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第1夜~第7夜

【第5夜】


夕方の蝶屋敷――
しのぶが屋敷に足を踏み入れた途端に感じる違和感に首を傾げたが、炭治郎を含めた病人達の様子を見るため病室へと向かうことにした。
近づくにつれ、騒がしくなる病室にしのぶの眉間に皺が寄る。

そして――
部屋に到着したしのぶは、にっこりと笑みを浮かべてわざとらしく明るい声を出した。

「こんにちは。皆さんお揃いでどうかしましたか?」

ポンっと軽く手を合わせて言うしのぶが普段と変わらない様子だが、背後から漂うモノが普段と違う。
それをいち早く感じるのは、炭治郎と善逸だ。それから遅れて、少女たちが気づく。

「「「しのぶ様!おかえりなさい!!」」」

少女三人がしのぶに気づき、はきはきとした声でおかえりなさいと言い、もう一人の少女は――・・・

「しのぶ様!この少年は一体・・・」

困惑した様子で伊之助とベット付近にいたサトシを交互に見、困惑した様子だ。
しのぶは少女の戸惑いに、何かあったのかと首を傾げた。

「どうしました?」
「声がでなかった彼が、この少年が差し出した果物を口に含んでから戻ったようで」

少女はそこまで言って伊之助に視線を落とすと、しのぶは失礼しますねと言いながら伊之助に近づき触診を行う。

「あらあら、不思議ですね。腫れや傷などが・・・」

搬送する前、那田蜘蛛山で触診などの診察を行っていたしのぶは驚き、少女が言っていた少年――サトシに問いかけた。

「あなたは、彼に何をされたんですか?」
「へ?何もしてないですよ。ただ、水分の多い果物を食べさせただけで」
「水分の多い果物?」
「えっと・・・」

サトシが目を一瞬、リュックにやるとそれを瞬時に判断したサトシの相棒であるピカチュウが善逸のベットから飛び降りリュックまで近づくと一つの果実を取り出しサトシに渡すため駆け出した。

「ピカピ!」
「ありがとな。ピカチュウ」
「ピィカチャァ!」
「これは何ですか?」
「オレもこの果物の名前は分かんないんです。ただ、随分前の旅で、あるポケモンがしゃべることが出来なくて、その時に仲間の一人がこれを食べさせればよくなるって言ってたんだ」
「ピィカピカ」
「そんなことは・・・」
「実際その後、そのポケモンは【うたう】ことをして・・・」
「歌うですか?」
「はい。その声・・・っていうのか【うたう】を聞いて、オレたち爆睡しちゃって」
「ピィカ」
「それに怒ったポケモンがマジックでオレたちの顔に落書きして」
「・・・」
「どっか行っちゃったんですよね」
「ピィカピィカ」

ハハハと苦笑を浮かべ、ピカチュウがやれやれという動作をして見せた。そこまで聞き、しのぶは額を抑えることになった。
今この場にいたのが、しのぶ一人だけではないことを思い出したからだ。
そして、サトシの発言にすぐさま反応したのがいた。

「旅!?怖い鬼がいっぱいいるのに旅!?しかも爆睡――!?」
「なんかおかしいこと言ったか?」

取り乱しながら言う善逸の言葉にサトシ以外がうんうんと頷いているが、サトシは首を傾げながら旅することがおかしいことかとピカチュウと顔を見合わせていた。

「サトシ君。この世界は君の世界とは違いますからね。先ほど言ったでしょう?」

先ほど、と産屋敷邸でのことを指して言うとサトシははっとしたのかしゅんと項垂れてしまう。だが、この場にいた炭治郎を除く人たちはしのぶの言葉の端々に違和感を感じる。

「あの・・・しのぶ様。この世界というのはどういうことですか?」

少女の質問にしのぶはサトシを蝶屋敷に預かることを柱たちを含めた当主の前で言ったことから、少女たちには元からサトシの事を伝えるつもりではいた。だから、この場でサトシの事を伝えることにした。
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