は両手いっぱいのさつまいもをこれからおやつ代わりに食べるつもりだったようで、サトシも一緒にどうかと誘う。
「いいんですか!?じゃあ、お言葉に甘えて」
でも、もらうばかりもなぁと思うサトシはそういえばと思い出す。
「じゃあ、オレもお菓子がリュックの中にあったはずなので一緒にどうですか?」
この世界に来る前にゴウと一緒にシンオウ地方で手に入れた森の羊羹の存在やガラル地方などのお菓子等々を思い出し、一緒に食べましょうと声をかけると二人は是非にということになり、サトシの荷物がある蝶屋敷に向かう。